サーミスタは、温度によって抵抗値が変化する素子です。そのことを知ったのは私が中学生の時のことでした。道で拾ったトランジスタ・ラジオを分解したところ、サーミスタらしき米粒ほどの部品が出てきました。テスターを当ててみると400Ωくらいの値を示したと思ったら、抵抗値がみるみる下がっていって300Ωくらいになってしまいました。最初はわけがわからなかったのですが、それが体温のせいだと気づくのに少々時間がかかりました。これは、当時中学生だった私が、サーミスタとテスターと寒暖計を握りしめ、こたつの中で汗をたらしながら、あるいは寒い屋外で震えながら奮闘した記録であります。
温度の測定が非常に難しいものであるということは、浅学な私でも薄々わかっておりました。正確を期するためには、周囲温度全体が一定である必要があり、しかも時間を要するのでした。サーミスタの温度特性測定の決行日は、ある寒い冬の日曜日が選ばれました。幸いにも外気温は8℃でさほど厳しい寒さではありませんでしたが、そのせいで得られたデータの下限は8℃どまりになってしまいました。冷蔵庫を使用する案も出されましたが、我が家の冷蔵庫は私が入れるほど大きくありませんでした。屋外、玄関、風呂場・・・という風に気温が異なる場所をみつけては、手元の寒暖計の動きが止まるまでじっと待つのでした。
室温以上の温度特性の測定には我が家で現役の東芝製のこたつが使用されました。機材一式と観測者が一体となって測定に臨みました。人が出入りすると気温が変わってしまうので、いくら息苦しくても暑くても動くわけにはいきませんでした。こたつを最強にして得られた気温は55℃でした。我ながらよく頑張ったと思います。得られたデータは以下のとおりです。