Mini Watters
ミニワッター直結シングル・アンプ

左:試作2号機、右:本製作3パターン(6DJ8 DC点火超低雑音仕様、6FQ7 4Ω&8Ω対応仕様、6N6P標準仕様)

<このページについて>

ミニワッターに関する回路や製作のための詳しい解説は「真空管アンプの素」に書かれています。このページは、書籍をお持ちでない方のために書籍の中から必要最小限の情報を掲載したものです。これ以上書くと出版社に迷惑がかかります。従って多くのヒントやガイドは掲載していないことえをご了解ください。


<これが基本です>

ミニワッターにもいろいろなヴァリエーションがありますが、これが出発点であり基本です。なによりも、はじめて真空管アンプを作る人のことを考え、次にベテランがこれをいろいろ改造して遊ぶことを考えました。チャネルあたり1本の小型双3極管を使い、これを直結にして0.2W〜1Wくらいを得るシングルアンプです。この構成だけでもかなりいろいろな選択肢があります。下の方に表にまとめましたが、9種類の真空管から選ぶことができます。そして、出てくる音は十分にまともです。


<アンプ部基本回路>

アンプ部の基本回路は下図左のとおりです。なんと簡単な・・・。

2段直結シングル・アンプで、簡素型ロフチン・ホワイトとでもいいましょうか。出力段の信号ループをバイパスするコンデンサ(C3)の入れ方が特徴的です。本機のトーンキャラクタはこの回路方式によるものが大きいです。そういえば、この方式を最初にやったのもロフチン・ホワイトでしたね。下図右はロフチン・ホワイトの原回路ですが、図中のC2に着目してください。ロフチン・ホワイト・アンプというと、2段直結にばかり注目されてこのコンデンサ(C2)のポジションについて言及した記事がほとんどないのはいささか残念です。そのため、日本のWebサイトで見かけるロフチン・ホワイトと称するアンプはそのほとんどがこのコンデンサがアース側に取り付けられています。このコンデンサのポジションによって出てくる音は相当に違いますから、アース側に取り付けらたアンプにロフチン・ホワイトの名を冠するのには疑問を感じます。

この基本回路を使い、5687、6N6P、6350、7119、6FQ7、6DJ8/6922、5670、12AU7、12BH7Aといった双3極電圧増幅管や親子3極管の6CS7で0.3W〜0.7Wというかわいらしいパワーを得ます。6N6Pは真空管店ではの扱いはまだ少ないですが(アトモスや春日にはあった)、Yahooオークションでお安く手に入ります。あるところに行けばザクザクある球なので高値をつけて落札する意味はありません。重量400gクラスの廉価OPTを使いながら、10Hz〜30kHz/-3dB(0.316Vrms時)またはそれ以上の帯域特性を得るだけでなく、これが結構いい音で鳴ります。上記以外でも設計の工夫次第で6BQ7A、7AN7/ECC84、5965、6N1P、その気になれば12AX7も適用可能です。

上の回路図中の音量調整ボリューム(VR)のところにあるRxは、音量感のバランスを取るためにものです。普通のアンプではここには抵抗をつけません。本機の利得は低め(3〜4倍)なのでボリューム・ポジションが12時くらいでは音が小さく感じることがあります。そういう場合はボリューム抵抗値と同じくらいの値(51kΩ〜56kΩ)のRxを追加することで、12時くらいでもそれなりの音量が得られ、しかもB型のような違和感のないA型っぽい使い心地が得られます。

R2とR6は発振防止抵抗で、5687、6N6P、6DJ8といった高gm球を使う場合は必須です。6FQ7や12AU7のような鈍感な球の場合は省略可能です。この抵抗はできるだけグリッドに近いところに実装する必要があるので、基板やラグではなく真空管ソケットにじかに配線します。C2は6dB以下の負帰還時は不要ですが念のために入れてあります。6DJ8や5670といった高利得球の場合は負帰還量が6dB以上になりますので省略しない方が安定した素直な特性が得られます。このコンデンサは常にあった方がいいものなので使用する球に関係なく入れっぱなしでかまいません。

試作機ではR4のところに1kΩの半固定抵抗、R5のところに100Ωの半固定抵抗を入れています。これでほとんどの球の動作条件が調整可能になりますので実験製作されるのであれば半固定抵抗にしてしまうというのもありでしょう。但し、あまりいじりすぎると接触が悪くなることがあるのでそこのところはご了解ください。

OPTは出力トランスのことで、1次側のつなぎかたは下の方に表でまとめてあります。V+は電源ですので電源部のV+とつなぎます。Eはアースで、すべてのアースは真空管ソケットのセンターピンをつないだアース母線に集中させます。詳しくは後述する実体配線図などを参考にしてください。


<電源基本回路>

電源部の基本回路は下図のとおりです。D1〜D4によるブリッジ整流を100μF受けてからMOS-FET(2SK3767)を使った簡易リプルフィルタ一発だけの簡素なものです。左右チャネルへの振り分けもしていません。これで20kHz以下の帯域で-60dB以上の左右チャネル間クロストークを得ており、残留ハムも余裕で0.3mVを割ります。ヒーター回路は、使用する電源トランス(KmB60FまたはKmB90F)および使用する真空管によって変化するので下の基本回路図では詳しい回路図は省略しています。

動作中の整流出力電圧は、KmB90Fの195V巻き線の場合で260〜270V、KmB60Fの230V巻き線の場合で310〜325Vくらいです。2SK367のゲート電圧はR9とR10の分圧比で求めたとおりになりますので、130kΩと1.5MΩの場合でしたら整流出力電圧の0.92倍(=1500÷1630)になります。2Sk3067のG-S間電圧はほとんど3V一定ですので、ソース電圧すなわちアンプ部の供給される電圧はゲート電圧よりも約3V低い値になります。

この回路の電圧配分ですが、ドレイン〜ソース間電圧は8V以上ないと安定に動作しません。AC100Vが瞬間的に2%くらい変動して下がったとします。整流出力電圧は変動に追従してすぐに6Vくらい低下しますが、ゲート電圧はすぐには低下しないので十分なドレイン〜ソース間電圧が確保できなくなってしまうからです。かといって余裕を取り過ぎると2SK3767の消費電力が大きくなって放熱が老追いつかなくなります。2SK3767は放熱板なしで食わせられる損失はせいぜい1Wどまりなので、これ以上になる場合は必ず小型の放熱板を取り付けるなど配慮してください。

MOS-FETのゲート〜ドレイン間に逆向きに入れてあるダイオードは、電源OFF時にC5に溜まった電荷をすみやかに放出させるためのものです。これがないと、電源OFF後にゲート〜ドレイン間に100V以上に逆電圧が生じる上に、再度電源ONした際にポップノイズが生じます。R12は本機全体のコンデンサの電荷を最終的に放出する目的で入れてあります。R11はMOS-FETの発振防止用なのでゲートに近いところに実装します

回路図中の※マークは、ヒーターハムを低減するためのヒーター・バイアスです。出力段カソードに生じた60V前後の電圧を借りてヒーター回路に印加することでヒーターハムを低減させます。この方法は単純にアースにつなぐよりも残留ハムは小さくできます。借りるカソード電圧は左右どちらのチャネルからでもかまいません。


<温度の設計>

ミニワッターは、使用する真空管の種類によっても差がありますが、筐体内の温度は外気温+10℃〜+15℃くらいの上昇をします。外気温が30℃の室内で使用すると、40℃〜45℃くらいになるわけです。

電源部のMOS-FETは、放熱板なしで1Wの電力損失で使うと表面温度は周囲温度+40℃程度の上昇をします(右データ)。外気温が30℃の室内で使用した場合は80℃〜85℃くらいになるということです。そのため、もう少し温度を下げるために小型の放熱フィンを取り付けています。この放熱フィンを取り付けることで、1Wの時の温度上昇は放熱なしの場合に比べて15℃くらい下げることができます。なお、本書掲載の動作条件で使う限り、MOS-FETの電力損失は1W以下になります。

放熱に関するレポートはこちら(http://www.op316.com/tubes/datalib/to220-thermo.htm)。


<製作の手順>

頒布している汎用シャーシを使った場合の製作手順です。
  1. 平ラグのパターンおよび工程計画を作成する。
  2. 20P平ラグユニット上の部品取り付けと予備配線。この時、20P平ラグの中央の穴に取り付けるスペーサは先に取り付けておくと後の作業が楽になります。
  3. 音量調整ボリューム上の抵抗器の取り付けと線出し。
  4. ヘッドホンジャック上の抵抗器の取り付けと線出し。ヘッドホンジャックのどの端子がどこにつながっているか、ヘッドホンプラグを差し込んだらどこが切れてどこがつながるのか、ヘッドホンジャック接続ガイドを参考にして自力でチェックしてください。非常な頭の体操になるでしょう。抵抗器を取り付ける外部端子が2つ必要なのでジャックのアース穴を利用してラグを取り付けています(下画像参照)。
  5. シャーシの内側のサンドペーパーがけ。入力端子穴、ボリューム穴は取り付けた時に部品の金属部分と導通するようにします。これを怠るとハムが出ます。東栄のT-1200の「0-7kΩ」端子はそのままですとハンダの乗りが悪いのでここもサンドペーパーかけておきます。
  6. シャーシへの主要部品の取り付け。
  7. AC100Vまわりの配線と通電試験。
  8. ヒーターおよびLEDまわりの配線と通電試験。
  9. 真空管ソケットのセンターピンをつなぐアース母線の取り付け。
  10. 入力端子〜音量調整ボリューム〜初段管間の配線。
  11. 20P平ラグ・ユニット上のジャンパー線、部品取り付け。
  12. 20P平ラグ・ユニットの取り付け。
  13. 20P平ラグ・ユニットと周辺(真空管ソケット、電源トランス、出力トランス)をつなぐ配線。
  14. 通電試験。真空管を含めたアンプ全体の電圧が設計どおりであるか確認。


<AC100Vラインとヒーター配線>

下図はAC100Vラインおよびヒーター配線の例です。わかりやすく並行線で描いてありますが、実際には交流の往復経路は捻るのがセオリーです。下の方に画像があるので参考にしてください。ヒーター配線は6N6Pを想定したものです。6N6Pは4-5ピン間に6.3Vをかけて点火しますので2管のヒーターを直列にして電源トランスの12.6Vタップにつないでいます。6FQ7や6DJ8もこれと同じになりますが、5687や5670、12AU7、12BH7Aではこれとは異なりますのでご注意ください。


<LED点灯回路>

LEDはAC6.3VまたはAC12.6Vのヒーター巻き線を使って点灯させます。回路は下図のとおりで、低圧巻き線から適当な抵抗でドロップさせてLEDにじかにつなぐだけですが、このままですとLEDに逆電圧がかかります。LEDの逆耐圧はカタログ上は5Vとなっており、AC6.3Vから抵抗だけでじかにつなぐとLEDにかかる逆電圧のピーク値は約9Vになります。これを回避するためにLEDと逆向きにバイパス用のダイオードを入れておき、LEDにかかる逆電圧を0.6Vに抑えています。実際の耐圧はもう少し高いので無精者はこのダイオード省略して知らぬふりをします。

LEDの順電圧は約2Vですから、6.3Vからドロップさせると560Ωにかかる電圧は、6.3V−2V=4.3Vとなり、ここに560Ωを入れると電流は7.7mAになりそうですがそうではありません。交流の半サイクルは仕事をしませんのでLEDに流れる平均電流はその半分の4mA弱になります。12.6Vからドロップさせる場合は1.3kΩを使います。50Hzで点灯した場合、LEDは1秒間に50回明滅しますから、その光り方はいささか特徴的です。ロッカースイッチ(DS-850)のLED端子には小さく「+」「−」が表示されています。

配線の方法はいろいろ考えられます。2つほど画像を入れておきますので各自参考にしてください。なお、後の製作では、ラグ板の中継を使わずに、熱収縮チューブをかぶせた方式に変更しています。


<入力〜ボリューム〜初段グリッドまでの配線>

下図はRCAジャックから音量調整ボリュームを経て初段グリッドまでの配線です。

2連ボリュームには6つの端子があります。右の画像でいうと上側3つをR-ch、下側3つをL-chに使いました。3つずつある端子の右端がアースですのでL/Rまとめて銅単線でつなぎそこから2本のアース(黒い線)を出しています。1本は入力端子へ、もう1本は本機アース母線(後述)につなぎます。入力のRCAジャックからきた信号ラインは左端の端子につなぎ、中央の端子は初段グリッドにつなぎます。

6N6P、6DJ8、6FQ7は9ピンが内部シールドにつながっているので、9ピンを真空管ソケットのセンターピンとつないでおきます。5670の場合は5ピンになります。

利得が少ない本機の場合、ボリュームにはできれば2個の追加抵抗(Rx)をつけたいところです。これをつけておくとボリュームをまわした時の音量変化の感じがスムーズです。ハンダづけ作業に自信がなかったら省略してください。これがなくてもボリュームポジションを少し右に廻せばすむ話ですから。


<アース母線>

2つの真空管ソケットのセンターピンをつなぐように「コ」の字型にしたスズメッキ線を半田づけし、ここに本機すべてのアースを集中させました。ただ、すずめっき線はハンダの乗りが悪く半田不良を起こしやすいので、1mm系くらいの銅単線か0.5mm径くらいの銅単線を2〜3本束ねてねじったものの方がいいと思います。銅単線はホームセンターで売っています。すずめっき線の場合は予熱して温度を上げてやるとつきがいいです。きれいな銅色をしたポリウレタン加工した銅線がありますが、高温にしたハンダごてでないと絶縁が溶けてくれません。太い銅線に非力なハンダごてでは非常に作業しづらいのでやめた方がいいです。

左下画像は試作機のものなので配線が長めでのたくっていたり、ラグが余りまくっています。3.3kΩの発振止め抵抗や初段グリッドの470kΩの抵抗器は真空管ソケットにじかに取り付けています。複数の半固定抵抗器が見えますが、本製作では固定抵抗に置き換えます。右下画像は6N6Pを使った本製作のもので、ソケットまわりはヒーター配線(青と白)およびLEDの配線(灰と白)と、初段入力まわりの抵抗器が6個、それから出力トランスから出力段プレートまでの配線(橙色)を終えたところです。
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<平ラグ・パターン>

本機のひとつの特徴は、左右アンプ部と電源部のほとんどを1枚の20P平ラグに組み込んでしまったという点です。左から7個目までが電源部、右の13個で左右アンプ部をまとめています。本ラグから漏れているのは、R1、R2、R6で、これらは真空管ソケットおよび周辺に立てたLラグに実装します。この20P平ラグは、頒布している「ミニワッタ汎用シャーシ」の中央にあけた取り付け穴を使って固定します。

下の方にある全体図(拡大画像)を良くみてください。ジャンパー線には0.5mm系かそれよりも細い銅線を使いました。抵抗器のリード線の切れ端でも十分です。大型のアルミ電解コンデンサの近くに取り付ける抵抗器はリード線を斜めにしています。そうしないとリード線がアルミ電解コンデンサに当ってしまうからです。それから、20P平ラグの中央に固定ネジが見えるのがわかりますか。このネジをまわすためには周辺の抵抗器をどけなければならないので、リード線は長めにしてハンダづけしてください。3W型抵抗器は熱を持ちますのでアルミ電解コンデンサに接触したり近すぎないように配慮してください。

PT・・・電源トランスの195Vあるいは230V巻き線につなぎます。線は捻ってください。
OPT B・・・出力トランスの1次側の「0」と書いてある端子につなぎます。「7kΩ」と書いてある端子は出力管のプレート(6番ピン)につなぎます。上の画像の橙色の線がこれにあたります。
OPT/SP端子の0・・・ここから線を2本出します。1本は出力トランスの0端子、もう1本はスピーカ端子のCOLD側(黒)です。
OPT/SP端子の8Ω・・・ここから線を2本出します。1本は出力トランスの8Ω端子、もう1本はスピーカ端子のHOT側(赤)です。
E・・・Eは全部で3つあり、これらすべてをアース母線につなぎます。
P1・・・初管のプレートにつなぎます。6N6Pでいうと1番ピンです。
K1・・・初管のカソードにつなぎます。6N6Pでいうと3番ピンです。
K2・・・出力管のカソードにつなぎます。6N6Pでいうと8番ピンです。この時、どちらかのK2とどちらかの球のヒーター(4番ピンまたは5番ピン)とを1本の線でつなぎます。場所は問わないのでハンダづけしやすいところでつないでください。これをやらないとハムが出ます。

追加C・・・赤で追加したコンデンサについては、チューニングガイドに解説があります。


<出力トランスの接続>

負帰還をかけたアンプの場合、出力トランスのつなぎかたひとつで入力信号と出力信号の位相関係が正しくなったり逆転したりします。正しく接続された場合は設計どおりの性能が出ますが、逆転したつなぎかたをすると設計どおりの性能が出ないばかりか、悪くするとけたたましく発振します。ミニワッター汎用シャーシに搭載可能な主な小型出力トランスについて実測して検証したものを以下の表にまとめましたので参考にしてください。


<全体図>

これで完成です。なんだか、すかすかですがこれでいいのです。この画像はバージョン1のシャーシで、現在頒布中のバージョン2では後面パネルの端子穴の数が増えています。
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(ご注意:上の画像でヒーター回路の一端を左右いずれかのチャネルの出力段カソードにつなぐ配線に誤りがあります。×が誤った接続先で、○が正しい接続先です。)


<応用・・・ヘッドホンジャックの増設>

ヘッドホンジャックまわりの回路図です。減衰回路は、アンプ側からみて約8Ωになるように設計します。ヘッドホンのインピーダンスは16Ω〜100Ωくらいですから、3.3Ω側の合成インピーダンスは2.7Ω〜3.2Ωとなりますので、5.1Ωと組み合わせることで7.8Ω〜8.3Ωとなります。下の画像は試作機のもので抵抗値が4.7Ω+4.7Ωになっています。どちらがいいかは微妙なところで、スピーカーから出る音量とヘッドホンに切り替えた時の音量のバランスを優先すると5.6Ω+3.3Ωくらいがいいのですが、ヘッドホン側の最大出力は低下します。能率が低いヘッドホンで無理なく大音量で鳴らしたい場合は、4.7Ω+4.7Ωくらいがいいでしょう。

スイッチ付のヘッドホンジャックには全部で9つの端子が出ています。3つずつ並んでいるのがスイッチ部分で、アンプ出力は中央の端子につなぎます。ヘッドホンにじかにつながるのは別の方向に出ている2つの端子と根元にある端子の3つです。ヘッドホンプラグを出し入れしつつΩレンジにしたテスターを使って導通をチェックしてどこがどうつながっているのか実際に調べてください。

ヘッドホンジャックの構造や接続法に関してはヘッドホンジャック接続ガイドを参考にしてください。

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<推奨回路定数>

下表のデータは2010.11.28現在の最新のものです。出版する本ではほぼこの回路定数にもとづいたデータを掲載する予定です。なお、これまでの回路定数で製作された方はわざわざ変更する必要はありません。何故なら、その違いはわずかだからで必ずしもどちらがいいかはなんとも言えないのと、音は全く変わらないからです。

使用真空管56876N6P6350
6463
7119/E182CC
7044
6DJ8
6922/E88CC
7308/E188CC
ECC88
5670
2C51
396A
6FQ7
6CG7
※NEC
12AU7
ECC82
5814A
12BH7A6CS76AN7/ECC84
7AN7/PCC84
ピン接続
OPT×27kΩ:8Ω
PT×1KmB90F
(195V)
KmB90F
(195V)
KmB90F
(195V)
KmB90F
(195V)
KmB90F
(185V)
KmB90F
(195V)
KmB60F
(230V)
KmB60F
(230V)
KmB60F
(230V)
KmB60F
(230V)
KmB90F
(185V)
MOS-FET×12SK3767(2SK3067)
D1-D4×41NU41(1R5NU41、1N4007、UF2010、PS2010R)
D5×11N4007(1N4006)
D6(LED点灯)×11S2076(1SS270ARX、1N4148)
Rx×251kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W
(省略可)
51kΩ1/4W
(省略可)
51kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W51kΩ1/4W
R1×2470kΩ1/4W
R2×23.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
R3×282kΩ2W82kΩ2W82kΩ2W82kΩ2W68kΩ2W82kΩ2W100kΩ2W100kΩ2W100kΩ2W100kΩ2W68kΩ2W
R4×2750Ω1/4W560Ω1/4W560Ω1/4W820Ω1/4W
(頒布対象外)
910Ω1/4W390Ω1/4W390Ω1/4W
330Ω1/4W※
620Ω1/4W750Ω1/4W680Ω1/4W
(机上設計値)
750Ω1/4W
(机上設計値)
R5×251Ω1/4W51Ω1/4W51Ω1/4W51Ω1/4W82Ω
1/4W
82Ω
1/4W
51Ω1/4W51Ω1/4W
(NFB=3dB)
82Ω1/4W
(NFB=4dB)
51Ω1/4W51Ω1/4W82Ω
1/4W
R6×23.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W
(省略可)
3.3kΩ1/4W3.3kΩ1/4W
R7×2560Ω1/4W
R8×23.3kΩ3W3.3kΩ3W3.9kΩ3W3.3kΩ3W7.5kΩ3W8.2kΩ3W
(頒布対象外)
5.6kΩ3W5.6kΩ3W3.9kΩ3W4.3kΩ5W4.7kΩ3W
R9×1120kΩ1/2W120kΩ1/2W120kΩ1/2W120kΩ1/2W270kΩ1/2W120kΩ1/2W82kΩ1/2W82kΩ1/2W82kΩ1/2W100kΩ1/2W270kΩ1/2W
R10×11.5MΩ1/4W
R11×14.7kΩ1/4W
R12×1680kΩ1/2W
R(LED点灯)×11.3kΩ1/4W1.3kΩ1/4W1.3kΩ1/4W1.3kΩ1/4W1.3kΩ1/4W1.3kΩ1/4W560Ω1/4W560Ω1/4W560Ω1/4W560Ω1/4W1.3kΩ1/4W
C1×2470uF/6V-16V→1000uF/10Vに変更
C2×21500pF/50V-100V
C3×2100uF/350V-400V
C4×1100uF/350V-400V
C5×147uF/350V-400V
電源電圧
(参考値)
-243V243V246V243V216V253V297V280V286V---V215V
出力段
カソード電圧
(参考値)
-56V57V51V56V74.5V74V65V62.5V60V70V55V
出力段
プレート電流
(参考値)
-17mA17.3mA13.1mA17mA10mA9mA11.6mA11.2mA15.4mA16.3mA11.7mA
利得無帰還5.6倍5.9倍5.6倍8.9倍17倍16.5倍6.9倍4.9倍5.6倍4.9倍
(机上設計値)
8.0倍
(机上設計値)
負帰還3.8倍3.9倍3.8倍5.0倍5.3倍5.2倍4.35倍3.38倍(51Ω)
3.06倍(75Ω)
3.7倍3.4倍
(机上設計値)
4.0倍
(机上設計値)
最大出力THD=5%
1kHz
0.7W0.6W0.5W0.7W0.38W0.25W0.35W0.34W(7%)0.6W(6%)0.6W
(推定値)
0.36W
(推定値)
D.F.-2.83.32.84.06.94.52.01.7(51Ω)
2.0(75Ω)
2.42.8
(推定値)
4.0
(推定値)
周波数特性T-1200
1V/8Ω
-3dB
8Hz-30kHz5Hz-30kHz10Hz-50kHz5Hz-35kHz5Hz-68kHz5Hz-65kHz13Hz-50kHz18Hz-45kHz13Hz-40kHzN/AN/A

※NEC製の6FQ7は他社に比べて内部抵抗が高いため、初段カソード抵抗(R4)の調整を要します。
※C2の値は当初2200pFでしたが1500pFに変更されています。すでに製作された方はわざわざつけなおす必要はありません。
※6CS7は2つのユニットの特性が異なります。Unit1(6,7,8pin)を初段に、Unit2(1,3,9pin)を出力段に使用します。
※6AN7は内部シールドが第2ユニットのグリッドにつながっているという特殊な構造ですので、トラブルを回避するために第2ユニットを出力段に割り当ててください。

上記以外でも使える球はまだまだあります。パワーダウンしますが、6DJ8の動作を少し修正すれば6BQ7Aや6N1Pが使えます。珍しいところで6R-AL1と6R-AL2もOKです。LUXの6240Gもいけますね。


<実測データ>

真空管に5687を使用し、出力トランスに東栄変成器の廉価なT-1200を使用した時の特性です。T-1200は高域側の帯域があまり広くありませんが、ピークポイントでも位相特性は非常に安定しており、低域側はこのサイズとしては申し分なく、価格も含めてバランスのとれたいい出力トランスだと思います。中身はイチカワのITS-2.5Wと同じです。

歪率特性はシングルアンプそのもので、右上がりの一直線ですので、歪み成分の大半が2次高調波であることが読み取れます。最大出力付近のくぼみはA2級動作の特徴です。1kHz、5%歪みで0.7Wですが、歪を7%まで許容すれば100Hzでも0.7Wを得ています。これがT-600になると100Hzでは0.22W(7%)までダウンし、ひとまわり大きいT-850では0.1W(7%)を出すのがやっとという事態になります。ミニワッターとしてはT-1200のサイズがボーダーラインだといえるでしょう。T-1200未満のサイズの出力トランスはどのブランド、どのコア材をもってしても低域特性の陰りを克服できたものはありません。

スペック的にとても低歪とはいえないアンプですが、これでいい音で鳴ります。後述の14GW8の方がより大出力、低歪み、広帯域ですが(下表)、出て来た音は5687や6N6Pの方がやや上等です。オーディオアンプは数字では評価できないといわれるゆえんです。

真空管最大出力歪み率帯域真空管のお値段
56870.71W(5%THD,1kHz)1.1%(0.1W,1kHz)12Hz〜32kHz(-3dB、0.125W)880円(オークション)
14GW81.05W(5%THD,1kHz)0.5%(0.1W,1kHz)6Hz〜55kHz(-3dB、0.125W)450円(秋葉原サンエイ)


<音>

物理スペックは全く大したことのないアンプですが、これで結構いい音で鳴ります。設計コンセプトとして冒頭に「ミニパワーであっても広帯域でスケール感のある鳴りっぷりであること」と書きましたが、流石に地を這うような空気が揺れるような音を得るにはプッシュプル方式を待たなければなりませんが、当初目標を十分にクリアできたと思います。全段差動的なタイトさがちょっとユルんだ感じといったらいいでしょうか。たかだか400gの出力トランスを使ったこの小出力アンプからしっかりとした低域が出ます。

5687系(低μ低rp)・・・ミニワッターは5687およびその類似球をベースに初期設計しています。5687はソツがなく何でも鳴らしますが、6N6Pになると少し色気が出てきます。6N6Pはオーディオ球としても、ミニワッター用としてのも当たりだと思います。7119はNFB量が増えるせいか落ち着いた感じ、数が少なく高価なのが難点ですがおすすめ球のひとつです。

6DJ8系(中μ中rp)・・・6DJ8/6922はパワーが出ないのにスケール感のあるバランスの良い鳴りっぷりにちょっと驚きました。5670はrpが12AU7並に高いですがμが高い分利得が多くなり負帰還が多くかけられるため、12AU7よりも広帯域感があります。

6FQ7系(低μ高rp)・・・6FQ7はエネルギーがすこし高い周波数に移った感じで、6DJ8と続けて聞くと低域が出ていないのがよくわかります。12AU7は6FQ7をさらにそれをすっきりさせたようなきれいな鳴り方に変わります。12BH7Aは6FQ7と比べてrpのわずかな低さが利いており、予想に反して上から下までバランスの良い鳴り方になりました。

上から下まで十分な帯域感を求めるならば5687系か6DJ8系を推奨します。我が家のミニワッターズは、我が家のダイニングルームでTV音声およびCD再生のメインとしてRogers LS3/5Aを鳴らしています。3Fにある私のオフィスのデスクトップではtangent EVO鳴らしています。オペラやニューイヤーコンサートも立派に鳴らし切ります。ミニワッターは生活音量としては十分ではないかと思います。


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