Analogue Mechanical VU Meter V1
VUメーター Version1


全面パネルのボリュームが12時ポジションで、1.228V入力の時に0VUを指すように後面パネルのボリュームを調整したところ。

そもそものはじまりは、親しくしていただいているレコーディング・エンジニア氏を訪ねた時に「VUメーターを作ろうと思うんだけど、どこのVUメーターがいいかしら」と相談したことでした。「そりゃあSifamだろうねえ」というお返事なので、やっぱりなあ・・・と思っていると、そのレコーディング・エンジニア氏が倉庫をごそごそやっていたと思ったら、何やら古い包みを出して来られました。開けてみると黒くてでっかい古風なVUメーターがそこにあったのです。「これを差し上げますから、作ってみませんか」というお言葉に甘えて、喜び勇んでいただいてきたのが本機で使用したVUメーターです。

■VUメーターとは

VUとはVolume Unitの略で、音量感という意味を持つ言葉です。ピークメーターが波形の瞬間的な最大値を示すのに対して、VUメーターは音量感をとらえるという点で大きく異なっています。ピークメーターは、ほんの一瞬であっても大きな振幅の信号があればそのピーク値をとらえますが、VUメーターはこのような場合にはわずかしか振れません。ですから、VUメーターでピーク監視はできません。しかし、音楽の動きを自然にとらえることにおいてはVUメーターの方がまさっています。ただ、ライブ・レコーディングにおいては何をおいてもピーク監視が重要で、マイクロフォン数だけのトラックを録るだけ録って帰ってきますから、ピークメーターは必須ですがVUメーターはなくても用は足ります。

VUメーターを使わないレコーディングの現場が増えていることも事実です。機械式のVUメーター自体が非常に高価なものであるというのも理由のひとつでしょう。なにしろメーター1個で5千円〜2万円もします。いまどきのミキシングコンソールで機械式のVUメーターを実装したものはありません。もうひとつの理由は、VUメーターは-20dB以下の小音量に反応しないという弱点があげられます。クラシック音楽のピアニシモでは、VUメーターがほとんど振れないこともあります。そのため、小音量の場面では何が起きているかはVUメーターに熟練した人にしかわかりません。ピークメーターは内部的に対数処理をするのが普通で-30dBや-40dB以下の微小信号にも反応するので、小音量でも元気よく振れてくれます。

私もこれまでVUメーターなしで録音をしてきました。DAWソフトのProToolsなどには必要十分なピークメーターがついていますし、RMEに至ってはピークメーターだけでなくVUメーターに相当するRMS表示機能もあるので特に不便を感じなかったからです。しかし、古風な機械式のVUメーターの動きを見ているとなんとも和むというか、そこに音楽があるという感じがするだけでなく、よく見るとVUメーターの針の動きには多くの情報があることがわかってきました。もうひとつ重要なことですが、ピークメーターだけを頼りにミキシングしてゆくと、ヘッドルームを全て使い切りたいという感覚に陥り、音を必要以上に大きくしてしまう傾向があります。VUメーターはそのようなリスクを回避し、ダイナミックレンジの無意味な消費を回避する効果があると思うのです。

下の画像はプロショップのTOMOCAが出している機械式VUメーター(駆動アンプ付き)。たかがメーターというなかれ、これだけで76,440円もします。

左下の画像はRME製のレコーディング用オーディオインターフェースに同梱されている計測ソフトのDIGICheckで非常に正確な表示をします。4つのメーターがありますが両端の2つが(VUに近い)RMSメーターで、内側の2つががピークメーターです。、最大値のところに0dBfsと書かれていますね。これがデジタルスケールの正しい表記です。右下の画像はVUMeterという名のフリーソフトで、ダウンロードしてDesktopに置いておくだけですぐに動作しますが、VUMeterという名称にもかかわらず全くVUメーターではなく、ピークメーターの一種です(ダウンロードはこちら→http://www.vuplayer.com/other.php)。

上の画像の2つのソフトは、同じ音楽ソースを同時に再生している瞬間のものです。右側のVUMeterは左右チャネルともに-1.5dBあたりと指しています。このフリーソフトの実態は、デジタルフォーマットの0dBFS時にメーターの針が+3dBを指すピークメーターです。VUMeterなんていう名をつけているので誤解を招きますね。この場合の真の信号レベルは0dBFSに対して-4.5dBということになります。では左側のDIGICheckを見てください。両端はRMSメーターで-11dBあたりを指しています。内側の2つがピークメーターでマーカーが-4.5dBあたりにあります。この-4.5dBというのは右側のVUMeterとほぼ一致します。また、同じ音を計測しても、ピークメーターとRMSメーター(≒VUメーター)とでは表示される値に数dBの開きがあることがおわかりいただけたと思います。

DIGICheckは業務使用を前提に作られたソフトなので非常に正確で信頼が置けますが、フリーソフトのVUMeterは表記がおかしいだけでなく-5dB以下で誤差がかなりあり、あくまでもお遊びで眺めて楽しむものです。


■VUメーターの規格

インピーダンス600Ωの負荷回路へ1kHzの正弦波を加えて1mWの電力を消費したときの出力電圧を0dBmとし、+4dBmを0VUとしたものです。

VUメーターの指示範囲は-20から+3で単位はdBです。無信号のあと、0VUにあたる1KHz正弦波信号を入力した場合、針が0VUの99%の点を通過するまでの時間は300[秒|ms]、誤差±30msです。針は必ず0VUの点を超え、最低でも1%を超え、しかし最高でも1.5%に達しないオーバーシュートを発生するものとします。戻り時間は応答速度と大きく違わないこととします。この遅れは電圧の最大値(いわゆるピークレベル)を示してはいないことを意味し、連続した正弦波を加えた場合は(そのピークレベルを示さず)ほぼ平均値に等しい指示をします。

出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/VUメーター

VUメーターの中味は直流電流計ですが、交流信号で動作させるためにダイオードによるブリッジ整流回路と、抵抗器によるダンピング回路を兼ねた減衰回路が内蔵されています。単なる電流計のままでは動作しません。

VUメーターと呼ぶためには、厳密に上記の規格を満たさなければならないため、はなはだ高価です。秋葉原のジャンク店などで売られている廉価なものはVUメーターと同じような目盛りをつけたインジケータなので、残念ながら動き方がヒョコヒョコとなめらかさを欠いたり正確さがありません。正規のVUメーターの動きはなかなか味がありますので、可能であれば1セット入手してください。国産であればヤマキ、海外製であればSIFAMがおすすめです。


■信号レベルの考え方の今昔

アナログ録音時代は、基準となる信号レベル(0VU)を決めて、さらにその上に何dBかのヘッドマージンがありました。スタジオ用のマスターレコーダー(オープンリールデッキ)の場合で+12〜13dB、Nakamichiのカセットデッキで+5〜6dBです。VUメーターは+3dBまでしかスケールがありませんから、+3dB以上の非常に大きな信号が継続的に入ってくるとメーターが振り切れるわけですが、実際そういうことになりそれでいいのです。

デジタル録音時代にはいると、0VUという考え方が事実上なくなって、デジタルフォーマットの最大値を0dBとして、信号レベルはすべてマイナスdBで表現するようになりました。たとえば、ライブレコーディングでマスターコンソールからライン出しをもらう時、正弦波の基準信号を送ってもらいますが、「ヘッドマージン14dBとってます」などと言ってレベルの設定の状態を伝え合います。この場合は、送り出してもらった基準信号がレコーダー側のピークメーターで-14dBになるようにレベルをセットするわけです。

デジタルの考え方では、ヘッドマージンを何dBとするかによって0VUのポジションが変化します。一般には-12〜-16dBくらいで設定するようです。この関係を整理したのが下図です。

 出典:「真空管アンプの素」


■見て楽しむVUメーターとして

ピークメーターは小音量でも良く振れる、VUメーターは小音量ではほとんど振れてくれない、という違いがあります。今から30年くらい前、VUメーターの動きにやや不満気味であった私がはじめて本格的なピークメーターを手に入れた時は感動モノでした。これを手にした時、もうVUメーターとはおさらばだとさえ思ったくらいです。Nakamichiのカセットデッキを愛用したのも、その音の素晴らしさもありますが、ピークメーターを標準実装していたこともあったと思います(Nakamichiのデッキのピークメーターは動きがちょっと鈍いですけどね)。

あれから30年ほどが経ち、PCを使ったデジタルオーディオが当たり前になった今、レコーディングで使うDAWの画面はバー表示のピークメーター一色になってしまった感があります。今頃になってVUメーターを使いたくなった理由は、ひとえにピークメーターは見ていて面白くないという点に尽きます。ピークメーターの動きには2種類あって、ひとつは音が入るとピュッと上がってじわーっと下がるタイプ、もうひとつは常にピュッピュッとめまぐるしく上下するタイプがあります。このような音の最大ポイントを克明に拾うという動作は音楽のダイナミクスとは一致しません。ですから見ていてとても疲れます。

VUメーターは、ピークメーターと比べてずっと味のある動きをしますので、リスニングオーディオとして見て楽しむというのもありだと思います。部屋の明かりを落として、ほんのり明るくなったメーターパネル上を動くVUメーターの様子を眺めていると飽きることがありません。

さて、このような使い方の場合、音楽に合わせて程良く針が振れてくれないと面白くありません。正規に調整された(0VU=1.228V)VUメーターを普通のCDプレーヤやUSB DACの出力につなぐと、メーターの針はごくわずかしか振れてくれません。信号レベルが低すぎるのです。コンシューマ用のオーディオ機器のライン出力は0dBFSで2Vくらいですが、プロ機では4〜8Vくらい出ています。

0dBFS=2Vくらいの信号レベルでVUメーターを使うには、0VU=0.3〜0.5Vくらいの感度が必要です。本機をこれくらいの感度にするには、出力の負帰還調整のところにある4つの6.8kΩの抵抗を2.7kΩくらいに減らしてください。


■VUメーター駆動アンプ

VUメーターを最もシンプルに駆動するには、出力インピーダンスが低い駆動アンプに正式な規格のVUメーターと3.9kΩの抵抗が1本あれば足ります。これを直列につないだものに1.228Vの信号を与えた時に、VUメーターは0dBを指します。

(VUメーターの駆動の基本は、送り出し側のインピーダンスが600Ωで負荷インピーダンスが600Ωの回路に「3.6kΩとVUメーターを直列にしたもの」をつなぐことになっています。回路インピーダンスは300Ωということになりますから、VUメーターとシリーズに3.6kΩを入れるということは、VUメーターからみると3.9kΩの内部抵抗で駆動することになります。VUメーターはこの条件の時に規定通りのタイミングで動きます。いまどきの低出力インピーダンスの回路に入れる場合は、正しいダンピングを得るには直列に入れる抵抗値は3.9kΩとするのが正解です。但し、このようにすると信号レベルが狂ってきますので、信号レベルの補正も必要になります。)
使用する機材によっては+4dBu(1.228V)の基準信号をずらして使用することもあり、若干の調整ができないと現実的には都合が悪いことがよくあります。VUメーター自体にもわずかな個体差があり、できればばらつきもきれいに修正したくなります。本機で使用した古いVUメーターを実測したところ、0VUを指した時の信号電圧は、1.201Vと1.277Vでした。それぞれ-0.19dBと+0.34dBのばらつきがあったわけです。デジタル・レコーディング機材を実際に測定してみると、0dBFSにおけるアナログ信号出力の電圧は一定ではありません。機材に合った信号レベルの監視を行うには若干の調整しろが必要です。もうひとつの問題は、素のVUメーターはインピーダンスがあまり高くないので、送り出し機材によっては負荷になる場合があります。そこで、ある程度の利得調整が可能で、入力インピーダンスが高い駆動アンプを使うことにします。

駆動アンプの仕様は以下のとおりです。


■全回路図

<VUメーター駆動アンプ>

入力端子は、3pinキャノン(メス)ですが、3pinキャノン(オス)とTRSフォーンジャックでパラ出ししてあり、汎用のパラBOX機能を持たせてあります。全部がパラですからどこから入力しても、どこから信号を取り出してもかまいません。

VUメーター駆動アンプは、2SK170(BL)によるFET差動PP回路に、2SC1815(GR)のエミッタ・フォロワを追加した反転型バランスアンプです。差動回路の定電流回路は、4mAで選別したCRD(定電流ダイオード)またはIDSSが4mAの2SK30A(GR)を使います。増幅回路の裸利得は70倍くらいあり、負帰還定数を変化させることで感度を調整するようにしてあります。

余裕を持って8Vの出力を出すためには電源電圧は30V以上が必要です。本機の回路は差動バランス型なので、15V以上の電源電圧があれば30Vに匹敵する動作を得ることができます。実際の電源電圧は19Vですので無理なく10Vの出力が得られています。

この回路方式の良いところは、バランス入力でもアンバランス入力でも変わりなく動作することです。バランス入力の一方(Hot側でもCold側でもよい)を接地するだけでアンバランス入力となりますが、利得は変化しないというありがたい回路です。

50kΩ(B)2連ボリュームは、前面パネルに取り付ける利得調整用です。このボリュームはセンタークリックがついたタイプです。0Ωの時に利得が最小になり、センタークリック・ポジションで規定通りの1.228Vで0dBを指し、50kΩの時に利得が最大になります。

この部分は「20kΩ+ボリューム」としないで47kΩの抵抗1本で固定とし、次に説明する10kΩの2連ボリュームだけで調整するようにすればシンプルに仕上がります。市販の完成品のVUメーターはこのような仕様になっています。

出力側にある10kΩ(B)2連ボリュームはVUメーターのばらつきや利得の修正用です。このボリュームは後面パネルに実装します。前面パネルの2連ボリュームをセンタークリック・ポジションに固定した状態で、1.228V入力でVUメーターが正確に0dBを指すようにこのボリュームを調整し固定しておくわけです。

参考: OPアンプを使い、アンバランス入力として製作する場合は、測定用不平衡→平衡コンバータ(http://www.op316.com/tubes/balanced/ubbconv2.htm)の回路が参考になると思います。この回路も無理なく10Vの出力が得られます。この回路は6dBの利得がありますから、出力側のアッテネータを撤去してVUメーターをつなぎ、利得調整アッテネータは入力のところにつければ完成です。
<電源およびメーターランプ駆動回路>

電源には24V/0.5〜1AタイプのACアダプタを使います。全消費電流は0.25〜0.32Aですが、その大半はランプが消費しています。

VUメーター駆動アンプの電源は、+19Vと-4Vの2電源ですので、3.3kΩと750Ωで2分割した疑似±電源としています。電源は左右チャネルで分けてはいません。オーディオアンプと違ってVUメーターは鈍感なので左右チャネル間クロストークは全く問題にならないからです。

使用するレトロなVUメーターに内蔵されているランプは12Vタイプのようですが、12Vで点灯させると明るすぎるので電圧を落として使うことにします。単純に電圧を落とすのも面白くないので、明るさを可変にしてみました。ランプに5V〜10Vの間でさまざまな電圧をかけて明るさと消費電流を実測したところ、以下のような結果を得ました。5Vだとかなり暗く、10Vだと十分すぎるくらいの明るさです。この結果をもとに設計したのが右の回路です。

ダーリントン接続したごく単純なエミッタ・フォロワ回路です。10kΩ(B)ボリュームによって2SC1815のベース電圧を制御し、直列にした2個のランプを負荷にしています。ランプ1個あたりにかかる電圧は、最も暗い時で5.4V、センターポジションで7.35V、最も明るい時で9.35Vです。2SC3709Aのコレクタ損失が最も大きくなるのはランプが最も暗い時で、消費電力は2Wを越えますので2SC3709Aの放熱は必須です。2SC3709Aに取り付けた放熱器が小さくて心許ないので、コレクタ側にシリコンダイオードを4個直列にしたのを割り込ませて熱の一部をダイオードに引き受けさせています。2SC3709A側で十分な放熱が得られるのであればこのダイオードは不要です。

じつは、使用した2個のVUメーターのランプはフィラメントの直流抵抗にばらつきがあり、これを直列にして点灯したところ明るさにわずかに差が生じました。そこで明るい側のランプと並列に1kΩほどの抵抗を抱かせて明るさのバランスをとっています。

ご注意: このランプ点灯回路は、本機で使用したVUメーターに使われている正体不明のランプにのみ有効です。これと異なる規格のランプの場合は、諸元が異なりますのでそのまま使うことはできません。私が行ったような実測による実験が必要です。LEDで代用する場合も同様です。


■製作

<部品>

ケース・・・タカチ製のOSシリーズで、型番はOS-115-26-16SSです。手持ちのVUメーターがぎりぎりで収まる大きさです。

VUメーター・・・TEACの文字が見えますが、DENSHI KEIKI SEISAKUSHO CO.,LTD.の印字が見えますので製造はその会社でしょう(現在は存在しないようです)。形状からして1970年以前に作られたものではないかと思います。こんな馬鹿でかいVUメーターを一体何に使っていたのだろうと思います。いまどきのVUメーターはすべてLED照明ですが、これは電球照明です。

現在、VUメーターを製造販売しているのは以下のとおりです。ヤマキ電気(http://www.yamaki-ec.co.jp/)はNHKにも納入しているVUメーターのリファレンス・メーカーで小型のものもすべて規格を満たしています。西澤計測研究所は廉価なものを出しています。廉価なのは、厳密にはVUメーターの規格を満たしておらず、針の戻りが少し遅いのだそうです。協和電気計器(http://www.kyowa-meter.com/)はレトロなデザインのものを作っています。海外では英国Sifam(http://elektron-sifam.com/)のものがレファレンスとしてプロ機で使われています。Sifamを扱っている日本の代理店はプロメディア・オーディオ(http://www.promediaaudio.com/)です。
半導体・・・2SK170はBLランクのバイアス特性が揃った選別品で、当サイトで頒布しているのと同じものです。2SC1815はGRランクを使いましたがYランクでもOKです。2SC945や2SC2120など同等のトランジスタであれば品種は問いません。初段の定電流ダイオードは、4mAタイプのCRD(定電流ダイオード)またはIDSS=4mAの2SK30A-GRあるいは2SK246-GRなどが使えます。ランプ点灯回路の2個のトランジスタは2SC1815-GRと2SC3709Aですが、同等のものであれば品種は問いません。ランプ点灯回路の電圧ドロップに使った4個のダイオードはUF2010です。かなり熱を持ちますので1N4007のような小さなものは敬遠した方がいいでしょう。

ボリューム・・・前面パネル側はスペースがほとんどなく、9mm角のALPS製RK09シリーズの小型品を入れるのがやっとでした。使ったのはセンタークリックがついたものです。後面パネル側は千石電商あたりで売っている廉価品です。

CR類・・・いずれも廉価品です。抵抗器は大半は1/4W型ですが、ところどころで1/2W型を使っているのでご注意ください。アルミ電解コンデンサはいずれも容量が設計値と少々違っていても問題ありません。

ACアダプタ・・・秋月電子で売られているDC24V/0.5Aの廉価品です。

<ケース加工>

本機の製作でもっともしんどいのは、メーター取付のパネルの穴あけでしょうか。メーター取付け用のかなり大きな直系の丸穴を開けなければなりませんでした。後面パネルのキャノンコネクタ用の穴も直径24mmの丸穴ですそこそこ大きいですから、ホールソーなどを持っていないと苦労すると思います。左下の画像はパネルの穴あけ加工中に位置の確認をしているところで、電源スイッチの穴がまだ開いていません。

<内部の様子>

裏から見るとメーターがいかに大きいかがわかりますね。製作ではあまり気合がはいらなかったので、配線は雑な感じが漂っています。4個の利得調整ボリュームが前後パネルに泣き別れしたため、これらをつなぐ配線が長くなっています。この配線は負帰還ループそのものなので特性への影響が懸念されるため、3本の線の組み合わせに工夫して信号系ごとに対をつくった上で捩ってあり、相互干渉が小さくなるように配慮しています。結果として全く問題なしでした。片方のVUメーターに抵抗器が1本取り付けられているのは、ランプの明るさの微妙な違いを補正するための後付け抵抗です。これをつけた側のランプの駆動電流は数%ほど少なくなっています。

基板は、左側がVUメーター駆動アンプで、右側がメーターランプ駆動回路です。よく見ると基板を取り付けているスペーサの色が1個だけ違っています。このポイントで金属スペーサを介して基板側のアースをシャーシに落としています。なお、このケースは本体と前後パネルの導通が不完全なので、前後パネルはそれぞれしっかりとアースを取っています。下の画像のツマミの色がグレーでメーターの黒と合わないので、黒いのに変更しています(ページのトップの画像)。


■調整と特性

<調整方法>

まず、VUメーター本体のゼロポジションを合わせます。電源を切った状態でメーターの針が左下の0%のところにくるように、メーターの「零位調整ネジ」をまわして調整します。このネジは、通常はメーターの正面中央下にありますが、裏側についているメーターもあります。

調整で使うテスト信号は、バランスでもアンバランスどちらでもOKです。アンバランス入力にする場合はキャノン3pinをアースします。前面のボリュームをセンターポジションにした状態で、400Hz〜1kHzくらいの周波数の正弦波信号を使い、1.228Vを入力した時にメーターが0VUを指すように後面のボリュームを調整すれば完了です。調整の参考のために、入力信号電圧とメーター表示の関係を表にしておきました。

<特性>

周波数特性を簡単にチェックしてみたところ、5Hz〜20kHzがフラットになりました。高域側の-3dBポイントは140kHzでそれよりも高い周波数では素直に減衰してゆき、有害なピークはありません。5Hz以下では流石にメーターの針がパタパタ動いて読取りにくいですが2Hzくらいまでは減衰はなさそうです。全く申し分のない帯域特性となりました。

調整された状態で前面パネルのツマミをまわすと、設計どおりほぼ-6dB〜+3dBの範囲で感度を変えることができます。


■使用感

非常に使い勝手の良いVUメーターができました。パラレルになった3種類の端子(キャノン・メス、キャノン・オス、TRSフォーン)は融通が利いて正解でした。センターポジションで規定利得になる仕様もなかなか具合が良いです。なんといっても少々レトロで巨大なVUメーターが格好良く、明るさが調整できるランプが遊び心を満足させてくれます。実用性の高いいいおもちゃが手に入ったというわけです。

* * *

製作して一か月とすこしが経ちました。本機はオーディオソースと並列につないであるので、電源をONにすればいつでもメーターを動かすことができます。

いろいろな音楽ソースを聞きながらメーターを見ているとやはりちゃんと学習しますね。音楽の音量感とメーターの動きの関係がだんだんわかってきました。こういう感じはピークメーターにはありませんでした。後述するある放送局の技術部長さんは「VUメーターがなかったら仕事になりません」とコメントをくださいましたが、その言葉の意味がだんだんわかってきたような気がします。そして、なんといってもVUメーターの動きは和みます。おこずかいと時間に余裕があったら是非作ってみてください。


■参考

VUメーターの駆動は本機のような凝ったことをしなくても、OPアンプがあれば簡単に作れます。左側の回路はアンバランス入力に対応した回路例で、右側はバランスおよびアンバランス入力共用の回路例です。どちらも0.9倍〜5.5倍の利得幅を持っていますので、0VU=1.228Vだけでなく民生機のCDプレーヤやUSB DACの低出力にも対応可能です。負帰還の受け側にコンデンサが入れてあるのは、これがないとメーター出力に出るオフセットが大きくなって感じが悪いからです。左下は、両方の回路に共通で使える電源回路です。

下図はJFET×1本で作るVUメーターの駆動アンプです。ドレイン電圧が12Vくらいになるようにソース側の100Ωのボリュームを調整すればOKです。最もシンプルな回路のはずなのに、OPアンプを使った回路と同じ程度に見えるのがおかしいですね。

この記事をご覧になったある放送局の技術部長さんが「これをさしあげますから、また何か面白いものを作ってください」と送ってくださったのが下の画像のYAMAKI FYR-22Lです。このVUメーターは駆動アンプを背負っていたので、基板から回路図を起こしてみました(右下)。OPアンプを使ったごくごく一般的な簡易バランス入力のアンプで、利得は10kΩと100kΩの比率で決まり、ちょうど10倍です。入力インピーダンスは10kΩと低いですので、高いインピーダンスが欲しい場合は10kΩと100kΩの両方の値を変更します。この回路の欠点は、バランス入力なのにHot側とCold側の対アース・インピーダンスが同じにならないことです。入力インピーダンスをバランスさせたければ、前述のOPアンプを2個使った回路にする必要があります。それにしても、メーターと直列に入れ半固定ボリューム、こんなことしたらメーターのダンピングが変わってしまうけれどいいのかしら。




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