3端子レギュレータ"LM317T"を定電流回路として動作させた時の特性


差動回路を使うアンプでは「定電流回路」が必要になります。特に、全段差動プッシュプル・アンプでは、出力段の共通カソード側に定電流回路を挿入するため、数十mAの電流をまかなえる定電流回路がいります。定電流回路は、トランジスタとダイオードを組み合せることで用意に作ることができますが、3端子レギュレータを応用しても作ることができます。

右図は、3端子レギュレータ"LM317T"を使った定電流回路です。「out〜adj」間に抵抗(R)を1本入れただけで定電流回路になってしまいます。LM317Tの「out〜adj」間電圧は「1.25V±0.05V」で一定なので、定電流特性は、抵抗「R」の値で一意に決定されます。

定電流特性(A)=1.25V÷R(Ω)
または、
定電流特性(mA)=1.25V×1000÷R(Ω)


右図は、LM317Tの実測データです。4mAから38mAまでの範囲で測定しました。手持ちの抵抗の組み合せによる簡易計測なので、動作電流値が38mAどまりだったり、測定点がまばらですが、ご容赦ください。

定電流特性を決定する抵抗値と、計算上の電流値は以下のとおりです。

抵抗値定電流特性
300Ω4.17mA
200Ω6.25mA
150Ω8.33mA
100Ω12.5mA
75Ω16.7mA
56Ω22.3mA
33Ω37.9mA

測定結果によれば、最低動作電圧は、10mA以下で3V、20mA以上では4Vが必要です。それ以下では、定電流特性が得られなくなります。充分な動作電圧が与えられて定電流動作領域にはいると、非常に優れた定電流特性を示します。

今回、さぼって測定しなかった40mA以上および10V以上の領域での特性は、そのうち、機会を見つけて測定しようと思っています。まずは、得られたデータだけでもと思ってアップしました。


使用上の注意:

(1)定電流素子としてはかなりノイジーですので、プリアンプなどデリケートな信号を扱う用途には適しません。低雑音性能が要求される用途では、トランジスタを使った定電流回路を組むことを推奨します。

(2)使用条件によっては自己発振することがありますが、どんな原因で発振するのか原因がはっきりしません。多くのメーカーが製造しており、安定度において各社ごとに微妙な違いがあるようです。安定性に問題が生じた場合は、メーカーを変えてみるといいかもしれません。

(3)オークションなどで中国製の劣悪な偽物が出回っています。まともなものを普通に購入しても100円〜200円で入手できますので、つまらないところでケチらないようにしましょう。


データライブラリに戻る