6FQ7のルーツは、すくなくともメタル管の6J5までさかのぼることができます。6J5から6FQ7に至るまで基本特性は全く変わっていないため、プレート特性に関しては同じであるとみてよいです。メタル管の6J5は、後にG管の6J5GとGT管の6J5GTになってゆきます。6J5GTはさらに複合化されて6SN7GTになります。6SN7GTの仲間には12SN7GTと12SX7GTとがあり、違いはヒーターの規格だけです。6SN7GTだけでも、構造的にみるとさまざまなヴァリエーションがあり、後期のものではボタンステム化され、さらにハカマがとれたパンツむきだし型のものも登場してます。6SN7GTが高信頼化されたものには5692があり、オクタル・ベースはこれでおしまいです。
電気的特性が同じままでMT9pin化されたのが6FQ7と12FQ7で、2ユニット間にシールドが設けられて9番pinに接続されたのが6CG7のはずですが、メーカーによってはこの区別がなされていないことがあり、シールドなしのまま6FQ7/6CG7と表示された球もあります。この球はよほどに便利だったのでしょう、ロクタル管にも2シリーズ(7A4/14A4と7N7/14N7)があります。
以下に、6J5から6FQ7に至るファミリー全体についてまとめてみました。ただし、同一管名であってもメーカーによって発表数値がことなるので、このデータが絶対というわけではありません。内部抵抗(rp)がどれも7.7kΩとなっていますが、これは明らかに誇大広告というべきで、せいぜい9kΩ〜10kΩです。
Name 6J5
VT946J5-G
VT94-A6J5-GT
VT94-D6SN7-GT
12SN7-GT
12SX7-GT6SN7-GTB
12SN7-GTA5692 6FQ7
12FQ76CG7 7A4
12A47N7
14N7Note Metal G GT GT GT GT MT MT Loctal Loctal Type Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri Tri I I I I I I I I I I I I I I I I Base US US US US US US MT9 MT9 Loctal Loctal Eh 6.3V 6.3V 6.3V 6.3V
12.6V6.3V
12.6V6.3V 6.3V
12.6V6.3V 6.3V 6.3V
12.6VIh 0.3A 0.3A 0.3A 0.6A
0.3A0.6A
0.3A0.6A 0.6A
0.3A0.6A 0.3A 0.6A
0.3ACin 4.2pF 4.2pF 4.2pF 2.8pF 3.0pF 2.8pF 3.0pF - - 2.4pF 2.4pF 2.3pF 2.3pF - - - Cout 5.0pF 5.0pF 5.0pF 0.8pF 1.2pF 0.8pF 1.2pF - - 0.34pF 0.26pF 2.2pF 2.2pF - - - Cgp 3.8pF 3.8pF 3.8pF 3.8pF 4.0pF 3.8pF 4.0pF - - 3.6pF 3.8pF 4.0pF 4.0pF - - - Ebb max - - - - - 330V 330V - - - - - - - - - Ep max 300V 300V 300V 300V 300V 275V 275V 300V 300V 330V 330V 300V 300V - - - Pp max
both units2.5W 2.5W 2.5W 5.0W 5.0W 5.0W 5.0W 2.5W 2.5W 4.0W 4.0W 3.5W 3.5W - - - - - - 5.0W 7.5W 5.0W 5.7W 5.0W - - Rg1(F) max 1M 1M 1M 1M 1M 2M 2M 1M 1M 1M 1M 1M 1M - - - Rg1(C) max 1M 1M 1M 1M 1M 2M 2M 1M 1M 2.2M 2.2M 1M 1M - - - Ehk(K+) - - - - 100V - 200V - - - Ehk(K-) 90V 90V 90V 200V 100V 200V 200V 200V - - Eb 250V 250V 250V 250V 250V 250V 250V 250V 250V 250V Eg1 -8.0V -8.0V -8.0V -8.0V -9.0V -8.0V -8.0V -8.0V -8.0V -8.0V Ib 9.0mA 9.0mA 9.0mA 9.0mA 6.5mA 9.0mA 9.0mA 9.0mA 9.0mA 9.0mA gm 2.6 2.6 2.6 2.6 2.2 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 μ 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 Pin-1 BS BS BS 2G 2G 2G 2P 2P - - Pin-2 H H H 2P 2P 2P 2G 2G - - Pin-3 P P P 2K 2K 2K 2K 2K - - Pin-4 - - - 1G 1G 1G H H - - Pin-5 G G G 1P 1P 1P H H - - Pin-6 - - - 1K 1K 1K 1P 1P - - Pin-7 H H H H H H 1G 1G - - Pin-8 K K K H H H 1K 1K - - Pin-9 * * * * * * NC IS - -
このシリーズの球は、gmもそう高くなく、μも低めということもあり、どちらかというと「ドンカン」な球ということができます。ドンカンということは、パラレル接続しても、段数を重ねても発振しにくいということです。また、製造時の精度があまり要求されないため、結構特性が揃っています。プレート電流を2mA以上流してやりさえすれば、なかなか良い直線性が得られます。欠点としては、低雑音、低マイクロフォニック仕様ではないということ、そして、ヒーター・ハムを拾いやすい点です。プリ・アンプに使用する場合は、ぜひとも直流点火が必要です。この問題は6SN7GTでも同じです。
特性の大変良く似た管種に12AU7ファミリーがあります。6FQ7と12AU7との違いは、
参考データとして日立製とNEC製の6FQ7の実測データをそえておきます。
- 6FQ7の方が最大プレート損失が大きい。4W(6FQ7) > 2.75W(12AU7)
- 6FQ7の方がμがやや高い。20(6FQ7) > 17(12AU7)
- 6FQ7の方が直線性が良く、歪みが少ない。
- 12AU7の方が雑音が少ない。
- ヒーター電力が違う。6.3V×0.6A(6FQ7) > 6.3V×0.3A(12AU7)
- 12AU7の方がCg-pが圧倒的に小さい。1.5pF(12AU7) < 3.8pF(6FQ7)