さまざまな小型電源トランスのデータ(低圧編)・・・90V未満


アンプや電子回路の電源の設計いつもわからなくて困るのが「この電源トランスを使ったら電源電圧は何Vになりそうか」という問題です。電源トランスの2次巻き線やタップには「0-15V」という風に電圧が表記されてはいますが、単純にそのとおりの電圧が出ているわけではありませんし、整流後の電圧も同様です。仕様をきちんと提示して電源トランスを特注すると、指定した負荷電流を取り出した時に正確に指定した電圧になるように作ったものが納品されますが、市販の汎用電源トランスはかならずしもそのような仕様ではないように思います。また、各社ごとに設計基準や設計の考え方が異なるようなので、決まったルールがありません。そこで、ある本を執筆したのをきっかけにいくつかの電源トランスについて実測データを公開することにします。

小型電源トランスその1

本サイトのPHONOイコライザなどで使用した電源トランスの実測データです。

メーカー型番形式取付けビス間隔高さ1次2次
東栄変成器J-1501EIコア51mm36mm100V0-15V(AC0.1A)×2
東栄変成器J-18022EIコア51mm36mm100V18V-0-18V(AC0.2A)
デジットキットHDB-8(9V)トロイダルコア55mm×55mm35mm0-100V-120V0-9V-15V-18V(AC0.2A)×2

下のグラフは整流出力特性の実測データです。

J-1501(15V×2)は30Vとして、J-18-22は36Vとしてブリッジ整流して測定しています。HDB-8は、18Vあるいは15V巻き線を直列にして36Vおよび30Vとしてブリッジ整流して測定しています。

整流ダイオードはW02G(100V/1.5Aタイプ)を使用し、整流出力の平滑コンデンサは500μF(1000μFを2個直列)です。異なる整流ダイオードを使用した場合は電圧は微妙に変化します。また、平滑コンデンサ容量を増減すると電圧はわずかに上下します。

ブリッジ整流した時に取り出せるDC最大電流は各巻き線のAC電流の約63%ですので、J-1501(0.1A)では63mA、J-18022およびHDB-8では126mAになります。

1次側に正確にAC100Vを与えた時のデータですので、AC100V側の電圧が変動した場合は、概ねその変動率に応じて整流出力電圧も変動します。

上記と同じ整流回路の状態でセンタータップをアースし、±2電源とすると左のようになります。単純に電圧がプラス側とマイナス側に2分割されただけで、合計の電圧は変わりません。


小型電源トランスその2

本サイトの真空管回路のヒーター電源で使用した電源トランスの実測データです。

メーカー型番形式取付けビス間隔高さ1次2次
東栄変成器J-121EIコア75mm54mm100V0-6V-8V-10V-12V(AC1A)
東栄変成器J-1205EIコア60mm43mm100V0-6V-8V-10V-12V(AC0.5A)

下のグラフは整流出力特性の実測データです。

12Vタップをブリッジ整流して測定しています。整流ダイオードは大型の100V/5Aタイプを使用し、整流出力の平滑コンデンサは4700μFです。異なる整流ダイオードを使用した場合は電圧は微妙に変化します。また、平滑コンデンサ容量を増減すると電圧はわずかに上下します。

ブリッジ整流した時に取り出せるDC最大電流は各巻き線のAC電流の約63%ですので、J-121(1A)では0.63A、J-1205では0.315Aになります。

1次側に正確にAC100Vを与えた時のデータですので、AC100V側の電圧が変動した場合は、概ねその変動率に応じて整流出力電圧も変動します。

<現実的な用法>
J-121で12.6V/0.6Aのヒーター電源とする場合、整流出力電圧は13.4Vくらいなので、整流直後を4700μFで受けた後「1.2Ω〜1.5Ω/2W+4700μF」くらいのCRリプルフィルタを追加すればちょうどいい電圧となります。J-1205で12.6V/0.3Aのヒーター電源とする場合はドロップ抵抗値は2.2Ω〜2.4Ω/1Wになります。


小型電源トランスその3

本サイトの真空管回路のヒーター電源で使用した電源トランスの実測データです。

メーカー型番形式取付けビス間隔高さ1次2次
東栄変成器J-631EIコア60mm43mm0-90V-100V0-5V-6.3V(AC1A)

下のグラフは整流出力特性の実測データです。

6.3Vタップをブリッジ整流して測定しています。整流ダイオードは大型の100V/5Aタイプの通常のシリコンダイオードと60V/3Aタイプのショットキ・バリア・ダイオード(SBD)の2パターンで、整流出力の平滑コンデンサは4700μFです。異なる整流ダイオードを使用した場合は電圧は微妙に変化します。また、平滑コンデンサ容量を増減すると電圧はわずかに上下します。

ブリッジ整流した時に取り出せるDC最大電流は各巻き線のAC電流の約63%ですので、J-631(1A)では0.63Aになります。

1次側に正確にAC100Vを与えた時のデータですので、AC100V側の電圧が変動した場合は、概ねその変動率に応じて整流出力電圧も変動します。

<現実的な用法>
J-631で6.3V/0.6Aのヒーター電源とする場合、シリコンダイオード整流時の出力電圧は6.8Vくらいなので、整流直後を4700μFで受けた後「0.82Ω/2W+4700μF」くらいのCRリプルフィルタを追加すればちょうどいい電圧となります。ショットキ・バリア・ダイオード(SBD)を使えば整流出力電圧は7.1Vと高くできるのでドロップ抵抗値は1.2Ω〜1.5Ω/2Wとなってフィルタ効果を少し高めることができます。


データライブラリに戻る