大人の自由空間
出力トランスと電源トランス
出力トランス

メーカー 品名 インピーダンス 周波数レスポンス 出力 1次
インダク
タンス
許容DC電流 形状 外寸/mm 取付ピッチ
/mm
重量 価格 標準
シャーシ
対応
1次 2次 2本分 アンバ
ランス
W D H 横幅 奥行
TANGO FE-25-8 8kΩ 4,8,16Ω 10Hz〜50kHz(-1dB)
(入力4V,rp=Zp)
25W
50Hz
130〜280H 130mA 7mA 角型
グレー焼付
83 78 80 60 55 1.6kg 11,000円
ノグチ PMF-25P 5kΩ
8kΩ
10Hz〜80kHz(±2.0dB) 25W
40Hz
- 200mA(5kΩ)
200mA(8kΩ)
- 枠締め縦型
(黒)
68 79 83 46 59 - 6,800円
ソフトン RX-40-5 5kΩ(6.7kΩ) 6Ω(8Ω) 6Hz〜65kHz(±1dB)
(入力4V,rp=Zp)
40W
40Hz
290〜640H 210mA(5kΩ) 5mA
2.5mA推奨
角型
(黒メタリック)
83 78 107 60 55 1.5kg 9,800円
ノグチ PMF-15P 5kΩ
8kΩ
20Hz〜100kHz(±2.5dB) 15W
40Hz
- 160mA(5kΩ)
140mA(8kΩ)
- バンド型
(黒)
90 63 58 80 - - 4,000円 -
TAMRA F-485 8kΩ 4,8,16Ω
NFB16Ω
30〜50kHz(±1dB) 15W - 110mA 10mA 角型
(グレー)
68 71 91 54 - - 14,300円 -
東栄変成器 OPT-10P 8kΩ 4,8Ω - 10W
100Hz
巻線抵抗
374Ω±5%(20℃)
70mA×2 - バンド型 87 57 55 76 - 0.75kg 2,500円 -
東栄変成器 OPT-20P 8kΩ 4,8Ω - 20W
100Hz
巻線抵抗
360Ω±5%(20℃)
100mA×2 - バンド型 104 59 68 93 - 1.2kg 3,750円 -
TANGO U13-8 8kΩ 4,8,16Ω 20Hz〜75kHz(-1dB)
(入力4V,2rp=Zp)
13W
60Hz
79〜270H 130mA 2.8mA バンド型
(黒)
95 59 63 84 - 0.8kg 6,920円
(H11.7.20)
-
TANGO U15-8 8kΩ 4,8,16Ω 15Hz〜100kHz(-1dB)
(入力4V,2rp=Zp)
15W
60Hz
50〜230H 160mA 3.8mA バンド型
(黒)
70 65 67 55 46 0.8kg 7,400円
(H11.7.20)
-
TANGO CRD-8 8kΩ 4,8,16Ω 10Hz〜60kHz(-1dB)
(入力4V,2rp=Zp)
25W
50Hz
85〜210H 160mA 6.4mA 角型
(黒)
83 75 80 60 55 1.6kg 11,760円
(H11.7.20)
TANGO FX-40-8 8kΩ 4,8,16Ω 4Hz〜50kHz(-1dB)
(入力4V,2rp=Zp)
40W
45Hz
280〜580H 200mA 3.5mA 角型
(黒)
83 78 104 60 55 2.3kg 15,870円
(H11.7.20)
TANGO XE-45-8 8kΩ 4,8,16Ω 5Hz〜50kHz(-1dB)
(入力4V,2rp=Zp)
45W
40Hz
230〜550H 200mA 6mA 角型
グレー焼付
83 78 104 60 55 2.3kg -円
(H-)

現行品
製造中止

今回のアンプで使えそうな出力トランスで主なものを上の表にまとめてみました。そんなに高価でないものばかりを集めています。今、みなさんのお手元にあるものを流用したり、オークションなどで中古が入手できることもありますので、すでに絶版になったものも入れておきました。特定の出力トランスでなければならないとか、特にこれを推奨するなどというつもりはさらさらありません。1次インピーダンスが8kΩ〜10kΩであれば立派にアンプを仕上げることができます。

本講座で、一体どの出力トランスを題材にするかはとても悩ましい問題です。しかし、ここはひとつ心を決めないことには話が先に進みません。そこで、2つの出力トランスを選びました。TANGO FE-25-8(左)とノグチ PMF-25P(右)です。特に理由はなく、現行品の中で2つ選ぼうとしたら、この2つが目に止まっただけのことです。この2つはほぼ同規模の出力トランスで、今回の製作には充分過ぎる容量を持っています。

同じコアサイズであれば、プッシュプル用出力トランスは、シングル用出力トランスよりもはるかに大きなキャパシティがあります。ですから、もっと小型のノグチ PMF-15PやTANGO U13、U15シリーズでも何ら不足はありません。東栄変成器のものは、カバーがなく端子が剥き出しであるために実装に少々の智恵がいりますが、その分安価なのでシャーシ内に収めることができるならばおすすめです。


電源トランス

メーカー 品名 1次 2次 形状 磁気
シールド
外寸/mm シャーシ下
/mm
取付ピッチ/mm シャーシ穴/mm 重量 価格 標準
シャーシ
対応
B電源用 ヒーター用 W D H 横幅 奥行 横幅 奥行
TANGO PH-185 100V 0-(60V)-250V-280V×2
DC190mA(球),180mA(Si)
5V 2A×1
6.3V 2.5A×2
6.3V 2A×1
伏型
(グレー焼付)
なし 100 86 84 28 79 64 70 57 3.3kg 9,800円
ノグチ PMC-190M 100V 0-180V-200V-220V×2
DC190mA
2.5V-6.3V 3A×2
5V-6.3V 3A×1
5V 3A×1
伏型
(黒)
あり 103 86 75 25 82 66 70 58 - 7,700円
ノグチ PMC-170M 100V 0-(70V)-290V-320V-350V×2
DC170mA
2.5V-6.3V 3A×2
5V-6.3V 3A×1
5V 3A×1
伏型
(黒)
あり 103 86 85 25 82 66 70 58 - 7,900円
ノグチ PMC-150M 100V 0-(70V)-290V-320V-350V×2
DC150mA
2.5V-6.3V 3A×2
5V 3A×1
伏型
(黒)
あり 103 86 75 25 82 66 70 58 - 7,200円
TANGO GS-115 100V 0-250V-280V×2
DC120mA(球),115mA(Si)
5V-6.3V 2A×1
6.3V 1.5A×2
伏型
(グレー焼付)
あり 85 71 82 23 65 52 55 46 2.2kg 9,500円 -
TANGO GS-115D 100V 0-250V-280V×2
DC120mA(球),115mA(Si)
5V-6.3V 2A×1
6.3V 1.5A×2
角型
(グレー焼付)
あり 83 78 80 23 65 52 55 46 2.7kg 10,500円 -
ノグチ PMC-100M 100V 0-200V-240V-280V×2
DC100mA
5V-6.3V 2A×2
6.3V 2A×1
伏型
(黒)
あり 92 78 68 27 73 59 60 52 - 4,700円 -
TANGO LH-150 100V 0-280V-300V×2
DC150mA(球),140mA(Si)
5V-6.3V 3A×1
6.3V 3A×2
5V 0.6A×1
伏型
(黒)
なし 99 83 80 35 82 65 73 58 2.9kg 11,080円
(H11.7.20)
TANGO PH-120 100V 0-250V-280V×2
DC120mA(球),110mA(Si)
5V-6.3V 2A×1
5V-6.3V 1.2A×1
6.3V 3A×1
伏型
(黒)
なし 99 83 75 26 82 65 73 58 2.6kg 9,130円
(H11.7.20)
TANGO N-12 100V 0-220V-250V×2
DC120mA(球),120mA(Si)
5V-6.3V 2A×1
6.3V 2.5A×2
伏型
(黒)
なし 88 76 77 30 72 59 65 55 2.3kg 9,850円
(H11.7.20)
-

現行品
製造中止

さて、電源トランスです。出力管の候補に上がっている球がいずれも小型であり、動作プレート電圧が低めになっています。こういう条件に適した電源トランスの仕様は、B電源用2次巻線の電圧が230V〜240Vくらいで、取り出せる直流電流が130mA以上になります。

世の中、意地が悪いもので、こういう条件をぴったりと満たしてくれる電源トランスというのはありません。それでも探してみると、求める条件に近い電源トランスが2つありました。ノグチ PMC-190MTANGO PH-185です。PH-185の方が電圧が高め、PMC-190Mの方が低めになっています。電源回路である程度工夫することでどちらの電源トランスでも破綻のない設計が可能です。

幸い、サイズはほぼ同じ、取り出せる直流電流は180〜190mAなので6AH4GTや6BX7GTを使うのに容量には充分な余裕があります。

ところで、この2つの電源トランスを使った場合、一体どれくらいの電源電圧(整流出力電圧)が得られるのでしょうか。

両トランスともに、出力特性データは公表されていません。経験的にいえることは、シリコンダイオード整流の場合で、最大出力電流の80%くらいを取り出した時の整流出力は、元の2次巻き線電圧の「約1.25倍」くらいである、ということです。

そこで、実際に測定してみました(右図)。測定条件は、ノグチ PMC-190Mでは220v巻き線、TANGO PH-185では250V巻き線を使いました。シリコンダイオードで整流し、100μFのコンデンサで受けます。シリコン整流ダイオードと100μFのコンデンサの間には20Ωの保護抵抗を挿入しています。

140mAポイントを見ると、PMC190-Mで275V、PH-185で315Vです。それぞれを220Vと250Vで割ると1.25と1.26になります。経験則とぴったり一致しました。なお、本測定値は「AC100Vきっかり」の時のデータなので、みなさんの環境における商用電源の電圧が96Vであったり103Vであるような場合は、本データを0.96倍あるいは1.03倍してください。

なお、最大出力さえ欲張らなかったら、もう少し小型の電源トランスでもよく、TANGO GS-115/115Dやノグチ PMC-100Mも使えます。皆さんが選んだ球と電源トランスの相性についての詳細は、電源設計のページに預けます。

本講座の重要なポイントは、キットのように与えられたとおりに製作するのではなく、自分が選んだ球や部品によって状況が変化する中で、自分なりに判断し、工夫して、完成までこぎつけることにあります。正解は自分の判断の中にあるのだということを忘れないでください。私は単に、みなさんが溝に落っこちたりしないための最小限のガイド役にすぎないのです。



トランス選定のこだわり

TANGOの電源トランスのうちPH-185とGS-115シリーズは、手の混んだグレー焼付け塗装が施されています。出力トランスのFE-25-8も同様です。この塗装処理のコストがばかにできないくらい高く、ノグチのトランスに比べてTANGOの価格が高いのはもっぱらこの塗装に手をかけたせいだといってもいいでしょう。トランス類をすべてTANGOで揃えることによって、質感のある色調で揃えることができます。これはこれでなかなか良いものです。各電源トランス、出力トランスの特徴は以下のとおりです。

下図は、この2つの出力トランスのメーカー発表データ(周波数特性)を、周波数レンジが上下で揃うように配置したものです。dBスケールは同じではありませんが、帯域の広さ、レスポンスの低下ポイントはほとんど同じに見えますが、実装するとその違いが見えてきます。

TANGO FE-25-8 ↓


ノグチ PMF-25P ↑


真空管アンプ用トランス事情

真空管というデバイスが、いずれこの世から消え行く運命にあることを象徴するように、真空管アンプ用のトランスも徐々に入手が難しくなってきました。我々にとっての最大の事件といえば、平田電機製作所の廃業でしょう。誰もが「これからはTANGOのトランスが手に入らなくなる」と慌てたことと思います。TANGOといえば、真空管用トランスの世界的トップメーカーであり、私のところにも世界各国の自作オーディオファンから「どうしたらTANGOのトランスが海外でも入手できるのか」というメールが来たものです。そのTANGOブランドも、有限会社アイエスオーが商品限定とはいうもののトランス製造業務を引き継ぎ、TANGOブランドの消滅だけは回避されたのでした。

講座メインメニュー に戻る
Mail to:→ teddy@highway.ne.jp