定電流ダイオードの実測データ


定電流回路を多用する全段差動プッシュプル・アンプでは、定電流ダイオードのお世話になることが多いです。性質は整流用ダイオードと全く異なり、「どんな条件下であっても決められた一定の電流が流れる」という変な性質を持っています。定電流特性が「2mA」の定電流ダイオードがあったとして、その両端に5Vをかけると2mAが流れます。10Vかけてもやっぱり2mA流れます。20Vかけても2mA流れるのです。直列になった回路のどこかにこの定電流ダイオードが入り込んでいると、その回路全体に流れる電流は常に一定になるように規制されてしまう、という効果があります。

実測データ

右図は、4種類の定電流ダイオード"E701"(0.7mAタイプ)から"E202"(2mAタイプ)までの実測データです。印加された電圧の影響を受けない安定した定電流特性が得られる(グラフが水平になる)電圧はタイプごとに異なります。

E701(0.7mAタイプ)では、動作電圧が2Vあたりから定電流特性を持ち始め、2.5V以上で充分な定電流特性が得られていますが、E202(2mAタイプ)では、5V以上の動作電圧を与えてやらないと定電流特性を示してくれません。電流値が大きいほど必要とされる動作電圧は高くなります。

ところで、定電流ダイオードにかかっている電圧が10V以上になると、電流値が減少してくるのはどういうわけなのでしょうか。それは、定電流ダイオードの特性が、温度変化に対して負の相関を持っているためです。電圧が高くなると定電流ダイオードの自己発熱が大きくなり、その影響が出てしまうのです。また、自己発熱がちいさくても、他の部品の発熱によってシャーシ内の温度が上昇するにつれて特性は変化します。厳密な設計する場合、この変化を見越しておく必要があります。

2mAの定電流が欲しいのに、動作電圧の余裕が3Vしか得られないような場合は、2mAタイプ1本で済ますのではなく、1mAタイプを2本並列にすればOKです。このように、定電流ダイオードの並列接続は意味がありますが、直列接続は意味をなしません。直列接続した場合は、直列になった定電流ダイオードのうち1つしか働かなくなるからです。

測定条件:気温25℃


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