真空管アンプの製作最大の難関
それはなんといっても、シャーシの加工でしょう。
真空管ソケットの丸穴をきれいに開けるためには、シャーシ・パンチなる便利な道具がありますが、これは全国どこでも容易に入手できるとは限りません。価格的にも3000円くらいしますので、はじめての方は躊躇されるでしょう。しかし、これがあれば「USソケット」や「UXソケット」の直径30mmの穴から、12AX7などの「MT9ピンソケット」の直径20mmの穴、角型出力トランスの直径30mmの取り付け穴が一発で開けられます。電源トランス取り付けの角穴は、ハンドニブラーという缶切りのような道具でキコキコやるのですが、この道具もちょっと変わっています。
そもそも、シャーシ・パンチやハンドニブラーなる道具を使うためには、最初にドリルで小さな穴を開け、それをリーマーとよばれる「こじ開く道具」で穴のをぐりぐりを押し広げなければなりません。さらには、やすりで丁寧に仕上げなければならず、出来あがった頃には、手はまめだらけ、箸も持てない、という状況に立ち至ります。
デザイン
トランス類、真空管類の横並びのデザインは避けたい(凡庸な気がする)。ブロック電解コンデンサは見えなくしたい(目障りだと思う)。スピーカー端子はシャーシ上面に配置したい(作業が楽です)。出力管をディスプレーしたい。あるいは、控え目に配置したい。月並みなデザインだけはいやだ。
というわけで、右図のような配置になりました。真空管は全部で6個装着できますが、どのように配置するかは選べるようになっています。
◆出力管を2本ずつ左右端に並べて配置し、電圧増幅管を正面に持って来る・・・・控え目で落ち着いたデザインになります。(冒頭の左側の2つの画像)
◆出力管を4本まとめて中央に扇状に配置し、電圧増幅管を左右端に持っていく・・・・押しだしのあるダイナミックなデザインになります。(冒頭の右側の2つの画像)
このシャーシは、TANGO製のシングル用の出力トランスのいくつかにもフィットしますので、ステレオ・シングル・アンプ用としても使うことができます。
左の画像は、「初段：6J5 + ドライバ：6C5 + 出力段：2A3シングル」を想定したもので、ちょっと変則的な配置ですが、これはこれで面白いデザインではないかと思います。
要するに、6つある30mm径の穴をどう使うか、というゲームなのです。
標準シャーシのコンセプト
本講座では、シャーシの穴あけという面倒くさい作業をみんなで解決してしまおう、というわけで、「標準シャーシ」なるものを設計し、それをソフトンの善本氏のご厚意で提供していただけることになりました。標準シャーシのコンセプトは以下の6点です。
- 複数の異なる電源トランス、出力トランス、真空管ソケットに対応できる。
- 回路のヴァリエーションが吸収できるような汎用性がある。
- スイッチ、端子等の取り付け部品は、全国的に入手容易なものに合わせる。
- 仕上げがしっかりしており、高品質。
- 今までどこにもなかったデザイン。
- 全段差動アンプ以外のアンプにも応用がきく。
以下の図面はほとんど最終版のもので、若干の修正を経て製作のはいりますが、どんな雰囲気なのかお伝えしたいので掲載いたしました。
上面図：
・スピーカ端子は後面ではなく上面にあります。回転止め付きの端子に対応しています。
・出力トランスは2種類の形状に対応しているため穴が複雑になっています。
・ブロック電解コンデンサ用の穴がないのが特徴です。
後面図：
・AC100V入力はパソコン等に使われている3Pタイプのものです。
・ヒューズホルダーはもっともポピュラーなねじ込み式に合わせています。
前面図：
・電源スイッチはシーソースイッチ用の角穴で、さまざまなタイプのスイッチが選べます。
・ボリューム用の穴もあけてあります。
なお、対応トランスの一覧は下表のとおりです。全段差動ベーシック・アンプの標準トランス以外にも取り付け可能トランスがいくつかあります。出力トランスでは、プッシュプル用だけでなく何機種かのシングル用トランスの取り付けサイズにも対応していますので、本シャーシを使ってシングル・アンプを作ることも可能です。
| | 対応機種 |
|---|
| 電源トランス | TANGO ・・・ PH-185、旧LH-150、旧PH-120
ノグチ ・・・ PMC-190M、PMC-170M、PMC-150M |
| 出力トランス | TANGO ・・・ FE-25、FX-40、XE-20S、FE-20、旧FW-20、旧CRD、旧XE-45
ノグチ ・・・ PMF-25P、PMF-10WS
ソフトン・・・RX-40-5、RW-20 |
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(有)ソフトンの善本さんのご厚意で標準シャーシを供給してくださいます。・・・「標準シャーシの仕様と供給について」
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