プリアンプのボリュームを回路上のどこに配置するか、というお話です。
プリアンプを設計する時、ボリュームは入力のところに配置するのが一般的です。何故なら、ソース側から非常に高いレベルの信号が入力された時でも、ボリュームを絞ることでライン・アンプで歪んでしまうのを回避できるからです。しかし、このような設計ではボリュームを絞っても後続のライン・アンプで発生するノイズは減ることなくそのままパワー・アンプに送られてしまいます。ですから、ボリュームの後ろに配置されるライン・アンプには低雑音性能が要求されます。
この問題を解決したのが下図の回路です。B型ボリュームを使って、ライン・アンプの利得を変化させつつ、出口ではアッテネータを構成しています。ボリュームMIN時・・・ライン・アンプの利得は1.87倍の低利得で、出口のアッテネータは完全に絞り切っています。
ボリューム12時・・・ライン・アンプの利得は2.54倍で、出口のアッテネータの減衰は約-6dBとなり、トータルの利得は1.3倍くらいです。
ボリュームMAX時・・・ライン・アンプの利得は7.6倍となり、出口のアッテネータの減衰は-3.1dBとなって、トータルの利得は5倍くらいになります。こうすることで、ボリュームを絞った時の残留ノイズをほとんどゼロにすることができ、かつ許容入力を高くなるように工夫しているわけです。しかも、B型ボリュームを使いながらA型に近い変化カーブを得ているところがポイントです。
この回路を製品として最初に採用したのは、SONYが190年代に発表したTA-1000のプリアンプ部だったと思います。設計者は私が師と仰ぐかもじよしあき氏です。