フェトロン(TS-12AT7)データ


大昔に綴じたファイルを調べていたら、こんなものが出てきました。おそらく、1970年ころのプリアンプの製作記事(雑誌名はわからない)の切り抜きのようで、フェトロンという増幅素子の部分だけが残されていたものです。このフェトロンなるものは、「FET」と「electron tube」をくっつけた名称らしく、その実態はFETを使った擬似真空管です。従って、MT9ピンの足を持った金属ケースにはいっており、12AT7などのMT管を差し替えができる、というものらしいです。


TS-12AT7

記事は、TS-6AK5とTS-12AT7を使ったプリアンプでした。

その名のとおり、TS-6AK5は5極管6AK5仕様であり、TS-12AT7は双3極管12AT7仕様だそうです。残念ながらTS-6AK5のデータはありませんが、残された部分的な記事から察するに、6AK5と非常に良く似た特性ではあるが、プレート内部抵抗はTS-6AK5の方がはるかに高く、またフェトロンは真空管のようなヒーターを持たず、また5極管的特性であるにもかかわらずスクリーン・グリッドがありません。

下図は、TS-12AT7と12AT7のEp-Ip特性ですが、TS-12AT7は3極管どころか全くの5極管特性のままです。想像ですが、J-FETの上に高耐圧のトランジスタをカスコード接続にしたのを載せて、単に耐圧を高くしただけのものではないかと思います。これで3極管の代替というのは無茶だなあと思います。

下図はTS-12AT7のデータシートです。特徴(Feature)のところを見ると、"Zero Warmup"とか"No Microphonic"とあり、"No Screen Grid Power"、"No Heater Power"という宣伝文句も目に付きます。ピン接続では、4番ピン、5番ピン、9番ピンはいずれの無接続(N/C)ですからヒーター電流は流れません。12AT7が挿入されていたアンプにこれをいきなり差し替えると、ヒーターまわりのところで不都合が生じるかもしれません。過去にはこんな変わったデバイスも存在したのだ、くらいに思って頭の隅っこにでもしまっておいてください。


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