TA8201AKを使ったパワードスピーカー・アンプ


ひょんなことから、パワードスピーカーに内蔵するアンプを作りました。アンプユニットは携帯電話よりも小さいサイズですが、16V電源を使うと4Ω負荷で15Wも出ます。


とりあえずリサーチ・・・いろいろ作ってみた

東芝TA7252APを使ったパワー・アンプ・キットが秋葉原の秋月電子でお安く出ていたので勢いで買って作ってみましたが、惨憺たる結果に終りました(下の画像右)。作るの簡単だし、すぐに音が出ましたが、利得が異様にでかい、ザーザーとノイズが大きい、妙にくっきりとした音・・・。カーラジオ用のパワーアンプICらしくラジオ鳴らしたら似合うかも、という音でした。

次に作ったのは、National Semiconductor社のLM1875を使ったパワー・アンプ(上の画像左)。ICパワー・アンプというのはいろいろな音がするがどれもひでえなー、という感想。この種のパワーアンプICはどれもノイジーで音が雑です。さらに、回路定数を推奨値にしても電源ON時のポップノイズが心臓が止まるくらい異様に大きいことでボツ。これを使って14万円で売っている奴がいます。

詐欺アンプ→ http://www.musika.jp/62.html


TA8201AKのブロック・ダイヤグラム

あちこちあたっているうちに、東芝のTA8201AKなるICをみつけました。TA8201AKの回路構成は下の図のとおりです。内部的には2つのアンプ・ユニットから成り立っていて、前段は反転アンプ、後段はBTL構造のパワーアンプです。利得の制御は前段の負帰還定数をいじって行います。プラス電源なのでスピーカー端子はアース電位ではなくアースに対してプラスのDCが出ていますが、BTL接続なのでこれでいいわけです。但し、アースに対してプラスのDCが出ている以上、スピーカーへの配線の扱いには厳重注意です。しかし、今回の最終的な狙いはパワード・スピーカー用のアンプ探しなのでこれでいいんですね。

このICは設計利得が非常に高いのが特徴で、外付け抵抗なしの標準で54dB(500倍)、外付け抵抗を取り付けた許容される最も低い設定でも40dB(100倍)もあります。これ以下に利得を下げると負帰還量が多くなりすぎて安定度を損ねる、とデータシートに書かれてあります。IC本体利得の制御は、A端子とC2との間に抵抗を入れることで行います。データシート記載の安定を損ねない外付け抵抗の上限値は約600Ωで、この時の利得は40dBくらいになります。そこで、本機ではぎりぎりの620Ωを入れてIC本体側の利得を40dB(100倍)とし、入力のところに39kΩと10kΩによるアッテネータを入れて-14dB(0.2倍)減衰させ、総合利得は20倍としました。20倍でも利得が過剰な場合は39kΩと10kΩの比率を変えてください。電源は、秋月で600円くらいで売っている12Vタイプのスイッチング電源をそのまま使います。

TA8201AKのテクニカルドキュメントはこちら→ TA8201AK.pdf

TA8201AKはすでに製造中止で、同等の代替ICはありません。そこそこの量の手持ちがありますので、興味がある方はこちらでどうぞ。→http://www.op316.com/tubes/buhin/b-opa.htm


基板

回路図および基板のCRとの対応は以下のとおりです。

C1Hi-Boost330pF通常は省略。
R1Hi-Boost39kΩ通常は省略。
R2アッテネータ39kΩ-
R3アッテネータ10kΩ-
C2Bass-Boost0.15μF/50V-
R4接地電位330kΩ-
R5利得制御620Ω-
C3入力DCカット3.3μF〜4.7μF/10V〜50V-
C4DCカット33μF〜47μF/10V〜35V-
C5デカップリング220μF/10V〜16V-
R6,7発振止め2.2Ω-
C6,7発振止め0.1μF〜0.15μF/50V-
C8,9電源バイパス、リプルフィルタ470μF〜1000μF/16V〜25V容量が多すぎるとACアダプタが正常に動作しない。

Hi-Boostは通常は省略しますが、フルレンジ・スピーカーで若干ハイを持ち上げたい時などに使います。Bass-Boostはこの回路定数ですと下掲のような特性になります。Bass-Boostを省略する場合はC2をジャンパー線でショートしてください。TA8201AKはIC本体の利得を許容される限界まで下げても100倍もの利得がありますので、このアッテネータは必須です。

作った基板はこちらです。この基板は台湾で作ってもらったものですが、とても高品質です。TA8201AKは基板に対して垂直に立てて取り付けてもいいですが、放熱のための工夫がいります。コンパクトに仕上げたかったので足を90°折り曲げて取り付け、これをアルミアングルを切って作った放熱板にぴったりはまるようにしました。基板側は5mm高のスペーサを使って取り付け、TA8201AK側はそのままビスで密着させます。本ページ冒頭の画像を参考にしてください。


(クリックで拡大します)


周波数特性およびEQ特性

周波数特性はこんな感じです。Bass Boostが開始される周波数を変えたい場合はC2の値を増減します。Bass Boostの量を抑えたい場合は、R3の値を大きく、R4の値を小さくします。ご自分で決めて工夫してください。

電源ON時のポップノイズは耳で聞くとあまり目立たないですが、スピーカーのコーン紙を見ているとかなり派手に前後ボコンと動いて徐々に戻ってきます。ICの出力端子に現れるオフセット電圧はなんと±0.3Vとありますが、実際に測定してみると50mV〜150mVくらいは当たり前に出てくれますのでびっくりしないように。ザーという残留ノイズもかなり大きく、当サイトの他のアンプ群のような静寂さは期待しないでください。カーオーディオはとにかく雑なのです。

音は結構まともで、他のほとんどのパワーアンプICがガチャガチャした落ち着かない音であるのに対して、これはあまりうるさくなくしっかりとした芯のある中低域が出ます。帯域感もまあまあです。しかし、あまり高度な期待はしないでください。


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