ベーシック・アンプのレベルアップ・・・3段構成化
実装の検討と部品の手配
お掃除

下の2つに画像は、改造前の全段差動ベーシック・アンプの初段付近の配線です。

中央上に見えるボリュームの両側にある初段プレート負荷抵抗(220kΩ/1/2W)は撤去し、後でドライバ段プレート抵抗(56kΩ/1W)と置き換えます。左の画像は撤去後のものです。抵抗器が2個ともはずされています。画像中の右側の真空管ソケットの上を斜めに横切っているのは初段差動用の1mAタイプのCRDです。これも撤去します。このCRDはマイナス電源に引き込まれていますが、改造後は2個合わせて4mAタイプのCRDを取り付け、その先はマイナス電源ではなくアースに変更します。

撤去前撤去後

右上の画像では下が切れていてよく見えませんが、ここに負帰還抵抗があります。これも撤去してしまいました。灰色と茶色で撚って右上方向に伸びているのが出力とトランスへの配線です。(ラグから茶色が一本ソケット脇を通っているのがアースラインへの接続で画像ではどちらも配線されていますが、これもはずします。)

初段管は改造後はドライバ段になるので、グリッドまわりの配線が全面的に変更になります。右上の画像の右側のソケットでは12時方向と7時方向の2つのピンがグリッドなのでどちらも丸裸にします。灰色の配線がとりはずされているのと、ボリュームからの黒いシールド線もはずされて遊んでいます。


平ラグ配線パターン

作業を簡略化するための、回路そのものをユニット化して1回で組み込むことにします。

左右の初段差動プッシュプル回路、負帰還素子、そして初段電源回路を一体化して30P(片側15P)の平ラグ上で配線してしまおうというものです。配線パターンの案を作成してみました(右図)。少々詰め込み気味ですが、ユニバーサル基板に比べればずっと楽だと思います。

「INPUT(VOL)」は入力回路でボリュームのセンター端子につなぎます。シールド線を使う場合は、シールド被覆はボリューム側でアースし、本ユニット側ではHOT側のみ接続します。

「SP」端子はそれぞれ2つあって、「8Ω」を出力トランスのHOT側につなぎ、「E」をCOLD側につなぎます。この結線のみを介して、アンプ本体側のアースとスピーカ端子側のアースがつながります。

ここでは全部で4個の「100Ω半固定抵抗器」が使われていますが、少々のことを気にしないのであれば、FETのソース(S)間をつなぐ半固定抵抗器は省略可能です。負帰還抵抗に接した「100Ω半固定抵抗器」は、負帰還量を「無帰還状態」から「10dB程度」まで連続可変にするためのものです。

中央の2ヶ所の「※2W」の抵抗器は、B+(240V)からドロップさせるための直列になった2つの2〜3W型抵抗のことです。両端の「RNF」は出力側スピーカ端子と初段下側FETをつなぐ負帰還抵抗で、「CNF」はその負帰還抵抗に並列の抱かせる位相補正コンデンサです。


平ラグを使った実装

配線の様子は右の画像のとおりです。画像はクリックすれば拡大します。ポイントは、線の引き出しをしやすくするために、できるだけ内側のラグ穴を使って配線することでしょうか。

ラグ上にサインペンでメモが書いてありますが、「G」というのはドライバ段6SN7GTのグリッドにつなぐ端子の意味です。ラグ穴が2SK30Aのドレインと共用なので、まだ半田づけしていません。

「IN」は入力端子のことで、ボリュームからのシールド線をつなぎます。ここには2SK30Aのゲートがオープンになったりしないように念を入れてアースとの間に1MΩ(下から茶黒黒黄茶)が入れてあります。

左右それぞれの2SK30Aの中間にDCバランス調整用の半固定抵抗(100Ω、横向き)があります。センター端子は手前に引き出されていますが、長さが足りないので足して配線しています。ちいさなネジの頭を回すことで調整できます。調整は2箇所のドレイン電圧が揃うように行います(後述)。

「NF」端子は出力トランスのスピーカ端子からの配線をつなぎます。ここには負帰還抵抗と位相補正コンデンサ(茶色)がありますが、コンデンサはまだ取り付けていません。隣にある半固定抵抗(100Ω、縦向き)は負帰還量調整用で、右一杯にまわすと無帰還になり、左一杯に回すと負帰還量が最大になります。センター端子は手前側の端子につないであります。

中央に3W型と2W型の抵抗がありますが、熱で互いを暖め合わないように位置と向きを若干ずらして取り付けてあります。この平ラグは寝かせないで立てて実装しますから、その時に熱が出る抵抗器が縦にならないようにしています。2SK30Aにも電解コンデンサにも熱が当らないように考えてあります。

ここには上の実体配線図には描かれていない部品がひとつあります。中央下に丸く見える電解コンデンサ(220μF/35V)です。これはツェナ・ダイオードと並列になっています。差動回路は外部への/からの影響を受けにくいしくみですが、ツェナ・ダイオードの内部抵抗が数十Ωくらいといささか高いので念のために電源のデカップリングのおまじないで追加してあります。


シャーシ面への組み込み

標準シャーシの前面パネル部分に貼り付け式ボスを使って実装した様子です(画像をクリックすると拡大します)。

貼り付け式ボスは、両面テープ仕様でがっちりと固定されてしまいますので失敗は許されません。あらかじめ長めに切った線材で平ラグ側の配線を済ませ、貼り付け式ボスもネジ止めした状態でシャーシに貼り付けたらいいでしょう。すぐ下が出力段のプレート回路なので、平ラグが接近しすぎないようにやや離し気味に配置してあります。

2本出ている太くて黒い線はボリュームからのシールド線で、シールド被覆はボリューム側でのみアースしています。アースラインは太目のケーブルで別個に取り出して、誘導ハムを避けるためにシールド線に接近させてアンプ部のアースにつないでいます。中央から出ている茶色の線がマイナス電源(C-)、オレンジ色がB電源です。

初段からドライバ段(6SN7GT)グリッドへの信号ラインは紫色と灰色ですが、誘導を受けない、撒かないように捻ってあります。同様に、茶と灰色のスピーカの2次巻き線からの負帰還ラインも捻ってあります。

左下の画像(クリックすると拡大します)は、ドライバ段付近(旧初段)の様子です。元々1個だったCRDは2個並列になって、マイナス電源ではなく、アースにつなぎ換えられています。左下から来ている負帰還ライン(茶色と灰色を捻ったもの)は、2個のCRDが配線されているラグを中継点にしてさらに初段ユニットに伸びています。右上から、初段ユニットからの信号ライン(紫色と灰色を捻ったもの)が来ており、6SN7GTの2つのグリッドに直結されています。手前のラグには、元々あった初段プレート負荷抵抗(220kΩ1/2W型)のかわりに、ドライバ段プレート負荷抵抗(56kΩ1W型)がつけられています。

右上の画像はスピーカ端子付近の様子で、スピーカ端子のところに0.1μFと10Ωを直列にしたインピーダンス上昇防止CRが追加されています。帯域が狭く(せいぜい数百kHz)負帰還量が少ない真空管アンプではあってもなくても影響がないことが多いですが、帯域が広く負荷変動に対してデリケートな半導体式メインアンプでは重要な役割を持っています。

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