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■■■Bluetoothの弱点とうまく使うこつ■■■


●高音質のBluetoothレシーバーの選び方

オーディオ・システムに組み込んで使うことを前提に考えてみます。

<接続性と相性>
Bluetooth機器を選ぶ上で悩ましいのは機器の組み合わせによっては「相手を認識しない」「認識しているのにデータが送れない」問題でしょうか。お金を払って購入したのに、何をどうしても認識してくれない、つながらない、つながるのに特定の機能が使えない、接続が切れる・・・等々。スムーズに安定してつながってくれるだけでホッとするのがBluetooth。

iPhone5とうちのクルマとはBluetoothでつながって、オーディオ、電話、電話帳、通話履歴が使えて便利だったのですが、iPhone8に変えたら電話帳と通話履歴が出なくなりました。私のiPhone8はレンタカーのBluetoothは認識しませんでした。当サイトでの実験では、PCのUSB端子に取り付けるタイプのトランスミッターと接続できた市販のレシーバーは全体の半数しかありませんでした。Bluetooth機器では、音質を云々する以前に「つながるのか?」という基本的な問題があるように思います。

<電波を使う機器の数を減らす・・・とても重要>
今、家庭内の2.4MHzの電波状態は逼迫しつつあります。Wi-Fi、コードレス電話、Bluetoothいずれも2.4MHz帯の電波を使用しています。お持ちの携帯やPCでWi-Fiの設定画面を開いてみてください。都市部であれば10個以上の電波が見つかると思います。それから、あなたはBluetooth機器をいくつ使っていますか?

こうした無線機器は、2.4GHzの限られた制約の中で空いている電波を探しながら通信を維持していますが、より強い電波があるとそれに負けてしまいます。Bluetoothオーディオでは、時々不規則な小さなノイズが聞こえることがありますが、それは電波障害を起こしていて確実かつ高速の接続状態が維持できていないことを示唆しています。

Wi-Fiを止めろというわけにはゆきませんから、次にやるべきことは自分の身の回りのBluetooth機器など2.4GHz帯の電波を使用している機器の数を減らすことです。私のキーボードは有線ですし、Bluetoothマウスも使っていません。また使わないBluetooth機器は電源を切っています。Bluetoothオーディオ機器を使うときは、電波状態が悪くならないようにできるだけ接近させています。遠くからでも音が出る・・・と喜んでいる場合ではないのですね。

<サンプリングレートなどのスペック>
その種のスペックはあまり気にしないことです。広帯域やハイレゾを謳うことが高音質を保証しないという現実をよく理解する必要があります。

<電源の問題>
Bluetooth機器は小型化・モバイル化を目的としたものが多いため、Bluetooth規格もバージョンが上がるごとに省電力化にばかり力を注いでいるような気がします。製品の多くは充電可能なバッテリー式を採用することが多いのですが、オーディオ的には失われるものが多いという現実があります。

<デジタルノイズの問題>
アナログ出力を持つBluetoothのレシーバーは必ずD/Aコンバータを持っていますから、ノイズに対する考え方如何で低ノイズの製品になったり、盛大にノイズを出す製品になったりします。ノイズの程度の差は製品ごとに非常に大きく、音質にインパクトを与えます。何故か「高音質」を謳う製品はたくさんありますが、ノイズについてカタログに標記した製品は見たことがありませんし、ノイズを測定してみると真に静粛な製品はまだ出会ったことがありません。

<アナログ出力回路の質>
ポイントはアナログ出力回路のクォリティと電源の関係です。アナログ回路を無理なく動作させ、十分に高い信号レベルを低歪みで出力するためには高い電源電圧としれないの消費電流が必要です。3V程度のバッテリーの電圧や5V程度のUSB-VBUS電源をそのままの電圧で使ったのでは足りません。・・・・・


●Bluetoothレシーバーから高音質を引き出すこつ

<トランスミッターとレシーバーはできるだけ接近させる>
デジタル通信では以下のような手順でデータを確実に伝達しようとします。電波の状態が良くなくても、通信速度は低下しますがデータが化けることがないのは、以下のような手順を踏んでいるからです。Bluetoothも同じです。

「デジタル通信における送信では、相手の確認をし合うことから始まり、データも一方的に送りっぱなしではなく、送ったデータを一旦送り返して送った側で確かに送ったとおりのデータが送り返されたのか確認をする、エラーが見つかると送信し直す、という手順までを含んだものを送信と呼ぶのです。」

少々電波が弱くてもBluetoothのリンクは切れませんから音はしっかりと出ます。しかし、エラー修復などのために余計なやり取りをする分正味の通信速度は低下します。通信速度が低下するということは、楽音データを100%送ることができない・・・すなわちレゾリューションが低下します。ハイレゾ音源を使っていても、Bluetoothの電波状態が悪ければもはやハイレゾではなくなります。

<LPFを追加する>
Bluetooth機器もD/Aコンバータを使ってデジタル信号をアナログに変換してから出力していますから、どうしてもデジタルノイズが出てきます。さまざまなBkuetooth機器をテスト&実測してみて思いのほかノイジーでることがわかりました。残留ノイズが可聴帯域から80kHz以上にひろく分布しており、LPFを使ってこれをカットしてやると雑音歪み率がどんどん低下し、聴感も良くなります。つまり、本サイトのUSB-DACと同じ問題があるわけです。

22kHzから上を自然に減衰してくれるLPFを追加する工夫をすることを推奨します。また、本ページでは、主要なBluetooth機器にフィットした外付けLPFをいくついかご紹介しています。


●電波の性質と到達距離

Bluetoorhが使用する電波は無線LANと同じ2.4GHz帯です。電波の一般的性質として、周波数が低いほど距離が離れても減衰しにくく、少々障害物の陰になっても回折して到達しやすくなります。2.4GHzくらいになると、距離と障害物の影響を強く受けるようになります。

右図は、1mWの送信出力の電波の減衰の度合いについて、950MHzと2.4GHzを比較したものです。80dBm(1/10,000)に減衰する距離を比較すると、2.4GHzの20m弱に対して、950MHzは約150mとなって周波数の低い方が伝搬距離が長くなります

(画像出典:https://micro.rohm.com/jp/techweb_iot/knowledge/iot01/s-iot01/01-s-iot01/1582)

電波の障害物となる程度は以下のような順序があります。

金属 > コンクリート、網入りガラス > 水(人体) >> 木、ガラス
右図は、5.5mまでは見通しがきき、そこから先が障害物の陰になった場合の比較です。。一般的に普及しているBluetooth機器はClass2=2.5mWですが、到達距離が10m程度と言われているのは、軽微な障害物を考慮してのことだと思います。

(画像出典:https://micro.rohm.com/jp/techweb_iot/knowledge/iot01/s-iot01/01-s-iot01/1844)

問題は距離だけではありません。iPhoneやiPadからの電波には指向性があり、上下左右360°均一に電波が出ているわけではありませんし、レシーバー側のアンテナにも指向性がありますからすべ方向によっては感度が低下します。トランスミッターとレシーバーそれぞれも向きによって電波の状態はかなり変化します。

さらに、現実はセオリーどおりにはゆきません。理屈で考えると、レシーバーをシールドされた金属ケースに入れたら電波が到達しなくなるように思いますが、やってみると電波は届いていたりします。


●iPhoneはレシーバーになれるか

残念ながらなれません。iPhoneに搭載されているBluetooth機能はトランスミッターだけです。AirDropは2台のiphoneやiPadなどiOS以上のデバイスとの間でデータを共有・送受信する機能でとても便利ですが、オーディオ再生のデータストリームには対応していません。

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