Talkback Box with Mic. Pre Amplifier
マイクプリ内臓トークバックBOX


じつにコンパクト。ボタンを押すとマイクプリの出力がラインに送られます。


■トークバックとは

レコーディングに関わっている方なら普通のことなので、説明は省略します。

■基本仕様

スタジオ・レコーディングでは欠かすことができないトークバック。しかし、マーケットがニッチであるせいか小スタジオ用に使えるものがありません。以前、赤川新一氏がスイッチのみの簡易なトークバックBOXを作ったところかなりの数が出たそうですから、やっぱり適当なモノがないのでしょう。本機は、その赤川式トークバックにマイクプリを内臓させたバージョンアップ版です。たったこれだけのことで圧倒的に使いやすくなったそうです。もし、赤川式トークバックBOXをお持ちでしたら、改造しますのでメールください。

トークバック・スイッチの筐体に、40dB〜66dBの利得を持ち160HzでローカットするHPF付きマイクプリを1系統内蔵しています。OPA2134たった1個でやっているところがミソです。通常時は本機からの出力信号はありません。トークバック・スイッチを押すと、スイッチ・ボタンが点灯し、ラインレベルまで増幅されたマイクロフォン信号が出力されます。SM58あたりをつないで+4dBのライン入力につなぐと手頃なレベルで音声入力できます。信号のON/OFFは電子制御なので切り替えノイズは一切出ません。スッとはいり、スッと出ていきます。

マイクロフォン入力: 1系統(キャノン、アンバランス、ファンタムなし、※)
マイクプリ部: 利得40dB〜66dB、160Hz -6dB/oct HPF内蔵
トークバック出力: 1-CH(キャノン、バランス)
電源: DC12Vアダプタ、0.5W

※小型かつ廉価にするためにマイクプリは1番-3番を内部接続したアンバランス入力となっています。


■1号機

最初に作ったのがこれ。
OPA2134を使ったバランス出力の簡易マイクプリを内蔵しただけ。
マイクロフォン信号のON/OFFはプッシュスイッチで行っている。
LEDには配線していないので、スイッチを押してもLEDは点灯しなくて愛想がない。
それでも、スイッチのみのオリジナルに比べたら使いやすさは格段に向上した。


■2号機

1号機はLEDがつかないので面白くない、というので改良したのがこの2号機。
信号のON/OFFとLEDのON/OFFの2つの仕事をさせなければならないので、マイクロフォン信号のON/OFFをプッシュスイッチで行うわけにはいかなくなった。
Cdsを使ったフォトカプラを使ってLEDの点灯と信号のON/OFFが1個のスイッチで電子制御できるように変更した。
Cdsの動きのトロさが幸いして、信号のON/OFFはとてもスムーズでジェントル。


■2号機の回路

入力は3pinキャノンですがファンタムなしのアンバランスです。トークバックではSM58あたりの廉価なダイナミックマイクを使いますし、回路を簡素化するためにファンタム電源も省略しました。マクロフォンケーブルも短いのでバランスである必要もありません。

OPA2134で一気に最大60dBの利得を稼ぎ、反転アンプを追加して利得を6dB追加しつつ電子バランス出力を得ています。音量調整回路がちょっと変わっています。C型のボリュームを使い、負帰還量を変えることで40dB〜66dBの利得をコントロールしています。

トークバックスイッチは電源回路側にあります。ボタンを離している時は、電源回路にある3個のLEDはショートされていて点灯しません。ボタンを押すとLEDに電流が流れて点灯します。3個あるLEDのうち1個はプッシュスイッチのボタンを光らせるためで、残りの2個は光カプラのLEDです。

使用した光カプラは古風な「LED→Cds方式」のもので、LEDが消灯している時のCdsの抵抗値は100MΩ以上ありますが、点灯すると100Ωくらいになるという仕様です。これをマイクプリの出力にシリーズに入れることで、トークバック信号のON/OFFを行っています。Cdsは反応が緩慢であるためON/OFFはきわめてスムーズかつジェントルです。純抵抗素子であるため歪みもありません。

電源電圧はDC12Vで、秋月で売られている600円のスイッチング電源で十分に足ります。


■特性

周波数特性はご覧のとおり。160Hz/-3dBのHPFを内臓しているため、設計どおり160Hzで3dB落ちています。ぎりぎりまで高利得を稼いでいるので、最大利得の時は高域側がかなり落ちていますが、とにかくコンパクトでシンプルなのと、用途が用途なので許してください。

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