私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編
アース回路その3

2段増幅のメインアンプの場合:

増幅回路が2段(またはそれ以上)になった場合はどうすればいいのでしょうか。そこで、前章の図3を2段増幅のシングル・アンプに拡張してみます。(図9)

図9

各信号ループ、直流電流ループは以下のようになります。

(1)入力信号のループ: (input)-(a)-(Rg1)-(d)-(E1)
(2)初段のプレート電流の直流成分のループ: (B+)-(Rb1)-(Rp)-(3極管)-(Rk1)-(BE?)
(3)初段のプレート電流の交流成分のループ: (i)-(h)-(j)-(f)-(c)
(4)初段出力と終段入力のループ: (i)-(k)-(m)-(f)
(5)終段のプレート電流の直流成分のループ: (B+)-(Rb2)-(OPT)-(3極管)-(Rk2)-(BE?)
(6)終段のプレート電流の交流成分のループ: (p)-(OPT)-(q)-(o)-(l)
(7)終段出力信号のループ: (r)-(SP)-(s)

いちばん悩ましい問題は、(2)と(5)の2つをどう切り分けるかでしょう。B+側は各段独立して電源が供給されますからひとまずいいとして、BE側の電源回路への帰り道をどこから取るかです。初段の帰り道のポイントは(e)点ですし、終段の帰り道のポイントは(n)点です。しかし、2個所に別個にBEをつなぐと三角関係になってしまい、ここにアースのループができてしまいます。

従って、ここでひとつの妥協をすることになります。流れる電流は一般に終段側の方が大きいですから、終段管カソード(l)から(n)点を通ってBEにぬける電流を、アースライン上に流したくありません。そこで、電源への帰り道のポイントを(n)点からとることにします。一方で、初段管カソード(cl)から(e)点を通ってBEにぬける電流がアースライン上を流れることには目をつぶります。そのとき、(e)点と(n)点の距離をできるだけ短くして、この2点間で生じる電位差を無視できるくらい小さくするわけです。

注意しなければならないのは、(3)と(6)の扱いです。この信号ループは、各段で独立して形成されますから、電源とアースを結ぶパスコンの経路はできるだけ短くなるように、しかもアースラインに接する(f点とo点)ことはあってもアースライン中に交流信号が流れ込まないように配線しなければなりません。

アースラインのうち、(d)-(e)間、(e)-(f)間、(m)-(n)間、(n)-(o)間、(o)-(s)間はいずれも電流は流れず、電位を同じにするだけのアース本来の役割を担うところですが、上記の妥協をすることで(e)-(n)間にはわずかながらも初段プレート電流分が流れることになります。しかし、パスコン(Cc1)と(Cc2)が正しく配線されている限り、何ら不都合は生じません。


負帰還をかけたら:

OPTの2次側から初段のカソードに負帰還をかけた場合はどのように考えたらよいのでしょうか。答えは簡単明瞭です。下図10のようにします。

図10

負帰還も一種の信号ループですから(下の(8)を参照)、負帰還ループがアースの中を流れないように、他のループと重ならないように独立させてやればいいのです。「負帰還のアースは帰還が戻る側でとる」が負帰還の扱いの基本です。ですから、出力側のアース(y)はカソード側(x)でとらなければいけません。そして、(v)-(w)と(y)-(x)の2本の線を対にして捻るくらいの配慮が理想です。このループで雑音の侵入を許してしまうと、どうにも退治できなくなります。

(8)負帰還のループ: (v)-(RNF)-(w)-(Rk0)-(x)-(y)

半導体を使用したDCアンプや、真空管アンプでOPTの2次巻き線を終段のカソード帰還に使用した場合は、このようなアースの配線が困難ですのでかなり注意が必要です。しかし、「負帰還のアースは帰還が戻る側でとる」という基本は変わることはありません。

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