Mini Watters
改訂版直熱管171A/71Aミニワッター

71Aシングル・ミニワッター。
ミニワッターは5687や6N6Pといったコンパクトな双3極管を使ったシングルアンプからスタートしましたが、構想の段階から71Aあるいは171Aのような小型の古典管を使うことも視野にはいっておりました。この種の球をミニワッターとして仕上げようというのは応用の領域に属します。すでにこちらのページ(http://www.op316.com/tubes/mw/mw-171a.htm)の記事を発表していましたが、今回あらためて全面改訂することにしました。

そもそもは2012年初夏のある日、差動ヘッドホンアンプや全段差動PPアンプを愛用してくれている音響のプロ達が我が家にやってきて、そこで171Aシングル・ミニワッターを聞いていたく気に入ってお帰りになったことからこの改訂版の話がはじまります。シングルアンプなのでいたしかたないとはいえ、左右の定位感は全段差動に譲ります。事実、数値的にも100Hz以下ではどんどん劣化しています。ミニワッターは「できだけ20Pの平ラグでやりくりする」という制約があるのであまり贅沢はできず割り切っていたのですが、もうすこし工夫すれば20Pラグのままでも回路の改善が可能であることに気づき、今回の改訂となりました。


71A/171Aおよび5A6/CV4097について>

RCAがUX-171を発表したのは真空管の黎明期である1925年のことです。同時に発表されたのがより小さな電池用のUX-120(シングルで0.2W)と大出力用のUX-210で、UX-171はその中間に位置します。UX-210が大出力だといってもシングルで1.5Wしか出ませんでしたが、とにかくそういう時代です。シングルで0.7W出せるUX-171のおかげでまとまった音量でラジオが聞けるようになったわけです。しかし、数年後に45の前身であるUX-245やよりパワーのあるUX-250が出るに及んで、UX-171はみるみる影が薄くなってゆきます。まともなオーディオアンプであるためにはシングルの0.7Wでは話にならず、171一族はオーディオ界の一員として活躍する場はほとんどありませんでした。

そんな171ですが、ミニワッターとしてみるとまさにぴったりのパワーサイズであり、しかも直熱管であるために抜群の直線性の良さを持っています。小型のガラス管に細いフィラメントを見ると、いかにも華奢でかぼそい音がしそうに思えますがとんでもない。実に堂々とした2A3なんか太刀打ちできない素直かつ太い音がする球なのです。ちなみに、171に関してはデータ見たことがなく個体があったとしたらおそらく博物館行きで、入手可能なのは171Aあるいは71Aです。171Aや371Aという風に3桁ですと茄子管で2桁はダルマ型のST管です。このシリーズは171A、371A、71Aいずれも特性は共通です。

5A6は寡聞にしてその存在を知りませんでしたが、掲示板で教えていただいたものです。100MHzまでの送信管として活躍した球で、コンバットに出てくる無線機にはこの5A6が使われていました。これを3結にすると直熱管らしい優れた直線性を誇ります。軍用の高信頼球としてCV4097が同等管で、別名S2P20ともいいます。こういう球は、データを見た瞬間に「使える!」とピンときます。

71A/171Aや5A6は完全なる過去の遺産で今となっては新品は作られてはいません。私は米国の通販AESで中古球の171Aを4本入手しましたが、AES側で測定済みであったにもかかわらず1本はバイアスが異常に深い使用不能球でした。この種の球に不良交換は期待できませんので、入手に際しては自己責任・自己負担の心積もりをしてください。また、いずれも数少ない遺産球なので無闇に買い集めたり、死蔵しないようにしたいものです。


<アンプ部回路>

初段は2SK30Aによる増幅で、出力段は71A/171Aシングル回路とした2段直結アンプです。ミニワッター用の汎用シャーシが使えるように、真空管は出力管の2本だけとして、初段や電源部はすべて半導体で固めたハイブリッドアンプです。入力信号を最も大きく増幅(100倍以上)しているのは初段の2SK30Aです。その上にあるトランジスタに増幅作用は全くなく、大きな振幅の信号を出力段に送り込むために単に2SK30Aの耐圧を高める役割をしています。出力段の71A(171A)は信号電圧の増幅は2〜3倍程度にすぎませんがスピーカーを駆動する電力を作り出しています。

各部の電圧はおおよそ以下のとおりです。なお、ここでの値はAC100Vの供給電圧が正確に100Vの場合ですが、通常は電圧変動があるのと部品のばらつきもありますので正確に同じ値になるとは限りません。

V+279V〜282V
A点184V〜187V
B点67V〜73V(△)
C点5.5V〜5.6V
D点4.9V〜5.0V
E点0.53V〜0.57V
F点107V(※ここを優先)
G点273V〜276V

※F点の電圧が107V±1Vとなるように2SK30Aのソース側の500ΩVRを調整してください。

△B点の電圧は、71A/171Aのばらつきによって変化します。左右で3V以上異なる場合は、左右利得や最大出力に差が生じます。また、B〜F間の電圧が33V以下であったり、45V以上である場合は球の特性劣化や不良の疑いがあります。なお、G点の電圧が高い場合はB〜F間の電圧は増加方向にシフトします。

ご注意:2SC3425の入手が困難になったため、2SC3209あるいは代替トランジスタを頒布しています。


初段の設計

入力端子から初段2SK30Aまでの回路は、既発表のミニワッターの基本回路と同じなのでここでの解説は省略します。初段2SK30Aのゲート側に0.33μF/50Vのフィルムコンデンサを入れてあるのは、初段が高利得である上に出力段が直結化されていてDC的にデリケートであるため、入力につないだ外部装置のDC漏れから回路動作を守るために入れてあります。560kΩによって2SK30Aのゲートにアースと同電位を与えています。0.33μFと560kΩによって0.86Hz/-6dBのハイパスフィルタが生じますが、これくらいの定数であれば10Hz以上で申し分のないフラットネスが得られます。

初段は2SK30A(GRランク)を使ったごく普通の増幅回路です。71Aは鈍感で入力感度が低い球なので初段で相当に頑張って増幅しなければなりません。本機の設計では100倍以上が目標値です。71Aをスィングするためにはピーク値で±40V以上の振幅の信号が必要なので、初段は高増幅率なだけでなく、高出力電圧であることも要求されます。電源電圧は100V以上になります。

ドレイン電流(ID)の設計値は2.4mA〜2.5mAで、ドレイン負荷抵抗は47kΩです。無信号時のドレイン電流が2.5mAだとして、±1mAの変化をさせたとすると(1.5mA〜2.5mA〜3.5mA)47kΩの両端には±47Vの振幅が現れます。これくらいのドレイン電流で動作させるためには、2SK30AはIDSSが3.7mA以上のものを選別する必要があります。

初段電源電圧は187Vくらいです。2SK30Aの耐圧は50Vしかありませんので、耐圧不足をカバーするために耐圧が300V以上のトランジスタを乗せたカスコード回路にしてあります。5V〜6Vくらいのツェナダイオードを使ってトランジスタのベースを5V〜6Vに固定してありますから、エミッタ電圧は常時それよりも0.6V低い電圧で一定になり、これが2SK30Aのドレイン電圧になります。こうすることで2SK30Aには6V以上の電圧はかからなくなり、高圧はすべてトランジスタが引き受けます。しかし、このトランジスタは単なる素通しの動作しかしませんので、増幅作用については2SK30Aがすべてを支配します。

下図は初段のロードラインです。特性データは2SK30A類似の2SK246を借用し(※)、ドレイン電圧=5Vの時の特性(水色)をもとにして、カスコード回路とした場合の特性(青色)を求めています。カスコード化することで、高耐圧のJFETに化けるのです。そこに電源電圧=186V、負荷=47kΩのロードラインを引いています。緑色が動作基点です。初段利得ですが、2SK30AをID=2.4mA〜2.5mAで動作させた時のgmは2.4くらい(http://www.op316.com/tubes/datalib/k30aygm.htm参照)ですので、2.4×47kΩ=110倍くらいになります。

※東芝発表の2SK30Aのデータは、IDSSが2.8mAのものを使っているので本機の設計になじまない。

出力段の設計

出力段の動作は、プレート電圧=166V〜169V、プレート電流=15mA〜16mA、バイアス=-36V〜-40V(実測)くらいです。ロードラインは下図のとおりです。出力段をフルドライブするためには、バイアス電圧×2+αの信号を送り込む必要があります。振幅のプラス側はバイアスと同じくらい、マイナス側はバイアス×1.2くらいは最低限必要です。B点の電圧が69V〜72Vですから、プラス側の上限にあたるA点の電圧は112Vよりも十分に高くなければなりません。また、マイナス側は20V以下でなければなりませんが、本回路ではカスコード・トランジスタのエミッタ電圧(約5V)がこれにあたります。マイナス側はわりとぎりぎりに設定してありますが、これを欲張るとF点の電圧がもっと高くなってしまい、ひいては電源電圧が高くなりすぎになります。いろいろ考えた結果の電圧配分になっています。

出力段は、ミニワッターの基本回路の特徴でもある「ショートループ・コンデンサ」としてあります(100μF/350Vのつなぎかた)。詳しくは拙著「真空管アンプの素」およびこのページ(http://www.op316.com/tubes/single/single2.htm)をご覧ください。

出力管のフィラメントはDC点火しています。この種の回路では、抵抗2本または半固定抵抗器を使ったハムバランサを入れますが、本機では割り切って省略し、プレート電流はフィラメントのマイナス側の一端から取り出しています。フィラメント電源の残留ハムが少ないのでこんなことができるわけです。

出力トランスは、東栄変成器の小型かつ廉価なT-1200を使っています。この出力トランスは、見栄えや価格に似合わず優れた低域伝送特性を持っています。このことについても「真空管アンプの素」に詳しいレポートがあります。事実、こんなアンプから申し分の無い豊かな低域を聞くことができます。

全体の電圧配分の検討

左図は、真空管式の2段直結アンプの電圧の配分の概念図です。2段直結アンプでは、そのアンプを構成するすべての電圧が足し算されたもの=電源電圧、となります。調子に乗って設計してゆくと必要な電源電圧が高くなりすぎます。限られた電源電圧を有効に使うような工夫が必要です。本機では、初段管が2SK30Aとカスコード・トランジスタに置き換わるだけで基本的なものは変わりません。

出力段を十分にドライブするためには、初段コレクタ電圧はこれ以下にはできません。出力段のプレート電圧は最大出力を決める重要な要素ですし、出力段のバイアスは自動的に決まってしまうものです。いろいろやりくりして何とか280Vくらいに収めた、という感じです。

初段電源回路の設計と改訂・・・左右チャネル間クロストークの改善

初段電源回路についてもうすこし補足しておきます。初段電源は、22kΩによって電圧をドロップさせていますが、このドロップを助け、動作の安定度を高めることに貢献しているのがツェナダイオードの動作電流を作っている100kΩの抵抗です。ここに一定の電流を流すことで初段の電圧配分を維持しています。100kΩ側に流す電流が大きいほど動作条件の安定確保が有利になりますが、電源トランスの許容電流の制約があるのであまり増やすことはできません。初段の動作条件と47kΩと100kΩと22kΩは密接な関係にありますので、このうち1つでも変更しようとすると、これら4つをすべて計算し直さなければなりません。

初版の回路では、初段電源回路は左右共通にしていましたが、改訂版では左右を分離しました。左右共通にすると低域で左右チャネル間クロストークの劣化が生じていたからです回路をシンプルにコンパクトに仕上げたいという考えから、当初は左右共通にするという割り切りをしたのですが、やはり音に差が出てしまいました。初版においても、当初47μFであった初段電源コンデンサを100μFに増量することで若干の改善をしてはいましたが、改訂版では根本的な解決をはかりました。

左下のグラフは100μFの増量した初版の左右チャネル間クロストークのデータですが、200Hzあたりから下で顕著な劣化がみられます。右下(改訂版)では著しい改善がみられます。なお、1kHzあたりの平坦な部分はフィラメントのハムの影響です。高域側においても若干の改善がみられるのは、2SK3767のソース側に10μF/400Vのコンデンサを追加したことによる効果です。


<電源部の回路>

電源回路は、ミニワッターの基本回路をそのまま採用し、フィラメントのDC点火のための電源を2つ追加したものです。V+電源側はすでに発表済みのミニワッターの電源回路と同じですので詳しい解説は省略します。なお、初版と改訂版では、2SK3767あるいは代替のMOS-FETの簡易リプルフィルタの抵抗が、120kΩから100kΩに変更になっています。

電流容量の計算

本機のアンプ部の全消費電流は40mAをすこし超えたくらいになります。初段が4.3mA×2=8.6mA、出力段が15〜16mA×2=30〜32mAですので、680kΩに流す電流も加えると40〜42mAくらいになります。電源トランスの定格値が38mAですから微妙に定格オーバーです。

ハムを出さないためにはフィラメントはDC点火が必須です。71Aのフィラメントは5V/0.25Aですので、6.3Vをブリッジ整流して得られる約7Vをドロップさせれば容易に電源回路を作ることができます。DC0.25Aというのは、交流巻き線に換算するとAC0.4Aに相当します。電源トランスのKmB60Fには6.3V/AC1.5Aの巻き線が2つありますので、容量にはかなりの余裕があります。これらを整理してまとめたのが下の表です。

KmB60F定格値本機の設計値
230V巻き線230V×AC60mA(DC38mA)=13.8VA230V×AC66mA相当(DC41mA)=15.2VA
6.3V巻き線6.3V×AC1.5A(DC0.93A)×2=18.9VA6.3V×AC0.403A相当(DC0.25A)×2=5.1VA
VA計32.7VA20.3VA

電源トランスは、コア全体の容量(VA)と、各巻き線の電流容量(A)の両方を守るというのがお約束ですが、本機ではコア全体の容量(VA)余裕たっぷりですが、巻き線の電流容量(A)でお約束を若干ですが破っています。6.3V巻き線側の余裕がかなりあるので、温度上昇という点で十分帳尻が合うだろう、という判断です。電源トランスの温度上昇は他のミニワッターよりも少ないです。同じ電圧の組み合わせで、かつ230V巻き線の電流容量に余裕があるH9-0901ならば問題は全くありません。

リプルフィルタ回路

高圧側のリプルフィルタは、ミニワッターの基本回路そのままですのでここで説明すると冗長になるので割愛します。

フィラメントのDC点火電源はシンプルな2段CR型のリプルフィルタで、おそらく残留リプルは10mV程度まで追い込めると思います(実測10mVでした)。ここでも初版と改訂版では抵抗値の変更があります。71Aのフィラメントの定格電圧は5Vですが、初版の回路で実測したところ4.8V〜4.9Vくらいでやや低めだったので、改訂版では2.2Ωから1.8Ωに変更しました。これで4.9V〜5.0Vくらいになります。


<内部>

本ページの解説や配線図とは同じではありませんが、参考のために実機の内部画像を公開します。

UXソケットはmTソケットのようにセンターピンがありませんので、「コの字」型に曲げたアース母線は立てラグに固定し、そこにすべてのアースを集中させています。UXソケットの接続は右下の画像に書き込んであります。4本足のうち太い2本がフィラメント(F)です。

解説とどこが違うかというと、電源回路の整流ダイオードがブリッジタイプ(W02G)ではなく手元にあったダイオードを4個ずつ取り付けています。こういうダイオードを使うと穴の数が足りなくなって配線で苦労します。電源回路ラグパターンも微妙に異なっています(画像の方がレイアウトが未熟)。アンプ部側では、負帰還回路に100Ωの半固定抵抗器が使われていますし、出力管のソケットに余分なコンデンサ(茶色、1000μF/10V)が取り付けられています。部品の色も頒布しているものと同じではありません。シャーシは後面パネルの穴数が少ない試作版を使ったため、スピーカーインピーダンス切り替えのための6Pトグルスイッチがついていますが、現在頒布しているシャーシならばスピーカー端子が6個つけられるのでこのスイッチは不要です。


画像をクリックすると拡大します。

<電源部のパターン>

下図は電源部の平ラグパターンですが、上側がKmB90Fを使った場合で、下側がH9-0901を使った場合です。巻き線構造が異なるため整流方式のところだけが違っています。初版と比べて基本的な変更はありませんが、回路定数を見直していますので本文および回路図でご確認ください。

・「230V」と2つの「6.3V」は電源トランスにつなぎます。
・「GND」はアース母線につなぎます。
・「V+」は左右の出力トランスの「0端子」およびアンプ部の「V+」につなぎます。なお、出力トランスごとの1次2次のつなぎかたは以下のとおりです。

・「F +/-」は出力管ソケットのフィラメントにつなぎます。
・「LED」は電源スイッチ内蔵(あるいは独立した)LEDにつなぎます。

<アンプ部のパターン・・・全面的に見直しました>

・「OPT/SP 8Ω」と「OPT/SP 0Ω」には、出力トランスからの線をつなぎ、ここからスピーカー端子への線を出します。
・「V+」は電源回路ユニットのV+とつなぎます。
・「F-」は出力管ソケットのフィラメントのマイナス側につなぎます。
・「IN」は音量調整ボリュームのセンター端子につなぎます。
・「G」は出力管ソケットのグリッドにつなぎます。
・「GND」はアース母線につなぎます。
・平ラグ中央付近に破線で「10μF/400V」のコンデンサが書き込んであります。これはあってもなくても大きな差はありませんが、つけた方が高域でのクロストークがわずかですが改善されます。取り付けネジとかぶるのでまたぐようにしてうまく取り付けてください。

重要・・・平ラグの製作についてはこちらに具体的なガイドがありますので必ず見てください。→ http://www.op316.com/tubes/tips/k-lug.htm


<5A6/CV4097の場合の違いと注意点>

本ページでは71A/171Aを使った場合について解説しています。5A6/CV4097を使う場合は以下の点が異なります。

(1)初段負荷抵抗が、39kΩ1Wに変更です。
(2)初段電源にドロップさせる抵抗が、33kΩ2Wに変更です。
(3)出力段カソード抵抗が、5kΩ(10kΩ3Wを2個並列)に変更です。
(4)電源回路の2SK3767のゲート側の抵抗が、150kΩ1/2Wに変更です。
(5)フィラメント電源回路の抵抗が、1.5Ω1Wに変更です。
(6)出力管のフィラメントまわりの配線ですが、5A6/CV4097はフィラメントのセンタータップ(9-pin)が出ているので、カソード抵抗はここにつなぎます。
(7)5A6/CV4097のスクリーン(第2)グリッド(6-pin)は150Ω1/2Wの抵抗を介してプレート(1-pin)につなぎます。
(8)5A6/CV4097の第3グリッド(8-pin)はフィラメントのセンタータップ(9-pin)につなぎます。3-pinは遊ばせておきます。


<部品の頒布>

改訂に合わせて部品頒布ページも改訂しましたのでご利用ください。

http://www.op316.com/tubes/buhin/mw5a6-parts.htm


<71Aあるいは171A/371Aの入手方法>

茄子型の171Aや371Aはほとんど骨董品ですので新品はありません。中古球が通販やオークションに出ていますが、健康な球はほとんどないと思った方がいいでしょう。私も米国から4本ほど仕入れてみましたが、1本はすでに劣化していて使えず、もう1本もほどなくフィラメントが切れました。残った2本ですが左右で2dBほど利得が異なるので誤魔化して使っています。

71Aならば中古でももうすこしマシな球が多いですし、ほとんど未使用の球も入手可能です。但し、1本6,000円以上の出費を覚悟してください(2012.7現在)。また、不良に当たっても交換してもらえないのでリスクはご自身でかぶる必要があります。必要数+1〜2本余分に確保する、変なのに当たってもガタガタ言わない、ということでよろしく。


<動作条件のまとめ>

初版と改訂版の違いを以下にまとめました。

真空管名171A/371A/71A
改訂前
171A/371A/71A
改訂後
5A6/CV4097
改訂前
5A6/CV4097
改訂後
ピン接続
初段コレクタ電圧(B点)71V71V69V69V
ドレイン電流(ID2.3mA2.4〜2.5mA2.2mA2.1〜2.2mA
ソース抵抗要調整
(200〜400Ω)
要調整
(200〜400Ω)
要調整
(200〜400Ω)
要調整
(200〜400Ω)
ドレイン負荷抵抗(RD47kΩ1W47kΩ1W39kΩ1W39kΩ1W
ツェナダイオード電圧6.2V5.6V6.2V5.6V
ツェナダイオード駆動抵抗(RZD68kΩ2W×1(左右共通)100kΩ2W×2(左右分離)68kΩ2W×1(左右共通)100kΩ2W×2(左右分離)
初段電源ドロップ抵抗(RV+15kΩ3W×1(左右共通)22kΩ2W×2(左右分離)18kΩ3W×1(左右共通)33kΩ2W×2(左右分離)
出力段カソード電圧(Vk)※109V107V90V90V
カソード抵抗(Rk)6.6kΩ
(3.3kΩ3W×2 直列)
6.6kΩ
(3.3kΩ3W×2 直列)
5kΩ
(10kΩ3W×2 並列)
5kΩ
(10kΩ3W×2 並列)
プレート電圧180V170V173V173V
プレート電流(Ip)16.5mA16mA18mA18mA
バイアス(Bias)※-40V±4V-38V±4V-21V±2V-21V±2V
負荷インピーダンス7kΩ7kΩ7kΩ7kΩ
V+電源電源トランスKmB60F(230V)
または
H9-0901(230V)
KmB60F(230V)
または
H9-0901(230V)
H9-0901(230V)H9-0901(230V)
ドロップ抵抗(プラス側)120kΩ1/2W100kΩ1/2W150kΩ1/2W150kΩ1/2W
ドロップ抵抗(アース側)1.5MΩ1/4W1.5MΩ1/4W1.5MΩ1/4W1.5MΩ1/4W
電源電圧※290V279V273V272V
フィラメント
DC電源
平滑抵抗12.2Ω1W1.8Ω1W1.5Ω1W1.5Ω1W
平滑抵抗24.7Ω2W4.7Ω2W4.7Ω2W4.7Ω2W

調整しチェックする箇所は出力段カソード電圧だけです。初段2SK30Aのソース側の半固定抵抗器を調整して出力段カソード電圧が指定値となるように調整すれば完了です。
※171Aなど、古典球や老朽化した球の場合、バイアスが表記の値からかけ離れたものになりことがあります。


<周波数特性と雑音歪み率特性>

このデータは初作と同じものを引用しています。本機は初作のものの部分変更ですので、基本特性は変わりません。厳密にいえば、初段の消費電流がほんのわずか増えていますので、電源電圧もほんのわずか低下しており・・・といったことがあるので全く同じではないのですが、有意な差はありません。変わったのは、すでに説明した左右チャネル間クロストークだけです。71Aという球が非常に古い時代のものであり、171Aに至っては中古品しか手に入らない現状を考えると、歪率特性がこれと同じになる保証はありません。このデータは中古の171Aを使って取ったものですので、もっと新しい71Aなどの場合はかなり異なる結果になると思います。しかし、よくできたもので、数値特性がかなり違っていても71A/171Aの音は変わらないのです。


<コメントなど>

このアンプは、東栄の1400円程度の超廉価に属する小型出力トランスT-1200を使っているわけですが、鳴らすたびに「なんでこんなにまともなローが出るの?」と不思議に思います。拙著「真空管アンプの素」で詳細にレポートしたとおり、この出力トランスはハイエンド側の帯域が狭いことを除けば、1サイズ、2サイズ上の他の出力トランスをしのぐ性能を持っています。その理由の一つはT-1200の1次インダクタンスの異例の高さ(20H)によるところが大きいです。タンゴの大型出力トランスでも十数Hどまりですから。加えてボーカルやホーンの自然な存在感もしっかり出ますし、ハイエンドの伸びに不足感はありません。

この71Aシングルは、厳しい耳を持ったプロエンジニア達がやってきて真剣に聞いてくれました。全段差動6N6Pプッシュプルや全段差動6DJ8プッシュプルを愛用してくれている方が多いのですが、「この音は別格、満足がゆくミキシングができた時の音がこんな感じ。これも作ります」というのが彼らの答えだったようです。

71Aシングルと5A6/CV4097シングルはかなり異なった音がします。71Aが腰の座ったナチュラル感のある音であるのに対して、5A6/CV4097シングルは明るく澄んだトーンが特徴的で音の重心がやや高域側に移動します。ローエンドの再生能力、全体のバランス感は71Aの方が優れています。

300BやPX25といったような高貴ともいえる直熱管の世界もありますが、こんなローパワーで廉価なアンプでもたっぷりと楽しめる世界がありますので、時間とお財布に余裕があったら作ってみる価値はあると思います。


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