■■■コネクタのことなど■■■
Studying XLR & TRS Connectors

XLR-3-32 XLR-3-31


●XLR

一般に、キャノン・コネクタと呼ばれています。ここでいうキノン(CANNON)とは、カメラのキノン(CANON)ではなくて、ITT CANNON社のキャノンです。XLRというのは、ITT CANNON社の製品名のひとつで、オーディオ用コネクタの中で最も信頼性の高いシリーズ名です。"R"というのはラバーの略のようで、端子の絶縁充填物がグレーのゴムでできています。ほかに、廉価版で素材が異なるXLBシリーズ、小型で基板実装向けのXLM-PC、廉価なXLB-PCがあり、いずれも相互に接続互換性があります。上の画像はXLRですが、見かけはXLBもほとんど同じです。

XLM-PC XLB-PC XLRのpdfドキュメント:XLR.pdf

キャノン・コネクタは一般に3ピン・タイプが知られていますが、ラインナップには2ピンから7ピンまであります。オーディオ信号の平衡伝送では3本のラインを使いますから3ピンが有名になってしまいました。3ピン・タイプのXLRシリーズのことを「XLR3」といいます。

キャノン・プラグの製品コード体系は以下のとおりです。左端がシリーズを表し、XLRやXLBがあります。次がピン数で2から7まであります。本プロジェクトで使用するのはXLR-3です。次が形状で、11Cはメス・プラグ、12Cはオス・プラグです。13は丸型メス・レセプタクル(ジャック)、14は丸型オス・レセプタクル、31は角型メス・レセプタクル、32は角型オス・レセプタクルです。角型には高さを抑えたタイプもあり、最後にF77がつきます。

XLRコネクタはITT CANNON以外からも出ています。有名なところとしてはNEUTRIKがあるでしょう。実にさまざまなタイプの製品が出ており、そのうちのいくつかは秋葉原でも容易に入手できます。変わったところでは、コンボ・ジャックといって、XLR3と以下で述べるTRS/TSが一体となって兼用になったものがあります。


<2-pin>

2ピンのキャノン・コネクタはもっぱらAC電源に使うというのをどこかで読んだことがありますが、ITT-CANON側はこのコネクタをAC電源に使うことは推奨していません。ちなみに最大定格は200V、15Aです。AC電源にはおなじみのIECという規格がありますので素直にそれを使うのがいいでしょう。


<3-pin>

3ピンのXLRでは、3つの端子のうち2つはオーディオ信号の伝送に使い、残りの1つはアースに使います。ピン接続および意味はそれぞれ以下のとおりです。なお、かつては「3番HOT」という仕様があり今でもその名残がありますが、レコーディング、PAを問わず「2番HOT」に統一されてきています。プロ機材メーカーの多くは、レコーディング機材とPA機材の両方を製造していますし、エフェクタなどどちらの場面でも使われる機材が多いことを考えると、レコーディングとPAで接続が異なること自体が全く不自然ですし、現場もたまったものではありません。まあ、SHUREみたいに、いまだに3番HOTで通しているメーカーもありますが、プロの現場のシェアでみると、マイクロフォンではNeumann、AKG、SENNHEUSER、audio-technicaといったメジャーどころは皆2番HOTですし、Digidesign、SSL、Focusliteといった機材の主力メーカーも2番HOTで統一されています。1992年にAES(AES14-1992)によって2番HOTが国際標準として決着がついており、いまさら3番HOTで作るというのは、石頭かただのへそ曲がりだと思ってます。レコーディング・エンジニア氏からみると、位相はいつでもひっくり返せるので別にどっちでいい、というのが多数派のようの思います。本プロジェクトでも「2番HOT」を採用します。

- レコーディング PA 放送
キャノン 3番ピン HOT(+)→COLD(−) COLD(−) HOT(+)
2番ピン COLD(−)→HOT(+) HOT(+) COLD(−)
1番ピン Ground(E) Ground(E) Ground(E)
入力側 メス メス オス
出力側 オス オス メス

ちなみに民生機であるDENON製SACDプレーヤ"DCD-SA1"や"DCD-SA11"にはRCA不平衡出力のほかに平衡出力が併設されていますが、なんと接続は「3番HOT」です(右がDCD-SA11の取り扱い説明書の部分)。おそらく、DENONにはDENONの言い分があるのでしょう。今まで調べた限りでいうと、民生高級機の中には3番のものが散見されます。

しかし、同じDENON製の業務用レコーダーDN-H100や業務用CDプレーヤーDN-C635 の平衡出力の接続は「2番HOT」であり、DENON傘下になったMarantzの業務用機器もすべて「2番HOT」なのでちょっと不思議な感じがします。事業部が異なると考え方も違う、というのはよくあるはなしですがどうなんでしょうか。

次に、「オス/メス」の区別ですが、端子がむきだしになった「オス」を入力側、出力側のどちらに持ってくるかですが、市販の機材のほとんどが「入力=メス」になっています。ノイズを拾いやすい入力側にオスを使うと、入力オープンの時にちょっと触れただけで大きなノイズが出てしまうのを嫌ってのことだと思います。本プロジェクトでも一般的な習慣にならって「入力=メス」、「出力=オス」を採用します。


<4-pin>

4ピンのキャノン・コネクタはプラスマイナスのDC電源に使います。1番ピン=マイナス、2番ピン=プラスとするのが一般ルールです。最大定格は133V、10Aです。


<5-pin>

5ピンのキャノン・コネクタは2-ch(ステレオ)のバランス伝送に使います。日本ではあまり見かけませんが、STUDERの169ミキサーのステレオ・トラックには5ピン・キャノンが使われています。この規格はAES(AES14-1992)で定められたものです。ステレオ信号を伝送するのに、グランドが1本で済むのでチャネル間でのグランド・ループもできず、コンパクトにまとめられて合理的だと思うのですがあまり知られていません。私はバランス型ヘッドホンのコネクタとしてこれを採用しました。

- ピン・アサイン
1番ピン Ground(E)
2番ピン L-ch(Hot)
3番ピン L-ch(Cold)
4番ピン R-ch(Hot)
5番ピン R-ch(Cold)


<6-pin>

6ピンのキャノン・コネクタは少々厄介なことになっています。オリジナルの6ピンのメスには5ピンのオスが差し込めてしまうからです。このリスクを回避するためにノイトリックが独自規格を出したため、キャノン6ピンは「6」と「6A」の2系統存在がします。


●TRS

キャノン・コネクタは頑丈で接触信頼性も高いのでいいのですが、高価な上にごつくてかさばるので抜き差しが多い場面では扱いに不便です。すべてをキャノンで構成しようとすると、機材の小型化はとても無理です。そこで良く使われるのが1/4インチサイズのフォーン・プラグです。ウォークマンなどについているステレオ・ミニ・プラグではなく、昔からヘッドホンについている太い方のプラグです。キャノンの方がごつくて頑丈でありがたみがありますが、いまどきのほとんどのスタジオでメインシステムとして採用されているDigidesignのHDシリーズの接続はなんとTRSなのですね。

1/4インチ・フォーン・プラグには、2端子タイプと3端子タイプがあり、前者を「TS」、後者を「TRS」とも呼びます。レコーディングの世界では、TS/TRSという呼称の方が一般的かもしれません。結線は右図のとおりです(画像出典:Behringer社)。

2端子タイプ(画像左側)の場合は、先端をTipと呼んで「信号用」、根元がSleeveで「アース(共通)」です。Top-Sleeve構造のプラグ/ジャックのことを略して「TS」と呼びます。「TS」は、ギターとの接続や民生機の不平衡のマイクロフォンの接続などに使います。

3端子タイプ(画像右側)の場合は、先端をTipと呼んで「Hot」、真ん中をRingと呼び「Cold」、根元がSleeveで「アース(共通)」です。Top-Ring-Sleeve構造のプラグ/ジャックのことを略して「TRS」とも呼びます。「TRS」はミキサーのライン入出力やエフェクタ等の機材の平衡接続に使います。

TRSには他にも使い方があって、ヘッドホンの場合は、Tipが左、Ringが右、Sleeveが左右共通アースで、不平衡接続になります。また、1本のTRSを使って、Tipを送り出し(Send)、Ringを戻し(Return)として外部エフェクタとの接続に使う方法もありますが、詳しい説明はここでは省略します。

右の画像はTRSジャックですが、左と右の違いがわかりますか。

通常、秋葉原などの部品屋の店舗に並んでいるのは右側の方です。このタイプでは、パネルに取り付けた時に、Sleeve側がシャーシに接触します。通常、Sleeve側は回路のアースラインに接続されていますから、TRSジャックを取り付けたすべての場所でシャーシ・アースができてしまいます。シンプルな回路であればこれでも問題は起きにくいですが、このような結線はアース本来のお約束違反であり、低ノイズをめざす機材には向きません。

左側のタイプは、パネルに取り付けた時でもSleeve側がシャーシに接触しないように黒い樹脂で絶縁されています。本プロジェクトでTRSジャックを使う時は、こちらの絶縁タイプを使用します。すべての店で扱っているわけではありませんが、秋葉原でも半数くらいの店で扱っています。


●・・・

・・・。

平衡プロジェクト に戻る