Revision for Old Mini Watter
ミニワッター6N6P全段差動PPアンプの改良
<市販電源トランス版>

<初期バージョンの6N6P全段差動PPミニワッター>

このミニワッターは130Vの電圧を整流して電源を得ていますが、6N6Pをフルに生かせるだけの電源電圧が得られていません。低めの電源電圧をやりくりしてなんとか1W弱のパワーを得ています。それでも我が家の居間のメインシステムとして頑張ってくれています。日々のBGMも、Web配信のオペラも、お正月のニューイヤーコンサートもこのちいさなアンプで鳴らしています。

6N6P全段差動PPミニワッターは、2012年の冬に電源回路の設計の見直しをしました(2012バージョン)。ミニワッター汎用シャーシに搭載可能なぎりぎりサイズの電源トランスを再設計し、特注することでパワーアップを図ったわけです。多くの方がこの設計変更に対応した改造をされましたが、じつは我が家には1台初期のままのアンプが残っていて、2014年1月の今まで現役で頑張っていたわけです。

この初期バージョンにはまだまだ頑張ってもらいたいので、マイナーチェンジをすることにしました。


<改良方針>

できるだけお金をかけず、手間もかけない・・・2014年1月に発表した2014バージョンは、アンプ部を平ラグごと交換という大掛かりな変更をしましたが、この改良では元の平ラグはそのままにしてできるだけ少ない変更内容で済ませることにします。電源トランスも出力トランスもすでにあるものをそのまま使います。ということは、電源電圧を抜本的に高くするような設計変更はできません。今ある条件の範囲内で工夫することになります。

若干のパワーアップと基本特性の改善・・・A2級動作の実験結果によれば、エミッタフォロワの世話にならなくても、ドライブインピーダンスを少しでも下げることができれば、それなりのパワーアップが可能であることがわかりました。2014バージョンでは2SK117を採用して好結果を得ているので、本改良でも2SK117を使って利得を稼ぎ、基本特性を改善したいと思います。


<初段の変更>

2SK30A-Yを撤去し、2SK117-BLに変更しました。定電流回路も1.8mAから3.9mAに変更しています。目的は、初段ドレイン負荷抵抗の値を小さくすることですが、16kΩから7.5kΩに減らすことができました。

No.変更項目変更前変更後
1.差動回路2SK30A-Y×42SK117-BL×4
2.定電流回路2SK30A-Y(IDSS=1.8mA)×22SK30A-GR(IDSS=3.98mA)×2
3.ドレイン負荷抵抗16kΩ×47.5kΩ×4


<出力段の変更>

出力段の大きな変更はありません。発振止めのグリッド抵抗値を3.3kΩから1kΩに変えただけです。簡単な変更ですが、非常に重要な変更でもあります。

No.変更項目変更前変更後
1.グリッド抵抗3.3kΩ×41kΩ×4


<電源回路の変更>

初段の消費電流が増えたため、そのままですと出力段の電源電圧が下がってしまいます。そこで電源電圧の低下をすこしでも食い止めるために、リプルフィルタ分圧抵抗を変更しました。これで+2Vを稼いでいます。電荷逃がし抵抗も220kΩから470kΩに変更して消費電流を減らしています。

初段差動回路の消費電流は合計で7.9mAほどあります。一方で電圧ドロップ抵抗22kΩ1本あたりの電流は5.8mAで、これを2本パラレルにしましたので、初段への供給電流は11.6mAとなりました。そのうち7.9mAが差動回路にまわりますので、ツェナダイオードにまわすブリーダー電流は11.6mA−7.9mA=3.7mAとなります。全体とバランスと回路の安定を考えると、この値はこれ以上減らすことはできません。

No.変更項目変更前変更後
1.リプルフィルタ分圧抵抗56kΩ1/2W×139kΩ1/2W×1
2.電荷逃がし抵抗220kΩ1/2W×1470kΩ1/4W×1
3.初段電源ドロップ抵抗22kΩ3W×122kΩ3W×2パラレル
または
18kΩ3W//27kΩ3W


<全回路図>

変更部分を赤で記入しました。


<測定>

測定結果は以下のとおりです。

  • 裸利得: 22.7倍
  • 負帰還後利得: 5.7倍
  • 負帰還量: 12dB(←最終決定)
  • 負帰還定数: 89〜95Ω(91Ω):560Ω//1500pF
無帰還時および負帰還=6dB、12dBの時の周波数特性です。位相補正コンデンサは初版のまま変更していませんが、負帰還量を増やしていっても安定が損なわれません。春日の出力トランスKA-8-54P(旧版)は位相特性が良いことがわかります。

下図の歪率特性は、3つのデータがあります。1つめ(水色)は、初期バージョンの製作当初に取ったデータです。2つめ(青)は、本機を使用して3年経ったデータです。球は変更していません。歪みの傾向が変化し最大出力がわずかに落ちています。3つめ(黒)は、改良後のデータです。全体として歪がかなり減っており、くたびれた球でも最大出力が初期のレベルまで戻りました。


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