テスターのACVレンジ周波数特性とその適性


私がまだ小学校にあがる前、電気技師を目指していた若き頃の叔父が東京の我が家やってきて、秋葉原で木製のキャビネットやら真空管やらフィールド型のスピーカーやらを買い込んで、泊り込みで我が家のためにラジオ付き電蓄を作ってくれたことがありました。金属製の針をネジ止めで使用するプレーヤーがついていたのを覚えています。

数年後、その叔父をたずねた時、彼が私にピン差込式のかなりいいテスターをプレゼントしてくれました。思えば、私が電気弄りの世界に迷い込んだ最大のきっかけというのは、叔父がくれたテスターだったのだと思います。このテスターはなんと30年もの間、私のよき伴侶となりました。しかし、時代の変化とともにやがて私もデジタル式のテスター、すなわちDMM(デジタル・マルチ・メーター)なるものを使うようになり、その便利さに感嘆し、今や手放せなくなったのがFLUKE 73です。

50Hzの商用電源の電圧や、回路の直流電圧の測定の場合は迷わずDMMを使用していますが、アンプの出力電圧や周波数特性となると電子電圧計(LEADER LMV-181A)の出番となります。テスターは万能ではありません。そのことを確認するために手元にある4種類のテスターのACVレンジにおける周波数特性を測定してみました。


その答えが以下のグラフです。


まとめ

デジタルテスターは電気工事に使われるという前提で考えると50/60Hzの交流電圧が正確に測定できれば十分ともいえるので、それを拡張して400Hzあるいは1kHzくらいまで一定の精度が得られればよしとするようです。廉価なデジタルテスターで1kHzよりも高い周波数での測定は無理だと思った方がいいでしょう。

アナログテスターは内部回路もアナログメーターを使ったものと、内部回路は実はデジタル式でみかけだけアナログのものがあります。アナログメーター式のものは原理的に周波数特性が良いので100kHzまでフラットです。但し、アナログメーター式のものは3V以下の低電圧では全く精度が得られないので周波数特性は良くてもオーディオ信号の電圧特定には適しません。

ADVANTESTのR6452Aはデジタルテスターの中でもかなり高価な部類にはいります。値段が高いだけあって測定精度は圧倒的に高く、周波数特性もアナログメーター並みです。しかし、700kHzで-3dB落ちですのでオーディオアンプの周波数特性の測定ではちょっと物足りません。KEADERKENWOODから出ている電子電圧計ならば1MHzで-1dB落ちくらいの特性が得られますのでそちらを推奨します。


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