Mini Watters
トランジスタ式ミニワッターPart5 19V版
<Part5のパワーアップ版>

パワーアンプ仕様としたのでボリュームはついていません。
トランジスタ式ミニワッターPart5の電源電圧を15Vから19Vに上げてパワーアップしたバージョンです。回路の基本や主な回路定数はほとんど変更することなく、電源電圧の変化に伴う修正のみを行いました。当初は単純にパワーアップを狙ったのですが、音の深みが増してより耳に心地よくなるという思わぬ副産物がありました。少々手ごわいアンプなので初心者にはおすすめしませんが、トランジスタ式ミニワッターの12V版や15V版で腕慣らしされた方は機会があったらこの音を聞いてみてください。

<関連サイト>

回路の説明および関連記事は以下のリンク先をご覧ください。

→回路の概要と基本部分に関する説明・・・http://www.op316.com/tubes/mw/mw-15v-p5.htm
→回路設計に関するより詳しい説明・・・http://www.op316.com/tubes/mw/mw-15v-p5-report.htm
→2017.5に行った改訂とすでに製作した基板の改修方法の説明・・・http://www.op316.com/tubes/mw/mw-19v-p5-hdist.htm


<19V化における考慮点と課題>

電源電圧を15Vから19Vに上げるということは、

・単純計算で出力電圧が26.7%アップする、
・すなわち出力が1.6倍になる、
・現実には電源電圧利用率も高くなるので最大出力はさらにアップする
というメリットがあります。しかし一方で

・電源電圧が26.7%アップすることに加えて、
・アイドリング時の消費電流が20%ほど増える、
・すなわち全消費電力は50%ほど増加する、
・アンプの総発熱量も50%増える、
ということですから、これをPart4と同じサイズの基板に収めるためには、ひとつひとつの発熱源について丁寧に考察し再設計しなければなりません。しかも、回路方式は変えたくない、部品もできるだけ同じものを使いたい、製作の難易度が上がらないようにしたい、という要求を満たすような設計となるように配慮しました


<パッシブ型のラインコントローラ+パワーアンプ専用機と併用なので>

製作した本機はパワーアンプ専用機であるため音量調整ボリュームやヘッドホン端子はつけていません。プリアンプ機能は別途制作するパッシブ型のラインコントローラで行おうと考えています。パッシブ型のラインコントローラというのは、入力セレクタと音量調整ボリュームだけ構成した電源いらずの利得ゼロのプリアンプのようなものです。もちろん、コントロール機能を分離しないで、本機のケースの中に入力セレクタや音量調整ボリュームを内蔵させてもかまいません。周辺機能は製作者の都合や好みでアレンジしてください。

←DAC付きパッシブ型ラインコントローラの製作例2題。


<回路図(2017.5.23版)>

15V版Part5との大きな違いは、2段目2SA1680が2SA1359に変更されたことと、消費電力の増加に対応していくつかの抵抗器のW数がアップされたことです。回路図の表記は、電源部は左右共通、アンプ部は片チャネル分です。各部の電圧は基板が十分に暖まった状態のものですので、電源ON直後はかなり異なる値になります。電圧表記はアース基準ですが「{ 記号」がある場合は該当する部品の両端電圧です。基板と周辺回路の関係は下図のとおり。(左リックで拡大、右クリックでコピー&ダウンロード)

注意1:回路図中の入力のところにある※120kは、ボリュームを取り付けないパワーアンプ仕様の場合に取り付けます。ボリュームを取り付ける場合は必要ありません。

注意2:2017.5.23の改修で、2SA1359-Yのベース〜コレクタ間のコンデンサ容量を560pFから100pFに変更し、負帰還抵抗(13kΩ)と並列に22pFまたは33pFを追加しました。この変更により高域の歪みを減らすことができました。

基板上の回路とそれ以外の回路の関係は下図のとおりです。下の構成図のうち、ボリューム回路やBass Boostスイッチとヘッドホン出力回路はオプションです。15V版よりも仕上がり利得を上げてあるため、ヘッドホン側のアッテネータの2個の抵抗(8.2Ωと10Ω)の上下を逆にして減衰率を大きくしてあります。

本機のアンプ部をブロック図にすると以下のようになります。

入力部 ・・・ 基本的に15V版と同じですが、音量調整ボリュームを省略したパワーアンプ専用機とする場合は、入力のところの120kΩ(※でマーク)を追加します。

初段増幅回路 ・・・ 回路定数を若干変更しただけで、15V版とほとんど同じです。

次段増幅回路と定電流回路 ・・・ 15V版の差動回路は、コレクタ負荷抵抗を220Ωとし、1本あたりのコレクタ電流は30mAで、コレクタ損失は170mWほどでした。19V版になってもコレクタ負荷抵抗値は変更しませんので、1本あたりのコレクタ電流は40mAくらいに増加し、コレクタ損失は300mW以上になってかなりの熱が出ます。2SA1680の常温(25℃)時のコレクタ損失の最大定格は900mWですから2SA1680を採用したのでは高温になりすぎます。もっと表面積が大きいトランジスタが必要で、入手が比較的容易な2SA1359-Yを採用しました。

次段は、15V版と比べるとコレクタ負荷は変更せずコレクタ電流だけが増加するので、次段単体の利得は増えます。しかし、コレクタ電流が増える上に2SA1359-Yは2SA1680よりもhFEが低いので初段の利得は低下します。総合的にみると15V版と比べて裸利得は同等か若干の低下が生じます。従って、アンプ自体の歪率特性は15V版と19V版ではほとんど変わらないだろうと思います。

位相管理上、ベース〜コレクタ間にコンデンサを入れてあります。初期の設計ではここに470〜560pFを入れていましたが、現在は100pFまで減らしました。減らしたままでは高域が暴れるので負帰還抵抗にも数22pF〜33pFを抱かせることで全体のバランスをとっています。この変更については別途レポートがあります。→「高域歪みの改善と旧バージョンの改修方法

定電流回路の機能については15V版との違いはなく若干の定数を変更しただけですが、このあたり、かなりデリケートなチューニングを行っています。

出力段SEPP回路 ・・・ 出力段はあいかわらずダーリントン接続にしていない1段だけのSEPP-OTL回路で基本回路は15V版と同じです。ダーリントン接続にしなかった理由は安定度の確保と音の好みによるものです。出力段をダーリントン接続にするとドライバ段の設計がとても楽になりますが、一方で高周波帯域での安定度が非常に悪くなります。使用するトランジスタのスペックが少しでも良いと簡単に発振してしまい、どうにも止まらなくなります。1段のままですとどんなトランジスタを持ってきても高い安定が得られます。また、この状態の方が音が良いと判断しました。

アイドリング電流を決定するバイアス用のダイオードは順電圧が少し低い1NU41としました。それでも出力段トランジスタのコレクタ損失は15V版よりも増えてしまったので、放熱器の面積をやや大きくしました。ちなみに、15V版で使用した既製品の放熱器の表面積は約8平方cm×2=16平方cmですが、本機で使用した放熱器の総表面積は21平方cmです。

負帰還回路 ・・・ 最大出力が高くなったことに合わせて仕上がり利得を7%ほど高く設定しました。位相補正の目的で33pF(2SB1375/2SD2012の時)または22pF(2SA1869/2SC4935の時)を抱かせています。この値はクリティカルなので必ず守ってください。

Bass Boost回路 ・・・ 最大出力がアップしたご利益をBass Boost側にもまわして、超低域側のブースト量をわずかに(+1dB)増やしてあります。

電源回路 ・・・ 電源供給電圧を15Vから19Vに上げたことにより、回路定数に若干の修正があります。

プラス・マイナス分割で使用したトランジスタは2SC3422-Yで分圧抵抗は3.3kΩと3.9kΩとしました。電圧は、プラス側とマイナス側がほとんど同じかごくわずかにプラス側が高くなるように設定しています。電源ON時の過渡電流を抑制するリレー回路も基本は変わりません。全消費電流が増加したため、電源に入れたインダクタは電流容量が大きなものに変更しました。そのためインダクタンスは330μHから100μHに減りました。リレーの駆動回路の電圧ドロップ抵抗は470Ωから750Ωに変更です。リレーのディレイ時間は若干長くなりました。


<部品>

2SK170-BL(初段差動回路)は、できるだけバイアス特性が揃ったペアを使ってください。ソース側のバイアス調整ボリューム(10Ω)による調整範囲はめいっぱい回し切っても16mVくらいしかありませんので無選別の2SK170は使えません(※)。BLランクを使用していますが、GRランクも問題なく使えます。
※売られている2SK170からランダムに拾った場合は、同じドレイン電流を流した時のバイアス値は150mVくらいのばらつきが生じるのでバイアス調整ボリュームには100Ωが必要です。そうなると温度特性が揃わなくなるのと、微調整がきかなくなります。2SK170は製造ロットが同じでも特性のばらつきは小さくなりませんので、実測による選別は必須です。なお、ペアと称して市販されているものは本機で要求する精度には遠く及ばないので自力で再選別しない限り使えませんのでご注意ください。
2SA1359-Y(2段目差動回路)は、hFEが170以上のものを推奨します。頒布では190以上のものを選別しています。

2SA950-Y(2段目定電流回路)は、hFEが300前後のものを推奨します。頒布では300±20%くらいのものを選別しています。hFEおよびVBEの精度が定電流特性を決定するので2SA1020や2SA966といった他のトランジスタで代替する場合は、同じ動作条件を与えて検証した上で回路定数の確認が必要です。

2SC3422-Y(電源部)は、hFEが140〜200くらいの範囲のものを推奨します。

出力段の2SB1375/2SD2012は、hFEが180未満のものは避けて、かつ左右で値が揃ったものを使用してください。なお、2SBと2SDが同じに値になる必要はありません。出力段のトランジスタによって物理特性は微妙に変化します。これ以外のパワートランジスタも使えないわけではありませんが、アイドリング電流の調整および高域の位相補正のチューニングが必要になり、それを行うにはSEPP回路および半導体の基礎知識と実験環境が必要になります。

当初採用した2SA1931/2SC4881がかなり前に終了し、2017年にはいって2SA1869/2SC4935も入手不能となって同年4月に頒布が終了しました。後継は2SB1375/2SD2012です。2SA1931/2SC4881や2SA1869/2SC4935がいずれなくなることはわかっていたので、かなり前から2SB1375/2SD2012を使ったバージョンを製作し私の手元で使って検証してきました。使用するトランジスタによって100kHz以上の帯域の挙動が異なるので、位相補正コンデンサの定数に微妙な違いがあります。

FETおよびトランジスタのリード線の接続は下図のとおりです。いずれも下から見た図(bottom view)です。たとえば、2SK170の場合は、印字面に向かって左からドレイン(D)〜ゲート(G)〜ソース(S)の順になります。2SA950、2SA1359、2SC3422は、印字面に向かって左からエミッタ(E)〜コレクタ(C)〜ベース(B)の順ですが、2SB13785/2SD2012や2SA1869/2SC4935は左右が逆になります。この左右を間違えることが非常に多いので注意してください。

2SK170 2SA950
(図面よりも高さが低い)
2SA1359, 2SC3422 2SB1375/2SD2012
2SA1931/2SC4881
2SA1869/2SC4935

ダイオード、LED・・・出力段のバイアス用には、順電圧がUF2010よりの低めの1NU41が適しますが、放熱器の面積が25平方cm以上を確保できるのであればUF2010も使えます。頒布では1NU41の中でも順電圧が近いものを4個選んでいます。1N400Xシリーズや10DDA10などの1Aタイプでは、出力段のアイドリング電流が多くなりすぎるので使えません。PS2010RやPG2010も使えません。

1NU41は順電圧にかなりのばらつきがあるので、可能であれば順電圧が近いもので左右ペアを組むことを推奨します。2本直列にして使いますから、2本の合計値が近ければ十分です。順電圧の測定は、ダイオードモードがついているデジタルテスターで測定すれば足ります。順電圧は温度が1℃変わるだけで0.002Vも変動してしまうので、測定時には指の熱が伝わらないように、エアコンの風が当たらないようにしてください。

定電流回路の1S2076Aは精密な順電圧が求められますので他のダイオードでは代替できません、必ず1S2076Aを使ってください。

LEDは、一般的な赤・橙・緑あたりを想定して約4mAで点灯するように設計してあります。明るさは4.3kΩの増減で調整できます。製作で使用したのはおなじみのスタンレーのPG3889Sです。何年も前に製造中止になりましたが若干の手持ちがあるので頒布しています。

(注)本機で使用する半導体類はすべて頒布があります。

抵抗器、コンデンサ、インダクタ・・・抵抗器は、回路図においてW数の記載のないものは1/4W型、それ以外は指定のW数のものを使ってください。0.47Ωおよび0.68Ωは1/2Wで十分なのですが、小型のカーボン抵抗や金属皮膜抵抗は1Ω未満がないので酸化金属皮膜抵抗の1W型を使っています。

フィルムコンデンサは、耐圧50V程度のポリエステル(マイラー)の通常タイプです。積層セラミックコンデンサは、電源回路と位相補正回路で使っています。電源回路の(10μF)は品種を問いませんが、位相補正用(22pF or 33pF)は印加した電圧によって容量が変動しないCHタイプまたはNPOタイプを使ってください。ディップマイカ・コンデンサもOKです。アルミ電解コンデンサはサイズがコンパクトな通常品を推奨します。オーディオ用として売られているものはサイズが大きいので基板スペースに入りきれませんし、ナチュラルな音にならないものが多く通常品がよろしいかと思います。アルミ電解コンデンサおよびインダクタのサイズの制約は以下のとおりです。

定格直径
100μF/10V〜16V6mm以下
220μF/10V〜16V6mm以下
2200μF/16V13mm以下
3300μF/16V13mm以下
47μH〜100μH/1.2A以上/DCR<0.4Ω13mm以下

インダクタは100μH/1.2Aタイプで11mm径のものを使用しましたが、47μH以上で電流容量が1.2A以上あり、直流抵抗が0.3Ω以下であれば問題なく使えます。電流容量が少ないと過熱して焼き切れます。

リレー・・・必要なディレーを発生させるために、消費電流が少ない高感度型で9Vタイプのものを使用しました。秋月電子で扱っている「941H-2C-9D」が該当します。(頒布あり)

リレーの内部接続は右図のとおりです。コイルのDC抵抗値は冷却時で540〜570Ωくらい、動作時では590〜620Ωくらいに上昇します。8V〜9Vで確実に動作し、消費電流は14〜16mAしか必要としない高感度タイプです。本機では8.5Vくらいで動作させています。接点は2系統あるのでこれを並列にして使い、信頼性を高めています。

12Vタイプの「941H-2C-12D」も使用可能ですが、その場合は電圧ドロップ抵抗を750Ωから620Ωに変更してください。

放熱器・・・放熱器は自作と市販品の2パターンあります。自作では、ホームセンターで普通に売られている2mm厚・30mm幅・90cm長のアルミ材を70mmの長さに切って(面積は20平方cm以上)トランジスタの取り付け穴を開けたものを使いました。また、基板の取り付けネジが当たらないように、一方の隅をやすりに当ててナナメにゴシゴシ削ってあります。市販品は画像のとおりのもので、3mm高のスペーサを介して基板から立ち上げています。

線材・・・本機で使用したビニル線材は0.18sq(AWG24相当)です。0.2sqよりも太い線材を使うと、太すぎてラグ穴に入らない、ハンダ不良が生じやすいなどの問題が生じて仕上がりの品質が落ちます。(頒布あり)

平ラグの穴と穴とつなぐジャンパー線は、流れる電流の大きさを考慮して0.28mm径と0.35mm径を使い分けました。0.28mmの銅線は0.062sq、0.35mmは0.096sq相当です。ポリウレタンなどの表面処理をしていない銅線が適します。この銅線はホームセンターやamazonで扱っています。(頒布あり)

ACアダプタ・・・使用したのは、秋月電子通商のDC19V/2.64Aタイプです。(頒布なし)

ケース・・・ケースは、タカチ製HEN110520(pdfカタログ)を使用しました。サイズ(外形)は、幅11.15cm、高さ5.47cm、奥行き20cmです。図面だけで設計すると失敗するので、必ず部品の現物を当ててからレイアウトを決めてください。秋葉原では、奥澤エスエス無線で購入できます。両店ともに電話orFAX一本で地方発送をしてくれます。(頒布なし)


<部品の頒布>

自作アンプですので、どんな部品を使い、どのように作るか、追加変更も全く自由です。しかし、地域によっては部品の入手が困難ですし、たとえ秋葉原が近くても同じ部品を買い揃えるのは困難です。本製作で使用した部品のうち、ACアダプタおよびケース以外のすべての部品は頒布がありますので気軽にご利用ください。2017.5.23の改訂に伴う位相補正コンデンサも確保しました。

部品頒布ページ → http://www.op316.com/tubes/buhin/buhin.htm

<製作>

製作手順は以下のようにしたらいいでしょう。

  1. ユニバーサル基板・・・パターンのチェック・・・回路図と実際の配線のは見た感じはかなり異なるものです。本サイトの基板パターンで製作する場合は、いきなり基板パターンを見て作るのではなく、どんな基板パターンなのなかを学習してください。基板パターンを追ってそこから回路図を起こしてみる方法をおすすめします。おそらく、回路図とは似ても似つかない場所に部品が配置されていてびっくりされるでしょう。基板パターンの間違いが発見されることもあります。考えているうちにもっと良い基板パターンが思いつくこともあります。ですから、基板パターンからの回路図の逆作成は必ずやってください。

  2. タカスのユニバーサル基板の使い方はこちらに重要な解説があります。ユニバーサル基板の一般的な使い方とは考え方が異なりますが、この基板パターンで製作する時に必要な知識であり、さまざまなメリットがあるので必ずお読みください。
  3. ユニバーサル基板・・・ジャンパー線の取り付け・・・ユニバーサル基板では、パターンをつなぐ線は銅箔がある下側に這わせるのが普通ですが、本機では上側を這わせています。こうすることで、実装密度を高められる、接触導通が良くなる、間違えた時のやり直しや部品の交換が容易・・・といったメリットが出ます。ジャンパー線には細めの0.28mmおよび0.35mm径の銅線を使います。これを「コの字」型にしたものを基板の上から差し込んでからホチキスの針のように下側で折り曲げて固定します。最初にこの作業をやっておけば、あとは半導体やCR類は上から差し込んでどんどんハンダづけするだけで完成してしまいます。半導体やCR類は下側で折り曲げませんので、作業性が良いだけでなく、間違えた時の交換も非常に簡単です。

    下図の赤い線で囲んだ範囲は電源部のみのパターンです。±電源のトランジスタ(2SC3422など)は印字面側に「←」を記入してあります。このパターン部分だけ作成して電源部の単体テストをやってから先に進んでください。

    流れる電流が大きくないところは0.28mm径の銅線を使い、出力段およびアースの大電流が流れるところや低いDCRが望ましい部位には0.35mm径または0.28mm径を2本重ねとします。その部分は線を2本で表記してあります。

    注意:下図は2017.5.25に書き直したものです。まだ新しいのでちょっとした間違いが残っているかもしれません。

  4. ユニバーサル基板・・・ジャンパー線のハンダづけ・・・ハンダごては20〜30Wくらいのセラミックヒーター式で、こて先は円錐状にテーパーした標準タイプを推奨します。細かい基板作業ですのでハンダは標準(1mm径)よりも細め(0.8mm以下)の方が作業性が良いです。ジャンパー線を通した穴には、ジャンパー線しか通さない穴と、ジャンパー線だけでなく同じ穴に後から半導体やCR類のリード線も同居する穴の2種類があります。ジャンパー線しか通さない穴は早い段階でハンダづけできますが、ジャンパー線と部品のリード線が共存する穴はハンダづけのタイミングに注意してください。

  5. ユニバーサル基板・・・電源部の半導体やCR類の取り付け・・・次の電源単体のテストを視野に入れて、電源部の半導体やCR類を基板に取り付けてハンダづけします。本機の製作方法では、リード線は一切折り曲げずにまっすぐのまま穴に通してハンダづけできます。ほとんどの抵抗器は立てて取り付けますが、他の部品と当たらないように下の画像を参考にしながらひとつひとつ向きを考えてください。

  6. ユニバーサル基板・・・電源部単体テスト(重要)・・・暫定的に電源部とACアダプタをつないで単体テストを行っておきましょう(右画像)。これがOKになっていれば安心してアンプ部のテストができます。もし、アンプ部に配線ミスがあっても電源は正常だとして自信をもってトラブルシューティングができます。このテストをやらずに一気にすべてを組み上げてから動作の異常に出遭っても、一体どこが間違っているのかまず発見できません。

    ・アースの導通確認・・・アースの各ポイントが相互に導通(ほぼ0Ω)があるかどうかチェックします。
    ・通電テスト・・・ACアダプタを取り付け、アースを基準にして、プラス・マイナスそれぞれの電源電圧が±約9.5Vであることを確認します。回路電流がまだ少ないので電圧はACアダプタの電圧とほぼ同じになります。なお、プラス側とマイナス側の電圧が厳密に同じになる必要はなく、許容範囲は3%くらいあります。
    ・通電テスト・・・2SC3422と270Ω2Wがともに熱を持っていることを確認します。
    配線ミスなどで電源回路に過大な異常電流が流れてACアダプタの過電流保護回路が作動すると、電源電圧が上がったり下がったりを繰り返します。ACアダプタの電流容量が足りなくても同様の現象が起きます。
    このテストを省略した場合は、掲示板でのサポートは困難ですのでご注意ください。
  7. ユニバーサル基板・・・アンプ部の半導体&CR類の取り付け・・・立てて取り付ける抵抗器は、一方が胴体でもう一方がリード線ですから場所の余裕を考えて向きを決めます。適当な向きに取りつけてゆくと部品と部品が当たって入らなくなります。部品はすべて表面が絶縁されているので接触しても問題ありませんが、熱くなる部品の実装には若干の注意がいります。発熱部品の扱いは以下の通りです。

    ・2SK170・・・平たい面同士を密着させて2液混合タイプのエポキシ系ボンドで貼り付け、熱結合させる(右画像)。リード線は短くし過ぎると取付時に融通がきかなくなるので長めにしておく。
    ・2SB1375/2SD2012(2SA1869/2SC4935、2SA1931/2SC4881)・・・リード線が太くなっているところまで深く差し込んで取り付ける。リード線は基板裏側から1〜2mm程度が出るくらいに切ってしまった方がハンダの乗りが良い。放熱器は他の部品と接触しないように。
    ・2SA1359と2SC3422・・・リード線をやや長めにして基板や周囲の部品から離す。
    ・2SK170のゲートとつながる2.2kΩは2SK170に近い側に立てる。
    ・220Ω2Wと270Ω2W・・・かなり熱くなるのでリード線をやや長めにして基板から離す。
    ・1NU41・・・温度制御のセンサーなので基板から浮かさないでできるだけ密着させる。
    ・エミッタ抵抗の0.68Ω1W・・・画像のように取り付ければエミッタ側が上になるのでアイドリング電流の測定がしやすくなる。
    ・0.47Ω1W、0.68Ω1W・・・いずれも熱を出さないので周囲の部品と接触してもかまわない。
    ・コンデンサ・・・アルミ電解コンデンサもフィルムコンデンサも熱に弱いので発熱部品と接触させない。
    ・抵抗器・・・抵抗器自体は熱に強いので気にしなくてよい。
    ・Bass Boostスイッチへの線材を通す穴はハンダづけして埋めてしまわないように注意。
    4個の1NU41の向きを1つでも間違えた状態で電源ONすると、パワートランジスタに大変な過電流が流れて壊れますので取付けの向きはしっかりチェックしてください。慎重を期する場合は、左右片チャネルごとに動作試験をしながら作業を進めるのがいいでしょう。

    下図は全体のパターンです(最新2017.5.25改良版)。パワートランジスタは印字面側に「←」を記入してあります。2SA1869/2SC4935と2SA1359/2SC3422は、印字面に向かってBCEの順序が逆なので注意してください。「120k」はボリュームがないパワーアンプ仕様の時のみ取り付けます。

    下の画像は改修前のものなので、Bass Boost回路周辺が古いままです。

    F列にある入力側のアースポイントは、ジャンパーで引き出している点に注意してください。この改良版の基板パターンは、スピーカーを駆動する信号の流れを見直して不要な回り道をなくし、共通インピーダンスによる左右チャネル間クロストークの低下を回避しています。短ければいいわけではなく、太くしても効果は知れており、1点アースは不可能、どこをどう通るかがキモです。何が問題で何がどう変わったのかについては「基板パターン改良レポート」をご覧ください。

    下のパターン図と画像は1つ前のバージョンです。位相補償の部分が変更になっていますが、前のバージョンのままでも改修可能です。

    ←高域歪みを改善する前のバージョン

  8. 自作放熱器を使った場合・・・出力段トランジスタはラバーシートを挟んで放熱器を取付けます。ラバーシートのかわりにシリコングリスを塗布してもかまいません。手順としては、先に出力段トランジスタを基板にハンダづけし、後で放熱器を取り付けた方がいいでしょう。

    放熱器は、ホームセンターで売っている幅30mm、厚さ2mm、長さ900mmのアルミ棒材を70mmの長さに切って自作します。表面積が20平方cm以上あれば足りますので形状は問いません。

    放熱器の取り付け穴の間隔は28mmくらい、下端からの高さは13mmくらいになります。穴の位置はトランジスタを基板に取り付けてから、実際の寸法を確認して決めるのが正解です。放熱器の角が基板を取り付けるビスの頭やナットに当たるので、やすりで斜めに削ってあります。

  9. 市販放熱器を使った場合・・・本機では市販の「E」型の放熱器も使えます。但し、放熱フィンが基板からはみ出ますので、タカチのHENシリーズのケースを使うと、RK27タイプなど普通の大きさのボリュームのためのスペースが得られません。出力段トランジスタはラバーシートを挟んで放熱器を取付けます。ラバーシートのかわりにシリコングリスを塗布してもかまいません。

    まず、基板側に取り付けるためのビス穴を2つずつ開けます。穴の位置は、トランジスタの足穴から6〜7mmの距離で、2つの穴の間隔は10mmです。穴の位置は基板の端すれすれなので油断すると基板を欠いてしまいます。少し余裕を持たせて6〜6.5mmくらいのところに開けておき、トランジスタの足を心持ち内側に曲げて取り付けた方が安全です。放熱器は2〜3mm高のスペーサリングで放熱器をすこし持ち上げて、8〜10mmのビスで取り付けます。トランジスタの足のハンダづけは最後に行います。

  10. ユニバーサル基板・・・アンプ部のテスト・・・片チャネルの実装ができた段階でテストしておくことをおすすめします。

    このテストでは、(1)配線に誤りがないことと回路が正常に動作することと確かめることから始まって、(2)温度的にどんな振る舞いをするかを確かめるところまでを行います。(1)については、通電して各部の電圧が大体合っていればOKです。(2)については温度が重要なので、ケースと同じか少し大きいくらいの紙箱に基板を入れて細めのすきまをつけた状態(ケースに入れたのと似た状態)で通電し、時間をかけて基板全体に熱がゆきわたるようにして測定します。

    ・最初に、±電源の電圧も確認して±9.3V前後を維持していることも確認します。プラスマイナスほぼ同じか、プラス側の電圧の方がほんのわずかに高いくたいだと思います。出力トランジスタはかなり熱を持ちますので、放熱器は長い間手で触っていることができないくらいの温度になります。±電源の2つの電圧がかけ離れている、放熱器が熱くならない、といった場合は配線ミス、ジャンパーの欠落、ハンダし忘れがあると思います。

    DCオフセットの確認・・・続いて「アース」と「スピーカー出力」との間にDCVレンジのテスターを当ててDCオフセット電圧を確認します。無調整の状態で±0.01V以内に落ち着いていればアンプ部全体のDC動作および負帰還の状態はほぼ正常とみていいでしょう。±0.05V以上の電圧が出た場合は重大なトラブルの可能性が大きいのですぐに電源を切ってください。

    アイドリング電流のチェック・・・出力段の両エミッタ間(0.68Ω×2個分)の電圧が測定できるようにDCVレンジのテスターを当てて電源ONします。電源ON直後のアイドリング電流の初期値は180mA±40mAくらいなので、両エミッタ間の電圧は0.25V±0.05V(すなわち)になり、出力段トランジスタが暖まるにつれて上昇が続き、やがて基板が温まって近くにある1NU41に熱が伝わるようになると時間をかけて徐々に下がってきて150mA±35mA(すなわち0.2V±0.05V)あたりで落ち着きます。この値は各部品のばらつきによるものなので、左右で同じにはなりませんし、この値と同じでなくても問題ではありません。しかし、0.4Vよりも高い場合は異常電流が流れていますので、電流値を素早く読み取って電源を切ってください。

    ・最後に、DCオフセット電圧をある程度追い込んでおきましょう。10Ωの半固定抵抗器をまわすとDCオフセット電圧がすこしずつ変化しますので、3mV以内になるように仮調整しておきます。半固定抵抗器を回してから電圧が安定するまでにしばらく時間がかかります。

    ・回路内の電流および電圧は気温でゆるやかに変化し一定ではありません。測定結果が許容範囲内にあるならばあまり神経質にならないことです。基板をケース内に入れたらDCオフセットは変化しますから、今追い込んでも意味がありません。また、数mV程度のDCオフセットが生じていてもスピーカーに悪影響を与えることは全くありません。

  11. 穴あけ加工する。(参考ページ・・・http://www.op316.com/tubes/tips/k-hole1.htm
    1. ケースに実際の部品や基板を当てて位置決めをするのが確実です。頭で考えて製図だけで決めるとバランスが悪かったり、部品同士が当たってしまったりして失敗しやすいです。
    2. パネルは傷がつきやすいのでテープを貼るなどして養生すること。(前面パネル面に見苦しい傷がついたら泣きますよ)
    3. 下の画像は音量調整ボリュームをつけなかった本機のケース加工の様子です。底面の通風口は中央に集め、上面の通風口は放熱器の真上に開けてあり、中央底面から入った空気が基板の周囲を巡ってから放熱器のところで上に抜けるようにしてあります。上面の穴の径は7mm、底面の穴の径は8mmですが、底面側はもう少し大きい方が良さそうです。最終的に底面側の穴を10mmに広げたところ、ケースの暖まり過ぎ感が収まりました。基板の固定とゴム足のための穴は全部で6つです。配置の都合で前方の2個は基板用固定とゴム足用を兼ねています。

  12. ボリューム関係の加工(オプション)・・・ボリュームシャフトを適当な長さに切断します。密閉されていない構造のボリュームのシャフトを切る場合は、切屑が内部に入らないように注意してください。ツマミ穴の内側にバリが出てシャフトがスムーズに入らない場合は、細い丸やすりで内側を削って通りを良くします。ボリュームへの配線は、端子側に長めに切った配線材をつなぐ下処理をしておくと後が楽です。

  13. 組み立て配線の下準備=線出し・・・基板や部品を取り付ける前に、線材をつなぐ下準備をしておきます。基板から出る線材はすべて先に基板側につないでおかないと話になりません。音量調整ボリューム、DCジャックなど、部品を取り付けてからでは配線しずらいものも先に線材をつないでおきます。線は捻じると短くなってしまうのでけちけちしないで十分に長めにします。

  14. ヘッドホンジャックの下処理(オプション)・・・本機の音をヘッドホンでも鳴らせるようにする場合は、スピーカーとの切替えスイッチをつけたヘッドホンジャックを追加します。ヘッドホン出力には抵抗器2本によるアッテネータを割り込ませてスピーカーとの音量感を揃えますが、その抵抗器はヘッドホンジャック側に取り付けます。この時、パネルに実装した時に周囲のスイッチ類に当たってしまわないようにスペースの空き具合をチェックします。左右の区別がわかりにくいのであらかじめジャックにL/Rを書き込んでおくと迷うことがありません。なお、画像についている抵抗器のカラーコードは本機と同じではありません。

  15. 構造部品および基板の取り付け
    1. ボリューム(オプション)、LED、電源スイッチ、BassBoostスイッチ、スピーカー端子、入力RCAピンジャック、DCコネクタをパネルに取り付ける。
    2. LEDは、エポキシ系の充填性のあるボンドでパネル裏側から固めてしまう。リード線が長すぎるので切断することになるが、同じ長さに切ってしまうとどちらが「+」なのかわからなくなる。切る時は元の長さを参考にして「+」側が長くなるようにしておく。
    3. ボリューム(オプション)のシャフトがパネルと電気的に接触して導通していることを確認する。(導通がないとノイズが出る)
    4. スペーサを使って基板をシャーシに取り付ける。

  16. アースラインについて
    1. アースライン1・・・入力のRCAジャック〜基板入力間も1本の線でつなぐ。
    2. アースライン2・・・基板出力〜スピーカ端子間は左右に分けて2本とした。

  17. 配線を仕上げる。
    1. 取り付けた部品間の配線を仕上げる。
    2. すべてのアース間で導通があり、ケース各ユニットとも導通していることを確認する。ケースのアルマイト処理面は導通がありませんが、切断&加工面は導通があります。前後パネルを固定するビスを強めに締めることで、上下&前後のケースユニットが互いに導通するようになります。

      ←この画像の基板は初期バージョンのものです。


<確認と調整>

電源電圧の変動について

本機は、19Vを最適値として、18.5V〜19.5Vの範囲の電源電圧に合わせて設計してあります。19Vからかけ離れるほど所定の性能が出なくなります。特に高い電圧では、性能が劣化するだけでなく部品の温度が許容値を超えてしまうのでおすすめしません。

各部の電圧

回路図内に書き込んだ各部の電圧は、基板をケース内に組み込んでしばらく動作させ、基板全体が温まった時の値です。室温が低い状態でケース解放で測定すると、表記から少々ずれた値になります。

回路図と基板のチェックポイント

基板実装における抵抗器の向きには、電圧チェックや調整がしやすいような仕掛けがあることに気がついたでしょうか。対応するポイントを、回路図と基板画像の両方にカラーマークを入れてあります。

この回路図および基板パターンは高域歪み改善以前のものです。

DCオフセット調整

「最終的なDCオフセットの調整」では室温および回路周辺の気温に注意しますです。寒くなっても暑くなってもDCドリフトが小さくなるためには、中間的な気温で調整しておくのがベストですので、まず基準となる室内の温度を決めて室温が一定になるようにエアコンなどをセットします。アンプ内の温度は室温よりもわずかに高めになりますから、室温をやや高めに設定した状態で調整しておくといいでしょう。

本機をケースに入れて通常の空気の流れになるようにして電源を入れ、1時間程度放置してアンプ全体の温度を落ち着かせます。DCVレンジにセットしたデジタルテスターで「アース〜スピーカー端子間」の電圧を測定し、電圧が1mV以下になるように半固定抵抗器をまわして調整します。しばらくすると電圧が動いてきますので再度調整し、これを何度か繰り返します。廉価なテスターですと1mV以下の電圧が測定できないものがあります。その場合は0〜3mVくらいの範囲に入っていればよしとします。アナログテスターは鈍感すぎて十分な調整ができませんので、必ずデジタルテスターをご用意ください。

出力段のアイドリング電流の監視

出力段のアイドリング電流は、両エミッタ間すなわち0.68Ω×2本分の電圧を測定して、その結果を0.68×2=1.36で割って計算で求めます。本機にはアイドリング電流の微調整機能はつけていません。アイドリング電流は1NU41と出力段のトランジスタ2SB1375/2SD2012(2SA1869/2SC4935)の相性および気温、冷却の状態などで変化し一定ではありません。電源ON直後の電流はかなり多いですが、時間をかけて徐々に減りやがて安定します。ダイオードおよびトランジスタの個体差があるため、アイドリング電流は110mA〜170mAくらいの範囲(0.68Ω×2の両端では150mV〜250mV)でばらつきますが十分に許容範囲です。

ダイオードの順電圧が高いほど、パワートランジスタのhFEが高いほどアイドリング電流値は大きくなります。できるだけ左右でばらつきが少なくなるように順電圧で選別したダイオード、hFEが揃ったトランジスタを頒布していますが、それでも左右で揃うわけではありません。アイドリング電流のこの程度の違いはさしたる問題ではありません。

温度上昇とデバイス間の熱結合について

半導体回路では、回路を構成するいくつかの半導体を熱的に結合(要するに密着)させることで温度特性を安定させるという方法をとります。本機では、初段の2SK170のみ厳密な熱結合をさせており、出力段は基板への伝導熱と周囲温度の変動によるゆるやかな結合にとどめています。

トランジスタは温度が高いほどhFEが高くなるのでアンプとしての特性は良くなります。本機では出力段トランジスタの温度上昇を計算にいれて設計してありますので2SA1359や出力段トランジスタの冷やし過ぎは禁物です。

本機の各部の温度は以下の通りです。

・ケースの温度・・・周囲温度+15℃±3℃
・ドライバ段2SA1359の表面温度・・・周囲温度+40℃±5℃
・出力段トランジスタの表面温度・・・周囲温度+40℃±5℃

周囲温度(室温)が25℃の時に、トランジスタの表面温度は60〜70℃になります。人の指にとっては触っていられないほど熱く感じますが、半導体にとってはそんなに高い温度でもありません。

実験してみよう

本機は、半導体アンプの温度的な性質を理解するための格好の教材でもあります。動作中の各部の電圧を測定しながら、エアコンやドライヤーなどを使ってアンプの各部に冷風や温風を当ててみてください。半導体というものがいかに温度によって特性が変化しやすいか、本機がどのようにして温度的な安定を確保しているのかが体験できます。


<特性>

以下の内容は最新です

測定結果は以下のとおりです。本製作機は試作機よりも低雑音、低歪みとなりました。

  • 利得: 6.2倍(8Ω負荷、1kHz)
  • 最大出力(2SB1375/2SD2012の時): 2.6W(THD=1%、8Ω)、2.8W(THD=1%、4Ω)。
  • 最大出力(2SA1869/2SC4935の時): 2.9W(THD=1%、8Ω)、3.3W(THD=1%、4Ω)。
  • 消費電流(2SB1375/2SD2012の時): 無信号時=約0.6A±20%、最大出力時=約0.79A±10%(8Ω)、約1.1A±10%(4Ω)at DC19V。
  • 消費電流(2SA1869/2SC4935の時): 無信号時=約0.55A±20%、最大出力時=約0.81A±10%(8Ω)、約1.15A±10%(4Ω)at DC19V。
  • ダンピングファクタ: 85〜105(8Ω負荷、10Hz〜20kHz)
  • 残留雑音: 25μV(帯域80kHz)
  • DCドリフト: 2mV以下(周囲温度変化10℃あたり)
<2SA1869/2SC4935の場合>

周波数特性および歪み率特性はご覧のとおりです。黒線が旧版、青線が新版です。水色はボツになりました。

新版では、10kHzにおける歪率特性が改善されています。

←新版(準備中) / 旧版→

8Ω負荷に対するDF特性は下図のとおりです。概ね90くらいです。

<2SB1375/2SD2012の場合>

周波数特性および歪み率特性はご覧のとおりです。黒線が旧版、青線が新版です。水色はボツになりました。旧版では高域側の減衰特性が素直でないためオーバーシュートが出ました。新版では肩のカーブを見直したことで素直な減衰特性になり、方形波応答は申し分なくきれいです。

新版では、10kHzにおける歪率特性が改善されています。2SB1375/2SD2012は、コレクタ電流が少ない領域ではhFEが非常に高くなり、大電流領域ではhFEが低下します。そのため、小出力では低歪みとなる一方で最大出力は2SA1869/2SC4935の時よりも低くなります。なかなか魅力的な音がするトランジスタです。

←新版 / 旧版→

8Ω負荷に対するDF特性は下図のとおりです。100くらいです。2SB1375/2SD2012は2SA1869/2SC4935よりもhFEが高めなのがこの数字に現れたのではないかと思います。もっとも、ダンピングファクタは10以上になるとその数字が持つ意味はほとんど失われますので、数字の優劣を議論するのはナンセンスです。

消費電流は以下のとおりです。片チャネルは電源部を電源部を除いたアンプ部のみの消費電流で、全体は両チャネル+電源部の総消費電流です。

左右チャネル間クロストーク特性は最初に製作&発表した基板パターンと改良版の基板パターンとではかなり異なります。100Hz以下ではほとんど同じですが、100Hzより高い周波数帯域では10dB以上改善されました。何が問題で何がどう変わったのかについては「基板パターン改良レポート」をご覧ください。

初版→←改良版


<感想など>

15Vバージョンと比べると電源ON時のポップノイズが少し大きくなりました。実用的には全く問題ありませんが。15V版はほとんど発熱しない印象でしたが19V版ははっきりと発熱を感じます。放熱用の穴を多目に開けたつもりでしたがこの状態でケースの温度は15V版よりも高くなり、全体にホカホカしてきます。

音はこころなしか見通しが良くなったような気がします。オーディオ回路は、電源電圧を高くするとそれだけで音が変化することがありますが、そういう効果が少し出たのかもしれません。パワーアップははっきりと実感できます。もはやミニワッターではなく、一人前のパワーアンプと言っていい領域に入ってきました。そうは言ってもたかだか3〜4Wのアンプですから爆音は無理です。

* * *

完成して二ヶ月が経ちました。
投入したコンデンサ容量は15Vと同じですがローエンドの出方に余裕があります。不思議です。
製作初期の粗さが取れてすっかり大人の音になりました。
我が家のメインシステムに格上げです。

* * *

2SA1869/2SC4935はかなりの数量を確保していたのですが、多くの方に頒布したためついに底が尽きました。2SA1869/2SC4935の後継は2SB1375/2SD2012です。2SA1869/2SC4935が尽きるのは時間の問題だっただめ、かなり早くから2SB1375/2SD2012を使ったものを製作して手元で使っていました。良く聞き込むと微妙な違いがあります。

* * *

2017年5月に抜本的なリチューンを行いました。全帯域にわたって雑味がとれて、より深い味わいが出ました。物理特性的には高域側が変わっただけですが、ローエンドの迫力が増したのは思わぬ効果です。小型スピーカーをBass Boostなしで良く鳴らします。



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