My Life Catalogue: Gourmet: Metropolitan No.1

ホテルの楽しみ No.1
リゾートホテルの条件

都会を離れて、まとまった休日を過ごすとしたらどこへ行くでしょうか。若い頃は、休みともなれば北アルプスを縦走したかと思えば谷川岳や尾瀬を駆けめぐり、ある時は京都、ある時は日光と、次々と移動の連続だったような気がします。

なぜ、次から次へとあちこちに行ってみたくなるのでしょうか。その理由は、たぶん「まだ、行ったことがないから。」ではないかと思います。登山家のマロリーが、なぜあなたはエヴェレストに登るのですか、とたずねられた時、「そこに山があるから。」と答えたのは実は誤訳で「そこの山にはまだ行ってないから。」というのが本音だったのではないかと思います。これを繰り返してゆくと、1つのホテルにはほとんど1回しか行かない計算になりかねません。このホームページのどこかにも書きましたが、ホテルは何度も訪れることで、だんだんそのホテルの味わいがわかるようになるものです。単に、チェックインして、食事をし、一晩泊って、朝食を食べたら、はいさようなら、もう来ません、ではホテル側にしたって通り一遍のサーヴィスしかしようがないのです。

もう何年も前のことですが、家族とともに一週間ちかく軽井沢のとあるリゾートホテルに滞在をしてみようと思って実行したことがあります。若きサラリーマン家庭にとって、この滞在はたいへんな出費でした。滞在中の移動の予定は一切なく、ただただそこにいるだけの予定です。大型のトランクに衣類やオーディオ、ケーキ皿とカトラリー一式、人数分のテニスラケット、何足もの靴を詰め、海外旅行さながらの大所帯です。

ホテルに着くと、まず、生活環境をつくることからはじまります。各人の衣類をすべて箪笥にしまい、オーディオをセットし、そのほかあらゆる持ち物をまるで引越しで新居にはいる時のように片づけてゆく。居心地のよさそうな空間ができあがると、やっとお茶タイムです。ホテルのティールームを利用するも悪くありませんが、ホテルから歩いて10分ほどのところにケーキ屋があるので、そこで仕入れたお菓子のためにわざわざ東京から食器一式を持ってきたわけです。フロントに電話をして、滞在中のテニスコートを予約します。毎日、午前中はテニス、午後は散歩に昼寝ときめました。今晩の夕食も忘れずに予約をいれておきます。よいリゾートホテルの場合、メインダイニングの夕食には近所の別荘の住人がたくさんやってきますから、ぼやぼやしていると席がなくなってしまったりするからです。

このホテルは、ゆったりとした敷地を持ち、静かでぜいたくな空間のなかに建っています。外からは中がどうなっているのかがほとんどわからないような構造になっていて、はじめて訪れた人にとってはどこかよそよそしさが漂っています。そのせいか、夏の軽井沢の喧騒などこのホテルのエントランスからは全く感じられません。これが、このホテルの、滞在者に対するサーヴィスなのです。ここに滞在する者が、広い緑に囲まれた静かな空間をゆっくり堪能するためには、外部からどかどかと人がはいり込んで来てはぶち壊しです。さりげなく、外部の喧騒から遮断するという配慮は、ほんとうにありがたいのです。

悲しいことに、昨今のリゾートホテルが、表通り側にコーヒーショップの看板を掲げて、通りすがりのお客をも呼び込み、ロビーたるや雑踏のごとく滞在者も外来者もいっしょくた、というのがあたりまえになってしまいました。

毎朝、同じダイニングで朝食をとるうちに、こちらも、ホテル側もお互いに顔見知りになります。給仕さんと、あれこれ他愛ない会話を楽しみながらの朝食です。夕食もまた、楽しい時間です。ワインひとつ決めるにも、話題がはずみ、笑いがはじけます。これすべて、ホテルの我々に対するサーヴィスであると心得ます。ロビーを歩いていて、はじめて自分のことを名前で呼び止められた時、自分がやっとこのホテルのお客になったのだという実感が込み上げてきたものです。

ホテルの敷地内に湧水があり、クレソンがたくさん生い茂っています。今日、東京に戻るという日、庭師のAさんからおみやげにそのクレソンをたくさんいただきました。それから何年かたったある日も、そのホテルに滞在していました。Aさんがこちらに向かって歩いて来られるので、どんな用事かと思っていたら、今日をもって定年を迎えられるので挨拶に来られたとの由。

毎年のお正月、年賀状の中にこのホテルからの絵葉書を見つけると、ああ、今度は寒い季節に行ってみようか、などど思ったりします。ある時、フロントのKさんにこの話をしたら「冬はそれはそれは寒いですよ。でも、とても静かで美しいですから、うんとあたたかくしていらっしゃい。」とおっしゃいました。まだ、雪の季節に訪れるチャンスがないのが残念です。

若干の季節のメニューの変動を除けば、ダイニングのメニューはいつも変わりません。このホテルに向かう車内では、家族のひとりひとりが、夕食のメインは何にして、デザートはいつものあれにして、朝はやっぱりワッフルかな、などともうすでに心に決めているのです。

ある日、日帰りで軽井沢を訪れ、そのホテルに立ち寄った時のことです。ティールームでひと休みしてから、フロントで「いつも年賀状をいただくのですが、なかなかここに来ることができないでいます。」と申し上げたら「いつでもご都合の良い時にいらしてください。ここは、これからもずっと変わることはございません。」といううれしいお返事。確かに、このホテルは、いつものように清潔で、丁寧で、心配りがあって、ほとんど何も変わっていません。変わってもらっては困るというのがこちらの本音です。


ホテルの楽しみ No.2
食事の楽しみ

お正月になると、都内はとても静かになります。24時間常に一定の騒音が空気のようになっているというのが東京の街の特徴ですが、それがぱったり止んで、しーんと静まりかえります。ホテルのレストランも同様です。元旦と2日はとりわけ静かです。しかし、ホテルは三が日であっても決して休業などしません。その静かさをねらって、お気に入りのホテルのメイン・ダイニングに予約を入れるのです。ただし、近所に著名な寺社がないホテルに限る、という条件つきですが。

その日、我々一家が訪れたダイニング・ルームには、他のお客は誰もいませんでした。すべてが、我々のために用意された時間がはじまりました。いちばん良い席に案内され、丁寧な挨拶を受けます。時間を気にすることなく、納得のゆくまで質問しながらメニューを決めてゆきます。注文した料理の前に、料理長からの一品のサーヴィスが出されました。給仕、給仕長、料理人、料理長、すべての料理のプロ達がわれわれのためにあるのです。

料理を作るタイミングと出すタイミングがぴったり合った時、料理というものは最高の味を出します。どんなレストランであっても、超満員の時にこの技を発揮するのはむずかしいものです。でも、今日は特別です。作る側も、食べる側も、自分にいちばん合ったペースが得られるのです。

お皿が空になると、ナイフとフォークを揃えて並べます。給仕さんは、遠くから、あるいはサーヴィスをしながらその様子を常にチェックしています。そして、いいタイミングで空になったお皿を下げてくれるのです。すこし首をのばして、左右を見回す。これだけで、なにかご用ですか、というリアクションがきます。これは、食べる者とサーヴィスする者との間の言葉のない会話です。

料理が終わると、いよいよデセールです。ドルチェです。今日予約した我々のために用意された何種類ものお菓子をあれもこれも選ぶ時間です。まだすこしはあいているはずの、我が胃袋の隙間を期待してあれもこれも注文します。

一品一品を決めるのにいったいどれほどの質問をしたのでしょうか。そして出された料理の素材のひとつひとつについて、料理長みずからの説明を楽しみながらの食事とは、どれほどの贅沢なのでしょうか。


ホテルの楽しみ No.3
大人のWAIKIKI

今から16年前、はじめてハワイのワイキキを訪れた時は、もう、一日中浜辺にいるか、ひたすら買い物に走っていたような気がします。夜になっても、友達とカラカウア通り(当時クヒオ通りはまだ何もなかった)をうろうろ買い物をしたり飲み食いしていました。今は、環境保護のために入場制限しているハナウマ湾も、当時は荒らし放題で安価なツァーもたくさんありました。5〜6人でタクシーをつかまえてハナウマ湾に行き、朝から晩まで1日中ごろごろしていたような気がします。20代の頃は、それで充分楽しかったものです。

今になって感じることですが、夕暮れのカラカウア通りを見るにつけ、我々観光客は時間にけじめがないなあと思います。夕食時になっても、背中にザックを背負い、手に紙袋を提げた観光客がロイヤル・ハワイアン・ショッピング・センターあたりを駆け回っています。ああ、ワイキキにいてそんな時間の使い方、もったいない・・・。ワイキキは、世界でもトップクラスの観光地だと思います。街全体が良くも悪くも観光に徹しているエリアです。ワイキキを脱出するのもいいですが、ワイキキに居座るものまたいいものです。夕食にしたって、無理してワイキキの外に出る必要もないくらい受入態勢ができているのがワイキキエリアである、というのが私の持論です。

夕食を軽く済ますというのなら、午後のティータイムでしっかり腹ごしらえするというプランはいかがでしょう。シェラトン・モアナ・サーフライダーというすてきなホテルがありますね。昼になったら、そこのバニヤン・ヴェランダに電話をして3時からのアフタヌーン・ティーの予約を入れましょう。浜辺でごろごろ、は昼過ぎに切り上げて、ちゃんとおめかしして、ホテルの中庭を見下ろすコロニアル・スタイルのバニヤン・ヴェランダに出かけます。妙な格好をしていると、はじっこの席が割り当てられます。反対に、きちんとしているといちばん眺めの良い席になるものです。ホテル側にしてみれば、お客も景色のうちですから、みっともないものは目立たない場所に追いやられるのも当然というものです。

予約なしの席も若干ありますが、入り口で「予約はありますか」ときかれて「ないんですが」と答えるというのも面白くありません。ここは、ちゃんと予約を入れておきましょう。英語での電話が苦手な方は、出かけて行ってじかに予約しても決して変ではありません。なお、オトコばかりで押しかけるのはどうかご遠慮してください。余程の紳士でないと絵になりません。リゾートを訪れた人は、闖入者になるのではなく、あなた自身もそこの絵にならなくてはいけません。

正式な英国式アフタヌーン・ティーのサーヴィスですから、スコン、サンドイッチ、タルトやエクレア等があり、全部いただくのにたっぷり2時間くらいかかります。そして、英国式のお茶では、みなさんがぶがぶ飲みますので、お湯を追加してもらうというのが普通でここでもそういうサーヴィスがあります。屋外のゆったりた空間で、ホテルの庭と海を眺めながらのアフタヌーン・ティーなんて、ハワイでしか味わえません。ここ以外にも優雅に英国式アフタヌーン・ティーがいただける場所が2ヵ所あります。頑張って探してみてください。

さて、太平洋に沈む夕陽を楽しみながらディナーといきたかったら、ロイヤル・ハワイアン・ホテルのサーフルームがいいでしょう。サーフルームは、ワイキキビーチに張り出したテラスのレストランで、優雅さ眺望の両方を兼ね備えているという点ではワイキキ随一といってもいいでしょう。もちろん、客あしらいもなかなかしっかりしています。ちゃんと予約をしてここでディナーをとる日本人はたいへん少ないですから、予約してドレスアップしてゆくと明らかに扱いが違います。食前にシェリーかキールでもいただいて(トロピカル・カクテルだとそれだけで満腹になってしまう)、あとは1品とるだけで充分満足できるはずです。コースにすると、とても1人では食べきれないほどの大きなサラダが来ますからキケンです。1つのサラダを3人くらいで分ける・・もちろん取り皿をたのみます・・くらいでちょうどいい分量になります。

食後は、隣のマイタイ・バー(そう、あのカクテルのマイタイの発祥の地です)でダイアモンド・ヘッド方面の夜景を楽しみましょう。マイタイ・バーでは、いつも変わらぬメンバーによるハワイアンとフラが楽しめます。ロイヤル・ハワイアン・ホテルができた当時に作曲されたホテルのテーマソングが2曲あるのですが、これがシブくて味わいがあり、ワイキキの夜景にとけ込んで絶妙なムードを出してくれるのです。まわりを見回すと、ドレスアップしたリタイア・カップルがいい雰囲気で語らっています。

ワイキキの中心のホテルには、ブラック・タイがふさわしいダイニング・ルームがいくつかあります。ひとつは、シェラトン・モアナ・サーフライダーのシップス・タバーン、もうひとつはハレクラニ・ホテルのラ・メールです。もちろん、ネクタイ着用、ご婦人同伴でないと格好がつきませんが。

そんなに無理しなくても、一流のサーヴィスとエンタテイメントと味が楽しめるとっておきのコースを教えちゃいます。まず、ブラック・タイとはいいませんが、サンダル、短パン、ティーシャツは着替えてください。予約なしで5時30分にハレクラニ・ホテルに到着するようにします。ホテルの入り口には「イブニングには適切なるお召し物にてお願いいたします」なんていう一文があったりして、さすがNo.1の格のホテルだけのことはあります。

海とプールに面した中庭に、テラスのついたバーがあります。入り口で「カクテルですか?ディナーですか?」と聞かれますから「ディナーをお願いします。」と答えます。そうすると、テラスではなく、ちょっと奥まった屋根付きのテーブルに案内されますので、そこで「ステージが良く見える席をお願い!」とやります。そういう席は4人テーブルが2つ、2人テーブルも2つしかありませんが、予約を受け付けていませんから、その席を確保するためにも開店時刻(5時30分)直後に訪れることが重要なのです。まだ、店内は閑散としていて、ホテルの庭と海に挟まれた通路には水着姿が往来していますが気にすることはありません。もう、昼間は終わったのです、イブニングなのです。こんな時刻に水着でうろうろしていては、世界ナンバーワンのリゾートが泣きます。

メニューのおすすめは、プチ・フィレ・ミニョンのステーキです。たった$21.00(1996年末)で、サラダ付き、味もサーヴィスも一流、プチとは思えない大きさのおいしいステーキです。食事がはじまる頃、ステージではのんびりしたハワイアンの演奏が始まります。店内もだんだんにぎやかになってきた頃、正面の水平線の彼方に太陽が輝きながら沈んでゆきます。ああ、ハワイだわ〜ん、と溜め息でももらしましょう。

やがて、元ミス・ハワイ(今はちょっとおばさん)の実にノーブルでスケールの大きなフラが始まるのです。これは、一見の価値があります。これを見たあなたは、フラという舞踊がいかに格調高いものであるかを思い知ることでしょう。食事が済んだら、カクテル・タイムにスイッチし、お望みならテラスの席に移って、おしゃべりとハワイアンとフラでワイキキの夜は更けてゆきます。

リゾートでのルール1・・・「自分も景色の構成要素であると心得よ。」
リゾートでのルール2・・・「イブニングになったら、着替えること。」

(注):
ここでご紹介したお店はすべてテーブル・チェックです(席を立たずにテーブルに着いたままサインする)。ビル(請求書)を持ってうろうろしてはお里が知れますからご注意を。


ホテルの楽しみ No.4
良いホテル、悪いホテル

弟子 「今日のテーマは、ずいぶん辛口になりそうですね。」
師匠 「仕方がないな。最近のホテルはさっぱりなっとらんからな。」
弟子 「いきなりきますね。師匠。」
師匠 「お正月に溜池のANAホテルに行ったんだけど、自力で駐車場に入り込んで、自力でパーキングの空きを探して、自力でロビーまで這い上がってこにゃあならんかった。ま、ANAホテルに限ったことじゃないが。」
弟子 「ちいさいホテルだったらそんなことはないでしょう。」
師匠 「そうなんじゃよ。こないだ山の上ホテルに食事に行ったんだが、到着してから車をパーキングに入れてレストランに入るまで、最初から最後まで同じドアマンがつきあってくれたのがうれしかったね。」
弟子 「規模が大きいと、ひとりひとりのお客さんの面倒まで見ていられないってことなんでしょうか。」
師匠 「そうだと思うね。ひとりのホテルマンがお客様のすべてをサーヴィスできるか、複数でもって分業でやるかの差だね。」
弟子 「サーヴィスを分業すると、必ずどこかで途切れちゃいますからね。」
師匠 「大阪のウェスティンホテルではね、連絡バスが到着するとベルさんが血眼になって宿泊客の選別をやっているよ。」
弟子 「なんでですか。」
師匠 「宿泊客だったら、手荷物を預かって、フロントまで誘導しなきゃならないからだよ。同じベルさんが、客室まで案内してくれて、部屋の設備の説明までするんだ。大きなホテルにしては立派な心がけだけど、ベルさんは大変だね。」
弟子 「お客によって、部屋まで案内したり、しなかったりするのもいやですね。」
師匠 「まったくだ。大阪の東洋ホテルがそういう面があるね。自分で勝手に部屋まで行ってくれ、という時と、荷物持って部屋までついてくる時といろいろだよ。」
弟子 「あそこは高級ホテルなんですか。」
師匠 「昔はね。今は、設備の老朽化も激しいし、事実上のビジネスホテル化してしまったから、むしろ無理せずに割り切った方がいいと思うね。」
弟子 「そういえば、ローカルの第一ホテルでは到着してフロントから部屋まで案内してもらったことないですけど、それはそれで割り切れました。」
師匠 「それでいいんだよ。充実したサーヴィスをするには、それなりの人数がいるからね。中途半端はいかんよ。」
弟子 「師匠は、ハイアット・リージェンシー・福岡を誉めていますね。」
師匠 「ところがね、最近はそう誉めたもんでもないんだよ。」
弟子 「到着時の扱いがすばらしかったとかおっしゃってませんでしたか。」
師匠 「開業当初はそういうこともあったな。」
弟子 「今はどうなんですか。」
師匠 「ランチタイムなんか、もう、混雑してしまってどのレストランに行っても無造作に待たされるんだよ。」
弟子 「例の、おばさん向けのヴァイキングですか。」
師匠 「そのようだね。商売繁盛は結構なことだけど、混みすぎるってのはよくないね。バランス感覚がないと、ホテルは居心地良くないんだ。」
弟子 「でも、ホテルって宿泊客以外の商売の方が大きいんでしょ。」
師匠 「だから、宿泊客への配慮が問われているんだよ。」
弟子 「軽井沢の万平ホテルなんか、外からの見物客でロビーは一日中ざわざわしてますね。」
師匠 「君が宿泊客だったら、あそこのロビーでくつろぐ気がするかい?」
弟子 「いやですね。」
師匠 「そうだろ。でもね、ホテルのレストランもコーヒーショップも、それぞれ売上げ目標ってのがあって、支配人は結構つらいもんなんだよ。」
弟子 「知りませんでした。」
師匠 「最近のホテルは、企業相手のイベントやら結婚式やらに熱心すぎて、宿泊する場所、くつろぐ場所というコンセプトをすっかり忘れていると思うね。」
弟子 「部屋の隅が汚れていたり、設備がくたびれていたりすると、がっかりしますね。」
師匠 「富士屋ホテル系列はそういう面でちょっとだらしがないね。老舗という看板におんぶしているというか。クラシックなところが捨て難いんだけど、ちょっとね。」
弟子 「清掃や設備のメンテナンスが雑という点では、プリンス系もなかなかだと思いますけど。」
師匠 「最近のプリンス・ホテルからは高級感というものはすっかり消え失せたね。」
弟子 「なぜ、そうお思いになるんですか。」
師匠 「使っている家具がいかにも安手じゃないか。それに、建材もコストをけちっている。レストランのテーブルをビニール・シートでガードしたりしちゃ、だめだよ。リネン類を惜しげもなく取り替えるってのがホテルのシンボルなのにね。」
弟子 「いいのは立地だけということですか。」
師匠 「経営者のセンスの問題じゃないか。きっと、経営トップがお客に関心がないんだよ。」
弟子 「それは、最近の西武百貨店にもいえますね。」
師匠 「これこれ、話題をそらすでない。」
弟子 「ところで、師匠のおすすめホテルはどこですか。」
師匠 「ここでそれを言っちゃあおしまいじゃないか。」
弟子 「やっぱり、だめですか。」
師匠 「山の上ホテルと大阪ウェスティンは名前を出しちゃったから仕方がないとして、ほかのホテルの名前は言えないね。」
弟子 「なぜですか。」
師匠 「だって、わけのわからん奴等に来てほしくないよ。それに、常連がちゃんといるんだよ。みんなに迷惑がかかっちゃう。だめだね。」
弟子 「じゃあ、ヒントくらいいただけませんか。」
師匠 「まずね、大きいホテルは難しいよ。例外もあるけどね。」
弟子 「つまり、小さめなホテルをあたれってことですね。」
師匠 「同じエリアにホテルが2つあって、小さい方のレートも安くなかったら、試してみる価値はあると思っていいね。」
弟子 「ほかにポイントはありますか。」
師匠 「はいりにくそうなホテルは、チェックだね。常連が多い証拠だよ。」
弟子 「そういうホテルは、はじめて行っていじわるされませんか。」
師匠 「そりゃあ、君次第だよ。ホテルだってお客を選ぶ権利があるからね。」
弟子 「そんなのありですか。」
師匠 「あたりまえじゃないか。変なお客をぞろぞろ入れたら、常連さんが居着かなくなってしまうだろ。」
弟子 「私、そういうホテルは敷居が高いなあ。」
師匠 「はっはっは、いずれ君にもわかるよ。」
弟子 「・・・。」
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