私のアンプ設計&製作マニュアル / オーディオの基礎編
いろいろなオーディオソースと機材

レコード(SP、LP、EP)

エジソンが発明した方式です。回転する円筒あるいは円盤に針で溝を堀り、その溝に音声信号波形を刻んで記録します。再生する時は、その溝を針でなぞって電気信号に変換します。おそろしく原始的な方法ですが、私が子供の頃はこれがあたりまえで、1980年頃になってもまだ売られていました。1980年以降に生まれた人でレコードを知らない人はたくさんいるようです。CDが普及してレコードが衰退すると、レコードを再生する装置(レコードプレーヤ)やこれと併用しなければならないイコライザアンプも市場から姿を消し始めため、レコードの衰退は加速します。しかし、レコードは管理さえしっかりしておけば後述するテープよりも劣化しない状態で保存できます。

レコードには戦前から普及していたSP(Standard Play)盤と、戦後広く普及したLP(Long Play)盤があり、さらにA/B面に1曲ずつ入れてオートチェンジャーで演奏するためのドーナツ盤(EPとも呼んだ)があります。SP盤はモノラルだけですが、LP盤とドーナツ盤はモノラルとステレオが共用できます。

レコードは、溝にカッティングする際に低域側を減衰させ高域側をブーストするようなイコライジングをしますので、再生するアンプ側にはその逆の周波数特性を持たせます。また、音を拾うカートリッジからの出力信号は数mVかそれ以下の非常に小さいレベルなので、100倍(40dB)前後の増幅をする専用アンプ(PHONOイコライザアンプという)が必要です。カートリッジには、比較的出力電圧が高いMMタイプ(数mV)と、音は良いが出力電圧が極端に低い(0.05〜0.3mV程度)のMCタイプとがあります。通常のPHONOイコライザアンプはMMタイプ対応で、MCタイプを使う場合はさらにもう1台MCヘッドアンプ(あるいはMCヘッドトランス)なるものを追加しなければなりません。

CDが普及する以前のプリアンプはこのPHONOイコライザアンプを内臓していますが、1980年代以降のプリアンプにはこれがついていません。2000年以降になってもLPレコードがなくならないため、レコードプレーヤが再び製造されるようになりましたが、新しいタイプのレコードプレーヤにはPHONOイコライザアンプが内臓されているものが目立ちます。但し、内臓されているPHONOイコライザアンプの質はあまりよくないように思います。

実際に音を拾うのはカートリッジですから、音に大きなインパクトがあるのはカートリッジのように思えますが、レコードプレーヤ自体が音を決める要素を持っていることはあまり知られていません。THORENSといえば、3.2kgもある重量級のターンテーブルで名を馳せたメーカーであり、私はこれを30年間も使っていましたが、そんなに高級でもなかったDP-55Lに変えたところ、音の座りが格段に良くなったことに驚いたものです。

カートリッジの針の寿命は長くても200時間程度なので交換針が必要、レコードは簡単にホコリをかぶりますのでレコードクリーナーは必須です。針圧が直読できないタイプのトーンアームの場合は針圧計も必要です。

  • 必要機材: レコードプレーヤ
  • 出力: PHONOレベル(MM:1mV〜10mV、MC:0.05mV〜0.5mV)
  • 専用アンプ: PHONOイコライザアンプ(最近のレコードプレーヤは内臓しているものがある)、MCヘッドアンプまたはMCヘッドトランス(MCタイプの場合)
  • メンテナンス: 交換針、レコードクリーナー、針圧計(なくても済むことが多い)

なお、LPレコードの初期およびそれ以前の方式については、書き出すときりがないのと、骨董趣味の世界に踏み込むことになるのでここでは触れません。興味がある方は自力で学習してください。


30年間愛用したTHORENS TD-160Cと現在使用中のDENON DP-55L(ともに画像は借り物)、使い始めて40年になるDL103。


オープンリールテープ

1970年代のステレオセットには、オプションとしてオープンリールテープデッキがありました。主な目的は、簡易マイクロフォンを使ったホームレコーディングと、FM放送のエアチェック(放送をテープに録音すること)です。そもそもテープデッキが高価で、テープも高価、操作が複雑といった理由であっという間廉価で扱いやすいカセットテープに置き換えられてしまいました。しかし、オープンリールは性能的には優れたものを持っているため、本当に良い音で録音したい人は頑張って使い続けたようです。プロ用のテープデッキの性能はかなりなもので、デジタル化されるまでのプロレコーディングではオープンリールが標準で使われました。

オープンリールテープの規格には、テープ幅(1インチ、1/2インチ、1/4インチ)、トラック数(2トラック、4トラック、それ以上)、テープスピード(76cm/s、38cm/s、19cm/s、9.5cm/s、4.76cm/s)があります。家庭用のオープンリールテープデッキは1/4インチ幅、4トラック、9.5cm/sまたは19cm/sというのが一般的で、プロ用では1/4〜1インチ幅、2トラックまたはマルチトラック、19cm/s以上となります。さらに、録音・再生のイコライザ方式が複数ある(NAB、IECなど)ため、イコライジング特性も調整しなければなりません。また、テープはメーカーや型番ごとに音響特性が異なるので、使用するテープを1種類に固定しなければならなかったり、テープを変更するたびに精密な調整を行うという非常に手のかかる機材でもあります。

テープの音を拾うヘッドからの出力も前述のカートリッジと同様に非常に小さいため、専用のイコライザアンプが必要です。初期の家庭用テープデッキに中には、テープ再生用のイコライザアンプが内臓されていないものがありました。Marantz 7のような古いプリアンプにはテープ再生用のイコライザアンプが内臓されています。

1960〜1980年代に録音された優良ソースがたくさんあるため、私はそれらを再生する目的でオープンリールのマスターレコーダーを手元に1台保有しています。

  • 必要機材: テープデッキ
  • 入力: ラインレベル、マイクロフォン入力を持つものもある
  • 出力: ラインレベル
  • 専用アンプ: イコライザアンプ(通常はテープデッキに内臓されている)
  • 測定器: プロ用の場合は頻繁に調整するので、MRL標準テープ、オーディオジェネレータ、電子電圧計、オシロスコープが必要
  • メンテナンス: ヘッドの磨耗に応じた調整と交換、ヘッドクリーナー(無水エタノール、綿棒)、消磁器など


OTARIのマスターレコーダーMX-50N、MRL標準テープ。


コンパクトカセットテープ

カセットテープは正式にはコンパクトカセットテープといいます。PHILIPSが開発し、規格を一般公開した(偉い!)ため世界的に普及しました。テープ幅は0.15インチ(3.81mm)しかなく、これを4.76cm/sのという低速で走行させるため、当初はとても音楽録音には使えないといわれました。しかし、テープが良くなり、テープデッキ側の性能も著しく向上したため、私が使ったNakamichi 600やLX3では余裕で20kHzまでフラットな特性を得るほどになりました。しかし、ダイナミックレンジはさほど広くなく、ドルビーノイズリダクションシステムを使わない限り、どうしてもテープヒスノイズが耳につきます。

Walkmanが登場して、モバイルオーディオの普及にも大いに貢献しましたが、CDやiPodが普及した現在、コンパクトカセットの出番はどんどんなくなっています。それでも、貴重な録音ソースを持っている人は多いと思います。私も、今やコンパクトカセットに録音することはありませんが、過去に録音したソースを聞くための再生専用としてLX3を1台確保してあります。

  • 必要機材: テープデッキ
  • 入力: ラインレベル、マイクロフォン入力を持つものもある
  • 出力: ラインレベル
  • 専用アンプ: 不要
  • メンテナンス: ヘッドの磨耗に応じた調整と交換、ヘッドクリーナー(無水エタノール、綿棒)、消磁器など


愛用した歴代カセットデッキ。左からNakamichi 350、600、LX3。


CDプレーヤ

LPレコードの後継であり、LPレコード以上に普及した媒体です。当初は専用のCDプレーヤでのみ再生が可能でしたが、LD(レーザーディスク)プレーヤやDVDプレーヤでもCDが再生できるものが多く、やがてパソコンでも再生可能になりました。

あまりに一般的なのでここで多くを語る必要はないと思います。パソコンを使った再生については、より広がった別の世界があり、それについてはこちら(http://www.op316.com/tubes/lpcd/index.htm)を参照してください。

  • 必要機材: CD(LD、DVD、BD)プレーヤ、パソコン
  • 出力: ラインレベル、S/PDIF、Optical
  • 専用アンプ: 不要
  • メンテナンス: 特になし(但し、レーザーヘッドマウントの劣化あり)


DAT

テープデッキと代わるデジタル録音機材として登場したDATですが、ライセンスを巡る不調で頓挫し、さらにテープ媒体の弱点(動きがトロい、消耗する、早送りが遅い・・ダイレクトアクセスができない、媒体が高価)が露呈してCDよりもハイスペックであるにもかかわらず、十分な普及に至らずに衰退しました。しかし、プロ機の世界ではマスターレコーダーとして大いに普及したのと、じつはコンピュータの世界ではデータバックアップ用として良く使われており、おそらくこちらの普及率が最も高いのではないでしょうか。

DATの規格の標準は48kHz/16bitといっていいと思いますが、スペックを落とした規格もあります。また、デッキメーカー独自のハイスペック仕様(96kHzや24bitなど)も作られましたが、全くローカルなもので互換性はありません。

デジタル機器なので

  • 必要機材: DATテープデッキ
  • 入力: ラインレベル、S/PDIF、Optical、マイクロフォン入力を持つものもある
  • 出力: ラインレベル、S/PDIF、Optical
  • 専用アンプ: 不要
  • メンテナンス: ヘッドクリーニングテープ


FM/AMチューナ

世界最初のAM放送は1900年の米国、そして最初の公共放送はやはり米国で1920年です。日本でAM放送が開始されたのは1925年のことで、JOAK(NHK)によるものです。私が子供の頃はFM放送の存在すら知りませんでしたが、AM放送には本当にお世話になりました。小学生の男の子のあこがれは、とにかく自分でラジオを作って放送を聞くことでして、小学校5年生の時にゲルマラジオを作り、クリスタルイヤホンで蚊の鳴くような小さな音で放送を聞いた記憶があります。この頃は、音質のいい悪いはどうでもよくて、とにかく音が出ることで感激していました。

家庭には5球スーパーと呼ばれる真空管式のラジオがあってこれが全国標準でした。自作できるような簡単なラジオの場合、受信する局によって音量が大きく異なり、しかも隣の局の電波が混ざって両方聞こえてしまう(混信という)が生じたりととにかく不安定だったのですが、スーパーヘテロダイン式のラジオは音量が一定かつ分離が良かったのです。しかし、AM方式は分離を良くすればするほど周波数帯域が狭くなる、という欠点があり当時の受信機の周波数特性は100Hz〜5kHzがせいぜいでした。

1970年頃のAM放送では、TBSによるVerve不滅のジャズシリーズや芥川也寸志によるクラシック番組百万人の音楽などを一生懸命聞いた記憶があります。

AM放送を広帯域で聞くには、受信における分離を犠牲にする必要があり、そうなるとスーパーヘテロダイン方式よりも低性能な高一受信機が有利になりますので、そういうAMチューナも作ったことがありますが、世の中はすでにFM時代に入っており、AM放送で音楽を聞く時代ではなくなっていました。

AM放送にもステレオの時代が2つありました。最初のものはNHK第1とNHK第2の2波を使った方式で、1952年〜1965年の間に行われました。この放送を受信するには2つの送信局と2つのラジオ受信機が必要で、モノラルとの互換性はありません。一般家庭でこれを受信しようとすると、お金持ちでない限り左右であり合わせのラジオを使うことになってしまうため、音質が揃わないなど欠点もありましたが、とにかく立体的に聞こえるという驚きがありました。2セットのAM受信機を内蔵した電蓄も存在しました。

もうひとつのAMステレオ放送は1990年になってからのもので、1波でステレオ効果が得られるC-QUAM方式(モトローラ方式)です。しかし、時遅しで10年ほどで衰退してしまいました。音質がFMに及ばなかったこともありますが、何よりもAM放送には音楽番組がほとんどなかったことが大きいと思います。

* * *

日本でFM放送が開始されたのは1957年のことですが、FM放送を聴くことが一般に普及したのは1960年代になってからで、それもモノラルでした、しかし、モノラルといえどもAM放送に比べてとにかくノイズが少なく、周波数帯域が広くて音がリアルなので、ここに至ってようやく生に近い音がスピーカーから聞けるようになったのです。

FM放送がステレオ化されて本格的な音楽ソースとなったのは1970年くらいのことです。この1970年代というのはFMによる音楽放送としての黄金時代ともいうべきで、NHKの場合は全放送時間の80%くらいが音楽放送であり、そのうちの半分がクラシック、残りの半分がジャズやポピュラーでした。そのため、FM放送を受信していれば、1日じゅう音楽を楽しむことができたのでした。しかし、1980年代後半になるとFM放送のAM化現象が起き、たっぷりと時間をかけて音楽を聞くという番組がどんどん姿を消してしまったのでした。今でも、当時のエアチェック(FM放送をテープに録音すること、死語)テープを聞くと、音楽番組の充実ぶりがわかります。

FM放送は、周波数変調という方式で音声信号を電波に乗せていますが、この方式はAM放送とは異なり、ノイズが非常に少ない上に周波数特性が良いという特徴があります。このFM放送の方式が考案されたのはなんと1902年のことですが、実用化されたのはかなり後になってからです。1つの電波に2チャネル分のステレオ信号を乗せているわけですが、その方法はちょっと変わっています。主信号は、L-chとR-chをミックスしたモノラル信号です。そのため、これだけ受信(復調)すればモノラルで聞くことができます。一方で、副信号というのがあり、これはL-chとR-chを引き算(差信号、位相を逆にして足したもの)で送られてきます。主信号と副信号を演算することでL-chとR-chのステレオ信号に分離するというわけです。この方式をFMマルチプレックス(多重化、MPX)といいます。左右信号の分離は完璧にはできず、かなり性能が良いチューナでも左右チャネルのセパレーションは30dB台にとどまります。

主信号の帯域はせいぜい15kHzまでで、副信号は38kHzを中心にした23kHz〜53kHzくらいの帯域を使います。さらに、38kHzの基準信号を得るために19kHzのところにパイロット信号というのが常時送られてきています。パイロット信号が漏れて出てきてしまうと耳の良い人ならば聞こえてしまうので、FMチューナには19kHzをピンポイントでカットするMPXフィルタというのが組み込まれています。そのため、CDの帯域の上限が22kHzであるように、FM放送の帯域の上限は15kHzです。

補足:この19kHzのパイロット信号や38kHzを中心とした副信号の存在は、テープデッキで録音する時に深刻な障害を発生させました。テープデッキでは、録音ヘッドを効率的に動作させるために数十kHzくらいの周波数の交流バイアス(録音バイアスという)をかけて使います。この交流バイアスとFMチューナから漏れてきた信号とが干渉してしまったのです。この干渉を避けるためには、録音バイアスの周波数は38kHz+15kHz=53kHzよりも十分に高くなければなりません。普通のカセットデッキの録音バイアスの周波数が85kHzまたはそれ以上であるのはそうした理由があるからです。高性能を追求したNakamichiのカセットデッキのバイアスはもっと高い105kHzです。
  • 必要機材: FMチューナ、FM用(屋外)アンテナ
  • 入力: FM電波
  • 出力: ラインレベル
  • 専用アンプ: 不要
  • メンテナンス: 特になし


FMチューナの最高峰といわれたSONY ST-5000F。ほしくてしょうがなかったが、手が出なかった。


・・・

私のアンプ設計&製作マニュアル に戻る