Digital Home Recording

■■■USB/FWオーディオ・インターフェース■■■
USB/FireWire Audio Interfaces


●PCオーディオにおける録音と編集

PCは、録音オーディオの媒体として早くから普及し、このところ一気に充実度を増してきました。2000年以降、Digidesign社のI/Oシステム(右画像)および同社ProToolsをはじめとするDAWによるレコーディングが急速に普及一般化し定着したからです。そのため、24bit、96kHz以上のフォーマットをサポートする優れたPCオーディオ・インターフェースがどんどん出るようになり、今では192kHzを標準装備する機材が当たり前になりました。同時に、録音・再生のためのソフトウェアも充実してきています。

PCによるオーディオシステムの構築は、従来型のステレオセットによるアナログオーディオとはかなり勝手が違います。特に録音が絡むと話は一気に難しくなります。アナログ時代であれば、テープデッキを買ってきてプリアンプにつなげば録音・再生に必要な環境は容易につくることができました。しかし、PCベースのオーディオでは、テープデッキのように機能が一つの装置にすべてまとめられたものはほとんどなく、テープデッキにあたるしくみを自分で作らなければなりません。通常のアンプやスピーカーに加えてPC、オーディオインターフェース、録音・再生ソフト、必要に応じて編集ソフトや拡張ハードディスクなどです。

オーディオ・インターフェースには、レコーディングや音楽制作を意識した平衡タイプのマイクロフォンやギター、MIDI入力を中心としたタイプと、再生中心のリスニングオーディオを対象としたとしたタイプの2種類があります。その違いは入出力端子にも現れており、前者のライン入力やモニター出力は1/4インチのフォーン・ジャックが普通ですが、後者の入出力端子はRCAピン・ジャックのものが多いです。

製品としてのラインナップの充実さや売れ行きを比べてみると、前者の音楽制作向けのタイプのものの方が圧倒的優位に立っています。音楽制作向けはいわゆるコンシューマー・オーディオのメーカーではなく、プロ用途の機材を扱っているメーカーがほとんどなので上位機種になると非常に優れた音と機能を持ったものが目立ちます。ここで取り上げる機種のほとんどは録音&音楽制作向けのものですが、もっぱら再生で使う方にも向いたものも取り上げるようにしました。

音楽関係ソフトでは、Windows Media PlayerやiTunesのようにライブラリ管理と再生を目的としたもの、Sound it!のように2chステレオを前提としたオーディオ・ソースを対象にした音楽編集&CD作成ソフト(ミキシングはできない)、そしてProToolsやCubase、Audacityのような32トラック以上の録音やミキシングを難なくこなす本格的な音楽制作ソフト、そしてefuさんのWavespactraのような解析ツール的なソフトに分かれます。

レコーディングスタジオというと、数十チャネルをミックスできる巨大なミキシングコンソールを思い浮かべる方が多いと思いますが、今やそれ以上のことがPC1台でできるようになりました。このようなことをするソフトウェアのことをDAW(Digital Audio Workstation)といいます。

左上画像は、レコーディングスタジオでは定番のProToolsの画面です。これはある合唱団のライブでマイクロフォンを4本立てて録音している時のものです。時間とともに変化する波形を表示するオーディオトラック・ウィンドウ(左半分)と、ミキシングコンソールと同じ機能を持ったミキシング・ウィンドウ(右半分)が表示されています。入力チャネル数は4つで、4本のマイクロフォンからの信号をマルチトラックで録音しているところです。

右上の画像は、フリーソフトのAudacityのオーディオトラック・ウィンドウで、録音済のステレオトラックが3つ(つまり6チャネル)表示されていて、これらをMIXして編集することができます。

DAWによる録音は、2つのステップに分かれます。最初のステップでは、マイクロフォンなどからの音源をひらすらあるがままにデータとしてマルチトラックでディスク上に記録します。アナログ時代に幅広の1インチテープを使ってマルチトラック・レコーディングをしたあのイメージそのままの規模のものがPCでできてしまうのです。その際には、ある程度のレベル合わせはしますが、記録される音には基本的にエフェクタはかけませんし、ミキシングもしません。次のステップでは、記録した音源をPC上でミキシングや編集を行って2チャネル・ステレオにMIXした上でCDに焼けるように必要な処理をして仕上げます。デジタルレコーディングでは、ミキシングを繰り返してもノイズは発生しませんし、何度でもやり直しができます。そこのところが昔テープデッキを使ってやったアナログレコーディングと根本的に違います。これらの工程については当サイトの「Recording How to Do」のところのStep1〜Step3に解説があります。

左上の4トラックのレコーディング画面を見ると、エフェクタは1つも入れていませんし、フェーダーもすべて上げっぱなしです。ポップスなどの音楽製作はこれとは大きく異なりますが、クラシックなどのレコーディングではこのように現場ではとにかく音を確実に記録するだけにして持って帰ってくるのです。但し、こういうことができるのはマルチトラックで録音できる機材がある場合に限られ、3本以上のマイクロフォンを立てているのにレコーダー側が2トラックしかない場合は、ミキサーを持ち込んで一発勝負で現場でミックスしなければなりません。


●USBとFirewire(2013.10作成)

USB ・・・おなじみのUSBです。データ転送速度があまり速くないというので以前はサンプリング・レートや同時に扱えるトラック数に制限がありましたが、最近(2013年)は96kHz/24bitで6トラック以上の同時録音ができるものが増えました。

Firewire ・・・Macintoshにごく普通についているインターフェースですがWindowsPCでは一般的ではありません。WindowsPCにも、まれにIEEE-1394aというちいさな4端子のコネクタがついていることがあり、これだとFirewireにつながります(6pin〜4pin変換アダプタが必要)。Firewireのデータ転送は比較的高速なので、24bit/96kHz×複数チャネルを難なくこなしますがUSBも改善されてきていてだんだん差がなくなってきました。むしろ、FirewireがついているPCが減ってきているような気がします。

Macintoshは、以前はFirewireが当たり前についていましたが最近はついていないものがありますし、USBポートの数の方が多いですね。WindowsはUSBしかついていないのが普通です。オーディオインターフェースを買う場合は、USB対応が可能なものの方が融通がきくのではないかと思います。


●稼動環境の制約(2013.10作成)

Macintosh ・・・オーディオ用の歴史が長くWindowsに比べて1日の長があります。OS X 10.5以上が基本です。DAWソフトやオーディオインターフェースの中にはIntelベースのMacをサポートしないものが多いので注意がいります。USBは2.0が必須です。Mac OSのレベルについても必ずメーカーサイトの最新情報をチェックしてください。提供されているドライバも随時更新されているので、機器に同梱されたドライバが最新であるとは限りません。かといって、ドライバを新しいものにするとMacOSのバージョンと整合が取れなくなることもあります。

Windows ・・・Windowsを使う場合は、プロセッサはIntel Core 2以上が基本です。Celeron搭載PCはオーディオ用には向かない、というよりはっきりダメと書いてある機材がほとんどです。AMDプロセッサもダメなことがよくあります。USBは2.0が必須です。


●録音レベル調整問題

オーディオインターフェースで録音する場合、録音レベルの調整方法は2つのグループに分かれます。

<録音レベル調整がついている機種>
マイクロフォン入力を持った機種で、入力端子がライン入力も兼ねている場合は、録音レベル調整のツマミがついているのが普通です。

<録音レベル調整がついていない機種>
機種によっては、ライン入力側の録音レベルを調整するツマミがついていない機種があります。このような機種は、マイクプリアンプやミキサーを使って必要なコントロールをすることが前提になっています。きちんとレベル調整されたミキサーでは、出力信号レベルがしっかりと管理された状態になるため、オーディオインターフェース側には録音レベル調整が不要だからです※。

※じつは、アナログ時代のスタジオ用のマスターレコーダー(テープデッキ)も、基本は録音レベルは+4dBuで固定です。

なお、24bitで録音する限りデジタルデータ側は広大なダイナミックレンジが確保されますので、従来のアナログ録音のように録音レベルをヘッドマージンぎりぎりまで上げる必要は全くありません。むしろクリップしたら最後救いようがないので、どんな大音量が入っても天井に当たることがないようにヘッドマージンは大きめに取ります。


●入力インピーダンス問題

音楽制作用途のオーディオ・インターフェースの多くはライン入力インピーダンスが低いものが目立ちます。レコーディング用のミキサー等のライン入力インピーダンスは3kΩ〜10kΩが一般的なのでそれにならっているようです。一方で、通常の再生オーディオ・アンプの入力インピーダンスは20kΩ以上、多くは50kΩ前後と高めであるのが普通です。入力インピーダンスが10kΩ程度に低い機器をプリアンプの録音出力端子につなぐと、場合によっては送り出し側の性能が出ないことがあります。特に、真空管式のPHONOイコライザーから録音する場合は、入力インピーダンスが10kΩくらいしかないオーディオ・インターフェースをつなぐとイコライザ特性が狂いますのでNGです。このような場合は、ソース側とオーディオインターフェースとの間にラインバッファなどのアンプを入れてやる必要があります。


●USB/Firewireオーディオ・インターフェース

TASCAM "US-100" ・・・廉価にコンパクトにPCオーディオ環境が作れる

廉価、USBバスパワー、一発動作、コンパクトという点で手軽にPCオーディオをはじめるのによろしいのではないかと思います。ファンタムなしのXLRマイクロフォン入力はご愛嬌。RCAのライン入力インピーダンスが10kΩと低いので、ソースとして真空管式のプリアンプは接続できない。PHONOイコライザ・アンプを内臓しているので、LPレコードプレーヤをじかにつなぐことができます。

使用上の注意: CDなどノーマライズされたソースを再生する場合、本機中央のBALANCEツマミを12時よりも右にまわすと波形がクリップして歪みます。この仕様はよくないですね。この問題は取説にも書いてないですし。

Maximum Rate 16bit/48kHz
Interface USB
ライン出力 1.065V(0dBFS、実機実測)
歪率 0.18%(1kHz、1V、実機実測)
0.35%(10kHz、1V、実機実測)
アナログ同時録音トラック 2
Price 6,800円〜

カタログに記載されている歪率はアナログ部だけのもので、デジタル再生時のデータはありません。そこで実測してみましたが、歪はかなり多いです。もし、自作が可能でしたら、本機よりも以下の"トランス式USB DAC"または"FET差動式USB DAC"をおすすめします。明らかに違いますから。


自作 "トランス式USB DAC & FET差動式USB DAC" ・・・難しいことはぬきにして再生中心のリスニング環境をつくる

秋月電子のキットをベースに自作した再生専用のオーディオインターフェースです。トランスのお値段がばかにならないので製作費はかなりかかりますがかけた金額以上の音を出します。「トランスなんか・・・」と思っている人が聞くと、かなりショックを受けるようです。このトランス式のDACはナチュラルで色付けのない音であるため、人によってはそっけない、つまらないと感じることがあるようです。一方で、後述するRMEといい勝負をするという評価もあります。USBにつなぐだけで一発動作し、PC環境はまず選びません。

トランスは只今(2013年)極端な品薄で常に入荷待ち状態です。トランスは古くても、傷だらけでもちゃんと使えるのでオークションで手に入れる方法もおすすめです。私が使ったトランスはすべて処分される放送機器からはずした中古です。

Maximum Rate 16bit/48kHz
Interface USB
アナログ同時録音トラック N/A(再生のみ)
Price 9,000〜21,000円(自作)


STEINBERG "UR-28M" ・・・手軽に本格的なレコーディング&再生環境が構築できる

STEINBERGからはコンパクトなデザインのシリーズがたくさん出ていますが、UR-28Mはその中でもDSP(PCのCPUを使わないで処理する専用プロセッサ)を搭載した最上級モデルで、高機能な上に音が非常に良いです。小さい割には4トラック・レコーディングにも耐えます。これがあればプロ仕様のコンデンサマイクロフォンを使った本格的な録音が可能なミニスタジオができます。

但し、マイクプリアンプは2チャネル分しかないので(後面のキャノン&TRSコンボ端子)、追加チャネルは別にマイクプリアンプを用意してLINE入力(後面のTRSジャック)につながなければなければなりません。DAWとしてCubase AI 6が同梱されており、これがあればかなりのことができます。しかし、プラグインの数や便利機能に制約があるので本気でデジタル編集するのであればCubase 7が必要です。Cubase 7は、並行輸入品で3万円台、正規ルートで5万円台です。

ライン入力はバランス仕様で2系統あり、入力インピーダンスはそれぞれ4kΩと20kΩと低めですので接続する機材によっては上記US-100と同様に注意がいります。出力が3系統もあるのは、レコーディングエンジニアのほか演奏者のための個別モニターができるようにするためですが、リスニングオーディオでこれを応用すると複数のモニター系をコントロールできます。

PCはあまり選びませんので大概のPCで動作します。Celeronはダメっぽいですが(未確認)。後述するRMEよりもわかりやすいので、お勉強を兼ねて初めてPCレコーディング環境を作る人にはこれがおすすめです。

Maximum Rate 24bit/96kHz
Interface USB
アナログ同時録音トラック 4
Price 30,000円〜


STEINBERG "UR-824" ・・・かなり本格的なレコーディング&再生環境が構築できる

UR824はUR28の上記機種で、アナログ8チャネルのマルチトラック同時録音をこなす上にサンプリングレートも192kHzにアップしています。マイクプリアンプが8チャネル分ついていますから、これ1台とPCがあればかなりの規模の録音環境が作れます。こちらも同梱はCubase AI 6ですが、10万円くらい出せばCubase 7付きのセットがあります。

稼働環境は上記UR28と同等です。後述するRMEよりもわかりやすいので、取説読むのが嫌いな人や初めて環境を作る人にはこれがおすすめです。

Maximum Rate 24bit/192kHz
Interface USB
アナログ同時録音トラック 8
Price 70,000円〜


RME "Fireface UC/UCX/UFX" ・・・本気でレコーディング&再生環境を構築したい人へ

お値段はかなりしますが(たぶんRMEはこの種の機材では最も高価)、プロ業務に耐えぬくスペックと性能そして比類ない安定性を誇り、この音を知ってしまうと他には移れなくなります。あまりに機能が充実しすぎている上に難解でついてゆけずに脱落する人も少なくないようで。この種の機材を仕事で使い慣れた方、自力で学習し使いこなせる方限定です。

ミキシングとルーティングは付属のTotalMix-FXで自在に環境が作れます。まずはこれを使いこなすところからはじめたらいいでしょう。DAWソフトの同梱はありませんので、レコーディング後の編集を行うにはCubase7やProTools9など自力でDAWソフトウェア環境を作る必要があります。もっとも、本機を使って録音したマルチトラックをフリーソフトのAudacityに取り込めば自在にミキシングできますので、まずはAudacityで取りかかるのもいいと思います。

しかし、本機だけあればDAWぬきでiTuneなどの再生オーディオ環境は容易に構築できますので、じつはハイエンド・オーディオ・ファンに愛用者がかなりいることも事実です。肝心の音ですが、色付けがなくナチュラルですがしいていえばややソリッドです。同じナチュラル系でもトランス式DACの方がファット感があります。

左側の画像はUCモデルですが、FirewireもOKなUCXの顔も良く似た感じです。実物は、へえ!と思うくらい小さく、こんだけの機能をようやるわと思います。これで8chの高品質のマルチトラック・レコーディングができてしまうので、レコーディングに関しては、2013年現在の私の主力機になっています(つまり、後述するDigidesin MBOX2や002 Rackの後継)。UCXのお値段が高いのは単にFirewireが使えるというだけではなく、こまかいところでUFX同等の機能が盛り込まれているからです。製品の世代的には、UC→UFX→UCXの順。

Fireface UX→ ←Fireface UCX

Fireface UFX→

Fireface UCFireface UCXFireface UFX
Maximum Rate 24bit/192kHz24bit/192kHz24bit/192kHz
Interface USBUSB/Firewire400USB/Firewire400
アナログ同時録音トラック 8812
Price 110,000円〜140,000円〜230,000円〜


AVID/DigiDesign "MBOX2" / "002 Rack" ・・・良き時代のスタンダードとしてご紹介しておきます

 

両方とも私の愛機として大活躍しました(今は完全に引退)。MBOX2は48kHzが上限で、これが出ていた当時ライバルはいずれも96kHzまでOKでしたから、48kHzどまりなこれを買うのには躊躇がありました。しかし、Digidesign特有の腰の据わった手堅い音はしっかり出ています。2Uラックサイズの002 Rackは同時に8chのマルチトラックレコーディングができ、業務使用にも十分に耐えるスペックを持ちます。しかし、使えるPCは選ぶわ、録音中にフリーズするわ、バッファサイズで機嫌を損ねるわでずいぶんと苦労しました。

※DigiDesign社のオーディオ・インターフェースは動作環境について条件がクリティカルで、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを選びます。条件がマッチしないと動作しません。PCは業務要して専用機化して使うことが前提なのでOSのアップデートはできなくします。

MBOX2 002 Rack
Maximum Rate 24bit/48kHz 24bit/96kHz
Interface USB Firewire
アナログ同時録音トラック 2 8
Price OLD Model OLD Model



左:東京文化会館小ホールでの録音(自作マイクプリとMacBookとDigidesign 002Rack)
中:自宅のモニターで編集中(PCはFirewire付の珍しいタイプのThinkPad)
右:フル稼働中のRME UCX(マイクプリ×2台、バックアップレコーダーとしてPMD661)


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