■■■トランスミッターの試験その2■■■
NA-BTR1をターゲットとして、Bluetoothトランスミッター/レシーバーBT-B20をトランスミッターとして使った時の特性をiPhone8と比べてみた実験です。USB(CSR4.0)をトランスミッターとしてNA-BTR1をレシーバーとした組み合わせデータがないのは、接続はできてもPC側がサウンド・デバイスを認識してくれなかったためです。Bluetoothの接続性は機器の組み合わせによってダメなことが多いのです。
--- iPhone8 BT-B20 形式 スマートフォン アナログ入力 基本機能 トランスミッターのみ レシーバー/トランスミッター切り替え
(以下の記載はトランスミッター時のもの)周波数特性 記載なし 記載なし アナログ入力電圧 N/A 記載なし(実測:0.62Vrms、0dBFS) 入力インピーダンス N/A 記載なし(実測:790Ω) 通信方式 Bluetooth標準規格ver5.0 Bluetooth標準規格ver5.0 対応プロファイル A2DP、AVRCP A2DP、AVRCP 対応コーデック SBC、AAC SBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX LL 電源 充電池内蔵(USB DC5Vより充電) 充電池内蔵(USB DC5Vより充電)
入力信号レベル:
iPhoneは自分自身がデジタル・オーディオの音源を持っていますので外部入力はありません。デジタル音源のみですので、入力信号レベルの概念はありません。
BT-B20をトランスミッターとして使う場合は、USB経由などのデジタル入力は不可なので常に3.5mmステレオミニジャックへのアナログ入力となります。アナログ音源をA/D変換してデジタル化する際に、デジタルオーディオフォーマットにおける最大音量(0dBFS)となるアナログ入力信号レベルは0.62Vrmsです。0.15Vrms以上では直線性が悪化し始め、0.6Vではアナログ信号波形はクリップします。
周波数特性:
レシーバーのNA-BTR1はかなりフラットな周波数特性を持っていますので、このデータはもっぱらトランスミッター側の特性の比較だと言っていいでしょう。
iPhone8をトランスミッターとした場合は、10Hz〜18kHzがほぼフラットとなりますが、低域側は6Hzから下がスパッと切れており、高域側は18.8kHzから上が切れています。実用レベルとしては十分ですが、数値的には高域側はもうすこし頑張ってほしかったです。
BT-B20をトランスミッターとして場合は、最大音量に対して-10dB以内の領域で直線性が悪化し0dBFSを正常に伝送できません。波形が激しく潰れるため、本来0dBとなるはずの線は-2dBにずれ下がります(実線ではなく薄くしてある)。高域側はiPhone8と同じですが、低域側は100Hzからダラ下がりとなり、-3dBとなるのは14Hzですが減衰しつつも2.5Hzまで伸びています。高域側は19kHzから減衰が始まり、21.5kHzから上が切れています。高域側は申し分ないですが、低域側はオーディオ機器としては不合格です。
歪み率特性:
歪み率は、素のままの出力と80kHzおよび20kHzのローパス・フィルタを通した3パターンで測定しました。フィルタなしのオリジナルのままの歪み率は黒い線、80kHzのローパス・フィルタを通したのが青い線、20kHzのローパス・フィルタを通したのが水色の線です。
iPhone8はかなりの低歪みで送信できています。アナログ回路を経由せず、デジタルからいきなりBluetooth電波に乗せていますから歪が増える要素がありません。
BT-B20では、Bluetooth電波に乗せる以前の問題として、アナログ入力→A/Dコンバータのところでつまづいています。低歪みで処理できているのは0dBFSのダイナミックレンジの中で-14dBくらいまでしかなく、-6dBでは3%もの歪が発生しており、フル・ビット近くでは破綻しています。音は出るけどクォリティのことは聞かないで!というところでしょうか。aptX HD/LL対応が泣きます。電池式でアナログ入力のBluetoothトランスミッターでは高音質を期待する方が無理という気がします。
・・・。