EL34 シングル・アンプその2「電圧増幅段」歪み率特性


このデータは、3極出力管(EL34の3結)をドライブした時、ドライバ段でどの程度歪みを生じているのかを調べたものです。一般に、6SN7GTや6FQ7といった低内部抵抗管ならば、余裕を持ってドライブできると言われていますが、私の場合、どんなことでも自分で実験しないと気が済まないたちなので、このような実験を試みたわけです。

実験回路の構成は以下のとおりです。低内部抵抗管6FQ7の2段増幅に6dBの負帰還をかけることで、ドライバの出力インピーダンスはさらに低くなっており、より強力なドライブができる回路にしています。出力段は、EL34の3結でバイアスが-37Vですから、これだけならば26.5Vr.m.sの入力電圧で最大出力(約5W)となりますが、3dBのカソードNFがかかっているために、最大出力時に要する入力電圧は37Vr.m.sです。

さて、実験結果(右図)ですが、細い実線が「出力段なし」の時の歪み率特性です。出力電圧が高くなるにつれてなめらかな曲線を描きながら歪み率が上昇してゆきます。

「出力段あり」では、100Hz〜10kHzいずれの場合も、出力電圧が25Vを過ぎたあたりから曲線が折れてしまい、歪みが急激に増加しはじめます。このポイントは出力約1Wに相当します。出力電圧37V、すなわち最大出力時の曲線はすっかり立ってしまっています。こういう結果を見ていると、世の真空管パワーアンプの歪みの多くはドライバ段で生じていて、ドライバ段さえ強化できればもっとパワーに余裕のあるアンプになるのではないか、と思えてきます。

このようになってしまう原因としては、出力管のグリッド電流による入力インピーダンスの低下が考えられます。出力管の入力容量(Cg-pとミラー効果)による10kHzでの歪み率の悪化がみられなかったのはちょっと意外でした。

6FQ7は低内部抵抗管に属しますし、6dB程度ですが負帰還もかかっているので、基本的にはドライブする力がある回路のはずですが、それでも相手が3極管(接続)となるとこんなにもドライブはしんどいものになります。ドライバ段の出力インピーダンスがもっともっと低く、パワフルであれば2つのカーブの差はもっと少なくすることができるでしょう。

(注:測定時に片チャネルの出力管をはずしたために、電源電圧が若干上昇し、その影響が電圧増幅段の電源電圧にも現れています。「出力段なし」のカーブはもうすこし「出力段あり」に接近して、出力電圧25Vあたりまではもっと重なるはずです。)