トラブルあるある
真空管式ミニワッター編

電源回路の単体テストで、電圧が回路図表記よりも高い

記事をよーく読んで下さればちゃんと書いてあるのですが、見落とされる方が多いようです。とても基本的なことなので是非知っておいて欲しいことがあります。それは、電源トランスから得られる電圧は一定ではなく、取り出す電流の大きさによって高かったり低くなったりするというごく当たり前な現象です。

右のデータは、真空管式ミニトワッターで使用したものを含むさまざまな電源トランスの整流出力電圧と、取り出した電流の大きさとの関係を表したグラフです。取り出す電流がほとんどゼロの時と、定格一杯を取り出した時とでは整流出力電圧が10%程も低下することがわかります。

電源回路の単体テストでは、アンプ部へ供給電流はゼロです。一方で回路図中に記載した電圧はアンプ部にかなりの電流を供給している時の値です。もうおわかりですね。

電源回路の単体テストでは、回路図中に記載した電圧よりも10%ほど高い電圧が出るのが正常です。



電源回路の単体テストで、マイナス電源電圧が低い

全段差動PPミニワッターは初段差動回路のために-4V程度のマイナス電源を使っています。この電源は初段電源のおこぼれ電流と出力段のプレート電流を使った疑似マイナス電源なので、出力段が繋がっていない単体テストではマイナス電圧はほとんど発生しません。

出力段の真空管がヒートアップするまでマイナス電源は正常値になりません。


電源回路の誤接触によるショート事故

真空管式ミニワッターだけでなく、当サイトの製作記事の多くでMOS-FETを使ったリプル・フィルタが登場します(右下図)。このMOS-FETは、テスト中のちょっとした接触事故であっけなく壊れます。

本書、90ページ「感電と誤接触」に具体的な解説があります。


電源回路のMOS-FETの生死判定

上記の事故が起きた時、MOS-FETが生きているかどうかを確かめる方法です。

MOS-FETが破壊するとドレイン(D)〜ソース(S)間がほとんどショートしたようになります。正常に動作しているならば、ドレイン(D)はソース(S)を基準にして数V以上を示しますが、破壊している場合は1V以下の非常に低い値になります。また、ゲート(G)〜ソース(S)間に生じるはずのバイアス(3〜5V)が異常値を示すことでも判定できます。


「ジー」という濁ったハムが出る

シングルのミニワッターは、初段で発生するヒーターハムを防ぐために、ヒーター回路に数十Vのプラスのバイアスを与えています。数十Vの電圧は、左右どちらか一方の出力段のカソード電圧を借用しています。この配線を忘れると「ジー」というハムが出ます。あるいは、耳で感知できなくても残留ノイズが増えています。


シャーシ・アース忘れ/不十分

私は入力RCAジャックのところで塗装を削ってシャーシ・アース・ポイントにしています。音量調節ボリュームのシャフト+筺体をアースするために、ボリューム取付け穴の周辺の塗装も削っておきます。これを怠ると不規則なノイズが出ます。


L型立てラグの支柱に注意

L型立てラグの支柱は、流用できません。シャーシにビス留めされていて、実質的にシャーシ・アースだからです。L型立てラグの取付け場所の塗装を削って、ここをシャーシ・アース・ポイントとする使い方ならOKです。



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