Mini Watt Tourer with USB-DAC
トランジスタ式ミニワッターPart1
<USB DAC内蔵ミニワットツアラー>

CDジャケットとほぼ同サイズ。

<試作版>

本機は、Tourer Audioという考え方の原形となったものであり、嚆矢ともいうべき作品です。オーディオアンプとしての完成度はあまり高くないですが、これがきっかけとなって本プロジェクトが徐々に形をなしてきました。今となっては、本機の回路による製作は推奨しませんが、記録として残しておくことにしました。


<全回路図>

USB DAC部およびアンプ部の全回路は以下のとおりです。回路定数は上半分に記載してあります。

基本回路との違いは、USB DAC部を除くと、負帰還に関わる抵抗値および位相補整コンデンサ値にあります。入力側は47kΩ→12kΩ、負帰還側は220kΩ→100kΩに変更されており、それにともなって位相補整コンデンサが10pF→22pFになっています。


<製作、外観および内部の様子>

使用した基板な私が良く使うタカスのIC-301-72です。製作にあたって自分用に作ったパターンのメモがありますので、参考のために公開します(クリックで拡大)。私の配線では、隣り合うランドとランドをつなぐ場合はホチキス型に加工した0.28mm径の銅線(ホームセンターで売っている銅針金)を使い、差し込んだ抵抗器やコンデンサのリード線は一切曲げずにまっすぐのままハンダづけしています。こうすることで部品の交換が容易になるだけでなく、ハンダ不良もなくせます。なお、実際の配線では順序を間違えるミスをしたためにこのとおりにはなっていません。また、下半分のチャネル側のLPFの配線の記載が漏れています。

大きい方の基板がアンプ部で、右下の小さい方の基板がAKI.DACです。USB DAC用のLPFをアンプ部の基板上に組み込んでしまったために、信号をつなぐ線の往復で混雑してしまいました。ケースの高さがないので、基板を取り付けるスペーサには高さ5mmのものを使い、それでもパワートランジスタが当たってしまうので斜めに寝かせてあります。

このケースは、パーツ間の導通がないという重大な欠点があります。アルミボディやアルミパネルの表面がアルマイト処理をしてあるために・・・アルマイト処理は電気を通しません・・・パーツを組み立てても電気的には導通してくれないためにアースから浮いてしまうのです。せっかくのアルミケースなのにシールド効果がないばかりか、むしろ不安定なノイズを誘発します。

本機は後面パネルに取り付けたステレオミニジャックのところでアースがパネルに接触しますので、ここがシャーシアースポイントになります。しかし、このままでは上下左右4枚のボディ部分がアースから浮いてしまうので、別途基板を固定したビスのところでもう一箇所のシャーシアースを取っています(アースラグが見えます)。上下左右の4枚は、組み立てのビスをきつく締めることで導通が得られました。それでもまだ前面パネルがアースから浮いてしまうので、音量調整ボリュームの筐体の爪の部分の表面をやすりで磨いてそこにアースラインをハンダづけしています(画像に写っています)。ボリュームの筐体と前面パネルとは穴のところで導通してくれるので、こうすることで音量調整ボリュームの筐体も前面パネルもアースとつながるようになりました。タカチ電機工業さん、こういうことでは困るんですよ!


<本機の特性>

DAC部:

こちら(http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm)の推奨回路と同じ。

アンプ部:

測定結果は以下のとおりです。残留雑音が非常に少ないアンプとなりました。

  • 消費電流: 無信号時=約200mA、最大出力時=約0.4A(8Ω)、約0.6A(4Ω)at DC12V
  • 利得: 6.04倍(8Ω負荷、1kHz)
  • 残留雑音: 27μV(帯域80kHz)
周波数特性および左右チャネル間クロストークは以下のとおりです。高域側の減衰は計算どおりで意図的に落としてあります。

アンプ部の歪み率特性はご覧のとおりです。下図左が1kHzにおける特性で、歪み率が5%となるポイントは8Ω負荷の時が1.4W、4Ω負荷では2Wです。下図右は100Hzと1kHzと10kHzを比較したものです(8Ω負荷)が、見事に重なってくれました。これが重なるということは、無帰還時の帯域特性や位相特性が優れていることを意味します。

ダンピングファクタは以下のとおりです。測定はON/OFF法を使いました。元の利得があまり大きくなく負帰還量もあまり取れないので、もっと低い値かとおもったらちょっと意外でした。


<使用感と音の感想など>

とにかくコンパクトで、しかもPCとUSBでつなげばすぐに音が出るのがなかなか良いです。iPodからのミニプラグをぷすりと挿せばすぐに切り替わって、音量感も大体同じなので使い心地も◎です。何の対策もしていないのに、電源ON/OFF時のポップノイズが全くないのが意外でした。

さて、肝心の音ですが、ナチュラルで輪郭がはっきりしている一方でユルさのある和み系のサウンドです。ローエンドがきれいに出る点が小型スピーカーと組み合わせて使うのにうまくフィットしています。なんでこういう豊かなローが出るのかはよくわかりません(笑)。ミッドもそれなりに前に出てくれてスケール感もあり、良く鳴るアンプです。おもちゃのような回路なのであまり期待していなかったのですが、作ってみなければわからないもんです。

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