Mini Watters
6DJ8全段差動プッシュプル・ミニワッター2014
<応用バージョン>



重要:
参考のために設計図面を公開しますがまだ正常動作していません。
おそらく回路設計上の問題があると思います。
試作回路では、MHz帯での複雑な発振が起きて凍結状態です。
この様子ですと、当分解決しないと思いますよ。

<改良の余地はないか・・・A2級動作の検証>

動機についてはこちらの冒頭部分 → http://www.op316.com/mw/mw-6n6ppp-2014.htm
実験データと詳しい解説はこちら → http://www.op316.com/mw/mw-a2-class.htm


<初段の改訂>

2SK30Aのまま若干の修正

6N6P全段差動ppミニワッターは裸利得がぎりぎりで余裕がないという制約がありましたので、初段をgmが高い2SK117に変更しました。6DJ8全段差動ppミニワッターは6DJ8のμが高いおかげで利得についてはあまり問題がありませんので、初段は2SK30Aをそのまま使います。

エミッタフォロワを追加(後述)することで、出力段の入力容量のミラー効果による高域側の帯域問題が解消します。そのため、初段のドレイン負荷を16kΩ〜18kΩから20kΩに変更して利得を1〜2dBアップさせました。

2SC1815によるエミッタフォロワの追加

出力段をA2級でドライブする方法にはいろいろありますが、真空管式ではカソードフォロワ、トランジスタであればエミッタフォロワを使うのが一般的です。ミニワッターの小さなシャーシではこれ以上真空管を乗せる場所はありませんし、グリッド電流の供給能力ではトランジスタの方が圧倒的に優れているので、トランジスタによるエミッタフォロワを使うことにします。想定されるグリッド電流の最大値は数mA程度ですし、初段の電源電圧は40V以下なので、2SC1815あたりの小型汎用トランジスタで十分です。但し、hFEは高い方が有利です。エミッタフォロワには多くのコレクタ電流を流しておく必要はなく、本機ではわずか0.5mAです。この電流を欲張っても効果がないばかりか、初段電源の消費電流が増えて電源回路の余裕がなくなります。

初段および出力段のロードラインは以下のとおりです。


<出力段の変更>

6DJ8のプレート電圧は135Vくらい、プレート電流は10mAよりも少しだけ多め、負荷インピーダンスは14kΩで基本バージョンと同じです。出力段の変更はたった1個所、両グリッドに入れる発振止め抵抗値を3.3kΩから1kΩに変えたことのみです。


<負帰還回路は変わらず>

負帰還回路の変更はありません。Bass Boostについても変更なしです。


<電源回路の改訂>

高圧電源部(出力段用)

基本バージョンと同じです。但し、基本バージョンの高圧電源部は2014.1にマイナーチェンジをしており、リプルフィルタ回路の180kΩを100kΩに変更しています。

低圧電源部(初段用)

6N6P全段差動ppミニワッターでは低圧電源部は全面的に変更しましたが、本機では回路方式は変えずに回路定数の変更のみで済ませました。初段を変えずに2SK30Aを使えたのがその理由です。但し、電圧および供給電流量が増加しましたので、ツェナダイオードを変更し、ブリーダー電流を増やしてあります。


<全回路>

本機の基本部分の全回路です。ラフスケッチ段階の回路図ですので、入力端子から音量調整ボリュームまでと、ヘッドホンジャックまわりの回路、そしてAC100Vまわりの回路が省略されています。回路図は、クリックで拡大します。



<使用部品>

これまでのミニワッターで使用した部品や頒布可能な部品だけで構成されており、特殊な部品は使っていません。

電源トランス・・・春日無線変圧器製のH17-04211を使います。この電源トランスは本機の製作用に特注したものですが、誰でも購入することができます。整流出力特性の実測データがこちらにあります。

出力トランス・・・春日無線変圧器製のKA-14-54Pを推奨します。14kΩという高1次インピーダンスの出力トランスとして抜群の性能を持ちます。

シャーシ&ケース・・・ミニワッターのために特注で作っているものです。当サイトで頒布しています。詳しくはこちら(http://www.op316.com/tubes/mw/mw1-box.htm)をご覧ください。

6DJ8/ECC88・・・出力段真空管。真空管ショップまたはオークションで入手できます。6DJ8にはほとんど同特性の球として、6922、7308、E188CC、6N23Pなどがあり、いずれも使えます。ヒーター電圧が7Vですが7DJ8、PCC88も同特性です。真空管の頒布はありませんので自力調達してください。

2SK30A-Y・・・初段差動回路。選別ペアが必要です。2SK246-Yも使えます。製造中止になったため入手が困難になりつつありますが、ストックがありますので頒布しています。

2SK30A-Y・・・初段定電流回路。選別が必要です。2SK246-Yも使えます。ソースとゲートをつないで定電流ダイオードにして使います。IDSSの値が1.87mA±0.05mA*あるいは1.95mA±0.05mA**のものを選別します。製造中止になったため入手が困難になりつつありますが、ストックがありますので頒布しています。

2SC1815-GR・・・エミッタフォロワ回路。耐圧(VCEO)が50V以上の小型の2SCタイプ、2SDタイプであればほとんどのものが使えます。hFEは高いもの(200以上)の方が有利です。

2SK3067 or 2SK3767・・・電源回路。耐圧(VDSS)が400V以上でドレイン電流(ID)が1A以上、形状がTO-220タイプのMOSFETが適します。

1JU42 or 1NU41・・・ファーストリカバリダイオード。電源の整流回路。いよいよ入手困難なので、頒布品を使うか1N4006または1N4007で代用もできます。

1S2076A・・・小信号用シリコンダイオード。LED点灯。1S2075、1S1585〜1588、1SS270A、1N4148、などの同等のダイオードもOK。

HZ16-2、HZ18-1・・・ツェナ(定電圧)ダイオード。16V±0.4Vと17.3V±0.4Vを2個直列にして約34V*あるいは約35V**を得ます。流す電流が多いので電圧は高めになります。合計が合えばいいので他の組み合わせでもOK。

抵抗器・・・回路図のとおりです。W数記載がないものはすべて1/4W型です。

半固定抵抗器・・・BOURNSの15回転横型で100Ωのものを使います。

コンデンサ・・・回路図のとおりです。すべて通常品です。

平ラグおよびスペーサ・・・20Pの平ラグを2回建てにします。1階用には8mm、2階用の継ぎ足しには20mmの樹脂スペーサが適します。中央の穴を固定するナットは誤接触を回避するためにポリ・ナットがよいです。いずれも頒布しています。

部品頒布のご案内はこちらです。→ http://www2.famille.ne.jp/~teddy/tubes/buhin.htm


<平ラグパターン>

すでに作成された6N6P差動ppミニワッター(旧パワーアップ版)を改造する場合は、12P平ラグの電源部をそのまま活かします。

平ラグは20Pのものを2階建てにして実装します。製作途中の画像がありますので参考にしてください。なお、2つの平ラグの端子は3個所(黒矢印でマーキングしてあります)で上下に貫通させています。貫通部分は、2つの平ラグを20mmのスペーサで結合してから、0.55mmの銅単線でつなぎます。(画像はいずれもクリックで拡大します)

ご注意:このパターンは若干修正されます。下の写真が最新です。


平ラグユニットはバラの状態での配線はここまでです。すべての部品が取り付けられていますが、片側しかハンダづけしていない部品や、ハンダをチョンづけしただけの部品がいくつかあります。これから先、配線する予定があるラグ穴はまだハンダで埋めていません。(3W型の抵抗器は回路図では22kΩ×2ですが、この画像ではあるもので済ませたので18kΩと27kΩになっています)

2枚の平ラグを20mmスペーサでつないでから、上下を貫通する配線を済ませたところです。(2個の黒いアルミ電解コンデンサ(470μF/25V)は真横に寝かせてもいいのですが、すでに実装済のトグルスイッチに当たってしまうので、斜めになっています)


<内部の画像>


<作業ガイド>

本章の記述は古い記事のままですので参考になりません
  1. シャーシ追加工の穴あけ・・・ミニワッター汎用シャーシを使った場合に追加で開けなければならないのは、電源ユニット取り付け穴(3.4mm径×2)です。それ以外に、スピーカーのインピーダンス切り替えスイッチ(6mm径)、入力切替ロータリースイッチ(9mm径)などがある場合は、ご自身の設計に合わせて穴あけを済ませておきます。穴あけの位置決めでは、他の部品と接触しないこと、トランスカバーなどを固定するビスの邪魔にならないことなど注意してください。シャーシのボリューム用の穴と入力端子(RCAジャック)用の穴の内側はサンドペーパーがけをして塗装をはがしておきます。

  2. 音量調整ボリュームシャフトの切断・・・金鋸でボリュームシャフトを適当な長さに切断します。ツマミの内側に加工時のバリが出ている場合は、そこにひっかかってボリュームシャフトが入りませんので、細いやすりを入れて削り取ります。

  3. 平ラグのパターンおよび工程計画を作成する。
    1. このページ(http://www.op316.com/tubes/tips/k-lug.htm)をしっかり読む。
    2. 平ラグのパターンシート(http://www.op316.com/tubes/tips/data/20p-large.pdf)をダウンロードする。
    3. 本サイトの回路図と平ラグパターンを見ながら自分で描いてみて、頭に入れる。
    4. 平ラグの端子穴ごとに作業手順が違うので、どんな手順でハンダづけしてゆくか考える。

  4. 平ラグユニット上の部品取り付けとジャンパー線の配線・・・ダイオードや2SK117の取り付け向きに注意してください。勢いで作業を進めると思わぬミスをやって後で泣きます。
  5. 音量調整ボリューム上の抵抗器の取り付けと線出し・・・音量調整ボリュームからは全部で6本の線が出ますので、これらはあらかじめ線出しをしておきます。入力端子行きの線は余裕をみて長めにしておきます(捻るとかなり短くなります)。

  6. 電源スイッチのLED部分への部品取り付けと線出し・・・LEDまわりは、並列逆向きのダイオードと直列に入れる抵抗器の配線があります。下に参考画像があります。熱収縮チューブは、普通のドライヤーでは無理で専用のヒーターが必要ですが、45W以上のハンダごての腹であぶるとうまく縮んでくれます。

  7. RCAジャックのアース側のリングの事前加工・・・RCAジャックのアースリングはナット締めの際にくるくる回ってしまって厄介です。そこで、前加工してL/Rの2個をつないでしまいます。右画像は、パネルを流用してRCAジャックを逆向きに取り付け保持し、アースリングの端子部分を折り曲げてすきまにハンダを流し込んでで接着しているところです。このようにつないでしまえば、ナットで締め付ける時に回転したりしません。

  8. シャーシへの主要部品の取り付け・・・ACインレット、ヒューズホルダー、入出力端子、真空管ソケット、真空管ソケットまわりのラグ板、電源トランス、出力トランスをシャーシに取り付けます。音量調整ボリューム、平ラグ上のアンプ&電源部ユニットはまだ取り付けません。RCAジャックは、8〜9mm径の菊座金をかましておくと接触が確実かつナットの締りがいいです。

  9. AC100Vまわりおよびヒーター回路への配線と通電試験・・・ACインレット、ヒューズホルダー、電源スイッチ、電源トランスの100V側の配線を行い、ヒューズを入れて最初の通電試験を行います。結線は下図を参考にしてください。描画上の都合で線を並行させていますが、ハム対策として実際の配線では往復を捻ることをお忘れなく。電源トランスの各端子に定格よりもやや高めの電圧がきていることを確認します。それがOKになったら、6.3Vのヒーター回路を配線します。電源トランス(6.3V)→真空管ソケットの4,5ピン→真空管ソケットの4,5ピン→LED回路、の順に配線してゆきます。真空管を挿して通電試験を行います。LEDおよびヒーターがほどよく光ることを確認します。

  10. 電源ユニットの取り付け、電源トランスへの配線・・・2個の出力トランスから出ている黒色の線を1つにしてから電源ユニットにつなぎ、電源ユニットをシャーシに取り付けます。電源ユニットと電源トランスの150V巻き線をつなぎます。出力トランスの1次側から出ている灰色と赤色の線は捻ってから真空管ソケットの1番ピン(灰)と6番ピン(赤)につなぎます。

  11. 電源ユニットの通電試験・・・電源ユニットから引き出したまだどこにもつないでいない線が何かに接触しないように先端にテープを巻くなどして通電試験を行います。電源ON時にテスターを当てておく箇所は「V+〜GND間」がいいでしょう。電圧は電源ON後数十秒をかけてゆっくり電圧が上昇すること、ヒーター回路にはやや高めの電圧(約6.5〜6.7V)が出ることを確認します。アンプ部にまだ電流が流れていないので、マイナス電源には−0.03Vくらいしか出ません。

    この通電試験がOKでない場合は、決して次の作業には進まないでください。違反してトラブルが生じて掲示板でヘルプを請うても助けることができません。なお、平衡型6N6P全段差動PPミニワッターも本機と同じ電源回路を採用していますが、初段電源回路(ツェナダイオードを含む)をアンプ側に置くか、電源側に置くかで電流配分が変わり、試験時のマイナス電源電圧も違ってきます。これは平衡型にチャレンジする方への演習問題です。しっかりと頭を使って何Vになるか考えてください。

  12. 真空管ソケットのセンターピンをつなぐアース母線の取り付け・・・本機の場合、アースは母線というほどのものはないのですが、アースを1ヶ所でまとめた方が作りやすいのと、どのみち真空管ソケットのセンターピンはアースしなければならいので、「コ」の字型に曲げた銅線を使ってアース母線としています。ここで、各真空管ソケットの9番ピンとアース母線とをつなぎます。また、ヒーター回路のどこか一点とアースとをつなぎます。どこでもいいので配線しやすい一か所を選んでください。私は、前寄りのソケットの4-pinとセンターピンを細い銅線でつないでいます。

    6N6Pピン接続図→

  13. 真空管ソケットまわりの部品取り付けと配線・・・まず、グリッドに取り付ける4個の3.3kΩの配線をします。その際、平ラグとつなぐ線も出しておくと後が楽です。下に画像がありますから参考にしてください(緑色の線)。ちなみに頒布している線材には緑色はありません(適当ですなー)。次に、カソードに取り付ける4個の3.3Ωと560Ω3Wを取り付けます。

  14. アンプ部ユニットの取り付けと真空管ソケット側および電源ユニットとの接続・・・アンプ部ユニットを取り付けます。電源ユニットから出ているV+とV-をつなぎます。アースは、「電源ユニット→アンプ部ユニット経由→アース母線」とすると配線がやりやすいです。あらかじめ真空管ソケット側から出しておいた4本の線をアンプ部ユニットにつなぎます。

  15. 最終通電試験・・・ここまでの配線がすべて完了していれば、音は出ませんが真空管を挿した状態ですべての回路に電流が流れる通電試験ができます。但し、上記8.および10.の通電試験がOKであることが条件です。DCVレンジにセットしたテスターで、出力段カソード抵抗(560Ω)の両端電圧が測定できる状態にして電源をONします。電圧が徐々に上昇して21V前後で落ち着けばひとまずOKです。もし19V以下あるいは23V以上だったら必ずどこかに配線の漏れやミス、ハンダの不良があります。

  16. 出力段のDCバランスの暫定調整・・・この状態でしばらく通電して動作が安定しているかどうかチェックしておくといいです。DCVレンジにしたテスターで回路図でいうところの「A点〜B点」間の電圧を測定します。ほとんど0Vの場合もあれば0.02Vくらいが生じていることもあります。100Ωの半固定抵抗器を調整して0.003V以下すなわち3mV以下となるようにします。時間が経つと変化しますし、風が当たっても変化しますので無理して1mV以下に押さえ込もうとしても無駄です。

  17. 入力端子〜音量調整ボリューム〜アンプ部ユニット間の配線・・・音量調整ボリュームを取り付けます。パネルとの間に8〜9mm径の菊座金をかますことでボリュームのシャフト部分とシャーシとの接触が確保されます。音量調整ボリュームから引き出してある線を、入力端子(RCAジャック)およびアンプ部ユニットにつなぎます。この時、入力端子(RCAジャック)への線が浮いてしまわないように、ピタックなど配線の固定具を使ってもいいです。私は5P立てラグの空いた穴を使って固定しています。

  18. スピーカー関係の配線・・・出力トランスから出ている白(0)と青(8Ω)の線は、アンプ部ユニットの端子を経由してからスピーカー端子につなぎます。黄(4Ω)を生かす場合はアンプ部ユニットを経由せずにスピーカー端子につなぎます。

  19. 最終チェック・・・「アース母線」と「アース」とつながっていなければならないすべてのポイント間の導通をチェックします。シャーシ、RCAジャックの外側、スピーカー端子の黒い側、ボリュームシャフト、ヒーター回路など。

  20. 音出しと最終のプッシュプルDCバランス調整・・・これで完成です。音楽など聞きながら、時々シャーシを横に倒して出力段のDCバランスの状態を監視しつつ、最終調整をします。シャーシを完全にひっくり返してしまうと、真空管の熱があがってきて2SK30Aの温度が不安定になるので、横倒しでの調整をおすすめします。


<測定>

本機の歪率特性データです。これまで製作&発表したどのミニワッターよりも優れた特性が得られています。

基本バージョン2012(パワーアップ版)と本機2014とを比べたのが次のデータです。1kHzにおける歪率特性を比較しています。本機では、最大出力が大幅にアップしているだけでなく、微小出力領域においても歪が全体に少なくなっています。

本機の周波数特性データです。


<所感>


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