<ポケットにはいる>

3V電池駆動ヘッドホン・アンプ
3V Battery Drive Headphone Amplifier


どんなものになるかまだわかりませんが、3V、正確には2.4V〜3Vで動作するヘッドホンアンプを作ります!
頑張って設計してみますが、実機で音出ししてみて結果が出ないこともありえますので過剰期待は禁物です。
しかし、ころんでも只で起きるつもりはありませんので、必ず何か得るものがあると思っています。

■はじめに

低電圧で動作させる半導体回路の鬼門は「VBE」問題です。シリコン・トランジスタのベース〜エミッタ間電圧は0.55V〜0.7Vくらいの範囲にあり、この存在が電源電圧の利用効率の足を引っ張ります。低電圧で動作させる電子回路では、この「VBE」問題をどうかわすかがテーマとなります。低電圧動作の技術はWalkmanが登場してから一気に進歩しました。ベース〜エミッタ間電圧の制約をかわす方法はたくさんありますが、本機の目的は低電圧回路のコンテストではありません。「希望する音にならなかったら、いくら電源電圧利用率が高くてもダメ」ということです。そこのところは間違えないようにしたいと思っています。

とはいっても、1.5V〜3Vという低い電源電圧ではおなじみの2SK170差動1段というシンプルな構成は事実上不可能です。どうしてもバイポーラ・トランジスタによる2段構成にならざるを得ません。つまり、月並みな2段アンプになってしまうということです。それでもなんとか聞ける音にならへんか、というところで今回のチャレンジになりました。

作業手順としては、いくつかの基本回路を設計したら、とりあえず大きなサイズで試作号機を製作します。この試作号機を使っていろいろと実験をして、改良を加えながら徐々に使えそうな回路に仕上げてゆきます。途中で方針が変わるかもしれませんし、挫折するというシナリオも40%くらいの確率であると思います。結果が出るまでには、過去のパターンからいってかなり時間がかかると思います。コンパクトなサイズに仕上げるのは最後の工程です。


■電源回路

<電池の性能>

電池式のポータブル・ヘッドホンアンプの設計で悩ましいのは電池寿命問題です。006Pを使えば容易に高い電圧が得られますが電流容量があまりに少ないため長時間動作には適しません。そこで電池の体積は、電圧を犠牲にして電流容量にまわすことにして単3×2本でなんとか仕上げるように工夫してみます。

電源にはニッケル水素充電池を使います。アルカリ乾電池やマンガン乾電池も使えますが、ニッケル水素充電池の方が電気的特性は圧倒的に優れているからです。もちろん、消耗品の使い捨てはエコではありませんし、電池交換も面倒ですのでそういった理由もありますが。というわけで、本機は充電式です。

ニッケル水素充電池は、フル充電して動作させた時の電圧は1.4Vくらいです。消費していってもなかなか電圧は下がってこず、1.3V以上の状態がかなり長く続きます。やがて1.2V台に下がってきてある時にストンとなくなります。それに対してアルカリ乾電池やマンガン乾電池は使い始めは1.5V以上あるのに、あれよあれよという間に1.4Vを通り越して1.3V台になり、さらに1.2V、1.1Vと下がってきます。電圧変動率が大きいのです。ニッケル水素充電池と乾電池(アルカリやマンガン)のもうひとつの大きな違いは「内部抵抗」低さです。ニッケル水素充電池の内部抵抗は0.1Ω以下で非常に低いのに対して、乾電池(アルカリやマンガン)の内部抵抗はその10倍以上もあり、電池の消耗につれてどんどん上昇するという欠点があります。そのため、ダブルの要素で電圧変動率が大きくなっています。

最近(2010年)の単3型のニッケル水素充電池を満充電した時の電流容量2000mAh前後あります。2000mAhというのは、100mA取り出したら20時間、20mA取り出すのだったら100時間もつというくらいの意味です(いろいろ条件があるのですが省略します)。電池が少々劣化しても24時間もたせたかったら全消費電流は50mA以下くらいに抑えればいいわけです。


<電源電圧>

ニッケル水素系の充電池が1セルあたり得られる開放電圧は、満充電で1.4Vくらい。使用を開始すると1.25V〜1.35Vくらいが長く続きます。ニッケル水素充電池は内部抵抗が0.1Ω以下なので動作中の電圧降下はほとんどありません。少し余裕をみて、設計電源電圧は1.2V〜1.5Vとします。この電圧範囲で正常な動作をするように設計するわけです。これを2個直列にして使いますので、2.4V〜3Vが設計動作電圧になります。


<充電>

充電池を充電するのにいちい取り出すのは面倒なので、充電できるようにします。充電方法はいろいろありますが、最も簡かつ安全なのはmAhの1/10で充電する方法です。2000mAhの充電池であれば200mAを流して10時間以上、15時間くらいかけて充電します。この方法のいいところは少々の過充電が起きても充電地を傷めない点で、欠点としては充電に時間がかかることです。市販の充電器は大電流を流すことで2〜3時間の短時間充電を行いますが、放っておくと充電池が過熱して危険なので、電池の温度を監視したり、電圧変化を精密に読み取って適当なタイミングで充電を自動終了するような回路が組み込んであります。本機ではそこまでやる余裕知識もありませんので、1/10mAh充電を基本とします。


■DC3V版全回路

本機の全回路は以下のとおりです・・・って、まだ設計中ですがな。

■初段差動回路

電圧効率、直線性を考えるとJFETは使えません。JFETは2V以下の電圧では本来の特性が得られません。そこで初段はPNP型バイポーラ・トランジスタを使うことにします。初段の動作電圧は2Vほどもあり、コレクタ〜エミッタ間電圧は確実に1V以上確保できる上にコレクタ電流は100μA程度と非常に小さいのでhFEが十分に高い小信号用PNPトランジスタならば大概のものが使えます。廉価でポピュラーな2SA1015を使うのであればGRランクを使ってください。2SA970、2SA992、2SA1084/1085ならばランクを問いません。

コレクタ電流が100μAと比較的少ないのは高い入力インピーダンスを得るためと節電です。


■定電流回路

初段が差動回路である以上、定電流回路が必要になります。定電流回路はプラス給電で電源電圧は1.2V〜1.4Vの範囲ですが、初段差動回路のトランジスタの共通エミッタ電圧が0.6Vほどあるので、定電流回路が使える動作電圧は0.6V〜0.8Vしかありません。そのため定電流回路は一般的なカレント・ミラー型で、2SA1015(GRランク)を使うことにします。

■2段目

2段目をどう設計するかはいろいろと選択肢があります。トランジスタ1個で済ましてしまう古典的な回路もあれば、最大出力を若干犠牲にしても2段目も差動にしてしまうことも無理ではありませんし、コレクタ側も単純な抵抗負荷や定電流負荷も選べます。本機では、1970年代によく使われた単純なトランジスタ1本に抵抗負荷の回路としました。いまどきこんな回路を使う人はあまりいないようですが、私はこの原始的な回路が好きです。この回路は物理特性は月並みですが音は悪くありません。ブートストラップもかけていません。

ここで使用するトランジスタはコレクタ〜エミッタ飽和電圧(VCE-sat)が低いタイプが適します。2SC1815のGRタイプを使用しました。


■出力段

出力段は、3Vという低電源電圧でも十分な出力信号電圧と電流の両方が得られる回路が必要です。一般的な純コンプリのダーリントン接続では、バイアスを得るだけのために0.6V×4=2.4Vのロスが出るので完全に圏外です。

ダーリントン接続にしなければロスは0.6V×2=1.2Vで済みます(実際にはもうすこし大きな値になる)ので、入力インピーダンスが低いことを割り引けば実用圏内にはいります。下図(左)は2SC1815/2SA1015を使った単段SEPPに68Ω負荷を与えた状態でさまざまな電源電圧で動作させた時の実験結果です。2Vと4Vのデータから3V時の状態がおおよそ見当がつきます。下図(右)はダイヤモンド・バッファを同じ条件で動作させた時の実験結果です。どちらも余裕のある動作とはいえませんが、0.3Vくらいならなんとかなりそうです。

上記以外にもインバーテッド・ダーリントンという方式があります(右図)。電圧利用効率という点ではダイヤモンド・バッファと同等かそれ以上だといえそうですが、

出力段こそコレクタ〜エミッタ飽和電圧(VCE-sat)が低いことが重要で、前段には2SA1015/2SC1815、後段には2SA1680/2SC4408を使いました。


■部品と製作

<製作>

さあ、がんばって作ろう。


<部品について>

できてから書きます。

■測定と試聴

測定結果は以下のとおりです。・・・って、まだ設計も終わってません。


■いろいろなヒント

(1):

(2):

(3):

(4):


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