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玄関アプローチと立水栓を自分で作る


狭い家

昨今、ガーデニングだ、エクステリアだ、とにぎやかです。近所のDIYのお店に行けば、煉瓦の積み方の講習会をやっていたり、HOW TOもののガイドの小冊子が用意されていたりします。しかし、職人ほどでもないにしても、経験もない素人がそんなに簡単にできてしまうものなんだろうか・・・という疑問に答えるために、ちょっと自分でやってみることにしました。

課題は、我が家の玄関前の、猫の額ほどもないアプローチでの、ガーデニング工事の真似事であります。下図を見てください。我が家は道路から引っ込んだところにあって、縦になった車2台分の駐車スペース(P×2)の後ろに門扉があり、さらにその奥に玄関があります。全くのところ、狭い通路なんであります。道路に近いところで間口2.5m、玄関前では2mの間口しかありません。

2ヵ所ある駐車スペースのうち、道路に面した方のPはまだましですが、奥まった方のPは、間口が2mしかないために、軽自動車くらいしか置けません。我が家の場合は、手前にROVER 75、奥の方に軽自動車とほぼ同サイズのROVER MINIを置いています。人間は、体の一部をお隣の敷地に割り込ませないと通れないことになっています。家の周囲にはひとがやっと通れるくらいの(いや、通ることすらできない)隙間しかなく、庭なんていうものはありません。従って、道路から玄関に至るわずかなアプローチだけが、花の鉢を置いたり、樹木を置いて楽しめるスペースなのであります。東京23区内の家はこれで精一杯なんですね。


アプローチを作る

門扉と玄関の間に若干の距離があって、ここが課題の場所です。この部分を拡大したのが下図および写真です。玄関前はタイル張りにしてもらいましたが、全面にタイルを張ってしまったのではいかにも味気ない。それに、夏場の照り返しで植物がやられてしまう。そこで、玄関前のエントランスの両脇にはコンクリートを打たずに、土がみえるようにしてもらい、後日、この部分には自分で工夫して枕木か何かを敷き詰めようと思っていました。


路盤材を入れたところ。手前が門扉、むこうが玄関。

コンクリートを打たなかった部分は幅50cm、長さ約2mの大きさで、2ヵ所あります。玄関に向かって左側の方には水道の蛇口がついているため、何か水を受ける工夫がいるし、できれば気の利いた水栓でも取り付けたいと思っています・・・この家を建てた工務店は、工事現場で使うようなセンスのない水栓をつけてくれた。玄関に向かって右側の門扉に近いところには下水への排水口があり・・・ちょっとだけ見えている白くて丸いもの・・・直径40cmくらいの見苦しい蓋が居座っています。これもなんとかしたい。

さて、この部分の始末ですが、当初は、ここに2×4の板材を敷き詰めようとして設計を進めていました。

ホームセンターで路盤材として売られている砕石を5〜7cmくらいの厚さに敷き(上の写真ではすでに路盤材が入れてある)、その上に洗い砂(これも、ホームセンターにある)をまいて水平にします。さらにその上に、38mm×60mmの角材を長さ60cmくらいに切ったもの・・・つまり、羊羹のような感じの板・・・を塗装したものを、タイル面に合わせて60mmの方が縦になるように敷き詰めようと思っていました。

玄関前の通路の両側を、タイル張りではなく、木材を敷き詰めることで、ナチュラルな感じにできたらいいだろうな、と思ったのです。そしてここに、大き目の鉢に植えたヒメシャラの株を2鉢ほど配置して、玄関前のシンボル・ツリーにしたらおしゃれではないか。また、大小高さの違った鉢を配置して、そこにクリスマスローズを植えたいというのがうちのおくさんの希望らしいのです。

いざ、工事を始めてみると、いきなり思わぬ問題に直面しました。元からある土砂をどけないことには工事は先に進まないのですが、その土砂というのがあなどれない量なんです。50cm×10cm×2m×2ヶ所というと、見た目はたいしたことなさそうなのですが、実に200リットルにもなるのでした。しかも、掘り出した土は空気を含んで嵩が増すため、400リットルくらいの感じがする。10リットルのバケツで40杯。さらに、家の工事で出たコンクリートのカケラだの、砂利だのがごろごろ出てきて穴掘りは難航しました。仕事から帰って、寝るまでの間に作業をするわけなんですが、これを全部掘り出すのに4日もかかってしまった。おまけに腰が痛い。

穴の深さをだいたい揃えたところに路盤材を流し込みます。1袋20kgの砕石なんですがこれが8袋ほどいる。つまり160kgです。これを家まで運ぶだけで大騒ぎ。と、ここまで作業が進んだところで、群馬県は太田市にあるThe Garden Companyという英国風のエクステリアを扱っている店に行き、店内をうろついているうちに、突然、気が変わってしまった。面白そうなエッジング材を見つけてしまったから。縞々のでこぼこがついた25cm×50cmの大型のエッジング・タイルで、しかも、下水口を隠すのにちょうどいい丸い形をしたのまである。

ところで、なんで群馬県の太田なんぞまで出かけて行ったのか、近所にだって品揃えの充実したDOIT朝霞店があるではないか、と思われるでしょう。たまたま「ガーデン&ガーデン」という山と渓谷社のガーデニング誌の別冊で紹介されていたので、ドライブがてら偵察に行ってみたところ、これがなかなか居心地の良いお店で、すっかりご贔屓になってしまったわけです。片道2時間の田園ドライブができる、というおまけつきなので、出かけるのも楽しい。
さて、これはチューダー・タイルエッジと言うそうで、なるほど、チューダー様式らしく無骨なところがあります。ほんとうは、うんと広い庭園のボーダー(縁取り)に使うらしいのですが、そんなことはどうでもよろしい。あまり褐色が強くない渋い味わいの煉瓦もあったので、これと組み合わせると結構良さそうな感じ。早速、店内の敷地を占領して、50cm×2mの枠に合わせてタイルと煉瓦をならべてみたら、なかなかいいではないか。というわけで予定変更。

工事そのものはやってみれば意外に簡単ではありますが、難しいのが、水平を保ったり均一な面を作ること。一応、職人さんの真似事と称して水糸などを張ってみたりもしたけれど、タイル面には微妙な勾配がついており・・・あたりまえだ、水平だったら水が流れてゆかない・・・その面に合わせるのが結構難しい。やっぱり職人は偉いと思う。砂利がかくれるように砂を入れ、タイル面に合うようにチューダー・タイルエッジや煉瓦を敷き詰めて上から板をあててトンカチでコンコンやってゆきます。ある程度路盤を固めておけば、ギュウギュウ押しこまなくても安定するみたい。最後に、タイルや煉瓦の隙間にさらさらの珪砂を詰めて、箒で掃いてできあがり。お疲れ様でした。


とりあえずできた


手前が玄関、むこうが門扉。右下の水栓周辺はまだ保留になっている。


立水栓も作る

最後に残ったのが立水栓です。ここには工事用のようなプラスチック製の角柱の先にステンレス製の蛇口がついており、泣きたくなるようななさけない一角でありました。そこでまず、水道屋のおじさんに頼んで、プラスチックの角柱をはずしてもらい、水道パイプをまる裸にしてもらいました。下の写真では、パイプがふらふらしないように太めの塩ビパイプを立ててそこにテープで仮止めしてあるのがわかると思います。

DIYのお店で、ちょっとおしゃれな水栓を買ってきました。とはいっても、どこにでもある鳥やらでんでん虫やらがついたタイプ。元からついていたアイソのない蛇口をはずして、買ってきたものに取替えました。この時、水漏れを防ぐためのシールをネジ山に巻きつけるのを忘れずに。でないと、じゃじゃ漏れになります。また、水道パイプには断熱材巻いておかないと、寒い冬の朝に凍結してしまいます。


雨が降ってきたので、ちょっと休憩。

水受けには、ちょうどいい大きさの下ぶくれの形の植木鉢を見つけたので、この中に英国産のコッツストーンを入れてあります。水がはねるのを防ぐためのものなんですが、コッツストーンは味わい深い茶の小石で色合いがなかなかよろしい。最初は、工事屋が置き去りにした庭用の白っぽい砕石を入れていたのですが、コッツストーンの方が断然雰囲気が出ます。なお、この水受けの下は排水用の桶があり、その上には鉄製の枠がはめてありますから、植木鉢をどければ水がじかに下水に落下してゆくシカケになっているというわけ。

さて、水まわりの仕上げですが、ガーデニング雑誌などを見ると、枕木の中に水道パイプを通したものがよく登場しますね。もうひとつのやり方は、ピラミッドのように段々に煉瓦を積んで、その中に水道を通すというもの。この2つのパターンは、ガーデニングやエクステリア関係の雑誌には必ず登場します。誰もやっていないパターンというのはないものかなあ、と思いつつ例の太田のガーデニングのお店を物色していたところ、ヴィクトリアン・タイルという薔薇の柄のタイルを発見しました。これを4枚使って、中央に水道を通して、まわりを赤くないちっちゃい煉瓦(コブルというそうな)で囲んでみたらどうかな、と考えたのです(下の写真)。


ヴィクトリアン・タイルの四隅は欠いてやらないと、水道のパイプをうまく出せない。

ウウム、こういうのはまだ見たことがないぞ(ほんとうはあるのかも知らんが)。それに、薔薇の柄のついたタイルなんておしゃれではないか。と喜びも束の間、この工事はそんなに甘くない、ということに気がついてしまいました。

4個のヴィクトリアン・タイルの真中から水道の蛇口を出すためには、下から積み上げた煉瓦の高さを精密に調整しなければなりません。積んで行った時の高さが狂ってしまうと、水道のパイプの位置と4個のヴィクトリアン・タイルの中心とが合わなくなります。垂直にまっすぐ積み上げることすら危うい素人仕事だというのに。考えただけで、背中がむずむずしてきちゃいます。

DIYのお店に行って、ホームコン(すでにセメントと砂を適量混ぜてあって、いわば、コンクリート版ホットケーキミックス)を15kg、こて、目地ごてを仕入れてきます。乾いた煉瓦は大変な勢いで水を吸ってしまうので、このままモルタルで仕上げると、煉瓦がモルタルの水分を吸ってしまってうまく固まりません。そこで、水を張ったバケツに煉瓦を放り込んでおきます。ヴィクトリアン・タイルは、このままでは水道のパイプがうまく出ません、金槌やタガネ等を使って角を欠いておき、これも水バケツ行きです。


あらら、もう日が傾いてきた。
一番緊張する水道パイプ周辺の仕上げは難航し、結局、夜までかかってしまった。

そうそう、今回使って重宝した道具がひとつありました。水準器です。縦・横・45度の3つの水準器が仕込まれている長さ60cmのアルミ製で、これさえあれば、水平・垂直を簡単に出すことができます。煉瓦の上に置くだけで、曲がっているかいないか、すぐにわかります。上の写真の水バケツのむこうに見えているやつです。これがなかったら、出来あがったものはきっと妙に曲がってしまったと確信しております。一家に一個、万能水準器はいかが。お値段は2500円くらい。

やってみてはじめてわかったことですが、モルタルというやつは簡単に水と分離して砂だけ沈んでしまうんですね。ぼやぼやしていると、砂がバケツの底に沈んで硬くなってしまう。コンクリート・ミキサー車が、いつもぐるぐると掻き回しているわけがよくわかりました。煉瓦目地は、あまり丁寧な仕上げにはしませんでした。これくらい雑な方が雰囲気的になじみます。

さて、日ごろの行いが良かったからでしょうか、難問であった水道パイプと4枚のヴィクトリアン・タイルの中心との位置合わせがぴったりとキマってくれました。これだけでも、お祝いに上等なワイン1本開ける価値があるというもんです。なお、裏側が少々醜くなってしまいそうで、お隣さんのお宅からの景観を損ねてはこちらの美的センスが疑われてしまいます。背面のぼろ隠しに、ハンペンと呼ばれている薄い煉瓦板を何枚か当てている様子がわかると思います。

水受けの下の桶の周囲を褐色のコブルで囲って、造園用の砂利を入れて、さあ、出来あがりです。


完成翌日の麗しき全景


いちばん奥に立っている石像は、はるばる英国からやってきたうさぎのピーター君です。
誰かの不注意で転倒して両方の耳を折ってしまい、パパにセメダインスーパーXで直してもらいました。


これからの計画

ヒメシャラの鉢には、バークチップを入れます。
アナベルの苗を手に入れたいと思っています。
それから、クリスマス・ローズも。
コッツウォルズのジルちゃんという石像(↓)を隠し持っているので、
これも、このどこかのコーナーに置きましょう。


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