Mini Watters
6DJ8全段差動ミニワッター&ヘッドホンアンプ
14kΩ負荷への改造

14kΩのロードライン

<8kΩ負荷から14kΩ負荷への変更>

本機の動作条件における6DJ8の内部抵抗は3.3kΩくらいあります。8kΩ負荷の差動プッシュプルということは、6.6kΩの内部抵抗で8kΩの負荷を駆動することになりますので、ロードライン的にはかなり効率の悪い動作です。本来はもう少し高い負荷インピーダンスを与えてやりたいところですがなかなか適当な出力トランスがありません。そうこうするうちに春日無線変圧器からKA-8-54Pの14kΩ版のKA-14-54Pが出てしまいました。

1次インダクタンスが同じままでインピーダンスを変える使い方をすると、超低域特性がメタメタになります。KA-14-54Pの1次インダクタンスの公称値は100Hでかなり大きいです。KA-8-54Pの1次インダクタンス値は60Hくらいですから、ほぼ1次インピーダンスに応じた増強なのでこれは期待できるかもしれません。

本実験の結果によると、同じ「KA-54P」ですが8kΩタイプと14kΩタイプとでは性能のレベルに差があります。また、8kΩタイプをベースに単純に巻き数を増やしたわけでもないことも容易に想像できます。春日無線に確認したところ、14kΩタイプは2011年の設計ですが、8kΩタイプは設計してから7年が経過しており、設計そのものに違いがあるのだそうです。ということは8kΩタイプもいずれ設計の見直しをすることになりそうですね、楽しみにしてますよー・・・と言い置いて帰ってきました。


<設計方針>

すでに製作したアンプを流用しますので、変更箇所は限りなく少なくて済むように知恵を使いました。負荷インピーダンスを高くした場合、動作条件は以下のように変化します。

  • プレート電圧が高くなる。
  • プレート電流は減少する。
  • バイアスは深くなる。
  • 利得は低下する。
本機は元々電源電圧が高すぎることでやりくりをしていましたから、プレート電圧が高くなるのはかえって好都合です。整流回路に入れた100Ωの電圧ドロップ抵抗を撤去するだけで済みそうです。

プレート電流がわずかに減少することは特に問題はありません。ちょっと電源トランスがもったいないだけです。出力段のプレート電流を減らす方法ですが、出力段のカソード抵抗(820Ω)の値を大きくする方法と、初段のドレイン電圧を下げる方法とがあります。本機では後者を選択しました。その理由は下の説明に出てきます。

バイアスが深い出力管ですとドライブ電圧が高くなるため、ドライバ段の設計が苦しくなる場合がありますが、6DJ8のバイアスは元々浅いので少々バイアスが深くなってもさしたる問題にはなりません。

出力トランスの巻き数比が大きくなりますので利得は低下します。8kΩ:8Ω、すなわち31.6:1であったものが、14kΩ:8Ω、すなわち41.8:1になります。電圧利得にして0.76倍です。しかし、一方で内部抵抗ロスが減るの実質的な利得の目減りはさほど多くありません。このへんのところは、初段ドレイン負荷抵抗を15kΩから16kΩに変更することで埋め合わせをしており、トータルの利得はあまり変わっていません。


<全回路図>

全回路は以下のとおりです。原回路に対する変更ヶ所を赤で書き込んであります。


<測定>

オープンループ利得は11.2倍ですので、原回路の11.4倍とほとんど同じです。負帰還をかけた状態での利得は4.14倍となりました。測定時の負帰還抵抗は560Ωと100Ωで原回路と同じです(チューニングで82Ωに変更)。負帰還量は8.64dBとなりました。この時の残留ノイズは33μV(帯域80kHz)と文句なしの低雑音性能です。

帯域特性は3Hz〜130kHzで-3dBとなりましたので8kΩ負荷版よりも低域側に寄っています。これくらいの違いは、球や出力トランスの個体差に隠れてなかなか認識できないだろうと思います。どちらの出力トランスも非常に優秀です。

歪み率特性は8kΩ負荷を圧倒する低歪みとなりました。図中細い線で8kΩ負荷の時のデータも入れておきました。歪みが減るであろうことは予測はしていましたが、これほどとは思っていませんでした。14kΩというと巻き数は増えるし、大したことはないだろうと思うのが浅薄なところでして、頭で決め付けたりせずにどんなことでも試してみなければいけませんね。

音の傾向は8kΩとかなり異なります。エネルギーが低域側に移り、中域がすこし遠くなって大人しい感じになりました。デスクトップというよりも、大型のメインスピーカーを鳴らしたくなるようはスケール感があります(パワー全く小さいですいけど)。弦楽合奏などを豊かに聞きたいなら14kΩ、ガッツのある音を望むなら8kΩでしょうか。14kΩのまま負帰還抵抗の100Ωを82Ωくらいに減らして負帰還量を減らしたくらいがちょうどいいように思います。私の今のセッティングは82Ωです。机の上で大きなステレオ・システムが鳴っているみたいな贅沢な音がしてます。

本機は、プロの厳しい注文にも応えることができたようで、日本の音楽業界をリードする音響エンジニア達の間でもプライベートアンプとして普及しつつあります(つまり、そういう人達も自作してるってことです)。

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