オーディオ用小信号ローノイズ・トランジスタのベース〜エミッタ間電圧(VBE)の実測データです。被測定トランジスタは、東芝製小信号汎用トランジスタ2SC1815、東芝製ローノイズ・トランジスタ2SC2240(2SA970とコンプリ)、日立製ローノイズ・トランジスタ2SC1775(2SA872とコンプリ)、日立製ローノイズ・トランジスタ2SC2547(2SA1085とコンプリ)の4種です。
コレクタ電流は0.2mA〜1mAの範囲で測定し、その時のコレクタ〜エミッタ間電圧は約6Vです。また、測定にあたっては、自己発熱による特性変動を最小にするために、室温25℃にして被測定トランジスタを強制空冷しています。
各トランジスタのコレクタ電流=1mA時のベース〜エミッタ間電圧は、0.566Vから0.634Vまでかなりの開きがあります。私達は、トランジスタ回路を設計する際、ベース〜エミッタ間電圧は暫定的に0.6Vとして設計することが多いですが、選定するトランジスタによっては、ほぼ同等の特性のものであってもこれほどに違いがあるということです。
測定器具の都合で0.2mA〜1mAの範囲しかデータを取っていませんが、0.2mA以下の領域では線を延長していただいても大丈夫です。
ベース〜エミッタ間電圧は、ベース電流と温度で決まります。ベース電流を正確に測定するの難しいのでコレクタ電流で測定していますが、同じコレクタ電流を流してもhFEの大小でベース電流は変わってしまいます。トランジスタのhFE値は非常にばらつきが大きいので、みなさんの手元にあるトランジスタのベース〜エミッタ間電圧がこのデータと同じになる保障はありません。hFEが高ければベース〜エミッタ間電圧は低い値になりますし、高ければその逆になります。
ベース〜エミッタ間電圧は-2mV/℃の温度依存があるので、周囲温度によって変化します。コレクタ電流値が1mA以上になると自己発熱によってやはりベース〜エミッタ間電圧はどんどん小さな値になっていってしまって、この直線を延長したとおりにはなってゆきません(右下がりになる)。
PNPトランジスタ(2SAタイプ)の測定は行ないませんでしたが、コンプリ・ペア指定のNPNトランジスタ(2SCおよび2SD)とPNPトランジスタ(2SAおよび2SB)のベース〜エミッタ間電圧は同じではなく、一般にPNP(2SAおよび2SB)の方がNPN(2SCおよび2SD)に比べて常に0.01〜0.02V低い値になります。