ベーシック・アンプのレベルアップ・・・3段構成化
測定と調整
初段バイアス調整

初段の差動回路の2SK30Aのソース側に入れた100Ω半固定抵抗器を調整することで、ドライバ段との直結動作を最適化します。差動動作をしている2個の2SK30Aのドレイン電圧(すなわちドライバ段の両グリッド電圧)が同じになるように調整してください。

DCVレンジにセットしたテスターを、2個の2SK30Aのドレイン(ドライバ段の両グリッドでも同じ)に当てて、電圧が0Vになるように調整します。完全に0Vになる必要はなく、0.1V以下にできれば十分です(許容範囲の上限は0.5Vです)。


無帰還特性および負帰還特性

下の周波数特性は無帰還時および負帰還を3dBから10dBまでかけた時のものです。比較のために、2段構成のベーシック・アンプ(クロス中和なし)の特性を点線で入れてあります。2段構成では、100kHzで-10dBの減衰ですが、3段化したことで高域特性がかなり改善されたはずで、100kHzでの減衰は-5dBまで良くなっています。

負帰還を3dBほどかけると(濃いブルー)超高域特性はぐっと改善され、負帰還量をさらに増やしてゆくと超高域がどんどん伸びてゆきますが、8dBをかけたあたりから100kHz付近で0dBのラインよりも上に出っ張るようになってきます。

下表は、負帰還抵抗値を2.2kΩとして戻す側の抵抗値を22Ω〜100Ωまで変化させた時の最終利得と負帰還量を一覧にしたものです。裸利得が40倍の時と50倍の時の2つのケースについて作成しましたので十分な測定設備がない場合の参考にしてください。

裸利得=50倍の時
RNF(SP側) 2.2kΩ
RNF(FET側) 22Ω 27Ω 33Ω 39Ω 47Ω 56Ω 68Ω 82Ω 100Ω
利得 33.4倍 31.1倍 28.8倍 26.7倍 24.4倍 22.3倍 20.0倍 17.9倍 15.8倍
負帰還量 3.5dB 4.1dB 4.8dB 5.4dB 6.2dB 7.0dB 8.0dB 8.9dB 10.0dB

裸利得=40倍の時
RNF(SP側) 2.2kΩ
RNF(FET側) 22Ω 27Ω 33Ω 39Ω 47Ω 56Ω 68Ω 82Ω 100Ω
利得 28.7倍 26.9倍 25.1倍 23.6倍 21.8倍 20.1倍 18.2倍 16.4倍 14.6倍
負帰還量 2.9dB 3.4dB 4.0dB 4.6dB 5.3dB 6.0dB 6.9dB 7.7dB 8.8dB


位相補正

負帰還抵抗(2.2kΩ)と並列にコンデンサを追加する最もシンプルでポピュラーな位相補正を試みました。コンデンサ容量は330pF固定とし、負帰還量を変化させた時の仕上がりの周波数特性のグラフです。ちなみに、2.2kΩと330pFとで決定される時定数は、219kHzです。上の特性のグラフと比べてみるとよくわかると思いますが、負帰還量が少ない(3dB)時は330pFを追加してもほとんど変化がありませんが、6dB以上では明確に違いが現れます。また、8dB以上になると10kHzあたりにごくわずかの盛り上がりが生じます。

本製作では、負帰還量は8dB程度とし、330pFの位相補正コンデンサを抱かせた状態で完成としました。なお、この状態でオシロスコープで観測するとごくわずかにオーバーシュートが見られますが特に対処していません。アンプの最終調整で、リンギングやオーバーシュートを根治したい人がいらっしゃるようですが、リンギングやオーバーシュートが出ること=悪いことではありませんので気にしすぎることはないでしょう。オーバーシュートは周波数特性の表われなので、広域に盛り上がりがあれば出るものです。それは、0dB以下であっても相対的なものなので出るときは出ます。だからといってそのアンプが駄目なわけではありません。

講座メインメニュー に戻る