MC用マイクロフォン・アンプ


急にステージ上のMC※で使うマイクアンプが必要になり、手元にある部品で簡単に作りました。性能的には大したことはありませんが、十分な利得を持ち、ローノイズです。充電式なので電源がなくても動作します。フル充電すれば48時間以上の連続動作ができます。


正面 | 背面

※MC(Master of Ceremony):
業界用語。司会役の人をさす場合と、コンサートなどの途中で入れる曲の紹介やちょとしたおしゃべりそのものをさす場合とがある。


外部仕様

このマイクロフォン・アンプは、音響設備がない小さなホールやスタジオでのコンサートのMCで使います。SHURE SM58SEのようなダイナミック・マイクロフォンを想定しており、コンデンサ・マイクロフォン用のファンタム電源はついていません。また、入出力ともに不平衡仕様です。但し、平衡接続のダイナミック・マイクロフォンが使えるように、入力ジャックは3端子の"TRS"を使用し、平衡接続のマイクロフォンをつないだ場合は"Cold"側はアースされます。従って、電子式平衡出力のコンデンサ・マイクロフォンには対応していません。

ライン出力も不平衡ですが、"TRS"ジャックになっており、"T"は"Hot"、"R"と"S"はCold/アースに接続されています。従って、TRSフォーン・プラグを使って平衡入力の機材につないで使用できます。

MC用途なので超低域はカットしてあります。近接効果対策として、H.P.F.(ハイ・パス・フィルター)スイッチをonにすると140Hzで-3dBの減衰特性になります。ボリュームと電源スイッチは連動していますが、特に意味はありません。

電源はDC12Vの小型スイッチング電源アダプタを使いますが、006Pのニッケル水素充電池を内臓しており、充電池のみですくなくとも48時間動作します。電源ONでもOFFでも、電源アダプタをつなげば充電は行なわれます。フル充電に要する時間はなんと24時間です。充電しっぱなしで放置しても本アンプや充電池を痛めることはありません。


回路と動作

回路図は下図のとおりです。2SK170(GR)を使った単純な2段構成です。初段、次段ともにDC動作条件は同じで、ドレイン電流=1.5〜1.6mA、ドレイン抵抗=2.4kΩ、バイアス=約-0.106Vです。この動作を保障するために、2SK170はGRクラスのものから選別しています。選別条件は、ドレイン電流=1.5mAの時のバイアスが-0.1V〜-0.105Vとなるような特性です。

初段は、入力抵抗は3.3kΩですが、入力と直列に2.2kΩがあり、ドレイン出力側から220kΩを介して弱い負帰還をかけています。初段の裸利得は約30倍、負帰還後の利得は23倍です。初段出力側に0.15μFを使った-6dB/oct減衰特性のH.P.Fがあり、その後ろにボリュームがきます。初段の無歪み最大出力電圧は約2.8Vなので、初段許容入力は約120mV(-16dBm)になります。Padはついていません。次段は、入力と直列に22kΩがあり、ドレイン出力側から560kΩを介して7dB程度の負帰還をかけています。初段の裸利得は約31倍、負帰還後の利得は14倍です。最終利得は約320倍(50dB)です。

電源部は、006Pタイプのニッケル水素充電池を使います。最近の006Pタイプのニッケル水素充電池は、内部的には7セル構造なのでフル充電すると1.4V×7=9.8Vが得られ、放電時でも余裕で9V以上が確保されます。充電は、DC12V(実測12.2V)から逆流防止ダイオード(10E1)と電流制限抵抗(180Ω)を介して行われます。充電電流は充電池の状態によって電源OFF時で10〜18mA、電源ON時で7〜15mAです。


実装

作成中。


特性のことなど

全くの簡易アンプなので発表するほどの特性ではありませんが、こんな回路だとこんな程度に特性になるのだ、という意味で参考になると思います。低域は意図的にカットしています。高域は、アンプが勝手に落ちてます。残留雑音はそれなりに低く、AKGのボーカル・マイクロフォンD880(SHURE SM58相当)で使っていますが明快な音で、MC用としては充分すぎるくらいの仕上がりになりました。

<諸元>

MIC入力 不平衡(TRS)、入力インピーダンス=2.4kΩ
MIC許容入力 120mV(-16dBm) at 1kHz
LINE出力 不平衡(TRS)
LINE最大出力 2.8V(11dBm) at 1kHz、47kΩ LOAD
利得 320倍(50dB)
残留雑音(補正なし) 80μV
周波数特性 60Hz〜45kHz(+0dB、-3dB)
H.P.F.特性 140Hz at -3dB(-6dB/oct)
歪率特性 0.23% at 1kHz、0.2V出力
0.86% at 1kHz、1V出力

<周波数特性>

なお、電源スイッチON時に若干ですがポップノイズが出ます。これを嫌うのであれば、1μFの出力コンデンサ容量を0.22〜0.47μFに減らしたり、B電源に入れた470μFの容量をもう少し増やすことで解消すると思います。


2年ほど経って・・・

ひさびさに引っ張り出して使ってみました。入れっぱなしになっていた充電地(秋月で買った緑とオレンジの安いやつ)ですが、フル充電してみたところ電圧は元に戻らず、8.8Vどまりとなりました。下のグラフは動作中のバッテリー電圧の推移です。2時間半の連続動作で8.1Vくらいになります。これでも十分動作するはずですが、感じが悪いので本番では百均で買った出所不明な006Pを使いました(どっちもどっちな気がしますがネ)。


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