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■■■トランス+真空管バッファ式USB DAC Type1(6J5/5C5/6L5)■■■
DAC with Transformer and Tube-Buffer


普段は後面は見えないし、不精をしてレタリングではなく手書き。

ホームページタイトルが「情熱の真空管」とあるのに、D/Aコンバータの製作メニューに真空管式がないのは面白くないとずっと思っておりました。トランス式があまりに簡単に実用レベルに仕上がってしまったので、かさばる電源回路を必要とする真空管を担ぎ出すのが面倒くさいというのが本音でした。しかし、一方で古典真空管の趣ある容姿を眺めながらデジタルソースを聞くのも味わい深いだろうなあと思い、机上での構想はかなり早くから着手していましたが、ようやく1号機が完成しましたのでレポートします。


●回路方式の検討

D/A変換はおなじみAKI.DACをほとんどそのまま使います。AKI.DAC出力以降ですべきことは2つ、1つめはだだ漏れのデジタルノイズをいかに除去するか、2つめは低い信号レベルを3倍ほど増幅することです。この基本は当サイトの他の作例と変わることはありません。

真空管式とする場合、いろいろな回路方式が考えられます。FET差動バッファ式USB DAC Version2のように差動回路を使った非反転方式を真空管に置き換えるというのを最初に考えましたが、チャネルあたり真空管を3本も必要とする割には面白味がない気がします。1本節約してトランジスタかFETのフォロワをつけるたりすると、いよいよつまらない回路になってしまいそうに思えます。

真空管といえばトランス。トランスをうまく使えないだろうかとも考えました。高μ低rpの6DJ8あたりで増幅して10kΩ:600Ωくらいを出力トランスに使えば、無帰還で5倍くらいの利得が得られますからちょうどいい感じです。この方式の問題は、真空管の内部抵抗との関係もあってトランスにかなり大型かつ高い1次インダクタンスのものを持って来ないと低域で性能が出せないことです。トランス式DACがそこそこのサイズのトランスでも低域特性が良いのは、特性は格段に優れた業務用のトランスを使ったこととAKI.DAC側の内部抵抗が限りなくゼロであるからでして、内部抵抗が1kΩ以上の条件では100Hz以下でのダラダラ劣化は避けられません。カマボコ特性でもよい、低域で歪みが増えてもよい、味がある音が出ればよい、というのであればこの方式でもいいのですが、私はNOです。

観球DACとして見た時にどうだろう、という考察について。mT管も立派な真空管ですが、ちょうど手元に6L5Gと6C5という古風な球があります。6L5Gは、小型のG管でいかにも時代を感じさせます。6C5は小型で真っ黒なメタル管で、第二次大戦頃に活躍したであろうこれも半世紀以上昔の古典管です。こういう球をチャネルあたり1本ずつ立てて眺めながら高音質でiTunesソースなどを聞くというのはまさにデジタル時代の観球オーディオだなあと思います。

「単球増幅+P-G帰還」という方式はなかなか良い音を出します。散々差動プリを作っておきながら、我が家のメインシステムのラインアンプはいまだに12AU7単段P-G帰還です。ですから、6J5や6C6や6L5Gなんていう球のP-G帰還一発というのはなんとも捨てがたいのです。

トランスを使わずに「AKI.DAC〜LCフィルタ〜真空管増幅」という構成でもよかったのですが、単球では反転増幅器になってしまうので、もうひとつ手をかけて「AKI.DAC〜LCフィルタ〜ライントランス〜真空管増幅」という構成でどうなるかやってみることにしました。こうすればライントランスで反転させ、真空管増幅でも反転するので、トータルでは非反転にできるからです。デジタルノイズフィルタという機能としては、LCフィルタでカットし、ライントランスでもカットし、真空管増幅でもカットしますので、相当に強力なアナログフィルタになります。そして、段を重ねた割りには回路はシンプルで、音質の劣化の懸念もありません。


●低μ低rp電圧増幅管の系譜

最初に普及したのは2.5V管の56、そして6.3V化された76です。今の感覚ではμ=13.8はあまり高くないですが、RCAのドキュメントには「High Amplification factor」と謳っているとおり当時はかなり高い方でした。話はここからスタートしましょう。76をそのままベースだけオクタル化したのが6P5で、ユニット自体も特性も76と全く同じです。

56/76タイプに取って代わったのが1935年に登場したメタル管の6C5です。μ=20、rp=10kΩですから後の6J5とほぼ同等ですが、見た目は全く違っていて構造は3結にした4極管です。元になったのは後述する6J7です。6C5は、G管の6C5G、GT管の6C5GTとして普及をみます。6C5は後に純3極管構造のものも作られていますから、両方を比べてみるのも面白いかもしれません。6C5と良く似た特性の球に6L5Gがありますが、こちらは最初から純3極管でしかもヒーター電流が0.15Aと例外的に少なくなっています。6L5Gはか細いカソードに少ないヒーター電力であるにもかかわらずなかなか優れた直線性を持っています。

そのすぐ後にいわば真打ともいえる純3極構造のメタル管の6J5が登場します。6J5は、6J5G6J5GTのほかに12V化された12J512J5GTなど、数多くの派生バージョンが作られます。欧州ではL63として作られました。μ=20、rp=7.7kΩ(実際は9〜10kΩくらいある)という基本特性は後のスタンダードになり、真空管の歴史の最期まで続くことになります。6J5のユニットをそのまま2個封入したのが6SN7GTでこれが登場したのは第二次大戦終戦の年です。6SN7GTの特性を変えることなくそのままmT化したのが6FQ7/12FQ76CG7の系列になり、さらにロクタル化された7A4/12A47N7/14N7とヴァリエーションを広げます。

世代の順序としては、6J5が先で6SN7GTが後からできたわけですが、6SN7GTの中身を流用して6J5GTに仕立てたのが右下の画像です。保守用の6J5GTの需要があるために、急遽6SN7GTの中身の半分だけ接続して6J5GTとして製造したようです。そのため、この6J5GTの片方のユニットのヒーターは光りません。

左から6C5、6L5G、6J5GT ユニット2個入りの6J5GT

さて、話を元に戻して、さきに挙げた6C56C5G6C5GT6L5G6J56J5G6J5GT・・・これらはμ=約20、rp=約10kΩ、ヒーター電圧=6.3Vという共通した電気的特性を持っているだけでなく、ピン接続が全く同じなのです(下図)。6P5Gは、μ=13.8ということだけが違うので、利得が下がることを容認すれば差し換えが可能です。

ピン接続が異なりますが、μ=16.5、rp=11kΩという6SR7/6SR7GTも使うことができます。6SR7/6SR7GT6SQ7/6SQ7GTの低μ版で、同じ用途同じ電極配置です。3極管とセットで2つの2極管が封入されており、1本でラジオの検波と音声増幅を行う球です。この球を使う場合は、2つの2極管(4番ピント5番ピン)は1番ピンとともにアースにつないでおきます。

5極管の6J7/6J7G/6J7GT6SJ7/6SJ7GTは3結にするとμ=約20、rp=8〜11kΩとなるので使用できます。冒頭に出てきた6C5はこの6J7を3結にしたものです。これらの球の3結はかなり良い結果が期待できます。

6C56J56SR76J7/6SJ7といったメタル管の場合は、1番ピンが金属筐体(シールド)とつながっているので1番ピンはアースにつなぐ必要があります。これを怠ると金属筐体に電荷がたまって感電することがあるそうです(怖いので試したことはありません)。ガラス管でも金属ベースを履いたものは1番ピンが金属ベースに接続されているのでやはり1番ピンはアースにつなぐのがお約束です。その他同名で樹脂ベースの球の1番ピンはNC(無接続)ですが、メタル管や金属ベースとの互換性を持たせるために1番ピンは常にアースしておくというのが歴史的なルールです。

注意点としては、6L5Gに限ってヒーター電流が0.15Aで、それ以外はすべて0.3Aだということです。6L5Gも差し換え可能にするためには、少ないヒーター電流に合わせる工夫がいります。

真空管の入手にあたっては、この種の球にペアチューブなどは存在しませんし、常に同一ブランドのものが2本ずつ入手できるわけでもありませんので、バラでの入手も視野に入れてください。私が使用した球は以下のとおりです。

6J5GT・・・Raytheon JAN-CRP-6J5WGT×2本。
6C5・・・Westinghouse 6C5×1本、KEN-RAD/GE 6C5×1本。おそらく同じ工場、製造時期はかなり異なる。
6L5G・・・PHILCO 6L5G×1本、National Union JAN-CNU-6L5G×1本。ブランド名もベース色も異なるのに中身は全く同じ。
というわけで、私は6C5と6L5Gについては左右異なる製造のものをステレオで使っていますが、ステレオとして何の違和感もなく定位もきれいに決まっています。こういうのも古典管の面白さだと思います。ちなみに、左右の特性が最も揃わなかったのはRaytheonの2本。だから同一ブランドもあてにならないのです。

●注意事項

本機は、回路は簡単に見えますが、実際に製作するとなると結構手ごわいです。真空管式の差動PPミニワッターよりもはるかに手も頭も使うだろうと思います。

アンプの自作経験が浅い方にとって本機製作の最大の難関はケースの穴あけ加工でしょう。まず開けなければならない穴の数が多いです。作例と同じように作るには、大きな丸穴を3個と角穴を1個開けなければなりません。もっとも、ケースは薄い1mm厚のアルミ製なので加工は楽な方です。

本機では、位置に正確性が求められる穴が多いです。3.3〜3.4mm径のビス穴を開けたい場合、いきなり3.3mmのドリルで開けると大概穴の位置がずれますし、丸穴というよりオムスビのようにいびつになります。こういう場合、私はまず2mmくらいの細いドリルでガイド穴を開け、次いで2.8mmのドリルで広げ、最後に3.3mmのドリルを使います。こうすると最初の穴の位置が正確になり、形の良い丸穴になります。

大きなサイズの穴は、以前はシャーシパンチのお世話になりましたが最近はあまり使わなくなりました。シャーシパンチはケース全体にストレスをかけるのでケースの形がなんとなく狂うからです。シャーシパンチを使わずに小穴を多数開けてからそれをニッパで切り取り、最後に半丸やすりで地道に削って仕上げています。こうすると金属全体にかかるストレスが小さくなります。世の多くのベテラン職人達がやっているのと同じ方法です。本機もそうやって作りました。

慌てず丁寧にゆっくりと製作を楽しんでください。


●全回路図および説明

回路図は以下のとおりです。(2017.7.24版)

DAC本体およびLCフィルタ部

AKI.DACに関する詳しい説明はこちらにあります。→ http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm

デジタルノイズをカットするための一段目のLPF(ロー・パス・フィルタ)は、2.7mHのインダクタと0.01μFそして820Ωのダンプ抵抗です。ダンプ抵抗の値は本機で使用したタムラTD-1/Wに合わせると820Ωくらいがベストですが、他のトランスの場合には560Ω〜1kΩくらいの範囲で最適値が異なるので、組み上がった状態で周波数特性を測定しながらのチューニングが必要です。

<推奨値>
ライントランスLC1次側※2次側
TD-1(W)2.7mH0.01μF820Ω1kΩ
TDP-1(W)2.7mH0.01μF820Ω1kΩ
TK-12.7mH0.01μF680Ω1kΩ
TK-102.7mH0.01μFレポート募集1kΩ
TF-3(W)2.7mH0.01μF620Ω1kΩ
TpB-2022.7mH0.01μF620Ω1kΩ
TPs-3S2.7mH0.01μF820Ω1kΩ

ライントランス部
ライントランスには3つの役割を与えています。

(1)トランス自体が持つフィルタ効果を使ってデジタルノイズを除去する。
(2)後続の真空管アンプ部が反転増幅器であるため、トランスで位相を反転させて全体で非反転となるようにしている。そのため意図的にトランスの2次側の接続を逆にしてある(赤い字)。
(3)トランスそのもののトーンキャラクタを期待。

真空管アンプ部
ごくごく普通のP-G帰還付き反転増幅回路です。プレート電圧=約80V、プレート電流=2.3mAくらいで動作させています。最大出力電圧は2Vを超えることはないので動作条件の選択肢は幅広いですが、これくらいの動作条件が最も安定して直線性も良いです。

ロードラインは下図のようになります。赤の破線はカソード抵抗=1kΩとした時の動作線で、これと青線(Rp=56kΩのDC負荷線)との交点がDC動作ポイントになり、このポイントを通るようなRL=19.5kΩ(=56kΩ//75kΩ//50kΩ)の青線が交流のロードラインです。低μ低rp球はいずれにおいてもほとんど同じ動作条件になり、回路定数を変えずに差し替えてもちょうどいい動作条件になることがわかります。

μ=20、rp=10kΩ、交流負荷=19.5kΩとして裸利得を計算すると14倍くらいになり、15kΩ:75kΩでP-G帰還をかけると利得は3.5倍くらいになります。ライントランスでの損失を0.9倍弱と見積もると本機の総合利得は3倍くらいです。AKI.DACの出力は0.63V(at 0dBFS)ですから、最終的に1.9Vくらいの出力レベルが得られる計算になります。P-G帰還素子には約49kHz(-6dB/oct)のLPFを組み込んであります。

ところで、6J5のような低μ低rp電圧増幅管を本機くらいの条件で動作させると、1V出力あたり0.12%〜0.2%の歪みが発生し、歪率は出力信号レベルにほぼ比例します。本機では約10dBほどの負帰還をかけますので、アンプ部の歪みは0.04〜0.07%(1V出力の時)くらいになるだろうと思います。

なお、P-G帰還回路の特徴として、電源OFFの状態でも完全に無音にはならずにわずかに音が漏れます。その時のオーディオ信号の経路は、「DAC出力→ライントランス→15kΩ→75kΩ→出力端子」です。

高圧電源部
東栄の100V:100Vトランスを流用し、100V巻き線を倍電圧整流して約273Vを得ています。リプルフィルタはトランジスタ式です。ベース電流が少ないので220kΩという高抵抗を入れることができました。そのため、MOS-FETを使わなくても電源ON時の電圧の立ち上がりはかなりゆっくりです。トランジスタの代わりにMOS-FETを使う場合はゲート回路の発振止めの抵抗が必須になりますのでご注意ください。MOS-FETの場合は220kΩと並列に逆電圧を防ぐダイオードも必要です。

トランジスタのベース側に入れてある22μFのコンデンサの耐圧が250Vであるため、この部分での電圧がコンデンサの耐圧を超えないように電圧を配分してあります。エミッタとアース間に入れてある680kΩは電源OFF時にトランジスタのベース〜エミッタ間に逆電圧がかからないようにするためのものです。

ヒーター電源部
東栄のJ1205(12V、0.5A)のトランスを使い、ブリッジ整流して12.9V(0.3A時)を得ています。6J5系や6C5系のヒーターは6.3V/0.3Aですから、2本直列にして12.6Vを供給しています。6L5Gはヒーター電流が少ないため整流出力電圧は14V以上になります。そこで8.2Ωを割り込ませて電圧を落としています。8.2ΩをスイッチでON/OFFすることで0.3Aと0.15Aを切り替えています。ヒーター電源の残留リプルは0.15Aの時の方が少なくなりますが、0.3Aの時と0.15Aの時とでヒーターハムの残留ノイズへの影響は認められませんでした。ヒーターに供給される電圧は一応12.6Vに近い値になるように設計したつもりですが、現実には最大±0.6Vくらいのばらつきが生じます。
DCプロテクタ部(過渡電圧防止回路)
電源ON/OFF時に出力端子に発生する過渡電圧を軽減する回路を組み込んでいます。これは「差動ライン・プリアンプ用過渡電圧防止回路」として別に記事があります。

プリアンプの場合は、プリ出力にじかにパワーアンプがつながるのでこの回路は重要な意味を持ちますが、本機の場合は相手がプリアンプであり、途中にボリュームが介在するので存在意義はあまり大きくありません。省略してもさしたる問題がないことは作ってみてから気が付きました。

本機の場合、電源ON/OFF時に出力に現れる過渡電圧の最大値は、ON直後の高圧電源立ち上がり時で+0.1Vくらい、球が温まってプレート電流が流れはじめた時で-0.1Vくらいです。電源OFF時は最大で-0.05Vくらいです。DCプロテクタが有効に働くのは電源ON/OFF直後のみで、球が温まった時には機能しません。


●部品のことなど

真空管・・・冒頭で説明したμ=13〜24、rp=10kΩ前後の3極管ならばアンプ部の回路定数を変更することなくそのまま対応できます。いまどき6J5や6C5を使った製作記事などまず見かけませんし、6L5Gや6SR7に至っては全く不人気で知らない方の方が多いのではないでしょうか。この時代の球は真空管の原点のような構造をしており、どの球が音がいいの悪いのという議論を超えたところに位置します。

ライントランス・・・タムラのTD-1(W)600Ω:600Ωを使いましたが、タムラや日本光電のこの種の業務用の高性能な600Ω:600Ωタイプのトランスならば大概のものが使えます。サイズは小さいですがTpAsタイプも優秀です。10kΩ:7kΩのものをオークションでよく見かけますがこれもチューニング次第で使えます。

電源トランス・・・東栄変成器のZ-5VA(P/0-90V-100V-110V:S/0-110V-110V-115V)とJ1205(0-90V-100V:0-6V-8V-10V-12V/0.5A)です。P=Primary(1次)、S=Secondary(2次)という意味です。どちらも1000円以下で買えます。

USモールド真空管ソケット・・・さまざまなタイプが売られていますが、頒布しているのは抜き差しがスムーズで接触性が良いオムロン製です。しかし、直径がぴったり30mmなので30mmのシャーシパンチで開けた穴だときつくて追加工が必要です。普通に売られているUSタイト真空管ソケットは直径が27〜29mmなのでそういう問題はありませんが、弾力がないので抜き差しがきつい、接触信頼性がいまひとつなので採用しませんでした。

ケース・・・LEAD製の廉価な汎用アルミボックスP-102(250W×50H×100D)とP2(150W×50H×100D)です。シルバー塗装で底板のネジ穴も切ってあります。

トランジスタ・・・高圧電源で使用したのは300V耐圧の2SC2688です。hFEが80以上のものが適しますが、2SC3425(hFE=40〜50)もなんとか使えます。この種のトランジスタはすっかり姿を消しました。

整流ダイオード・・・高圧電源で使用したのは1JU41ですが、UF2010や1NU41など選択肢は広いです。ヒーター電源はブリッジダイオードスタックのW02Gを使いました。

LED・・・つけるかどうか、何をつけるかはお好みで決めてください。

抵抗器・コンデンサ・・・とヒーター電源の0.47Ω、1.5Ω、8.2Ωに1W型、アンプ部の56kΩには2W型を使いました。それ以外は1/4W型で足ります。LCフィルタ部の0.01μFはフィルムコンデンサ、P-G帰還素子の47pFは積層セラミックコンデンサ(印加する電圧で容量が変化しないタイプ)、アンプ部の出力側の1.5μF/250Vはメタライズド・フィルムコンデンサを使いました。それ以外のコンデンサは通常タイプのアルミ電解コンデンサです。

ビス、ナット、スペーサ・・・平ラグの取り付けは8mmのスペーサを使いました。ライントランスは、TD-1ならば普通の3mm径の8mm長ビスで足りますが、ライントランスは取り付け方法や穴の深さがまちまちなので状況に応じてやりくりしなければなりません。内装ヒューズを固定するビスは電源トランスの固定用と兼ねますので10mm長でないととどかないことがあります。ケース側面に出るビスは、見栄えを考慮して頒布では平たく丸いトラスビスを入れました。部品の状態や実装のやり方で何をどう使ったらいいか変化しますのでそれぞれに工夫してください。

* * *

★頒布は一応準備ができましたが、数が揃っていない部品があるためすぐに発送できないことがあります。また、部品の内容がまだ流動的ですのでお送りする段階で変わることがあります。
http://www.op316.com/tubes/buhin/buhin.htm


●製作

AKI.DACキットの組み立て
詳しい説明はこちらにあります。→ http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm
AKI.DACの基板に実装するCR類でキット付属のものと異なる定数は以下の通りです。(表中のC5〜C17はAKI.DACの取説の回路図中の記号)

回路図部品名キット付属変更後
C547μF/25V470μF/10〜16V(直径8mm以下のもの)
C647μF/25V470μF/10〜16V(直径8mm以下のもの)
C1147μF/35V220μF/10〜16V
C14470μF/25V1000μF/10〜16V
C16100μF/35V220μF/10〜16V
C17100μF/35V220μF/10〜16V

平ラグパターンと平ラグ上の配線
アンプ部の平ラグパターンは下図のとおりです。USソケットの1番ピンがアースなので、それをつなぐように1.2mmの銅線によるアース母線を取り付けました。空きの4番ピンはプレート抵抗の中継に使っています。

(1)AKI.DACから出ているL/R/GNDの3本の線は平ラグ上のLCフィルタにつなぎます。
(2)LCフィルタを出たL/R/GNDの3本の線はライントランスの1次側につなぎます。同時に、ライントランスの1次側のアースはアース母線に落とします。
(3)ライントランスの2次側は、アースはアース母線に、信号出力(L/R)は平ラグのアンプ部につなぎます。
(4)平ラグからアンプ部の出力(L/R)が出ますから、付近からアースを引き出してその3本を出力端子に送ります。

左下は高圧電源部で、右下がヒーター電源部です。それぞれに電源トランスの2次巻き線の0-100Vと0-12Vをつなぎ、出力は左右電源とヒーター電源につなぎます。詳細は回路図を見比べて理解してください。

ケースの加工
私が製作したケース加工図は以下の通りです。但し、当初の設計どおりに穴を開けて部品を取り付けようとしたら、以下の問題が生じました。

・上面に取り付けたヒーター電源(8P平ラグ)を取り付けたビスの頭と、ケース側面に取り付けたAKI.DAC基板がぶつかった。
・後面に取り付けるUSBコネクタが隅に寄りすぎているために、すきまが狭くてコネクタを取り付けるナットが入らない。

そこで、下の図面では修正した値を書き込んであります。これで大丈夫だろうと思いますが、この図面で製作される方は念のために穴の位置がこれで大丈夫か確認してください。

・頒布しているUSモールド真空管ソケットはつくりはしっかりしていますが直径がぴったり30mmであるため、30mmシャーシパンチで開けた穴では微妙にサイズが合いません。半丸やすりで穴をすこし広げてやる必要があります。ケースがアルミなので加工は容易ですが。

もっと簡単に仕上げたいのであれば、

(1)AKI.DAC付属のUSBジャックを後面パネルからじか出しすれば、USBリバーシブルコネクタの追加がなくなり24mm径の穴あけも不要になります。
(2)AC100Vケーブルを穴からじか出しすれば、ACインレットの面倒な角穴加工が不要になります。その場合は、穴を保護するブッシュを頒布します。

全体の組み立てと配線
ケースは2つ重ねて使います。上側のケースの底板は使わず、単純に上にかぶせて下からビス留めします。後面には、ACインレット、電源スイッチ、ヒーター電流切り替えスイッチがつきます。

下側ケースの上面には、後方に2つの電源トランスを並べ、中央にヒーター電源(8P平ラグ)を乗せます。Z-5VAトランスは1次2次両方に100Vがあるのでまぎらわしいですが、「P」表記が1次(Primary)で「S」表記が2次(Secondary)です。ヒューズホルダーは後面パネルに取り付けてもよかったのですが、ケースの穴あけが面倒だったのでむき出しタイプをトランスの取り付けビスのところに配置しました。画像では手前のトランスの陰から半分見えています。スパークキラーはどちらかのトランスの0-100V端子に取り付けますが、画像ではまだついていません。

灰色の配線はAC100V、紫色の配線はヒーター電流の切り替えスイッチ、赤・白の配線はLEDです。灰色と白色を捻って穴に入ってゆく先はヒーターです。

下側ケース内の様子は右のとおりです。

左下から時計まわりに、出力端子、DCプロテクタ、AKI.DAC、その向こうの平ラグの左半分がLCフィルタ、いちばん奥がライントランス、その手前が真空管ソケット、右にまわって平ラグの右半分がアンプ部回路、右手前がUSB端子、最後に手前中央が高圧電源部です。

この配置ですと、AKI.DACの基板とヒーター電源(8P平ラグ)を取り付けているビスがぶつかるので、AKI.DACとDCプロテクタはもう少し手前にずらす必要があります。また、右手前のUSB端子を固定するナットを取り付けようにもすきまが狭すぎて指が入りませんので、USB端子の位置は左にずらす必要があります。ただ、ずらしすぎると中央の高圧電源のアルミ電解コンデンサに当たってしまうので、そこのところは調整がいります。本サイトで公開しているケース加工図面は上記の問題を考慮して修整してあります。

側面の様子がわかるように角度を変えてみたのが下の画像です。AKI.DACは手持ちのジャンク部品を流用したので基板に乗っているコンデンサ類が指定(および頒布)のものと異なります。

アンプ部を出た信号は、DCプロテクタにちょっと立ち寄ってから出力端子にむかいます。DCプロテクタの電源は上面のヒーター電源(8P平ラグ)からもらいます。

ここに取り付けてあるDCプロテクタはかなり前に記事を書くために作ったものなので、LED-Cdsカプラに古い四角いものがついています。最新の情報はこちらにあります→http://www.op316.com/tubes/pre/dcp.htm


ライントランス周辺の配線の様子です。

AKI.DAC〜LCフィルタを経た配線は左下から来て、トランスの1次側「1-4」端子につなぎます。「4」端子はアース母線にもつなぎます。トランスの2次側は位相を逆転させるために「5」端子をアース側とし、「8」端子をアンプ部入力に送ります。

注意:この画像ではトランスの端子に抵抗器がついていますが、これは試験用に取り付けたものなので本来は不要です。

LCフィルタ部およびアンプ部の拡大画像です。

US真空管ソケットの向きにも注意してください。中央のピンのキー穴の凹みは前方を向いています。つまり、1番・8番が前方、4番・5番が後方です。US真空管ソケットは巨大なので余裕で配線できると思います。

アース母線から下に出ている2本の黒い線のうち1本は高圧電源(10P平ラグ)へ、もう1本はアンプ部(10P平ラグ)につながっています。左右それぞれの56kΩのところから出ている赤い線も高圧電源(10P平ラグ)につなぎます。

注意:LCフィルタには回路図の820Ωとは異なる1kΩがついています。アンプ部の出力側とアース間には1MΩがついていますがこれは不要ですので、回路図や平ラグパターン図からは削除しました。

調整と動作確認
電源部のみのテスト・・・全体を組み上げる前に、電源部のみの通電テストを行ってください。その場合は回路に電流が流れていないので、高圧電源の整流出力は300Vくらい、ヒーター電源は18Vくらいになると思います。

アンプ部のテスト・・・概ね回路図記載の電圧になればOKです。アンプ部のところで説明しましたが、本機は電源OFFの状態でも完全に無音にはならず、わずかに音が漏れますがトラブルではありません。

ライントランスと周波数特性の調整・・・TD-1以外の600Ω:600Ωトランスを使用した場合は、LCフィルタ部の0.01μFと並列に入れてある820Ωを増減することでほとんど調整できます。PC側で発生させた1kHzを基準として、5kHz、10kHz、15kHzくらいでのレスポンスを見て調整したらいいでしょう。ポイントは、5kHzではフラットかわずかに持ち上がるくらい、10kHzではほぼフラット、15kHzでは若干減衰してもかまわない、あたりがちょうどいいです。


●特性

本機の特性は以下のとおりです。

負帰還がかけてあるので球のばらつきはかなり抑えられていますが、利得(出力電圧)は球の個体によって5%くらいのばらつきが生じることがあります。電源ON時の立ち上がり時間もまちまちで、ステレオ両チャネルの利得が揃うのに1分以上かかることもあります。古い球ですから、そこのところはおおらかにいきましょう。(ヒーターが暖まる時間が秒単位で管理されるようになったのはトランスレス球が普及してからのことです)

ノイズの大半は20kHz以下で真空管特有のフリッカも多く含みますので、測定帯域を狭くしても値はあまり変わりません。数字の割には聴感上のノイズ感はないですね。残留するデジタルノイズは非常に少ないとみていいでしょう。6L5GなどのG管は電極が空中に浮いているようなものなので、球に手を近づけるとノイズは増加しますが耳では気になりません。

周波数特性は以下のとおりです。厳密には完璧なフラットではなく、1kHzを基準にすると400Hz以下と5kHz〜10kHzでかすかに持ち上がり、10kHz以上ですこしずつ減衰しています。しかし、その変化はわずかなのでグラフにすると1本の直線になります。これは6J5GTの時のデータですが、他の球でもほとんど変わりません。

歪率特性はご覧のとおりです。左から手持ちの6J5GT、6C5(メタル)、6L5Gのデータです。同一ブランド、同一構造の球でも個体差が結構あり、JAN球がいいとか、どのブランドのものが良いとか悪いといった傾向は見えませんでした(当たり前のことですが念のため)。6J5系の低μ低rp管は何を挿しても大体こんな感じになると思ってください。


左から、Raytheon JAN-CRP-6J5WGT、KEN-RAD/GE 6C5、Philco 6L5G。

左右チャネル間クロストークは、ご覧のとおり段階を経て改善されてきました。


●とりあえずのコメントなど

完成直後の感想ですが、全体に腰が据わった落ち着いた音で、眺めてよし、聞いてよしなDACです。

昨今、真空管の名前ばかり謳ったちゃらちゃらしたデザイン(私の感想です)のDACがたくさん出ているようですが、真空管というならやっぱりクラシックなメカっぽさがないと面白くないだろうと思います。そんなことを考えて作ったらこんなデザインになりました。

トランス+古典真空管というといかにもカマボコ特性&歪みで味付けと思ってしまいますが、5Hz〜20kHzまでほぼフラット、聴感上もワイドレンジでそこそこ低歪み、どこに出しても恥ずかしくない性能が得られました。トーンキャラクタとしては中低域の存在感がなかなかよいです。本機をソースに使うと、トランジスタ式ミニワッターから真空管アンプみたいな音を出るのが面白いです。

少々手がかかる工作になりますが、回路自体はシンプルで動作は安定しておりノイズにも強いですから、丁寧に時間をかけて製作すれば必ず良いものができると思います。



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