5.ないしょでチェックその1


6F6には申し訳ないが

真空管と半導体とが決定的に違う点といえば、ピン(ソケット)なるものが標準化されていて、ソケットの形状とピン配列さえ合えば、簡単に差し替えができてしまうことでしょう。この特徴は、本来、真空管なるものが消耗品であり、簡単に新品と交換できないと困ったことになるからなのですが、似た者であれば差し替えもできてしまうということにもなるわけです。そこで、6F6殿には申し訳ありませんが、6F6と似たピン配列の出力管を調べてみると、
があります。まだまだ捜せばいろいろありますがこのへんでおわりにしておきます。6F6と同じようなピン配列の球がいかに多いかがわかります。面白いことに、6G-A4は3極管のくせにpin-1以外については基本的なピン配列が6F6や6V6と同じだということです。(右上の画像は、左から6V6G、6V6GT、6F6、6F6GT×2)

この中で6F6と同等のプレート損失を持ち、特性もあまりかけはなれていなくて、しかもピン接続が全く同じ球というとやはり6V6とそのファミリーでしょう。特性だけでいえば6K6GTがもっとも良く似ていて、ほとんどそのまま差し替えできますが、最大プレート損失が8.5Wと小さいのでプレート電流を相当減らすなどの手当てをしてやらなければなりません。6V6ならば最大プレート損失が12Wあり、6F6の11Wよりもひとまわり大きいのでかえってやりやすそうです。

6V6のプレート特性

6V6のプレート特性データは以下のものが発表されています。このデータは、スクリーン・グリッド電圧(Eg2)が250Vのときのものです。6V6の特徴がわかりやすくなるように、6F6の特性もあわせてグレーで表示してあります。

6V6は、6F6と同じスクリーン・グリッド電圧(Eg2)で取り出せる最大プレート電流が大きくなっています。このことは、6F6と同じプレート電圧、同じスクリーン・グリッド電圧、同じ負荷インピーダンスで動作させた時に取り出せる最大出力がより大きいことを意味します。ヒーターの消費電力は、6F6が4.41W(=6.3V×0.7A)であるのに対して、6V6は2.835W(=6.3V×0.45A)ですからこれは立派です。

6V6に単純に差し替えた場合

さて、6F6での動作は以下のとおりでした。

RL(Ω)Ep(V)Eg2(V)Ip(mA)Ig2(mA)Ik(mA)Pp(W)Pg2(W)理想最大出力(W)
10KΩ282V250V38.0mA7.3mA(推定)45.3mA(推定)10.72W1.82W(推定)7.22W

では、いきなり6F6を6V6に差し替えたような場合、どういうことになるでしょうか。本機では、出力段が差動プッシュプルであり、共通カソード側に定電流回路が挿入されます。2本の出力管のプレートとスクリーン・グリッドに流れる電流の合計は、この定電流回路ですべて決まります。ですから、いきなり6F6を6V6に差し替えたような場合でも、2本の6V6のプレートとスクリーン・グリッドに流れる電流の合計はやはり同じになります。

ただし、6F6と6V6とではプレート電流とスクリーン・グリッド電流の配分が異なります。6V6のシングル動作データより、スクリーン・グリッド電圧250Vのときの標準動作で、Ip=45mA、Ig2=4.5mAというのがありますので、これを使ってカソード(Ik)が45.3mAの場合のプレート電流とスクリーン・グリッド電流を算出したのが下の表です。

RL(Ω)Ep(V)Eg2(V)Ip(mA)Ig2(mA)Ik(mA)Pp(W)Pg2(W)理想最大出力(W)
10KΩ282V250V41.2mA(推定)4.1mA(推定)45.3mA11.62W(推定)1.03W(推定)8.49W

これをプレート特性上にロードラインにしたのが右図です。(差動でない通常のAB級プッシュプル動作ではこのようなロードラインの引きかたではないので注意してください!)

6V6のプレート特性をめいっぱい使っているわけではありませんが、6V6の能力の範囲内で余裕で収まっています。むしろ6F6の時よりも十分なプレート電流の余裕があり、このままで全く問題はありません。そして、理想最大出力は1W以上も多く取れています。

これで、6V6には何の調整もなく安直に浮気できるということがはっきりしました。今度は、もっと大型の6L6ではどういうことになるのかについても検証したみることにします。


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