書籍のページ
著者からのメッセージ
この本に書かれている内容は、私のライフワークだと思って15年近く前から温めていたものです。書いてみたものを読み返してみるとなんともまとまりがなく、ボツにすること二度に及びました。トラブルシューティングというテーマは、カバーすべき内容が多岐にわたるのでとらえどころがなく、書いているうちに内容が発散してしまったのです。それでも諦めることなく、このテーマを本として仕上げようという気持ちが揺らぐことはありませんでした。

この本にはたくさんのトラブル、というよりもミスや失敗が登場します。これらの90%以上は、実は私が犯したミスであり失敗です。作り話ではなく事実にもとづくお話です。自作オーディオや電子工作は、いや、そもそもモノを作るということは、常にミスや失敗と隣り合わせなのかもしれません。

そのような場面は、ビジネスの世界では製品開発や試作で日常的に起きています。一品生産も同じです。そして、自作オーディオや電子工作も同じです。いずれも確実な成功は約束されていないのであり、完成に至るまでにはさまざまなトラブルや問題解決に出会うことでしょう。そこには、人が作った確実に成功する道をたどるのではなく、自ら問題を解決し道を切り開いてゆく行為があるからです。

本書の冒頭にこんな一文が書いてあります。「チャレンジした数と、失敗した数と、学習量と、経験量は比例します。不幸なことに失敗しなかった人は学習も経験も積むことができません。本書は、失敗したくない人のための本ではなく、失敗から学ぶための本です」と。

自作オーディオや電子工作で、すべてが思い通りに、あるいはお手本通りに完成したとします。しかし、同じモノをもう一台作ったらどうなると思いますか?おそらく、二台目は一台目よりも作り方がスムーズだったり、仕上がりが良いはずです。本書の中で、生産技術と製造技術の話が出てきますが、これは製作者の製造技術がレベルアップしたのです。

トラブル、ミス、失敗、手際の悪さを嫌うのではなく、そこから何を学ぶかで人の価値が生まれるように思います。それはモノづくりに限った話ではないでしょう。

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