SRPPレポートその1


SRPP回路がどのような特徴をもっているのかは諸説フンプンとしており、なんだか怪しい回路だなぁと思っているのは私だけではないと思います。このレポートでは、SRPP回路の動作をあれこれ解析するのではなく、ごく素直に測定してみて、事実を検証してみることにします。


実験に使用した回路は以下のとおりです。出力の取り出し方は、

「上側球カソード側」・・・SRPP(K)と、
「下側球プレート側」・・・SRPP(P)から取り出す方法のほかに
「抵抗負荷」・・・・・・・すなわち上側球のかわりに下側球が同等の動作条件となるような抵抗で置き換えた場合
の3通りで比較実験を行いました。


12AX7の場合

まず、「抵抗負荷」と「SRPP(P)=下側球プレートから出力」の比較です。

負荷が「100kΩ」と「32kΩ」とどちらの場合も、「抵抗負荷」と「SRPP(P)」とでは歪み率特性はほとんど一致しているため、グラフが重なってしまって区別がつきません。下側球のプレートから出力を取り出す限り、上側球は抵抗器と同じ・・・つまり何の増幅作用も営んではいないと考えていいでしょう。

次に、「SRPP(P)=下側球プレートから出力」と「SRPP(K)=上側球カソードから出力」の比較です。

負荷が「100kΩ」の場合も「32kΩ」の場合も後者(=SRPP(K))の場合の方が歪みは減っています。SRPP回路では、「上側球カソードから出力」を取りださない限り、そのメリットはなさそうです。


6DJ8の場合

今度は、球を12AX7から6DJ8に換えて測定してみました。

「SRPP(K)」の場合は、100kΩ負荷の場合は素晴らしい特性で、歪み率も低く最大出力も大きく取れています。9.1kΩという重い負荷でも30V以上取り出せますから大したものです。

一方、「SRPP(P)」では100kΩ負荷の時でまあまあ、9.1kΩ負荷では惨澹たる結果です。というよりは、一般に真空管増幅回路では、内部抵抗が低い6DJ8であっても9.1kΩなどという重い負荷でまともな特性が得られる方が不思議で、「SRPP(K)」の方が特別に優れていると考えた方がいいくらいです。

これは、「SRPP(K)」動作の場合、出力インピーダンスが低くなるためにこのような優れた結果になったのではないかと思って測定してみたのが、以下のデータです。


検証

右が、12AX7-SRPPの3種の動作条件と測定結果です。

ここからわかることは、「抵抗負荷」と「SRPP(P)」とはほとんど差がないのに対して、「SRPP(K)」では出力インピーダンスががくっと下がっているということです。

そのため、負荷が32kΩであっても利得の低下があまりありません。


6DJ8の場合も、「抵抗負荷」と「SRPP(P)」とはほとんど差がないのに対して、「SRPP(K)」では出力インピーダンスががくっと下がっています。

まとめ

SRPP回路では、出力インピーダンスを大幅に下げる効果が期待でき、その結果、最大出力電圧が高く取り出せたり、歪み率が下がったり、高い利得が得られたり(次段入力インピーダンスが低くても利得が低下しなかったり)する。また、出力インピーダンスが低いために、次段の入力容量の影響を小さくできるため、高域特性が改善される場合がある。しかし、上側球カソードから出力を取り出さない限り、そのメリットは発揮できない。


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