秋月では何種類ものDC/DCコンバータモジュールを扱っていますが、その中に小型で比較的使いやすくヴァリエーション豊かなのがここで実測したMCW03/MCWI03シリーズ(3W)とMAU100シリーズ(1W)、そしてMIWI06シリーズ(6W)です。実測の対象としたのは、12V入力→15V×2出力のMCW03-12D15です。得られたデータ的特徴は他の規格のMCW03モデルにおいても概ね共通していますので参考にしてください。テクニカルドキュメント:MCW03.pdf
(画像出典:秋月電子通商サイト)
このシリーズの良いところは、入力側と出力側が高耐圧で完全に絶縁されているという点にあります。入力側と出力側に異なる電位を与えたりフロートさせて使うことができますし、アースの共通インピーダンスに起因するノイズが回避できます。複数を直列してより高い電圧を得ることもできます。
MCW03シリーズはMAU100シリーズとは内部構成が根本的に異なります(下図)。MAU100シリーズは、スイッチング回路の後に昇圧トランスが来るわけですが、出力は出しっぱなしで、出力電圧をレファレンスして帰還する機能がありません。そのため、出力電圧は安定化されません。一方で、MCW03シリーズは出力電圧をレファレンスして帰還する機能を持っていますので、出力電圧は周囲の条件の影響をほとんど受けないで正確に一定値を保ちます。
入力電圧に変動がどれくらい出力電圧に影響するかをライン・レギュレーションと言いますが、MAU100とMEW03を比較すると下表のごとくなります。
Series 入力側変動 出力側変動 MCW03 ±50%程度の変動に対して ±0.3% MAU100 ±1%の変動に対して ±1.2% ご覧のとおり、数字上は圧倒的な違いがありますが、テクニカルドキュメントには上記の数字が書いてあるのみで、イメージがつかめるグラフはありません。そこで実際に実験回路を組んで特性を測定してみました。対称としたのはMCW03-12D15で、これは直列になった15V×2系統を出力しますので、15V+15V=30Vのところで測定しています。
テクニカルドキュメントによると、入力電圧は9V〜12V〜18Vとなっています。そこで、9Vから18Vの範囲を設定してデータを取りました。出力電圧は入力電圧に依存することなくきわめて安定しています。9V〜18V入力で10mA〜100mAを取り出した時の出力電圧は30.15Vから30.18Vの範囲内に収まりましたので、変動率は0.1%以内ということになります。
上記のデータを使ってグラフを変えてみたのがこちらです。実験回路の都合で5mA未満の正確なデータは取れていませんが、無負荷の状態でも出力電圧はほぼ30Vを維持しており、MAU100シリーズのように電圧が跳ね上がることはありません。しかし、パルス性のノイズが発生すると電圧が上昇することもありえますので、最低でも0.1mAくらいの微量のブリーダー電流を流しておくことを推奨します。
入力電圧を安定化した状態で、出力電流によって入力電流がどれくらい必要になるかのデータです。約25mAを初期値として出力電流に対して直線的に増加します。入力電流は入力電圧が高いほど少なくなります。
入力電圧および出力電流の組み合わせによって、電力効率がどう変化するのかを表したグラフです。入力電圧が低いほど高い効率が得られています。また、出力電流が多いほど効率が高くなります。
MCW03シリーズは、入力電圧の変動の影響を受けず、出力側の負荷の影響も受けない、安定化機能を持ったなかなか優秀なDC/DCコンバータです。右図は私なりに設計してみた回路の例です。
入力側のC0とL1はスイッチングノイズの逆流を防ぐためのインダクタです。MCW03が出すスイッチングノイズはmVオーダーですので1段フィルタで十分に機能するだろうと思います。C1はスイッチングのための電流を充放電して供給する役割です。C0とC1は低ESRのコンデンサが好ましいので、ESRが格段に低いOSコンがベストです。
C2とC2はいわゆるリプルフィルタですが、こちらも低ESRが望ましいのでOSコンがベストです。容量はあまり大きくすることはできず、MCW03各モデルごとに上限が決まっています。スイッチング周波数は300kHz前後で非常に高いので、容量が大きいことよりも300kHz〜数MHzあたりで十分に低いインピーダンスが得られることの方が重要です。スイッチングノイズの除去に念を入れたいのであれば、この先に100μHくらいのインダクタと適当な容量のOS-CON(総容量が定格を超えないように注意)によるπ型フィルタを追加します。
R1とR2は、保険のつもりで取り付けたもので、負荷は開放になった時に出力電圧が異常に高くならないためのブリーダー抵抗です。