私のアンプ設計&製作マニュアル / 基礎・応用編
5.コンデンサ値と計算
コンデンサの容量は、
「F(ファラッド)」
で表します。しかし、「F(ファラッド)」という容量は非常に大きく、オーディオアンプで使うコンデンサはその百万分の一の「μF(マイクロファラッド)」やその千分の一の「nF(ナノファラッド)」そのまた千分の一の「pF(ピコファラッド)」で表記します。「mF(ミリファラッド)」というのもありそうに思いますがミリは使われません。

1F=1000000μF
1μF=1000nF
1nF=1000pF

0.000001F=1μF
0.001μF=1nF
0.001nF=1pF

の関係があります。日本では「nF(ナノファラッド)」が使われることはまれで、1nFのかわりに0.001μFあるいは1000pFと表記するのが一般的です。当サイトもこの表記で統一しています。しかし、「nF(ナノファラッド)」に慣れておけば欧州の回路図を見た時に戸惑うことがなくなります。


合成容量値の計算

こんどは2本以上のコンデンサが組み合わさった状態での合成容量値の計算です。これも単純に「直列」の場合と「並列」の場合に分解して計算してゆきます。

「直列」の場合:

抵抗と反対で、コンデンサでは直列の場合が「掛けた結果」を「足したもの」で割る、になります。

C=(C1×C2)/(C1+C2)
たとえば、100μFのコンデンサを2個直列にすると50μFになりますし、100μFと47μFを直列にすると32μFになります。しかし、一般にはコンデンサの直列使用はまずやりません。50μFくらいの容量が必要な時、より大型の100μFを2個直列にするまでもなくより小形の47μFが1個あれば足りるからです。しかし、回路や部品の都合でこのような使い方もありえますので一応覚えておいてください。

「並列」の場合:

これは簡単です。ただ足し算すればいいだけです。

C=C1+C2
コンデンサの並列使用は頻繁に行われます。100μFを取り付けたところちょっと容量が足りない、なんていう時は横に100μFをもう1個並列に追加してやれば200μFになります。平たいケースに入れたい場合には、1個の大型コンデンサではなく並列にした複数個の小形コンデンサにした方が都合が良かったりします。1300pFという中途半端な容量が欲しい時に1000pFと330pFを並列にして必要な値にするということもよく行われます。また、同じ容量なら複数個のコンデンサを並列にした方が性能的に有利なことも多いです。

これで、抵抗とコンデンサの値の計算のやり方がわかりました。このあたりの知識はたいへん基本的ですから、繰り返し繰り返し練習するようにしてください。この辺でもたもたしていると、本当の設計のところでのお楽しみが半減してしまいます。


手持ちの部品で希望する容量値が得られない時

コンデンサ容量は、回路の場所によって正確かつ希望するある値のものが欲しいケースと、だいたいある値の範囲であれば足りるケースとがあります。前者の代表的なケースは、PHONOイコライザにおけるRIAAイコライジング回路で使用するコンデンサです。

NF型PHONOイコライザの場合、イコライジング素子とし最低でも2個のコンデンサを使いますがその値はたとえば「0.0022μF」と「0.0082μF」という風になります。0.0022μFの入手は容易だと思いますが、0.0082μFが店頭で見つからないことあります。このような場合、入手容易な0.0068μFと0.0015μFを並列にすることで0.0083μFにできるのでほぼ希望値を満足することができます。

コンデンサを並列にした場合は、すべてのコンデンサに同じ電圧がかかるので、耐圧はみんな同じものが必要です。異なる耐圧のコンデンサを複数並列にした場合は、耐圧がいちばん低いものが基準になります。

コンデンサを直列にした場合は話は厄介です。コンデンサは名目上は直流は流れませんが、実際には微量の電流が流れることがあります。この値はまちまちなので直列になった2個のコンデンサに電圧が1/2ずつかかるという保障はありません。従って、複数のコンデンサを単純に直列にする場合は、すべてのコンデンサが耐圧を満足している必要があります。

特殊なケースとして、電源電圧が600Vあるようなアンプでは、一般に入手容易な電解コンデンサの耐圧は450Vか500Vどまりなので、電源のリプル・フィルタに使うコンデンサは400V耐圧のものを2個直列にして耐圧を稼ぎます。この場合、それぞれのコンデンサに均等の電圧がかかるように、コンデンサごとに680kΩ1/2Wくらいの抵抗を並列に抱かせます。こうすることで、2個のコンデンサにかかる電圧を強制的に300Vにしてやります。但し、この手はコンデンサと並列に抵抗を入れて少々の電流が流れてもかまわない電源回路くらいしか使えません。


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