Aカーブのボリュームの偏差


可変抵抗器、俗称=ボリュームは、抵抗体(炭素皮膜)を円形に塗ったところに回転する接点を当てて、接触する場所によって抵抗値が連続的に変化するようにした部品です。可変抵抗器のタイプには「A型」と「B型」があります。「C」とか「D」もありますが滅多に使うことはありません。
A型・・・音量調整で使った時に、人間の耳が感じる音量の変化が直線的に聞こえるように、意図的に塗りムラをつけたもの。
B型・・・全体に均一に塗ることで、回転とともに抵抗値が直線的に変化するようにしたもの。

アルプス製ミニ・デテント・ボリューム「50kΩAタイプ×2連」

回転とともに、コリコリッとクリックがあるタイプで、抵抗値精度が高く、音質的にも定評があるものです。下図は、角度による抵抗値の変化と、左右チャネル誤差の実測値です。ちょっとびっくりするくらいの高い左右精度が出てます(グラフでは見事に線が重なってしまっている)。お値段ですが、若松通商(通販もある)で1,800円でしたがこれはいかにもお高いですね。三栄電波に行ったら1.450円で出してました。クリックなし(中味は同じ)ならラジオデパート3F門田無線で945円で買えます(2007.8現在)。


秋葉原の千石電商で1個140円で購入した「100kΩAタイプ×2連」

実測してみたところ、左右でかなりの誤差があり、全体として、CH1の方がCH2よりも音量が小さくなりっぱなしです(下図左)。下図右は、2つのチャネルの偏差です。回転位置によっては、一方のチャネルの方が最大で1.4倍(3dB)ほども差があります。ボリュームをまわすと、音の方向が動いてゆきます。こんな現象は、家にあるステレオやWalkmanで経験された方も多いと思います。

そこで、これを補正するために、1CH側のボリュームについている3つの端子のうち、入力側〜出力側(真中)間に一定の430kΩの抵抗を入れてみることにしました(右図)。その結果が、下図左の点線と、下図右の青い線です。ボリュームの回転位置によっては微妙に一方のチャネルに偏りますが、どの回転位置においてもその偏りは1dB程度に抑えられています。これならば、違和感なく使えるでしょう。

なお、これによる1CH側の入力インピーダンスは若干低下することになりますが、ボリュームmax位置では、補正抵抗の存在はなくなりますので、実用上、大勢に影響なしと判断しています。もっとも、このように片チャネルだけ抵抗を挿入するなどとんでもない、と仰る方もいらっしゃるかもしれませんね。


秋葉原の千石電商で1個140円で購入した「100kΩAタイプ×2連」(続編)

前回に懲りずにもう2個購入してきました。早速測定してみたところ、以下のような結果になりました。どちらもボリューム中間位置(25%〜75%)での減衰率の比(緑色の線)が0.7くらいになっています。ひどい時には0.6を割ってしまっています。こんなボリュームをステレオ・アンプに使ったら、音が片側に偏ってしまってとても実用にはなりません。このオタンコな2連A型可変抵抗器を強引に矯正して使ってみることにします。(その後、千石電商の140円2連を10個買ってすべてひどい誤差だったので、誤差のでかい不良品ばっかり安く仕入れているんではないかと思ってしまう。)

試料1試料2

矯正の対象としたのは試料2の方です。Unit1(濃紺)の方を持ち上げてやり、Unit2(ピンク)の方を引っ張るよう補正抵抗を突っ込みます(右下図)。

Unit1のボリューム全体の抵抗値は105kΩ(実測)でしたが、180kΩの抵抗を入れたために音量調整位置が"min"の時には64kΩまで低下します。Unit2の方のボリューム全体の抵抗値は94kΩ(実測)と若干低く、390kΩの抵抗を入れたために音量調整位置が"max"の時に76kΩまで低下します。

結局、回転位置によって入力インピーダンスが左右で64kΩ〜105kΩに変化するボリュームになってしまったわけですが、送り出し側の出力インピーダンスが充分に低ければ(10kΩ以下)左右バランスには影響ありませんのでこれでいいことにします。というか、ここまでやらないと箸にも棒にもかからないということです。

まあ、むちゃくちゃといえばそのとおりで全く強引というほかないと思いますが、これくらい駄目ボリュームでも無理やりでも矯正してやれば、なんとか正しい人生を歩んでくれるもんです。矯正後の減衰特性を以下に示します。これで充分に申し分ない特性ですが、390kΩを300kΩくらいに減じてやれば75%あたりの偏差をなくせてさらに高精度で揃えることができます。

矯正された試料2

※補足・・・同じ売場で購入してきた「100kΩBタイプ×2連」の方はさらにひどい状態であることが発覚しました。B型ボリュームは精度がいい、というのはたぶんウソです。


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