Line Transformer & Fader


平衡→不平衡変換ライン・トランス


↑正面  /  背面↑
ある日、友人の奥様(アルト)のリサイタルのお手伝いをすることになり、ついでに手元のSONYのちっちゃいMDプレーヤーで録音することになりました。ホールではライン・レベルの平衡出力を舞台袖のキャノンに出して下さるとのことで、急遽、手持ちのジャンクを使ってポケットにはいるサイズの平衡→不平衡変換トランス兼フェーダーをでっちあげたというわけです。


■特徴

問題は、たまたま手元にあったトランスがマイクロフォン用に買ったコアボリュームのないTAMRAのローレベル用マッチング・トランスTHS-10(600Ω:600Ω)なので、これでライン・レベルでまともな特性が得られるかどうかです。トランスの低域特性は、コアボリュームと伝送できる信号レベルとは深い関係があり、大きな信号レベルになるにつれて目に見えて劣化してゆきます。

10Hzのレスポンスを実測してみると、-10dB(0.245V/600Ω負荷)では-0.2dBの減衰、0dB(0.775V/600Ω負荷)では-2dBの減衰で立派なものですが、+10dB(2.45V/600Ω負荷)では-9dBの減衰となり、さすがにつらいです。それでも22Hz〜220kHz(-3dB)の帯域特性が得られていますから十分使えます。実際、こんなちっぽけなトランスが・・・と驚く程の音で録音することができました。

左右チャネルごとのレベル調整がしやすいように左右独立のレベル・コントロールを設け、更に左右共通のフェーダーも設けました。何かの時のために入力インピーダンス10kΩの不平衡ライン入力もつけています。ボリュームには、実測しながら1dB刻みでメモリを書き込みました。現場では、何かと不慮のトラブルに泣かされてきたのにこりて、本機はパッシブ型とし、電源は一切使用していません。



■ライン・トランス特性

コア・ボリュームがない微少信号用のちっぽけなトランスなので、+10dB(=10mW at 600Ω負荷、2.449V)では低域がさすがに苦しく、40Hz以下でレスポンスが低下しはじめ、10Hzで-9dBも落ちています(黒線)。

しかし、0dB(=1mW at 600Ω負荷、0.775V)では低域のレスポンス低下もほとんどなくなり、高域に至っては100kHzまでフラットのすばらしい特性です。実機の送り出しインピーダンスはもっと低いですから、低域特性はもっと良くなると思います。トランスという伝送デバイスがいかに優れたものであるかを思い知らされました。

入力:600Ω平衡(0.775V=0dB)
出力:不平衡
挿入損失:-4dB
なお、後になってトランスの2次側に入れる負荷を600Ω(=680Ω//10kΩ)から2.5kΩ(=3.3kΩ//10kΩ)に変更しています。その結果、周波数特性は青線のようになりました。挿入損失は、-4dBから-1.2dBくらいに減っています。測定時の送り出し側インピーダンスは600Ωです。

しかし、5kHz以上で最大+0.4dBほど持ち上がっており、また200Hz以下で-0.1dBほどの減衰が生じて、トランスにおける典型的な高負荷型の周波数特性の傾向が現れてしまいました。このトランスの最適負荷は1kΩ〜1.5kΩあたりにありそうです。

というわけで、1.5kΩ負荷の状態での特性も測ってみたのが右のグラフです。100kHz以上での持ち上がりがなくなって、素直に減衰するようになりました。

現在は、トランスの2次側の負荷は、10kΩのボリュームと1.8kΩの抵抗が並列になって負荷を構成しています。下の回路図はまだ3.3kΩのままですので注意してください。



■回路図

入力は、600Ω平衡(キャノン)と10kΩ不平衡(RCAピンジャック)の2系統があり、スイッチで切り替えられるようにしています。

トランスの2次側には、3.3kΩ抵抗と10kΩボリュームが負荷(2.5kΩ)になります。

10kΩボリュームは左右独立で、それぞれのチャネルごとに入力レベルを揃えるようにしました。続く50kΩ2連ボリュームがフェーダー機能を受け持ちます。パネル面には、1dBステップで実測しながら書き込んだ目盛があるため、目視で正確なレベル調整ができるように工夫されています。


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