私のアンプ設計マニュアル / 部品購入・調達ガイド
3.「オークション」で踊らないために

オークションの考え方

私は売り買いともに結構オークションを利用します。オークションの良いところは、滅多に出ないような品物であっても根気良く待っているいつか売りに出るということだと思います。しかし、待っていてやっと出たと思ったらかなり痛んだ状態のものだったり、開始価格からして全くお安くなかったり。少しでも期待にそぐわなかったら慌てないことです。やがて期待通りの出品があるものです。オークションは生き物のようなところがあり、たとえば、ある真空管を探していていくつか出品があったのに買い損ねたような場合、その後暫くは全く出品がなくても、やがてまた複数の出品があるものです。


すごく多い「たらいまわし」にご注意

オークションの特定のカテゴリや特定の機種に注目して動向を見ているとあることに気づくと思います。すこし前に誰かが落札したのと同じと思われるものが出品されているのです。「よさげだと思って落札してみたもののひどい物だった」ということになります。こういうのは、マーケットをしばらく観察しているとすぐに発見できます。「欲しいな」と思うものがあったら画像をダウンロードしておけば、同じものが再度出品された時に照合できます。そういうのを出す業者から買ってはいけません。

季節の終わりにハードオフに出てくるスキー用品をオークションで高く売るのが横行していますが、真空管にもたらいまわしが多いです。安く落札した真空管に歯の浮くような能書きをつけて再出品して利ざやを稼ぐ輩です。

ある時、真空管を安く出品すると安い金額の時に限っていちいち入札してくるIDがいるのに気がつきました。そのIDの行動を追ってみると、取引開始直後の金額が安い時に入札しておき、たまたま競争相手が現れなくて格安で落札できると、それを高価に売りさばいていたのです。法律を犯しているわけではありませんが、人としてNGだと思います。

見分け方ですが、そのIDでの取引量が落札・出品ともに数百件以上あって、出品履歴を見ればピンとくるでしょう(右画像)。いいことばかり書いてあって、出品金額が高め、落札時のキャンセルが目立ち、評価は低くて「非常に悪い」が多い。普通、悪い評価なんて100件に1件もないのが普通です。私は、こういう問題児はブラックリストに入れます。問題児は時々IDを変えてしまうので特定が難しいことがあります。私は、怪しい出品者や落札者がいる場合は、IDを変えても逃げられないように意図的に取引をして個人名・住所を特定します。


真空管

オークションに出品されている真空管を見ているとまったくげんなりします。特定の業者が大量に出品して事実上オークションの場を占拠しています(右画像)。私はこういう業者からは決して買いません。こういう行儀の悪さは商売以前の問題だからです。もっとも、そういう態度の業者の出品コメントは決まって長々と自己宣伝が続いていていよいよ常識を疑ってしまいます。

オークションで真空管を出している優良な出品者の見分け方は簡単で「宣伝はほとんどしない」ところを選ぶということです。多弁・雄弁な解説の大半は「嘘」や「出まかせ」や「思い込み」だと思って間違いないでしょう。そもそも、出品物がいいものかどうかは出品側ではなく、落札側が評価するのが本来の姿です。

もうひとつ重要なのは、相場が吊り上ったビンテージ管や希少管には手を出さないことです。よく、ネット上で本物か贋物か教えを請う質問を見かけますが、そんなものに手を出したからといっていい音が手に入るわけでなし、下手をすれば贋物を掴まされてがっかりするのがオチです。そんなことは、あの有名な鑑定番組をみたらわかろうというものです。

私の場合、ある真空管をオークションで手に入れたいと思ったら、しばらくの間いくつか出ている出品・落札の様子を観察して、その真空管がおおよそどれくらいで落札されるのかを調べます。本気ではなく入札してみて様子をみることもあります。時々、そういった相場を無視したような高めの価格設定の出品がありますが、誰も相手にしない様子が見えてくるものです。そういう出品者は、同じものを何度も出品しては売れ残り、を繰り返していたりします。そうやって売りと買いのバランスを掴んでから将来の落札に向けて作戦を立てます。オークションにおける過去の落札価格のデータベース(http://www.tubedic.net/)もありますのでこういうのも参考にします。

電圧増幅管の場合は、私は新品だけでなく「少しだけですが使いました」というくらいの中古も探します。パワー管は消耗が速いですが、12AX7のような動作温度が低い電圧増幅管でまともなメーカーによってしっかり作られたものは1000時間や2000時間で劣化などしません。むしろ、1000時間超の12AX7は新品よりも3dB〜5dBくらいローノイズになっていることがあり、かえってお得だったりします。


半導体

半導体はまともなものもある一方で、近所の国で作られた粗悪品やほとんど贋物といえるのが多いので、オークションでの調達はおすすめしません。当サイトの掲示板で3端子レギュレータLM317Tのトラブルの相談があった時のことです。結局、そのLM317Tが問題だということになり、ご本人は同じ業者から再度購入したのですが結局全部アウト。ひとつ残らずひどい粗悪品だったわけです。

半導体だけでなく、コンデンサなどの部品もヤバイものが多いのでわずかな金額をケチって安物に手を出さないのが賢明だと思います。


メーカー製オーディオ機器

製造年に着目します。どんなにお金をかけて作られたものであっても、部品の寿命は変えることができません。製造されてから15年以上を経たオーディオ機器は特にコンデンサ、それからスイッチやボリュームなどの可動部品がイカレていることは覚悟しなければなりません。ゴムは数年で劣化がはじまります。また、オーナーが自作する人だったりすると質の悪い改造がされているかもしれません。私は他人がした改造は一切信用しません。

若かりし日に買えなかったオーディオ装置を今になって入手したいのであれば、こんなサイト(http://audio-heritage.jp/)は役に立つのではないでしょうか。


オーディオ測定器

オークションに出品される測定器で同じ機種が同時に複数台出品される場合は、大概、メーカーや研究所の現場で使われていたものの入れ替え放出です。こういうのは定期的に校正されていたりするので使い倒されたものでない限り結構いいものに当たりますし、複数の中から状態の良いものが選べたりします。生産台数が多いスタンダードな機種ならば、1台逃しても必ずまた出てきますので慌てないことです。スタンダードかつ比較的高機能なデジタル・マルチメーター、50〜200MHzクラスのオシロスコープ、5MHz以上ののファンクション・ジェネレータなどはその代表でしょうか。Leader製の1MHzクラスのオーディオ・ジェネレータや同じくLeader製の電子電圧計、Panasonicのオーディオ・アナライザなどもよく出てきます。

割高ですが安全確実なのは秋葉原にある計測器ランドの中古です。店としてある程度チェックがしてありますし、店頭に行けば何台もある同型の実機を触れます。私のオーディオアナライザは、計測器ランドに4台あった中古在庫をすべて自己測定させて最もスペックが良いものを選びました。価格はオークション相場の2倍くらいしましたが、当サイトの測定データの大半はこれを使って取りましたからいい買い物をしたと思います。

注意すべきはマニュアルの調達です。落札する場合は、どこでマニュアルが入手可能か調べておきます。HP/Agilentのように旧モデルであってもほとんどの機種についてダウンロードできるメーカーもありますし、サービスにじかに相談すれば担当者が厚意で手配してくれることもあります。


「通電確認のみ」には絶対に手を出さない

「素人でよくわからない」とか「通電確認のみ」という文言を信じてはいけません。その多くの正体が「実は重大な問題があるけれども通電してランプくらいは点きます」というものだからです。知らないフリをして不良品をつかまそうとしているわけです。ウソをついているわけではないのですが、やり方としてはずるいですね。

私もある時、通電するけれども一部の測定機能が不良な測定器を、どんな風に不良なのかちゃんと説明して出品したところ、かなりの安値で売れました。ところが1週間後に同じものが「通電確認OK」として出品されていたのです。もちろん、その出品者は私のブラックリストに入れました。


入札する時

まず、オークションの過去の相場の傾向をこういうサイト(http://aucfan.com/)を使って調べます。次いで、オークションで現在出品されている同種のものがどれくらいで落札されてゆくかを暫く観察します。入札者のイニシャルが表示されますから、頻繁に入札を繰り返している入札者はマークします。自分のために1つだけ欲しくて入札しているのではなく、その種のものを買い漁っているかもしれないからです。

それから、出品者がほかに何を出品しているかを調べます。それを見れば出品者のオークションへの接し方や考え方がわかるからです。怪しいものばかり出品している場合は、たとえ欲しいモノを出していてもできるだけ取引はしない方がいいでしょう。

そうやって様子が見えてきたら、落札のための作戦を立てます。「いくらまでなら出せるかの迷いのない上限」を決めることが競り負けないポイントだと思います。こちらがつけた値を別の誰かが追い越して、それを見てまた入札して追いかけっこを繰り返す・・・それをやってしまうと予定外の価格で落札する事態に陥るか、競り負けて悔しい思いをするかのいずれかになります。最初からここまでなら出す、という最高額をつけて最後まで逃げ切ることがオークションを気持ちよく使うこつではないでしょうか。それで負けたなら諦めもつきます。

ある時、AKGのC414B/XLSというマイクロフォンが欲しくてずっとオークションをウォッチしていたのですがなかなかいいのが出てきません。サウンドハウスならそれなりに安い(ステレオペアで24.5万円)ので買ってしまおうか思うのをこらえて根気良く待っていたら、非常に状態の良いほとんど新品といえるのが出ました。迷うことなく20万円で入札し、競り負けることなく一気に落札しました。落札価格は15万円だったと記憶します。事前に調べた相場が1本8〜9万円でしたから相当にラッキーでした。

オークションは、ジャンク状態のものを超廉価に入手する場合と、新品同様のものをディスカウントよりちょっとだけ安く手に入れる場合とがあると思います。私は後者のケースが多いので、入札する時は覚悟を決めて余裕のある最高額を入れます。最後の十数分間で2〜3人の挑戦を受けますがすべてかわして逃げ切ります。


決済と受け取り

私は、確たる信念を持って、落札するとすぐに代金決済をしてしまいます。落札直後、出品者からの連絡の前に決済してしまうことも珍しくないですが、それをやると出品者も大急ぎで発送してくれるので結果的に取引がスムーズに完了します。

見ず知らずの他人と取引をするわけですが、身代金の引渡しや武器・麻薬の闇取引じゃないわけだし、基本的に相手もこちらも善良な出品者であり落札者であるという暗黙の信頼関係が前提だと思うからです。この方法でトラブルを経験したことは一度もありません。また、かりに何らかの行き違いがあった場合でも最終的には良い結果が得られます。

すこし前、レコードプレーヤーをオークションで落札したのですが、送られてきたプレーヤーの音が出ません。原因はピンコードの錆びでしたのでそのことは出品者にクレームをつけました。しかし、評価は「非常に良い」をつけたところ、出品者はかえって恐縮して非常に良い対応をしてくれました。取引というのは、そういうものだと思います。


出品

私は、たまに出品することもあります。出品する際の私なりの基本ルールは以下のとおりです。

・できるだけ鮮明な画像をつける。・・・落札されやすくなります。
・問題箇所はすべて明記し、決して隠さない。・・・落札されやすくなり、後日のトラブルも回避できます。
・送料は当方持ち・・・落札者の地域に応じていちいち送料を計算して連絡するのが面倒だし、落札者が支払う金額を最初から固定したいから。
・入金を待たずに発送・・・その方がお互いに気持ちがいいし、急いで入金確認する手間も省けるから。
・返品自由・・・気に入らなかったら返品してもらい、代金は払い戻します。・・・返品問題でもめると後味悪いしろくなことにならないから。

上記のやり方で売れ残りゼロ、ノートラブル、むしろとびきり高い評価を得ています。これを見ているどなたかと、いつかどこかで取引するかもしれませんね。

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