このホームページでご紹介した「6B4Gシングル・アンプ」では、初段とドライバ段で5687が活躍しています。5687のプレート特性データはあまり見掛けたことがなく、仕方がないので自分で測定することにしました。NEC製の通測用5687とSylvania製の5687WAを何本か測定してみてわかったことは、12AX7と同様に「Eg=0V」の時のカーブに相当のバラツキがあるということでした。同一ロットであっても、まっすぐ立ち上がっている球と、立ち上がり部分がぐにゃっと曲がっている球とがあります。アンプを設計する際、この点には気をつけなければなりません。とはいうものの、バイアス電圧が-2V以下でプレート電流が1mA以上の領域でのμはどの球も非常に安定しています。
以下に、5687のデータをまとめてみました。ヒーター電流は片ユニットあたり0.45Aもあり、これはビーム出力管6V6と同じです。また、球1本分のヒーター電流は0.9Aですから、この値は大型ビーム出力管6L6に匹敵し、この球のヒーターの大飯食らいぶりには驚かされます。いい調子で何本も使おうとすると、たちまちパワートランスのヒーター巻き線の容量が足りなくなります。
注意事項としては、他の主な双3極管(12AX7, 12AU7, 6FQ7 etc.)とピン接続が違うこと(6, 8, 9-pin)、大変熱くなることの2点です。
Name 5687 5687WA Base MT9 MT9 Type Tri Tri Tri Tri I I Eh 6.3V/12.6V 6.3V/12.6V Ih 0.9A/0.45A 0.9A/0.45A Cin 4.0pF 4.0pF - - Cout 0.6pF 0.5pF - - Cgp 4.0pF 4.0pF - - Ebb max 1000V 1000V - - Ep max 300V 300V 330V 330V Pp 4.2W 4.2W 3.75W 3.75W both units 7.5W 7.5W Rg1(F)max - - 0.1M 0.1M Rg1(C)max 1M 1M - - ehk(K+) 90V 100V ehk(K-) 90V 100V Eb 120V 180V 120V 180V Eg1 -2.0V -7.0V -2.0V -7.0V Ib 36.0mA 23.0mA 36.0mA 23.0mA gm 11.5 8.5 11.5 8.5 μ 18 17 18 17 rp 1.56kΩ 2.0kΩ 1.56kΩ 2.0kΩ pin connection 1P(1),1G(2),1K(3),H(4),H(5),2K(6),2G(7),HM(8),2P(9) 1P(1),1G(2),1K(3),H(4),H(5),2K(6),2G(7),HM(8),2P(9)
ここでは2本の5687を測定しました。グラフ上の黒い線の特性が、メーカー発表データに最も近い球です。青い線(0V、-1V、-5Vだけですが)はもう1本の球です。0Vのときの線は極端に右に寄っていますが、-5Vになると黒い線に近づいてきています。5687は、この2本の線の範囲でバラツくと考えて回路を設計するといいでしょう。
この5687WAは、カーブが上記NEC製の青い線の球に酷似しています。5687は、gmが非常に高い球種なので、同一プレート電圧、同一バイアス電圧の場合のプレート電圧は極端にバラツキますが、特性カーブ全体の形はどれも非常によく揃っています。