私のアンプ設計マニュアル / 周辺技術編 5.スイッチの種類と使い方 |
定格と負荷係数
スイッチの定格には、電圧(V)と電流容量(A)があります。電流定格は抵抗負荷をかけた回路のON/OFFをした場合の値が表記されており、トランスなどの誘導負荷の場合は定格の1/2〜3/4くらいになります。モーター負荷や電球負荷の場合は突入電流があるため、許容値は定格に対して1/5〜1/3までダウンします。
電圧定格は通常は交流(AC)時の値が表記されています。AC125Vで3AのスイッチをAC250Vで使う場合は、電流定格は1/2〜2/3すなわち1.5A〜2Aに低減して使います。AC125Vで3Aのスイッチを直流(DC)で使う場合の電流定格はおおよそですが数分の1程度まで落ちますので注意してください。DC12Vで使うなら3Aですが、DC125Vでは0.3Aになってしまうのです。下表はNKKスイッチズ(旧日本開閉器)のテクニカルドキュメントから参考データです。
スイッチではどれくらい大きな電流を流せるかだけでなく、どれくらいの微小電流でも安定に接触を維持するかという問題があります。おしなべて大電流用のスイッチは微小電流が苦手です。その理由は、大電流用のスイッチの接点で使われる銀または銀合金メッキはON/OFFで発生するスパークを利用して表面の接触性を維持しているため、スパークが全く発生しない微小電圧・電流では接点の状態が不安定になりやすいからです。もっとも、あまり激しいスパークではメッキの消耗が激しくなるのでスパークキラーを使うわけです。
微小電圧・電流でも高い接触安定を確保したい場合は、接点に金メッキを使ったものを使いますが非常に高価かつ滅多に売っていません。国産の信頼できるメーカーのものであれば、銀系メッキの通常タイプでもオーディオ信号回路で十分に実用になります。高い信頼性を確保したい場合は、押し当て接点のトグルスイッチよりも摺動接点のロータリースイッチの方が接触安定が良いです。
さらに、単極でなく双極スイッチを2つ並列に使うことで信頼性を高めることができます。ロータリースイッチで遊んでいる回路(極)がある場合は、遊ばせておかないで複数回路を並列にすると良いでしょう。右の画像(クリックで拡大)はミニワッターの入力セレクタ部分です。6回路2接点のロータリースイッチなので、左右それぞれに2回路ずつ並列に使い、残りの2回路はアースにつないで左右チャネル間クロストークの劣化を防ぐための遮蔽として使っています。
スイッチの種類と特徴
トグル・スイッチとロッカー・スイッチ小さなレバーをパチパチを操作するおなじみの小型スイッチがトグル・スイッチで、レバーがなく波動動作をするのがロッカー・スイッチです。見た目はかなり異なりますが、内部構造はとても良く似ており、どちらもさまざまな種類のものがあります。私たちがよく使うものを2Pとか3Pとか6Pという略称で呼んでいますが、以下に正式の呼称を説明します。(出典:NKKスイッチズ http://www.nkkswitches.co.jp/)
「極=pole」は、そのスイッチが同時に制御できる回路の数、いいかえると1つの箱に同時に動くスイッチが何個入っているかをいいます。
単極・・・中に1組のスイッチが入っています。「投=throw」は、そのスイッチが制御できる回路上の接続経路の数です。
2極・・・中に2組のスイッチが入っています。
n極・・・中に3組以上のスイッチが入っています。
単投・・・単純にON/OFFするしくみです。ON-OFFともいいます。「ポジション」は、レバーの物理的な位置の数です。
双投・・・どちらに倒してもONになって2つの接続経路を切り替えるしくみです。ON-ONともいいます。
3投・・・きわめて特殊なトグルスイッチで3つの接続経路を切り替えるしくみです。ON-ON-ONともいいます。
普通のトグルスイッチは、レバーの位置が2ポジションで常にいずれかの側に倒れます。3ポジションになるとセンターポジションが追加になります。3ポジションのスイッチには「双投」と「3投」の2種類があります。3ポジションで「双投」のトグルスイッチでは、センターポジションではどこにも接続せずにオープンになり、こういうスイッチは「センターオフ」あるいは「ON-OFF-ON」といいます。また、指で押していないとバネの力で一方に戻ってしまうものを「ハネ返り」といいます。このように押している時だけON(あるいはOFF)になるスイッチを総称して「モメンタリー」といいます。
左から、ロッカースイッチ2種とトグルスイッチ3種、ロッカースイッチの構造、トグルスイッチの構造。英語では、単極単投のことをSPST、2極双投のことをDPDTと略記します。
ロータリー・スイッチ
「回路=pole」は、「極」と同じ意味でそのロータリースイッチが同時に制御できる回路の数です。
1回路・・・中に1組のスイッチが入っています。「接点=throw」は、「投」と同じ意味でそのロータリースイッチが制御できる回路上の接続経路の数です。
2回路・・・中に2組のスイッチが入っています。
n回路・・・中に3組以上のスイッチが入っています。
1接点・・・ON/OFFだけを行うスイッチでで、昔のラジオの電源スイッチはこれでしたが今はもう見なくなりました。英語では、4回路3接点のことを4-Pole-3-Positionあるいは4P3Tと表記します。
2接点〜n接点・・・ロータリースイッチは1周360°をいくつかに分割して接点を割当てます。1接点あたり30°で区切ったものが一般的ですので1周すると最大で12接点が作れます。15°で区切ったものもあり最大で24接点になります。
上の画僧の左端はALPS製のSRRN型(最大DC12V/0.15A、最小DC3V/50μA)、左から2番目がALPS製のSRRM型(最大DC30V/0.25A、最小DC3V/50μA)、ともに最大12接点です。電圧&電流定格はM型の方が大きい点を除けばほぼ同等の機能を持ちます。右の2つはTOSOKU製の接点可変型RS500シリーズで2接点〜23接点の任意の数が設定できるスグレモノです。接点可変はストッパーとなるビスを差し込む位置を変えて行います。
ロータリースイッチの接点が接触したり離れたりするタイミングには「ショーティング」と「ノン・ショーティング」の2種類があります。
ショーティング=Make before Break・・・つながっていた回路が切れる前に次の回路に接続する。ショーティングでは切替操作の際につながる相手の接点同士がショートする瞬間ができますが、ノンショーティングでは切替操作の際に可動切片側がどこにもつながらない瞬間ができます。採用するスイッチはショーティングかノン・ショーティングのどちらが適切なのか、あるいはどちらでも問題ないのか、よーく考えて選択しなければなりません。
ノン・ショーティング=Break before Make・・・次の回路に接続する前につながっていた回路が切れる。
ロータリースイッチの多くは、電圧定格はあまり高くなくかつ電流定格も小さいので、高圧大電流には適しません。しかし、微小電流時の安定性はトグルスイッチよりも優れています。
スライド・スイッチプッシュ・スイッチ
照光スイッチスイッチの中にランプやLEDが内蔵されているスイッチを照光スイッチといいます。照光の方式を分類整理すると以下のようになります。
電球 普通の白熱電球。6V、9V、12V、24V・・・などさまざまな電圧のものがある。 ネオン管 60V〜70Vで放電してオレンジ色に点灯するネオン管。
AC100Vで点灯することを前提とした抵抗入り(33kΩ〜100kΩ)と、使用側で抵抗値を決めて取り付ける抵抗なしがある。LED 今や花盛りのざまざまなLED。
LEDだけのものと、抵抗入りのものがある。構造的には、電球やLEDを交換できるものと交換できないものがあります。白熱電球は寿命はあまり長くなくいつか切れますから交換式が普通ですが、LEDを内蔵したものは交換できないものの方が多いです。電球が交換式のスイッチには、白熱電球と抵抗入りLEDのどちらでも使えるものもありますがはなはだ高価です。
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工事中
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