■渡墺前編■ 日本からインターネットで情報収集コンサートには、直前でもチケットが買えるものと、かなり早くから手配しておかないと手に入らないものがあります。どんなコンサートでも発売直後に購入した方が自由に席が選べます。旅行日程が先に決まっていてその日程に合わせてよさそうなコンサートを探す場合と、聞きたいコンサートが決まっていてそれに合わせて旅行日程を決める場合があると思いますが、いずれにしても渡墺前から情報を入手して、できればチケットを押さえておいた方が安心でしょう。もっとも、コンサート通の方の中にはいきあたりばったりで現地でどんどんチケットを確保してしまう人もいますけど、ペアで良いシートを取ろうとするとやはり準備が必要です。
オペラのシーズンは、9月のはじめから翌年の6月末までと決まっています。つまり、7月と8月はお休みというわけですので夏にウィーンに行っても何もやっていません。やっているのは観光客向けの見せるコンサートだけです。そのかわり8月にはザルツブルク音楽祭があります。ウィーンフィルは6月末にシーズンが終わると2週間ほどの休暇になり、その後は家族ごとザルツブルクに行ってしまいます。オペラの公演スケジュールは前シーズン中の4月〜5月から公開されていますので、各劇場のWebサイトでチェックするようにします。人気歌手が出るオペラですと、発売と同時に完売してしまうこともありますので、誰が出るかもチェックしておいた方がいいでしょう。なお、発売は楽友協会は概ね2ヶ月前(変動あり)、国立歌劇場は2ヶ月前、フォルクスオパーは前月の1日からです。
左下は、2013年5月2日時点で人気演目であるG.Pucciniの「トスカ」チケットの6月の残り具合をみたものです。いい歌手が出ていると大体こんな感じになります。6月6日は完売、6月12日はわずかに残っています。右下は6月12日分の空席の分布ですが、これは2席以上続いたところが残っていてかなりいい方だと思います。普通はこれくらいの残数になると空き席はばらばらになっています。BOX席の残りは完全にばらばらでしかも舞台がまともに見える最前列は完売で、残っているのは舞台が全く見えない席ばかりですね。
ウィーン国立歌劇場のオペラは公演日の2ヶ月前に発売になりますが、ポピュラーな演目は1日〜2日中にほぼ完売しますし、人気演目ですと発売前に完売という不思議なことすら起きます。それは、スタンバイ方式といって発売前に金額を上乗せして予約する制度があるためであり、またかなりの席が企業などによって事前にリザーブされてしまうことも理由のひとつだと思います。一方、フォルクスオパーの場合は、月初に翌月の1日から月末までの全公演チケット販売が一斉に行われますが、発売初日であればどんな席でも余裕で確保できます。しかし、発売日を過ぎてしまうと時間とともに座席の選択肢がなくなってきます。どちらも正規の販売窓口であるCulturallが販売代行をしています。Cilturallについては後述します。
楽友協会で開催されるコンサートの場合は発売日が一定ではないので、楽友協会のWebサイトにアクセスしてひとつひとつチェックする必要があります。また、会員のための先行販売があるので、ちょっと人気のあるプログラムだったら一般販売になる頃には残席はぱらぱらになっています。どうすれば良い席が手に入るかも後述します。
ウィーンフィルの定期コンサートはすべて会員制で一般販売されません。ウィーンフィルの定期コンサートやSold outになっているオペラのチケットを手に入れるには、Otelloなどその種のチケットを扱っている仲介業者に依頼することになります。Otelloは公認のダフ屋みたいなもので、手数料さえ払えば入手困難なさまざまなチケットを手に入れてくれる便利な窓口でもあります。なんと発売前のチケットさえ手に入れてくれます。日本語サイトもありますし、サポートもしっかりとしています。
2種類のコンサート
もっぱら観光客用のコンサートやショウ・・・観光プログラムに組み込まれた観光客のためのコンサートです。ほとんど毎日、決まった場所、決まった時刻、決まった内容の演奏が繰り返し行なわれます。観光ツァーのオプションとして申込みしたり、シュファン寺院の前でチケット売りをしているおじさん達が販売しています。せっかく音楽の都ウィーンに来たんだから何か一つくらい聞いてみたい、そういう雰囲気を味わいたい、楽友協会の黄金のホールで音を聞きたい・・・という目的には合っていると思いますが、優れた演奏に接したいという要求にはフィットしません。観光用コンサートは、音楽ファンではないお客を飽きさせないために有名曲の部分をかき集めた内容がほとんどで、まとまりのあるプログラムではないのが普通です。また、音楽ファンではない見物目的のお客が多いので鑑賞マナーはかなり悪いそうですが、目的が音楽を聞くことではなく観光なのですからいたしかたないでしょう。
このサイトの最初のページに出てきているコンサートはすべて観光用と言っていいでしょう・・・http://www.classictic.com/ja/スペシャル/vienna-concerts/280/
音楽ファンのためのコンサート・・・上記以外の国立歌劇場やフォルクスオパーで行われるオペラ、ウィーンフィルやウィーン交響楽団などによる定期演奏会、そのほかの多くのコンサートです。お客の大半は地元の人々で、その中に点々と外国人が混ざっているという感じです。特に座席の前の方は、眼光鋭く耳が肥えた杖をついた常連のおばあさん達で占められています。
* * * <ウィーン市内のコンサートホール&劇場>
<ウィーン市内の教会コンサート&ミニコンサート>
- Wiener Staatsoperr (ウィーン国立歌劇場) ・・・オペラ/バレエのほか、ウィーンフィル団員による室内楽もある。
- Volksoper Wien (ウィーンフォルクスオパー) ・・・やや庶民的なオペラ劇場。オペレッタなど気軽な演目が多い。
- Musikverein (楽友協会) ・・・ウィーンフィルの本拠地。主にクラシックの大小さまざまなコンサートが開かれる。
- Wiener Konzerthaus (ウィーン・コンツェルトハウス) ・・・楽友協会と並ぶコンサートホール。ジャンルを超えたさまざまなコンサートやイベントが開かれる。
- Theater an der Wien (アン・デア・ウィーン劇場) ・・・演劇が中心だがたまにオペラの掘り出し物があるので要チェック。
- St. Anna Kirche (聖アンナ教会) ・・・常設のアンサンブルによる室内楽コンサートをほぼ毎日行っている(有料)。
- PetersKirche Wien (ペーター教会) ・・・充実した2つのコンサートシリーズがある。Musik actuell(全コンサート)、Musik Kirche(無料)、Musik Krypta(有料)。
- Karlskirche Wien (カールス教会) ・・・モーツァルトのレクイエムなど結構大きなコンサートがある(有料)。
- Mozarthaus (モーツァルト・ハウス) ・・・結構知られたアーティストが出演する(有料)。
- Klimt Vila (クリムト・ビラ) ・・・不定期にコンサートがありびっくりするようなゲストが出たりする(有料)。
左下の画像は聖アンナ教会に貼ってあったコンサートの案内。中央下の画像はマリアヒルファー教会のコンサート案内、右下はショッテン教会のコンサート案内。京都ではそこいらじゅうに寺社があるように、ウィーンはそこいらじゅうに教会があります。
下は、2017年3月にウィーンでみつけたカフェ(http://www.allergikercafe.at/)で開かれるミニコンサート。2017年9月に日本のサントリーホールでデビューするピアニストです。欧州ではこの種の自主コンサートは入場料が決まっておらず、それぞれがドネーション(寄付)を決めて支払うというのが一般的です。
<ウィーン郊外のコンサートホール>
- Buehne Baden (バーデン市立劇場) ・・・ウィーンから直通の路面電車で1時間くらいで行ける。ウィーンではなかなかやらない軽いオペラやオペレッタが目玉。
- Festspielhaus St. Poelten (サンクトペルテン祝祭劇場) ・・・ウィーンから電車で40分くらいで行ける。有名アーティストが来るので要チェック。
オペラの演目の選定と事前学習
オペラには、初心者が見ても十分楽しめる演目もあれば、余程の音楽好きであっても敬遠したくなるくらい厄介な演目もあります。せっかくウィーンに行くのだから何でもいいから観ておきたい、という考えだと悲惨な目に遭うかもしれないのです。ですから、どんな演目が上演されているのか、その演目は一体どんな内容なのかをよく調べてください。私の場合は、演目に合わせて訪墺日程を決めているくらいです。
音楽が美しく、ストーリーもわかりやすく、初心者にもなじみやすい喜劇といえば、「こうもり」、「魔笛」、「フィガロの結婚」、「愛の妙薬」、「チェネレントラ(シンデレラ)」、「セヴィリアの理髪師」あたりでしょうか。音楽が美しく、ストーリーもわかりやすく、初心者にもなじみやすい悲劇となると「ラ・ボエーム」、「椿姫」、「トスカ」、「蝶々夫人」、「リゴレット」ですね。音楽が美しく、芸術性も高く、しみじみとしたストーリーとなると「ばらの騎士」、「アラベラ」、「エフゲニー・オネーギン」、そして音楽が難解でストーリーも悲惨・怪奇なのが「ムツェンスク郡のマクベス夫人」、「ヴォツエック」あたりです。「サロメ」は音楽は素晴らしいですが、生首が出てきますし、上演時間が短いのにお値段は高いです。
オペラになじみがない方は事前学習が必須です。交響曲などのコンサートであれば、はじめて聞く音楽でもそこそこ楽しめますが、オペラは筋がわからないと退屈しますし、もう寝るしかないかもしれません。最低限、Webサイトなどで登場人物とストーリーを調べておき、特に登場人物は暗記するくらいがちょうど良いです。オペラの登場人物は、脇役であっても必ずその存在に意味があるからです。特に「こうもり」と「フィガロの結婚」は登場人物が非常に多い上にストーリーが複雑なので、観慣れた人にとっては最高に面白いのですが、初めての人はかなり混乱すると思います。面白いオペラは何度観ても面白いですから、事前にDVDで観て学習しておいた方がいいでしょう。
もうひとつ注意すべきは、アンナ・ネトレプコなど超人気歌手が出る演目はそもそもチケットが取れない上におそろしく高騰します。そういう歌手が出る場合は必ず表示されます。
■現地編■ 月間コンサートプログラムを手に入れるウィーンの観光案内所(Tourist-Info)に行くと、毎月どこでどんなイベントやコンサートがあるのかをまとめた「Wien-Programm」というとてもありがたい冊子をもらえます(左下画像)。この冊子には、マラソン大会からJazz/Popsコンサート、クラシックコンサート、著名なアーティストが出演するあまり知られていないコンサートまで載っています。これを手に入れないとウィーンの休日ははじまらないと言ってもいいくらいです。
観光案内所はウィーン国立歌劇場の裏手、Hotel Sacherの北側でCafe Mozartの向かいの角にあります(下の地図、クリックで拡大)。ついでに観光地図「Stadtplan & Museen」ももらっておくといいでしょう。観光地図にはすべての美術館、博物館の開館時間も載っています。
中央下の画像(クリックで拡大)は、オペラや演劇ばかりを集めて劇場別に記載したページです。ここでみつけたら、各劇場のWebサイトアクセスして予約を入れるわけです。日付の記述法は日本と逆で、左側が日で右側が月ですのでお間違いのなきよう。
右下の画像(クリックで拡大)は、オペラや演劇以外のコンサートばかりを日別に記載したページです。これを見ると、毎日のようにどこかで魅力的なコンサートが開かれていることがよくわかります。
ホテルでコンサート予約
ウィーンのホテルもインターネット環境はどこも充実していますので、ノートPCやタブレットは必ず持って行きましょう。旅先でインターネットが使えないとコンサートの予約で苦労します。ケーブルによるネットワーク接続もできますが、無線LANによる接続が主流です。フロントで無線LANアクセスのためのユーザーIDとパスワードをもらいます。ほとんどのホテルは無料でくれますが、安いホテルでは有料のこともあります。私が泊まるホテルの例ですが、フロントのところに最初にログインしてから24時間有効なユーザーIDとパスワードを記載した紙切れが積んであって、必要な枚数だけ持って行っていいことになっていました。
大きなホテルであればコンシェルジュがありますので、そこにコンサートのチケットの手配を頼むという方法もあります。但し、そこ頼んでも結局はOtelloなどの仲介業者に投げるだけなので、二重の手数料がかかります。それくらいなら自分で直接Otelloにアクセスしたり、街のチケット屋で探した方が安く手に入ります。「手間=お金」ですからお金をどう使うかはご自身で決めてください。
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