ROVER 620SLi


このカタログの写真を穴の開くほど見つめた方も多いことでしょう。


特別に多額のお金を積まなくても入手できるセダンの中で、おそらく、世界で最も美しいフォルムだといわれているのがこの"ROVER 600"シリーズです。そして、一旦シートに座れば、今度は上品で上質で落ち着いた雰囲気が待っています。やがて、そのフロントシートの快適さ、心地よさに気付くことでしょう。ドライビングを終えて、車から離れるとき、誰もがいま一度この"ROVER 600"を振返ってしまうのではないでしょうか。

車の評価といえば、エンジン性能であり、加速・ブレーキング性能であり、足回りの出来の良さであり、ボディー剛性であり、故障の少なさであり、あるいは静粛さであり、振動の少なさであります。残念ながら、英国人がHONDAのアスコット・イノーバをベースにして作ったこの車は、車の評価におけるあらゆる点において傑出したところがありません。凡庸といってもいいでしょう。

しかし、ごく少数ではありますが、こんな"ROVER 600"を愛する人達がいます。家族との交流を大切にし、上質なインテリアや品格ある生活態度に関心を持つような人達。流行や周囲の目に追従しないで、自信を持って自分の好みを誇れるような人達。人の気持ちを心地よくするようなデザインや自然な美しさを大切にする人達です。


悩んでいるあなたへ


ROVER 600シリーズカタログ(1997年)より

ROVER 600を買うには勇気がいります。何故って、あなたひとりだけ他人と違う選択をしなければならないからです。ひとから「どうして、そんな車を買ったの?」と聞かれた時に、自信を持ってあなたの考えを述べなければならないからです。これが、同じサイズ、同じ排気、同じパワーのMercedes Benz C200あたりだったら、黙っていても「わあ、ベンツだ、ベンツだ、コベンツだ。」と周りが勝手に騒いでくれます。「やっぱり、ベンツが欲しかったんだ。」と言えば済むことです。ものごとを、人の意見で選ぶことくらい、楽なものはありません。

しかるに、ROVER 600では、その手は使えません。あげくのはてに「それ、エンジンはホンダなんだろ。それもアスコット。」なんて言われたらどうしよう、と思って悩んでいるんでしょう、あなた。だったら、悩んでいないでさっさとC200をお買いになったらよろしい。100万円足せば済むことです。さもなくば、Accordにすればいいのです。下手な言訳をするくらいなら、知れた車を買った方がはるかに心安らかになれます。自分自身のアイデンティティを持てない人に、ROVER 600を手に入れることはできません。人と違うことができない人に、自分だけのおしゃれを選択することはできないのです。

でも、もしあなたが、そういう殻を破ってみたいと心から思っているのでしたら、勇気を出してROVER 600を手に入れることをおすすめします。きっと、想像していた以上に自由な気持ちの自分になれるでしょう。


ROVER 600購入ガイド

ROVERの200〜800のラインナップの中で、200と800はそれぞれ重大な問題を抱えていました。200ではCVTの不良の頻発、800ではKV6エンジンがいつか(必ず)吹いて逝ってしまう、という問題です。それに比べて、400と600はそういった問題もなく、ROVERの製品ラインの中では非常に安定した車です。今からROVERサルーンを中古で買おうというのであれば、75は別に考えるとして、400と600しかないと思ってください。

400には2世代あって、初代400はHONDAコンチェルトをベースにしたもので、リアビューがコンチェルトそのままに角張っています。2代目400はHONDAドマーニをベースにしたため、リアビューは高くせり上がっていて丸っこくなっています。400を手に入れるのであれば、1997年以降の2代目416SLiで走行距離の少ないものがおすすめです。ROVERらしい革シートに上品な内装、サンルーフがついてお買い得といっていいでしょう。

600はHONDAアスコット・イノーバをベースにしたもので、618Si(1800cc)、620SLi(2000cc)、623SLi(2250cc)の3グレードがあります。ファブリックシートの618Siは途中でなくなり、最終モデルは620SLiと623SLiです。600シリーズについて誰もが指摘する問題点は620SLiのトルク不足感です。峠道を元気良く走りたいのであれば、623SLiがいいでしょう。600を手に入れるのであれば、いろいろな意味で1997年以降の620SLiまたは623SLiで走行距離の少ないものがおすすめです。

しかし、そうはいっても800の魅力に抗いがたい気持ちを持つ方もいらっしゃるという事実があります。方法はないわけではありません。そのような方は、是非、ROVER 800 Series のページを訪れてみてください。きっと、解決への道が開けると思います。

(右上:ROVER Saloonの中でもとびきりすわり心地の良い600のシート)


我が家のスペシャル・オプション

ROVER 600の革装シートの上品な美しさをいつまでも大切にしたいと思う人は多いと思います。そうはいっても、頭髪の整髪料による汚れからシートを守る手だてはなかなかありません。そこで作ったのが右の画像のヘッドカバーです。

型紙をおこし、地の色も、パイピングの色も揃うように生地を探してきました。ヘッドレストをくるっとくるむようになっていて、一方にはゴム、もう一方には紐をつけて、脱着がしやすいようになっています。我が家の自慢の一品です。


ROVER 600 選定ガイド


落ち着いた内装・インパネが600の魅力。これは623SLiのものでウッドが多用されている。

燃費・・・「そんなもんだ」
燃費はいまいちです。市街地で6km/l〜7km/l、郊外で8km/l〜9km/l、高速で11km/l〜13km/lbくらいです。ガソリンタンクは、公称どおりの65リットルで、50リットルでほぼEmpty表示となり、ここを過ぎると警告灯が点灯します。

エンジン・フィール・・・「好き嫌いで決める」
ごく普通の直4 SOHC 2000ccエンジンですから、特別なものを期待してはいけません。よく回るエンジンである反面、低速時のトルク感はやや貧弱です。高速道路への合流では、ちょっと物足りなさを感じます。でも、100km/hあたりからD3ポジションでの加速はなかなかのもので、ヒューンと回ってくれます。エンジン音がほどよく聞こえてきますので(つまり、静かじゃないってこと)、音で回転数や負荷の様子がわかります。

エンジン音と振動・・・「ちょっとね」
始動直後のアイドリングの振動はかなり大きくうるさいです。いきなり発進して坂道などの負荷をかけると、しばらくの間、エンジンは振動が大きいままになります。1分程度の暖気をすると効果があります。また、一定時間の高速走行をした後だと、エンジンは非常に軽くスムーズになってきます。エンジンオイルを新しいものに交換することで、振動は体感でわかる程度に減少します。

ミッションとトルク・・・「なるほど」
日本で販売されている600シリーズはすべて4速ATで、ポジションは、1、2、D3、D4があります。1速と2速のギア比のせいなのか、はたまたHONDA車はみんなそうなのか(素人にはわかりませんが)、ここのシフト時のショックが目立ちますので、アクセルワークでカバーする必要があります。ATフルードを新しいものに交換することで、このシフトショックは減少します。箱根スカイラインなどでは、2とD3をうまく使い分けることで意外にきびきびした走りをすることができます。D4のままでほったらかしにするよりも、AT車なりに積極的にシフトをしたい人向きです。ただし、この車で峠を攻めるなんてことをしてはいけません。2000回転台のトルクが相対的に貧弱であるため、4人乗車時の長い急坂(ターンパイクの長い登りをそこそこのスピードで登ろうとすると、D3では力不足、D2ではうるさすぎで中途半端)では、もどかしさを感じるかも。

ボディ剛性・・・「しょうがないね」
HONDA車にルーツを持つこの車に、ボディ剛性の高さを求めてはいけません。フロントのタワーバーの装着は、ハンドリングの際のねじれ感の解決に非常に効果がありますので、検討すべきだと思います。

足回り・・・「ばたばた」
HONDAモデルらしく、足回りはかなりバタつきがあります。段差の多い荒れた路面では、足がついてゆけない状態が露呈します。ゆっくり走っても、早く走りぬけても、どちらもNGなところが少々つらいです。

取り回し・・・「これも好き嫌いかな」
典型的なFF車で、ややノーズヘビーなところがあります。それが、この車のちょっとおっとりした挙動に味を与えています。一人で乗って走り回るよりも、ドレスアップした誰かを乗せて、オペラかレストランにでも行く気分にフィットした走りをします。ハンドルの回転速度と車の挙動のバランスは非常に良く、国産車にありがちな不自然な遠心力による不快感はありません。ボディが角張っていないのと、お尻がややすぼまっているせいもあって、私は、ROVER 600は非常に運転しやすい車だと思います。ただし、回転半径は大きいので、Uターンは苦手です。

塗装ムラ・・・「しょうがないね」
これは、英国製の車です。そこいらじゅうにあるかすかな塗装ムラなんか気にしていたら、眠れなくなるだけです。600シリーズの塗装膜は決して強くないので、できればフッ素などのコーティングをすることをおすすめします。

ビビリ・・・「そんなもんだ」
購入してから数ヶ月経った頃、エアコン操作パネルあたりから若干のビビリ音が聞こえてきました。タイヤを替えることで走行時のビビリは半減します。停止時、前方ドア付け根付近からもビビリが出ましたが、フェルトを貼り付けることで止まりました。特に、エアコンを入れるとPポジション時の振動が激増しますので、ビビリがうるさかったら<エアコンを止めて我慢するか、サイドブレーキを引いてNポジションにしてしまいます。
特に、運転席側のドアの振動が大きく、ドアの付け根がボディ側と当たっておおきなビビリが出ることがあります。これは、ドアの付け根のボディと対向する部分に厚手のフェルトなどを貼って互いに密着さて、振動を抑え込むと効果的です。

タイヤノイズ・・・「そんなもんだ」
標準装備のタイヤは、路面のサーフェイスノイズをかなり拾います。そもそも、車外からのノイズをしっかり遮断するなんていう設計はしてないみたいです。高速道路の路面の状態がひどいと、オーディオの音が聞こえなくなります。冬場は、スタッドレスに履き替えるので、少しは静かになります。標準でついてくるGOODYEARをはずしてDNAdBとかREGNOに履き変えるだけで、620の価値は一気にアップしますので、是非ともお試しください。見違えると思います。

キズ・・・「しょうがないね」
ニュー・ブリティッシュ・レーシング・グリーンは、汚れが目立つだけでなく、塗装面が白よりも柔らかいため、キズがつきやすくなっています。この色を選んだ以上、ちゃんと世話を焼く義務が発生します。洗車はできる限り丁寧に。

ウィンドウォッシャーの吹き出しノズル・・・「そんなもんだ」
結構、勝手にあっちこっちに向きが変わります。天井ウォッシャーになったり、リアウィンドウウォッシャーになっていて、信号待ちの時に動作させて後続の車をあわてさせたりすることがあります。これは、そういうもんだ、と思ってほっておきましょう。

エアコン・・・「しょうがないね」
真夏でも気温20度の国から来た車の冷房はあんまり利きません。しょうがないね。それから、エアコンはオートではありません、手動です。暖房は、足元と後部座席の効きがいまいちなので、ゲストをお乗せした時などはちょっと注意がいります。また、エアコンを作動させるとアイドリング時の振動は倍増し、さすがにつらいものがあります。秋が恋しい車です。

オーディオ・・・「なんとかしたい」
なんでまた、こんなにネボケた音なんだろう。低域はボンつくし、中域のハリはないし、高域は出ない。明らかにスピーカのせいで、特に、フロントスピーカがよろしくない。それが証拠に、前後バランスを後ろだけにすると少しましな音になってくれます。それでも、低域でボディが共振するし、総じてネボケたサウンドであることには違いありません。名門英国GOODMAN製のスピーカーなのにねえ。

ワイパー・・・「そうなのかなあ」
ワイパーの締めネジがゆるみやすいので注意がいります。これがゆるむと、雨の走行中に、ワイパーが上がってこなくなったり、ひどい時は左右のワイパーがからまって動かなくなってしまいます(ホントニ)。レンチで締めれば済むこと(ソンナコトデイイノカーッ)なので、締め付け工具だけは常時車載しておきましょう・・・と、メカさんに言われました。

オートウィンドウ・・・「仕様です」
運転席側ウィンドウが、開く時のみオートで、閉まる時はオートではありません。事故防止のためだそうですが、それにもかかわらず、右手を挟んで痛い目に遭いながら、左手でスイッチの「閉」を押しつづけていた私は一体何なんだろう。高速道路の料金所を出てからすぐの加速では、数秒間左手がとられてしまうので、ちょっと気をつかいます。それから、スイッチがドア側ではなく運転席と助手席の間にあって、これをブラインドで操作すると前のウィンドウを開けたつもりが、たいてい後ろは開いてしまう。私は未経験ですが、ガラスが落ちる、というトラブルをよく聞きます。

スペース・・・「へ〜え」
前部座席とウィンドシールドとの距離が大きいため、非常に開放感のある空間となっています。後部座席のスペースはまあまあというところですが、リアウィンドウが迫っているので、夏場の日差しはちょっときついでしょう。ROVER 600から、AudiだとかSAABに乗り換えると、ROVER 600の前面がいかに開放感があるか実感します。

視界・・・「へ〜え」
ウィンドシールドは非常に大きく、開放的な視界が得られています。ということは、お天気が良い日に女性をお乗せするときは、日焼け止めがいるっちゅうことです。着座時の視点はやや高めです。後方視界はやや狭いのが欠点ですが、同じROVERでも400シリーズの後方視界の悪さに比べれば、600は普通なのかもしれません。。

イモビライザー・・・「できることなら世話になりたくないね」
1997年モデルから、コピーしたキーではエンジンがかからないしかけになりました。ドロボーの手口として、トランクを開け、そこのシリンダー錠をぬいてキーを複製する、という技が知られていますが、この手を使ってもROVER 600を動かすことはできません。

侵入センサー・・・「賛否両論、私は賛成」
超音波による侵入監視がついています。車内の空気の動きを感知して、派手にクラクション鳴らします。ということは、車内に吊るしておいた上着がおっこちたり、動物が動いたりすると、たちまち反応します。ご注意あれ。そして、あなたが車内にいたままリモコンロックをONにしてしまうと、あなたは動けなくなってしまうのでした。ははは。ちなみに、リモコンドアロックをかけると、ハザードが3回点滅してロックされたことを知らせてくれます。知らない人が見ると、びっくりするみたい。

ドリンクホルダー・・・「な〜るほど」
私は、運転席上面に飲料の缶を立てるのが大嫌いです。格好悪いし、だいいちお下品である。ROVER 600のドリンクホルダーは、ドアポケットについているため、外から見えません。そういうセンスには脱帽します。ただし、サイズが合わないとガタガタとうるさいです。

ドライビング・ポジションの調節・・・「考え方次第」
まず、ハンドルの上下の角度が変えられます。シートは、前後、高さ(微調整可)、背もたれ(微調整可)、ランバーサポート(微調整可)が変えられます。ただし、背もたれの調節は、ノブをくるくる廻す方法なので、レバー一発でおねんねはできません。女の子を誘い込んでイイコトしようとしても、態勢が整うまでに2〜3分かかります。そういう時は、2人で仲良くノブをくるくる頑張ってください。

シート・・・「感動」
このクラスで、革装でしかも手がかかるパイピング仕上げ、というのは珍しい。革装であっても、なかなかパイピングまではやらないものです。見た目の上品さだけではなく、沈まず、腰をしっかりサポートした、ほどよい硬さのシートの価値を、ロングドライブ時にかみしめることでしょう。腰痛持ちにとっては最高のシートだと思います。こういう価値観は、国産車にはないです。専用のクリーナーとクリームがありますから、すくなくとも数ヶ月に一度は汚れを拭き取り、クリームをすり込んでください。時間が経ったクリームは、容器の中で一見分離したかのように見えますが、棒切れでかきまわしてやれば、すぐに元に戻ります。

カラーバランス・・・「自慢」
停まっているROVER 600の車内を外からのぞき込むと、その淡く上品なカラーバランスに、つい見とれてしまいます。しかし、欠点もあります。運転席が強い日差しで照らされると、フロントのウィンドシールドに明るいベージュが映り込んでしまうのです。良い点は、その明るく上品な雰囲気だけでなく、車内のスイッチ類が確認しやすいことです。

デザイン・・・「脱帽」
落ち着いた上品なフォルム、所々にメッキパーツを配したややクラシックな雰囲気は、ここで改めて説明する必要はないでしょう。


薄幸の名デザイン

以前からEUNOS 500のデザインがいいな、と思っていました。ところが、さあ、車を買いましょうと思ったら時すでに遅しで、EUNOS 500は製造中止になっていた。あんな格好いい車が何故?いいエンジンなのに何故?日本では、ほんとうにさっぱり売れなかったらしいですね。MAZDAの販売体制にも問題があったとか。今でも、EUNOS 500が走っていると、つい、目で追ってしまいます。それだけ、デザインのラインが優れているということだと思います。そういえば、EUNOS 500とROVER 600は、ともに日本ばなれしたところが似ています。おそろしくマイナーな車だという点も似てますけど。

ちなみに、この方は、ROVER 600を近所のお店でボディコーティングをしてもらったときの預かり書の車種欄に、「マツダ ユーノス600」(???)と書かれて、それを二重線で消して「ローバー600」と書き直された、という経験をお持ちだそうです。

悲劇のクロノス兄弟
日本車唯一の世界で通用する、美しく優れたデザインを持った車
代車試乗記 ユーノス500編
CARVIEW ユーザーレポート ユーノス500


生活のなかの価値観

ROVERに乗るようになると、車に対する価値観が変化します。最近、代車としてミレーニアに乗ったのですが、ROVER 600と同じ価格帯の車なのに、あまりの文化の違いに驚きました。国産車は、価格帯が高くなるにつれて、オート化された便利な装置やスイッチ類が激増します。それなのに、シートの素材も構造もあいかわらず安物のままです。良いシートは非常にコストがかかるのに対して、電子機器は安いのだそうです。ROVER 600は、オート化された装置をほとんど持ちません。その分、内装とシートとセキュリティに比重がかかっています。

同じ現象が、日本の家にも起こっています。いい家具は、テーブルひとつ、食器棚ひとつとっても数十万円します。しかし、そういう家具を日常あたりまえに、そして、メンテナンスしながら孫子の代まで使いつづける、という文化はどこに行ったのでしょう。家の壁や床や家具、そして照明の様式や色のバランスを取り、全体として落ち着いた雰囲気を出そうとすると、これまたたいへんなお金がかかりますが、それをちゃんとやってくれる業者も依頼するお客もその数は知れています。

一方で、欲しいものの話題というとデジカメやビデオカメラやオーディオやカーナビ、パソコン、携帯電話になってしまいます。車の装備も、どんどんハイテク化してゆきます。スイッチの数と高級度は比例するわけです。しかし、ほんとに高級なオーディオの世界では、スイッチの数はどんどん少なくなっているのです。

どうも、日本で高級というと、最新の技術を投入した、長持ちしない、多機能の道具、という気がしてなりません。ローテクで、定番として何年も長生きする、作り手のポリシーを感じることができる、そういう物を求めてゆくと、その多くが欧州に行きついてしまいます。我々消費者が、刹那的便利さを追求する限り、日本の車はあいかわらず安手のハイテク高級路線から抜け出すことができないでしょう。


腰痛治療シート

ちょっとした追突事故にみまわれ、2週間ほどの代車生活をしました。代車生活が始まって3日ほど経った頃、原因不明の腰痛が私を襲いました。最初は、「掃除の時に、重い物を無理して持ち上げたのがいけなかったかな。」と思っていたんですが、それにしても様子が変です。やがて、それは代車のシートのせいではないか、と思うようになったのです。その、体がすっぽりくるまれるやや固めのシートは、はじめのうちはいいのですが、運転を開始してから30分ほどで腰のあたりがむずむずしてきます。無意識のうちに、信号待ちのたびに、腰に手をやったり、背中を伸ばしてみたりするようになってきます。どうやら、ランバーサポートが決定的に欠如しているのです。家人は、腰に座布団をあてたらどう?なんて言います。

2週間が経ち、ROVER 620の修理が完了した頃には、もう、我慢の限界でした。一刻も早く代車を返却したい。しかし、ROVER 620に戻ってからも、腰痛は直らないのではないか、という不安もよぎります。

その不安は見事にはずれました。ディーラーの営業氏に無理を言って、当日中にROVER 620を受け取り、ひさしぶりにシートに掛けてみると・・・「おーっ、この感じ。なつかしい。代車と全然違う。なんだか、マッサージされてるみたい。」。走り出してみてびっくり。腰のあたりのむずむず感が全くなく、シートが腰のあたりをぐっと支えてくれている感覚が心地良いのです。年度末と雨のせいでしょうか、いつもよりもひどい渋滞のおかげで、帰宅まで2時間もかかってしまったのに、帰宅して車から降りる頃には腰痛はきれいに治ってしまったのです。それが証拠に、車から降りる際の無理な姿勢が全くつらくなかったのです。

ROVER 620のシートには、腰痛を治すツボを刺激する機能があるのかもしれません。そして、ROVER 620のエンジンの軽い響きまでも、懐かしく思えた一日でした。


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