CDプレーヤは20Hzから20kHzくらいまでがほぼフラットといいますが実際のところどうなんだろう、という疑問が湧いてきたので、手元にあるCDプレーヤの周波数特性を実際に測定してみることにしました。同時に、PCに接続して使うデジタル・オーディオ・インターフェースについても同様に再生周波数特性を実測することにしました。被測定機材は以下のとおりです。
Maker Model Comments Kenwood DPC-X321 単3乾電池×2個で動作する廉価なポータブルCDプレーヤ。
高級感はないが聞きやすい品の良い鳴り方をする。TEAC VRDS-25 かなり高級なCDプレーヤとして話題になった機種。
個性控えめでかっちりとした音がする。Apple iPod nano(1st Gen) おなじみ、AppleのiPodです。
最新モデルに比べると、ハイエンド側が甘く、音に個性があります。M-AUDIO Firewire Audiophile デジタルレコーディングに力を入れているレコーディング機材メーカー。
オーディオ・インターフェイスとしては上等な部類にはいる。
リアリティに富んだいきいきとした音がする。Digiesign MBOX2 プロ用レコーディング機材のトップブランド。
MBOX2はローエンド製品ながらプロ・レコーディングに耐える内容を持つ。
流石に業界標準だけあって、色付けがなく、ナチュラルで、安定感のある音がする。
※Digidesign社の専用DAWソフト"ProTools"がないと動作しない。
測定データは、efuさんのフリーソフト「Wave Gene V1.31」を使いました。10Hzから21,000Hzまでかなり小刻みにスポットを設定し、フルビットに対して-10dBのレベルのWAV形式のテスト・データを作り、これをCDに焼いたものを使っています。CDが対象ですので量子化ビットは16bit、サンプリングは44.1kHzで揃えてあります。CDプレーヤはCDをそのまま再生していますが、iPodはCDからiTuneにリッピングしています。M-AUDIOは、PC上のWAVデータをWindows Media Playerで再生したものをソースに使いました。Digidesignは、Windows Media Playerが使えないのでProToolsに取り込んで再生しています。M-AUDIO、DigidesignともにCDを経由したデータを使って再生しています。
一般的なスケール(周波数×10倍とレスポンス=20dBとが同じになるスケール)で表示するとこのようになります。iPod nanoのみ、16kHzからすぱっと切れているのがわかります。しかし、iPodも含めて10Hz〜16kHzでほぼフラットですので、これらデジタル・オーディオ再生機を使って20kHz以下の帯域のオーディオ測定ツールとして使えることがわかります。専門的なオーディオ・ジェネレータを持っていなくても、ちょっと工夫すればPHONOイコライザの偏差やトーンコントロールの周波数特性を測定の信号ソースとして使えるわけです。
上のグラフでは違いがわからないので、dB側を縦にぐっと拡大してみたのが下のグラフです。Kenwoodは6kHzから上がゆるやかに減衰しており、20kHzで-0.5dB、そこから21kHzにかけてストンと落ちています。TEACは高域に独特の盛り上がりがあります。iPodは6kHzから15khzにかけて微妙なでもぼこが生じていて、16kHzは-0.1dBdBですが、17kHzで-3dB、18kHzで-10.6dBですから、FMチューナよりはましですが、Nakamichiのカセットデッキには完敗です(4th Genでは改善されて20kHzを難なくこなします)。M-AUDIOはなかなか優秀できれいな特性だと思います。Digidesign以外のすべてが20kHzどまりなのに対してDigidesignだけは21kHzでも減衰がないのが特徴的です。