<確実に効果が出る>

電源C・出力Cの増量
Effective improvemrnt for Simple FET Differential Headphone Amplifier


差動ヘッドホン・アンプはごくごく簡単なことで改善することができます。わずかな予算とちょっとした作業でやれますので、機会があったら是非おためしください。

●SEPP-OTL回路の信号経路

SEPP-OTL回路の基礎である信号経路のしくみについてちょっとお話しておきます。

右図は1電源方式および2電源方式のSEPP-OTL回路の模式図です。出力段にトランジスタを使ったSEPP-OTL回路では上下2つの出力段増幅素子を使いますが、各増幅素子はそれぞれ独立して1つの負荷(Load)を駆動します。そのため、上側トランジスタによってできる信号ループと下側トランジスタによってできる信号ループの2種類が作られます。

1電源方式の場合は、上側トランジスタによって負荷(Load)を駆動する信号電流のループの中には「+電源C」と「出力C」の2つのコンデンサが介在します。下側トランジスタによって負荷(Load)を駆動する信号電流のループの中には「出力C」の1つのコンデンサが介在します。「出力C」がオーディオ信号の経路であることは誰にもわかると思いますが、案外見落とされているのが「+電源C」の役割です。SEPP-OTL回路では、電源がスピーカー(ヘッドホン)の中を流れる信号電流の通り道になっています。この2つのコンデンサは低域における負荷の駆動能力に影響を与えますので、試しに容量を大きくする変更をしてみることにしました。

プラスマイナスの2電源方式のSEPP-OTL回路では「出力C」がいらなくなるわけですが、そのかわりにプラス電源側とマイナス電源側の両方に「+/−電源のC」が必要になるので、電源のコンデンサが重要な信号経路を構成することには変わりありません。「出力C」をなくしたら信号経路からコンデンサがなくなったというわけではありません。電源のコンデンサの役割がもっぱらリプル・フィルタだと思っていたらいいアンプは作れません。


●コンデンサ追加と効果

100V版の差動ヘッドホン・アンプの当初の設計では、
電源コンデンサ=1000μF+470μF=1470μF
出力コンデンサ=470μF+220μF=690μF
となっていましたが。今回の実験では、
電源側は、3300μF+470μF=3770μF、
出力側は、1000μF+220μF=1220μF
としてみます。もともとついていたニチコンMUSEの金色バージョンは音の癖が強いので撤去し、比較的大人しいMUSE黒バージョンのみ残します。追加したのは電源側が千石電商B1にある黒い普通タイプ、出力側が同じく千石電商B1にある普通タイプのうち茶色の低ESR型です。いずれも一般品です。

交換&増量の効果ははっきり出ました。あくまでイメージですが、これまでは150Hzあたりが耳につくような鳴り方だった・・・150Hzあたりに周波数特性の山があるわけではありません・・・のが取れてすっきりしました。帯域感といっていいのでしょうか、上も下も広がったような聞こえ方に変化しました。若干気になっていた音のきつさが取れたといっていいでしょうか。総じていい方向に変化したので今回の改造は成功とします。

容量はどれくらいにしたらいいかですが、電源側は10000μFくらいまで、出力側は4700μFくらいまでならデメリットはありません。MDR-CD900STやMDR-7506のような低域再生能力はあまり高くないヘッドホンでも十分に認識可能で、低域再生能力の高いヘッドホンでは明確な違いを体感できると思います。費用的にみればせいぜい500円程度のものですので、興味がある方はやってみてください。なお、追加コンデンサがうまく収まらない場合は、少々離れてもいいので近所にラグを立てて線でつないでください。


●12V版における容量増強

12V版の差動ヘッドホン・アンプの設計では、
電源コンデンサ=2200μF
出力コンデンサ=1000μF
となっています。これを増強する場合、ラグ板のサイズの制約などもあるため、
電源コンデンサ=3300μF
出力コンデンサ=2200μF
くらいが無理なくできる上限でしょう。3300μF/16Vのコンデンサは頒布しています。

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